コニャックレビュー

ギィピナールXO フォルブランシュ2021:ボトリング違いの面白さ

2021年4月26日

今回コニャックのレビューとして取り上げるのは、2つの『ギィピナールXO フォルブランシュ』です。

ギィピナールXO フォルブランシュはこれまで何度か製品化されていますが、今回私が手にしたのは2021年1月ボトリングのできたて。

ギィピナールといえばオーガニック製法をいち早く取り入れたコニャック生産者として有名です。葡萄の栽培・収穫・蒸留・熟成まで自社で行うギィピナール。いわゆるプロプリエテール。実際に現地に行った際のギィピナール訪問記もありますので、詳しい特徴はそちらもご覧下さい。

つい最近Cognac Expertとギィピナールのご縁によりこのギィピナールXO フォルブランシュ2021ボトリングを直接送ってもらうことができましたので、少し見て行きましょう。

貴重なフォルブランシュ

現在、コニャックの原料となる葡萄のほとんど(約98%以上)はユニブランが使用されています。それに対して今回はフォルブランシュという品種の葡萄。コニャック全体でも1%程度しか育てられていません。

フォルブランシュは1800年代後半に世界中の葡萄に大きな被害をもたらしたアブラムシの一種「フィロキセラ」によってほとんど絶滅に追い込まれた貴重な葡萄品種です。

貴重というのもありますが、葉が茂りやすく大変繊細でカビなどの病気にも弱いので、育てるのが非常に大変といった方がいいかもしれません。

そんな貴重なフォルブランシュ100%で作られたオーガニックコニャックが「ギィピナールXO フォルブランシュ」です。

2019年ボトリングと2021年ボトリング

この2021年ボトリングの今回のボトル、実は日本国内では2021年4月時点では販売していません。

ギィピナールのフォルブランシュ100%コニャックは過去に何回か商品化され、日本にも流通しています。

直近では私も何回か同シリーズを飲んだことがありました。

1回目は2015年にリリースされた2005年蒸留のギィピナールXOフォルブランシュ。

2回目は2019年にギィピナールに訪問した時。

3回目は神楽坂のBar柿沼にて。最近柿沼さんがCognac Expertから仕入れてくれたとのことで私も飲ませて頂きました。

上記2回目と3回目は2007年蒸留の2019年1月ボトリング。限定522本のものです。

2019年にBAR DORAS×信濃屋から発売された378本限定のギィピナールXOフォルブランシュ 2007-2019日本向けの物が出ていますが、そちらはシングルカスクなのですが、こちらの方は明記ないので不明です。(例年のラインナップからすると恐らく同様にシングルカスク。)ギィピナールのブログによると同じく2007年収穫のフォルブランシュを使ったものとのことです。(ということで2007-2019です)
参考:http://www.guy-pinard.com/blog/nouveau-cognac-folle-blanche.html

※追記→シングルカスクでした(後述)

↑522本限定2019年ボトリングの方

そして今回、偶然にも私にオファーがありボトルを手にすることに。

今回私が手にしたものは2021年1月ボトリング、限定500本のできたてホヤホヤです。私のはボトルNo.004。

現時点でギィピナールに現存しているフォルブランシュコニャックをボトリングしたもの。「今ストックしているやつ」と言っていたのでシングルヴィンテージではなく、いくつかブレンドされているものだとは思うのですが、ちょっと確認中です。

2021/4/28 追記

ボトルの詳細についてギィピナールに確認がとれました。
今回私の2021年1月ボトリングは、蒸留年2009年のシングルカスクとのことでした。ということで熟成年数は11年ちょいということになります。
2019年ボトリングとちょうど2年差ですね。

葡萄の生産エリアはどちらもファンボア産100%です。

2021年版テイスティングタイム

まずは今回の2021年版をテイスティング。

香り立ち

最初こそ若い原酒に特有の青リンゴっぽさはありますが、その後少しすると香り立ちは圧倒的にお花系の香りが目立ちます。凄く心地よい・・・。

まずはジャスミンですね。その後にキンモクセイのような香りもします。ジャスミンティーの茶葉を嗅いでいるような気もします。

その後に追ってくるのは圧倒的フルーツ感ですね。

オレンジ、そしてレモンのフレッシュさ。そしてその後にピーチのような南国フルーツ系の香り立ちです。

べっこう飴のようなあま~い要素も感じることができます。

逆にシナモンなスパイス系の香りは全くといっていいほどしないですね。

味わい

いきなりマンゴー。

最初に申し上げておくと、とても10年そこらの熟成年数しか経っていないコニャックとは思えない程、長熟コニャックにしか見られない特徴を感じることができます。

このコニャック自体は10年そこらの熟成期間ですが、35年熟成以上コニャックにはたまに見られる、蜂蜜とオレンジ、ピーチ、ライチといった南国フルーツ系の味わいが垣間見れます。この辺は香り立ちのイメージをそのまま味わいに踏襲した様子ですね。

