いくつかの海外メディアでは注目を浴びているブランデーがあります。
2017年6月19日にフランスで行われた「Vinexpo 2017」で出展されていたフレンチブランデー。その名も「Monteru Brandy Ippon(一本) ミズナラ」。
#Monteru #Brandy Ippon was aged in #Japanese #Mizunara Oak casks! Grapes: Folle Blanche https://t.co/FlIYTObU0v #japanesebrandy #agedinoak pic.twitter.com/oYr6XQjbux
— Sophie & Max (@cognac_expert) August 2, 2017
異様に目を引く日本語「一本」と「ミズナラ」。おそらく現地の人が日本語を見ながら一生懸命書いたであろうことが想像される何とも独特な文字バランスが特徴的です。
フランスのメーカーが作ったこの一本というブランデーは何のか?ちょっと見てみましょう。
「フレンチブランデー」Monteru Brandyとは
まず、このブランデーを作っているのはMonteru Brandyというフランスボルドリ地区にあるブランドです。
Monteru Brandyは1700年代に創業を開始し、それ以来様々なユニークなブランデーを作り続けています。おそらく日本にはあまり出回っていないブランドなので、知っている人も少ないかと思います。
「面白いブランデー」というのも、このMonteru Brandyは様々な種類の樽やブドウ品種からブランデーを作っているからです。
近年では、単一品種のブドウによるブランデー(single grape brandy)造りに力を入れており、そのブドウ品種もカベルネ、シャルドネ、メルローといった普通はコニャックで使用されるこ事のないワイン用のブドウでブランデーを作っています。そしてこれが結構な評判で成功を収めています。
熟成に使用されている樽も様々で、アメリカンオークや世界各国の樽をその商品に合わせて使っているちょっと変わったメーカーです。
さて、ここまで「ブランデー」と表記したように、このメーカーが作っているブランデーの多くは規格的に「コニャック」ではなく、「フレンチブランデー」というカテゴリになります(使用されるブドウ品種や生産地、熟成樽がコニャック規定とは異なる)。作られている地域はコニャック地方ですけどね。
参考
→【入門編】コニャックとアルマニャック等の種類の違いは何か?
世界初?ミズナラ樽のブランデー
今回紹介する「Monteru Brandy Ippon(一本)」、フレンチブランデーとしては世界で始めて日本の木「ミズナラ」の樽を使って熟成されたブランデーだそうです。
「ミズナラ樽」といえばウイスキー好きの方はピンとくるかもしれません。
ミズナラは日本のサントリーが世界で初めてウイスキーの熟成に用いたことで有名です。
山崎 ミズナラやシーバスリーガル ミズナラなどのウイスキーにも使用されています。
北海道が主産地のジャパニーズ・オークの一種であるこのミズナラは、木の特性上取扱いが難しい樽で、その希少性から年々樽の価格が高騰しており、日本国内でも競争が激しく入手困難なレア樽です。
なぜミズナラを使おうとしたのか?
なぜMonteru Brandyはミズナラを使ったブランデーを作ったのか?
実は2015年にMonteru Brandy内で「ユニークな樽を使ったフレンチブランデーを作ろう!」という企画が立ち上がったそうです。そのな中でアメリカンホワイトオークやシェリー樽、ソーテルヌワイン樽などが候補に上がりましたが、どれも「普通で面白くない」との理由から却下。
そして最終的に残った「興味深い」樽が日本のミズナラ樽だったそうです。
「コニャックで使われている物以外の材料でブランデーを作ってみよう!」という姿勢を持つメーカーが、山崎などで世界的にも評価されているジャパニーズウイスキーに使用されているミズナラ樽に興味を示さないわけがありません。
これまで「コニャック」では有りえなかった選択肢だけにとても興味を引かれます。
ただし、ミズナラ樽は日本国外で輸入して使おうとすると、一般的なオーク樽より10倍ほどの値段になるそうです。めっちゃ高い。
なるほど、あまり使用されない訳ですね・・・。
ちなみに、今回生産されているMonteru Brandy Ipponは2pts(=約45リットル)のみ。かなり実験的な商品だということが分かります。
しかしミズナラを使ったフレンチブランデーは今回が世界初という事は意外でした。初めて知りました。
Ippon(一本)のブドウ品種は?
Monteru Brandyは色んな種類のブドウ品種を使っていると書きましたが、このIpponに限ってはコニャックでもよく使われてるフォルブランシュが原料として使用されているようです。ただしフォルブランシュ種の単一種のみで、他の品種は使われていません。
90%は2012年に収穫したもので、10%は2014年に収穫したものだそうです。精確な生産地がどこなのかまでは確認できませんでした。
Ippon(一本)の熟成年数は?
実はこのIppon、明確な熟成年数は公表されていません。Vineexpoに参加して直接聞けば分かったかもしれませんが・・・。
ただし、使用されている原料の10%が2014年に収穫されたフォルブランシュであることと、2015年にこの企画がスタートした事から推測するに、コニャックで言う所のVS(樽熟成2年経過)ランクに相当すると推測できます。
つまり、めちゃくちゃ若い。
正直、この熟成年数でどこまで「ミズナラっぽさ」が出るのか不明です。
アルコール度数も43%となっていますが、2年程の熟成でカスクストレングスだったらこのアルコール度数はあり得ないので、かなり加水されてアルコール度数を下げていることが推測されます。
VSランクといえばほとんど熟成感は感じられない若いブランデーなので、こればかりは実際に飲んでみないと何とも分かりませんね・・・。もしこれが10年、15年熟成となってくるとフレンチオークで熟成されたブランデーとはまたかなり違った熟成感になるのかもしれません。
Monteru Brandy Ippon(一本)はどこで手に入るのか?
2017年8月現在、残念ながら手に入りそうにありません。
というのも、そもそもMonteru Brandy Ippon(一本)自体がテスト出品のような状態で、生産されたのもVinexpo2017年向けの1本(1箱1セット)のみだそうです。まさに「一本」。
ただ、情報によると2017年の秋にコレクター向けに10本ほどリリースされるそうです。(少なっ!?(笑)
まぁもともと超少量生産だったので仕方ないか・・・。
ということでMonteru Brandy Ippon(一本)ミズナラを入手することは現実的に難しそうな雰囲気ですが、ここの話題で大事なのは日本のミズナラ樽が使われているということ。
ミズナラ樽熟成ブランデーということで注目要素も多くあるので、ぜひウイスキーだけに限らず、made in JAPANを謳うジャパニーズブランデーにもミズナラ樽熟成取り入れてみてはいかがでしょうか。ミズナラ樽で長期熟成されたブランデーがどのような物なのかとても気になる所です。
え、そんな単純な話ではない?
うーん、話題性としては面白いと思うんですけどねぇ。(既に存在していたらすみません・・・)