コニャック滞在記2019年 冬

コニャック滞在記⑧:Coganc Parkの全てを語ろう(2)なぜミズナラコニャックは生まれたのか?

2019年12月27日

滞在3日目その2
2019年12月5日(木)

前回の記事「Coganc Parkの全てを語ろう(1)ボトリングラインと蒸留」に続き、Cognac Parkの訪問記その2。

前回までは

①ボトリングライン&出荷倉庫
→ Chaniers(コニャックから少し離れた町)

②蒸留所
→コニャックの隣町Jarnac内

でしたが、今回は続きの

③自社のブドウ畑(25ha)
→ボルドリ地区のJavrezacにあるLe Buisson

④本社オフィス&熟成庫
コニャック街中

を見て参ります。

自社畑はボルドリのみ

前回の記事でも書いたように、Cognac Parkが所有している自社畑はボルドリにある約25ha畑のみです。

Coganc Parkはボルドリ以外にもファンボアやグランドシャンパーニュのコニャックを多数リリースしていますが、ボルドリ100%のコニャックに関しては自社畑100%のブドウを使用しています。

それ以外の産地に関しては複数の契約農家からワインを仕入れ、それをCognac Parkの蒸留所で蒸留してコニャックに仕上げています。いわゆるネゴシアンプロプリエテールといった立場です。

Coganc Parkの畑の場所はコチラ

コニャック市街地から少し離れたボルドリ地区の村JavrezacにあるLe Buisson という場所にあります。

2019年12月の畑の様子はこんな感じ。収穫後間もなく、まだ剪定前です。品種は全てユニブラン。

Cognac Park的には樹齢1~5年の木はまだまだ若くあまりコニャックに適しておらず、自社のボルドリコニャックに主に使用しているのは樹齢7年~10年、または15年程の木を好んで使用しているようです。20年過ぎるとその木々によって状況は変わり、自社のコニャックの原料として品質を満たすかどうかを慎重に判断していかないとダメだそう。

Cognac Parkの畑のラインは、「草を残すライン」と「土をむき出しにするライン」を交互に分けています。

草を残すラインはそれによりブドウの成長に必要な微生物や湿度を保つため。

土をむき出しにするラインはより多くの酸素を取り入れることを目的としています。

この草と土を残す残さないの判断は各生産者、ブドウ農家によっても異なり、土を全てむき出しにする生産者もいれば、草を全て残すタイプの生産者もいます。それぞれに特徴があるのですが、Cognac Parkの場合はその中間をとっているようです。

搾汁機と発酵タンク

10月中旬より2~3週間かけて収穫を行い、その後3~4週間でワインの発酵を行います。

ブドウの搾汁機は畑のすぐそばにあり、もちろん発酵タンクもすぐ横にあります。

発酵タンクはステンレス製のものが合計6機です。

発酵時にイースト菌を加えるかどうかはその時の気温や環境にもより、温度が低すぎる場合は発酵促進のためにイースト菌を加えることもあります。社内に専門の分析官がおり彼女の判断により決定されるそうです。

Cognac Parkの場合、蒸留時にワインのオリは全て使用せずにワイン中の2%程のオリのみ使用します。

その他、不要になったオリはそのまま破棄できないので、専門のオリ回収業者に引き取ってもらい、その後肥料や有用な資源にリサイクルされます。

これは別のコニャック生産者のものですが、タンク内に残ったワインのカス

結果的に収穫の5%程が資源として再利用されることになるそうです。

広大な本社オフィスと熟成庫

一通り畑の様子を伺ったら、Cognac市街地にある Tessendier & Fils本社オフィスに移動。

場所はコチラ↓

シャラント川沿いの広い敷地です。

本社と熟成庫は同じ敷地内にあり、熟成庫はCHAI1~6までの合計6の大きさの違う熟成庫が存在しています。主要Coganc Parkはじめ、 Tessendier & Fils社の主要コニャックの熟成は全てここで行われています。(一部隣町のJarnacにも昨年から実験的に始めたウイスキーの熟成庫がある)

