今回レビューを行うのは私の最も好きなコニャックブランドの一つ「フランソワ ヴォワイエ」が手掛ける「アメリカンオークフィニッシュ」のコニャックです。
ここ数年は他メーカーもミズナラだったりオロロソだったりシェリーだったり、色んなカスクフィニッシュが出てきてコニャックのバリエーションがずいぶんと豊かになった印象ですね!
そんなこんなでアメリカンオークフィニッシュはどうなのか!早速見てみましょう!
フランソワ ヴォワイエ カスク エクスペリエンスの背景
フランソワヴォワイエと言えば、「フランソワ ヴォワイエXOゴールド」や「フランソワ ヴォワイエ エクストラ」に代表される高品位な100%グランドシャンパーニュコニャック。中でもエクストラは私の中ではNo1と言って過言ではないコニャックの一つで、香り立ち、余韻、ランシオ共に最高峰なコニャック。
参考記事
→フランソワヴォワイエXO GOLDの感想・レビュー
→フランソワヴォワイエVSOPの感想・レビュー
→フランソワヴォワイエ エクストラの感想・レビュー
今回のカスクエクスペリエンスNo.1は、その名の通りフランソワヴォワイエが始めた新しい試みの一つ。これまで熟成に使用していたフレンチオークの他に、ヴォワイエのコニャックに様々な樽を使ってフィニッシュをかけたらどんな香りと味わいに仕上がるのか?というコンセプトのもと始まったコニャックシリーズです。
その第一弾がこのアメリカンオークフィニッシュです。
フランソワ ヴォワイエ カスク エクスペリエンス No.1 の基本情報
容量:700ml
アルコール度数:43.1%
620本限定生産
グランドシャンパーニュ コニャック
葡萄品種:ユニブラン100%
熟成年数:フレンチオークで8年熟成のち、6ヶ月間アメリカンオークでフィニッシュ
ノンチルフィルタード
輸入業者:ラールアルコル合同会社
購入価格(2021年3月時点):税込8,480円
実は世界で620本限定生産のボトル。今回の輸入分の在庫が無くなったら国内での流通は終了ですかね多分。私が手にしたのはボトルNo.003でした!
アルコール度数は43.1%ですが、コニャックには珍しいノンチルフィルタードです。
8年熟成の後、6ヶ月間アメリカンオークに移されフィニッシュをかけています。ベースとなっているのはフランソワヴォワイエVSOPにブレンドされている原酒で、通常よりもやや酸度の高いユニブランを使用して蒸留され、かなり乾燥したセラーにて熟成されています。
今回はカスクエクスペリエンスNo.1ということで今後No.2、No.3と続いてくのでしょうか。きっと。
どんなアメリカンオークが使われているのか?
さて、一番気になる所はこのフランソワ ヴォワイエ カスク エクスペリエンス No.1 はどんなアメリカンオークが使われているのか?というところ。
「8年熟成されたグランド シャンパーニュ コニャックをニューアメリカンオーク樽で6か月間フィニッシュ」
https://mukawa-spirit.com/?pid=157500727
ニューアメリカンオーク樽でフィニッシュ(6か月間)
https://item.rakuten.co.jp/chagatapark/157501300/
と書かれていますが、他の海外サイトの説明を見ると
finished in American ex-bourbon casks
https://www.cognac-expert.com/cognac-brands/francois-voyer-cognac
なんて書かれていたりして、アメリカンオーク新樽なのかバーボン古樽なのか、よく分からない状態だったので、フランソワ ヴォワイエのアンバサダーでもあるMorgan Moutet氏に直接Whatsappで確実な情報を聞きました。
結果として日本の説明が正解。
どんなアメリカンオークか・・・というところまでは分かりませんが、アメリカンオーク新樽の6ヶ月フィニッシュということで間違いないようです。(Cognac Expert間違っとるやんけ)
