コニャックにおいて良く聞く言葉「アーリーランデッド(Early Landed)」。
ハイン社やデラマンのコニャックでもアーリーランデッドコニャックが多数出ていますが、果たしてアーリーランデッドとはどういう意味なのでしょう。
フランスで樽詰め→イギリスで熟成
アーリーランデッド(Early Landed)コニャックとは、
フランス・コニャック地方で収穫から蒸留・樽詰めまでを行った後、樽の状態で英国に運ばれ熟成・瓶詰めされたコニャックの事を指します。アーリーランデッドとは「熟成前に陸揚げされた」という意味を持ちます。
熟成場所としては主にイギリス南西部の港ブリストルや、ロンドンのテムズ川沿いの倉庫を指すことがほとんどで、これらイギリスでの熟成環境は、年間気温も低く(8~12℃)、湿度も平均95%となっているため、 水分の蒸発が遅く、よりまろやかでフローラルな香りとなるのが特徴的です。(逆に湿度が低いとアルコールよりも水分の蒸発が早くなるためよりパンチのあるコニャックに仕上がる傾向にある) 。
同じ原酒であってもコニャック地方とは異なる気候で熟成されるため、若干異なる風味を楽しむことができます。
イギリスとコニャック
と、ここまではアーリーランデッドについてどこにでも書かれている内容なのですが、少しイギリスのコニャックを掘り下げてみましょう。
イギリスとコニャックは切っても切れない関係にあり、コニャックが大きな評価を得るようになったのもイギリスがあってこそ言っても過言ではないのかもしれません。
18世紀はイギリスがコニャック最大の顧客でしたし、そのころはイギリス出身者によるコニャックメーカーの設立が目立ちました。マーテル創業者のジャン・マーテル、ヘネシー創業者のリチャード・ヘネシー、ハイン(HINE)創業者のトーマス・ハインなどが代表的です。
イギリスでは1840年代、コニャックは大変な人気を誇っていました。
この頃、当時のイギリス首相であったロバート・ピール首相がコニャックにかかる関税をそれまでの3分の1に下げたことが大きく寄与したと言われています。
その後、さらに1860年代にもコニャックに対する減税措置が取られ、イギリスへのコニャック出荷量は過去最大となります。6年間で出荷量は倍以上になったようです。
この頃イギリスでは樽詰めして数ヵ月の熟成していないコニャックをコニャック地方から直接樽積みし、イギリスの波止場で熟成される手法が一般的でした。
アーリーランデッドとビンテージ
通常のコニャックは複数の原酒がブレンドされているので、ビンテージ表記はありませんが、アーリーランデッドの場合はイギリスに運ばれた樽をブレンドせずにそのまま瓶詰めすることがほとんどのようで、しっかりとビンテージ年数が表記されているのが特徴的です。※例外もあります
ハイン アーリーランデッド 1991年
ハイン アーリーランデッド 1981年
デラマン アーリーランデッド1982年
等々・・・
ハインとイギリス王室
アーリーランデッドコニャックとして一番有名なのはハイン社かもしれません。
ヘネシーやデラマンなどもアーリーランデッドコニャックを排出していますが、恐らくハインのラインナップが最も多いのではないでしょうか。
ハインはイギリス出身のコニャックメーカーだけあり、イギリスとの関わりも強く、何と50年以上にわたりイギリス王室、エリザベス女王にコニャックを提供し続けています。イギリス王室御用達のコニャックと言えばハインです。
日本に入ってくるハインのアーリーランデッドといえば1991年と1982年あたりが有名ですが、実はそれ以外にもハインは多くのビンテージアーリーランデッドのラインナップがあります。なかなか手に入りにくいですが、少なくとも
ハイン 1975年
ハイン 1981年
ハイン 1983年
ハイン 1984年
ハイン 1985年
ハイン 1986年
ハイン 1987年
ハイン 1991年
あたりはあったはず・・・。私も81年と91年しか飲んだ事ないけど。
アーリーランデッドを知りたくば、ハインを飲むべし。
参考:
→ハインの特徴とラインナップ