熟成庫の外観はこんな感じで、このような建物が6つあります。

まずは新樽が置いてある熟成庫から。Cognac Park的には「新樽」として使う基準は使用開始3年目まで。

ここでは若いオードヴィーが新樽で6ヶ月~12ヶ月程熟成(製品によって違う)され、その後中身が古樽に移動されます。

新樽の良い香り

熟成庫内の樽が置いてある床はどれも土の上に砂利が敷かれており、少し湿度が高めの熟成庫でより円やかに熟成が進みます。

使っている樽メーカーは「VICARD」と「DOREAU」がメインです。Cognac Parkの場合、樽のキャラクター的にDOREAUの樽は200~280度でトーストするので樽成分が出やすく若いコニャック向けに、150~200度で樽内をトーストするVICARD製の樽はゆっくりと熟成が進む特性がありXOやエクストラ向けに使う事が多いそうです。この2つの樽製造業者は別の日に詳しく見学させてもらったので、別記事にて詳細を書きます。

こちらは冷却ろ過を行うタンク↓

最終ブレンドを行うステンレスタンク↓

そして最終調整が完了し、ボトリングを待つタンクたち↓

最後に最も古いコニャック達達が集まる熟成庫へ。

所謂パラディセラーというやつです。

一般的にパラディセラーは蜘蛛の巣が張り巡らされていたり、マッシュルームで壁が真っ黒だったりという所が多いのですが、ここのセラーはかなり奇麗な状態にメンテナンスされていました。

ちょうど担当の方がセラーマスターからの指示をうけ、樽内に残っている正確なコニャックの量を計るため、一度全ての樽からコニャックを全てポンプで取り出している作業の最中でした。

その後セラーマスターの指示に従って、ブレンドされたコニャックを樽に戻したり、他のセラーにあるコニャックをこのパラディセラーの古樽に移し替えたりします。

珍しい現場を見せて頂きました。

ミズナラ樽もパラディセラーにあった

Coganc Parkの目玉コニャックでもあるCogac Park ボルドリ ミズナラですが、その熟成もこちらのパラディセラーにて行われていました。

こちらがまさにミズナラフィニッシュ中の日本産ミズナラカスク。

ちなみにこのミズナラ樽は京都で樽の製造を行っている有明産業(株)がCoganc Park専用に作ったものを購入しています。特注品。

容量は500Lとコニャックの樽としてはやや大きめ。ミズナラの特徴を十分にコニャックに反映させるため、通常の樽よりも随分と厚みがあるのが特徴です。

特有のバニラ香。

Cognac Parのミズナラフィニッシュのラインナップはヴィンテージを除き通常ラインナップとして2つの商品がありますが、それぞれの詳細については後述します。

オフィス内でテイスティング会

最後にオフィスでテイスティング会。

今回テイスティングを行ったのは全8種類。それぞれ簡単に説明を書きます。

Cognac Park VS Carte Blanche
熟成年数:2~4年の原酒をブレンド
※400Lのリムーザン新樽で6ヶ月熟成の後、リムーザン古樽に移される
生産域:ファンボア50% プティットシャンパーニュ50%

Cognac Park VSOP
熟成年数:4~7年の原酒をブレンド
※400Lの新樽でリムーザン8ヶ月熟成の後、リムーザン古樽に移される
生産域:グランドシャンパーニュ20% プティットシャンパーニュ40% ファンボア40%

Cognac Park Borderies
熟成年数:8~12年の原酒をブレンド
※400Lのリムーザン新樽で10ヶ月熟成の後、リムーザン古樽に移される
生産域:ボルドリ100%

Cognac Park XO Grande Champagne
熟成年数:15~30年の原酒をブレンド
※400Lのリムーザン新樽で12ヶ月熟成の後、 リムーザン古樽に移される
生産域:グランドシャンパーニュ100%

⑤Cognac Park Cigar Blend Fine Champagne
熟成年数:25~30年の原酒をブレンド
※350Lの リムーザン新樽で12ヶ月熟成の後、リムーザン古樽に移される
生産域:グランドシャンパーニュ70% プティットシャンパーニュ30%