「フレンチオーク以外の樽でも"新樽を使った"フィニッシュだけコニャック名乗ってOK」という基準はまだ変わっていないようです。
ちなみにバーボン古樽を使ったマーテルブルースウィフトや古栗樽を使ったピエールフェラン レネゲードなどはコニャックを名乗れません。
各メーカー続々登場する「〇〇カスクフィニッシュ」の定義は・・・
もちろん、フレンチオーク以外の樽でフィニッシュを掛けたコニャックは以前も少しありましたが、〇〇フィニッシュといった形でここ数年は圧倒的にその数が多くなりました。
コニャック パーク ミズナラや、バッシェガブリエルセンのアメリカンオークフィニッシュ、フェルベルトのオロロソフィニッシュなどです。
それにはここ数年でコニャックの樽に対する見解が幅広くなったことが大きな背景としてあります。これまではコニャックにはフレンチオークを使用するよう定められていましたが、大きな転機が訪れたのは2016年とかその辺りのような気がします。
これはBNIC(フランスコニャック協会)により、新樽に限りフレンチオーク以外の樽でもフィニッシュに限り認められるようになったことが大きいです。大きな理由としては2つあり、一つめは「コニャックの可能性と需要に応えたい」という事。そしてもう一つは「コニャックに使用できるフレンチオークの数自体が少なくなっているので別の活路を見出す」というこもあるようです。
ポイント
フレンチオーク以外の樽を使ったフィニッシュに関して
2019年12月時点でのBNIC(フランスコニャック協会)の規定としては、マーテル ブルースウィフトのバーボン古樽ように他のスピリッツで使用済みの樽を使ってフィニッシュをかけた場合はコニャックとは認められず、フレンチオーク以外でも未使用の新樽でのフィニッシュであればコニャックとしてはOKだそうです。
なのでブルースウィフトはコニャックとしては不認可で、Cognac Parkのミズナラ樽フィニッシュは今のところコニャックとして認可が出ている模様。ただし、フィニッシュ期間の規定は今のところ曖昧で、最大でも1年を目安としているらしい。
現時点ではまだブレの多い規定であり、今後この規定は変更される可能性も無きにしも非ずといったところです。
まだ〇〇カスクフィニッシュに関しては定義が曖昧な部分がありコニャックAOCを管理しているBNICも模索中といったところのようですが今後の展開に注目です。
2023/2/9追記
フレンチオーク以外の樽の使用規定についてBNICに確認が取れました。
コニャックの熟成樽については2023年2月時点で下記のような規定となっています。
- オークの新樽であればフレンチオーク以外でも何年でも使用可能
→未使用のアメリカンオークやミズナラオークなど、1年半などの期間の制限はない。オークであればエリアは限定されない。フィニッシュに限らず10年でも20年でも熟成に使える - ブドウ由来の酒(シェリーやワインなど)に使われたオーク樽であれば古樽でも使用可能。これも使用年数は問わない
- オーク以外の種類の木からできた樽は新樽でも古樽でも使用できない
→チェリー樽やアカシア樽などは使用不可 - ブドウ由来以外の酒(ウイスキーやラムなど)に使用された古樽は使用不可
→なのでバーボン樽を使ったものやラムで使われた樽の場合はオークであろうがなかろうがコニャックとしては認められない
追記ここまで----------------------
ようやく飲んだ感想
さて、前置きが長くなってしまいましたが、フランソワ ヴォワイエ カスク エクスペリエンス No.1 アメリカンオークフィニッシュの香りや味わいを見て行きましょう。
全体的な印象として最も残るのは
「あ、ちゃんとアメリカンオークっぽさが出てる!!!」
です。
アメリカンオーク(バーボン樽)の特徴といえば、ヴァニラのような甘い香りと味わいというのが挙げられると思います。それがちゃんとある!