そして素直に甘い葡萄感。食用のマスカットを彷彿させる甘酸っぱさです。ツンツンとしないほどよい酸味。このほどよい酸味がよいアクセントになっています。

余韻にかけても若いコニャックには見られないような同様のフルーティーさが垣間見れる点も驚きです。

2019年ボトリングとの比較

私が持っている2021年版と以前飲んだ2019年版を比較するために、先日神楽坂のBar柿沼さんに伺い、柿沼さんが持っている2019年版と私が持参した2021年ボトルを飲み比べをさせて頂きました。(無理なお願いを受け入れて頂きありがとうございます。)

右が2019年1月ボトリング(2007年蒸留)。
左が私の2021年1月ボトリングです(2009年蒸留)。

どちらも同じファンボア産フォルブランシュ100%で同じボトル名なのですが、各ボトルで特徴が異なり大変面白い体験となりました。

まず見た目からして色が異なります。2019年版の方がやや濃いめ。2021年版の方が薄いカラーです。これは写真の光やカメラの差ではなく、どの角度から見ても色の差は明らかでした。

香り立ちと味わいは、その色の差をそのまま反映させたような明確な差があります。

全体的にフルーティーな印象はあるのですが、2019年版の方が明らかに樽由来のスパイス感があります。よりウッディで重厚な印象が残ります。

それとは異なり2021年版はクリア。樽感は少なく、よりピーチ系トロピカル感が強調されます。

熟成年数的にはほとんど近しいものになりますので、これは明らかに眠っていた樽の差に由来するもの。2019年の方がもしかしたら新樽期間が長かったり、よりタンニンが出やすい樽だったのかもしれません。

どちらも高いレベルのコニャックですので、ここまでくると完全に好みの問題になるのですが、同じ商品名でここまで個性が分かれるのは大変面白いですね。逆に言うと、大手のメーカーの場合は同じ商品名でここまで差が出ることはほとんど無いので、ギィピナールのような小規模生産者ならではという面白さです。

この2019年と2021年の差が意図的なものなのか、自然とそうなったものなのか定かではありませんが。商品名こそ同じですが、やはり2019年と今回の2021年は全く別物のコニャックと捉えるべきでしょう。

『フレッシュ・瑞々しい・フルーティーで香り高い』というフォルブランシュに特有のキャラクターを最大限に引き出したコニャックだと思います。そういった意味では2021年ボトリング版の方がその特徴がより洗練され強調されているかもしれません。ギィピナールXOフォルブランシュ2007-2019で「この熟成年数とは思えないフルーティーさ」を感じた方なら更に。

高いポテンシャルを秘めたコニャック

例え同じフォルブランシュでも長期熟成を得意とし、開花するのに時間がかかるグランドシャンパーニュコニャックだったら、10年くらいの熟成ではここまでのポテンシャルは引き出せないと思います。ギィピナール×フォルブランシュ×ファンボアという要素が揃ってこそ。

もちろん、若い原酒に特徴的な粗さや勢いも同時に存在します。40年や50年の熟成を超えたコニャックのような「円熟」「トロピカル系ランシオ爆発」といったとは全く別物ではありますが、このボトルと同じ10年~15年熟成のコニャックや同価格帯のコニャックでは出すことができない味わいと余韻。とにかく提示スペックの倍以上の価値を見出してしまうトロピカル感。これに尽きます。

このまま長期熟成を経たらどうなるのかも気になるところですが、フォルブランシュが原料ということと、生産域がファンボアということもあり、あまり30年を超えるような長期熟成には向いていない(耐えられない)コニャックだと思いますので、もしかしたら今くらいの熟成が丁度よいタイミングなのだと思います。

そういった意味ではさすがベストな時期を見極める目をもった生産者です。

フォルブランシュ100%のコニャックはこのギィピナール以外にもたまに出ることがあります。最近の過去リリースだとレイモンラニョー ・フォルブランシュ2005とか、アルマニャックのドメーヌ ボワニエル フォル ブランシュ 2001とか。

アルマニャックのフォルブランシュ100%はコニャックのそれとは方は正直全く別物な特徴なのですが、たまに出る貴重なフォルブランシュを比べるのも大変面白いですね。その中でも今回のギィピナールXOフォルブランシュ2021ボトリングはフォルブランシュの良さを上手く体現した非常に味わいと余韻のレベルが高いと感じたコニャックでした。

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