まぁそのためのフィニッシュなので当たり前といえば当たり前なのかもしれませんが。
ただ、この「あ、ちゃんとヴァニラ」を感じるかどうかは、このボトルを飲む前に他のフランソワヴォワイエのコニャックを飲んだことがあるかで大きく分かれる所かもしれません。
これは私の所感なのですが、フランソワはレンジ的にフランソワヴォワイエVSOPとフランソワヴォワイエXOゴールドに大きな境目があり、XOゴールドを境にエクストラにかけては急激に南国のフルーティーさが増しますが、VSOPまでの若いレンジにおいては比較的ウッディ感とスパイシーさが目立つコニャックでもあります。
これはヴォワイエの特色として全てのレンジにおいて熟成の最初の期間に新樽のフレンチオークで寝かせる期間が他のコニャックよりも長いことに起因しています。
今回、私が比較対象に上げるのはレンジ的には同等のヴォワイエVSOP。今回のカスクエクスペリエンスNo.1の8年熟成に対して、VSOPは6~20年のブレンドと幅が広いのですが、最も多く使用されているのは8年~10年あたりと個人的に予想しています。
他のヴォワイエを飲んだ事がある人はより強く「ヴァニラっぽ!」と感じることができるかもしれません。他のヴォワイエを飲んだ事がない人は本来のヴォワイエの特色であるウッディ感の方が強く印象に残ってしまう場合もあります。
香り立ち
ヴォワイエに特有の木のや森の香りに加え、ちゃんとヴァニラとキャラメル感が機能した香り立ち。ヴォワイエVSOPには少しレモンを感じましたが、カスクエクスペリエンスNo1ではその感じは消え、代わりにアプリコット、そしてプラムでしょうか、紫蘇のような香りも拾うことができます。
しかしやはりヴァニラが強い。あとバナナとココナッツ。
あと焼き栗。
スミレやユリとったお花系の香りはあまり拾うことは無いですね。
うーん、バーボンだこれ(笑)。
ただ、8年熟成であることを考えると、これはかなり優秀な香り立ち。というかめちゃめちゃ印象に残る。そういった意味では勝ちなのかもしれない。
味わい
ヴォワイエのスパイシーさはちゃんと残しつつ、良い具合に甘い余韻に浸る事ができます。中身はグランドシャンパーニュ100%なのでちゃんとコシが強い芯は残っています。
スパイスの種類としてはナツメグでしょうか。
こちらももちろんヴァニラ、ココナッツ、バナナといった印象はあるのですが、その波は2回きます。
ざっくりとした流れとしては
甘み→スパイス→また甘み
といった感じに最初と最後。その後の余韻としてはその二つがうまく混じりあったもの・・・といったところでしょうか。
舌に乗る重厚感はあるので、シガーにも合いそう。合わせるならフルーツでもないし乾きものでもな・・・濃厚な生チョコレートが良いですね。
フランソワヴォワイエ カスクエクスペリエンスNo.1アメリカンオークフィニッシュまとめ
いずれにせよ、これまでのフランソワヴォワイエを想像している人にとっては全く別物のコニャックです。
それはいい意味での別物で、ちゃんとアメリカンオークがコニャックと喧嘩せずに活きているということです。
様々な〇〇フィニッシュが出る中で、このフランソワヴォワイエ カスクエクスペリエンス・・・まさにフランソワヴォワイエの新しい試みはひとまずかなり成功と言えるのではないでしょうか。(何様・・・
価格帯としては8,000円~9,000円前後なので8年熟成コニャックとしてはやや割高な部類に入ると思います。まぁ620本限定生産という小ロットであることと、〇〇フィニッシュのコニャックはどうしても少し高価になってしまうので致し方ないという所でしょうか。
個人的には大変興味深く、好きなコニャックです。もちろんこれだけでも面白いですが、おすすめとしてはフランソワヴォワイエVSOPとの比較ですね。よりアメリカンオークフィニッシュの効力を感じることができると思います。
今後フランソワヴォワイエのカスクエクスペリエンスシリーズには注目していきたいところです。(ほんとにシリーズ続くかは今のところ未定だそうです)