Cognac Park Extra
熟成年数:45~55年の原酒をブレンド
※350Lのリムーザン新樽で12ヶ月熟成の後、リムーザン古樽に移される
生産域:グランドシャンパーニュ100%

Cognac Park Borderies Mizunara
熟成年数: 400Lのリムーザン新樽で10ヶ月熟成の後、リムーザン古樽に移され合計4年熟成。その後容量500Lの日本産ミズナラ新樽で6ヶ月間フィニッシュ
生産域:ボルドリ100%
ノンシュガー、ノンキャラメル

Cognac Park Borderies Mizunara 10 Years
熟成年数: 400Lのリムーザン新樽で10ヶ月熟成の後、リムーザン古樽に移され合計10年熟成。その後容量500Lの日本産ミズナラ新樽で9ヶ月間フィニッシュ
生産域:ボルドリ100%
ノンシュガー、ノンキャラメル

このうち、ボルドリ100%である ③Cognac Park Borderies⑦Cognac Park Borderies Mizunara⑧Cognac Park Borderies Mizunara 10 Years の3商品に関してはCognac Parkがボルドリに所有する自社畑100%の原料を使用しています。それ以外のコニャックは厳選された契約農家で作られたワインを買い取り自社で蒸留して熟成させています。

⑦⑧のミズナラコニャックは一応定番ラインナップではありますが、実は毎年数量限定で作られており、この2商品に関しては明確にノンシュガー、ノンキャラメルの無添加コニャックです。

それぞれの感想を全て述べると大変長くなってしまうので、私の所感は割愛しますが、やはり注目すべきはミズナラフィニッシュのコニャックでした。

⑦Cognac Park Borderies Mizunaraは私も個人的に保有しており何度か飲んだことあったのですが、やはり若い熟成ということだけありミズナラの新樽感が前面に出すぎてやや粗削りな感じは否めませんというのが正直なところ。ミズナラウイスキーに慣れた人であれば「はいはい、ミズナラを主張したいのね。」と思われてしまってもおかしくない状態。

これに関してはある種の実験的なコンセプト商品感が強いのですが、こと⑧Cognac Park Borderies Mizunara 10 Years に関してはまた全く違うミズナラフィニッシュを感じることができます。

⑧ではミズナラ新樽で9ヶ月フィニッシュをかける前にリムーザンオークで10年の熟成期間を経ている分、ボルドリ本来の華やかさが顔を出すようになっており、後のミズナラ感に負けないボルドリコニャックとしてフローラルさと円やかさの特徴を兼ね備えています。そのためボルドリコニャックとしての香り立ちと味わい、そしてミズナラのバニラ感がちょうどよい塩梅でバランスを取っています。このミズナラ10年に関しては話題性だけでなくコニャックとしての評価も格段に上です。

こちらはサンプル用のミニボトル

4年熟成の⑦ミズナラコニャックとの飲み比べも面白いですが、どちらか1本を買うとなると私個人的には⑧Mizunara 10 Years 一択です。

なぜミズナラコニャックなのか?

ミズナラコニャックが最初に発売されたのは2017年のことです。

ミズナラフィニッシュの話が上がったのはそのさらに数年前のこと。

話の発端は、別のウイスキーメーカーからジェローム氏に対して「日本のウイスキーを輸入して、それをコニャックの樽でフィニッシュできないか?」というコニャックではなくウイスキー関連での相談があったことが始まりだったそうです。

ジェローム氏はその時「うちはウイスキーメーカーではなくコニャックメーカーなのでそれはできない」と話自体は断ったらしいのですが、それ以来日本のウイスキーに大変興味を持つようになったとのこと。特にフランスはじめ他国でも日本のミズナラ樽でフィニッシュさせたウイスキーにとても需要があることに気付くと同時に自信もミズナラにハマり始めました。

それがきっかけで、何とかこのテイストを技術的にもAOC的にもコニャックにも活かすことができないかを検討検証した結果、今のCOGNAC PARK Mizunaraが誕生したそう。

使用しているミズナラ樽の樹齢はどれも200年以上の木が使用されており、コニャック用に使われるフレンチオークやバーボン樽と比較してもかなりミズナラの成分を強く抽出することができる樽を使用しています。

ポイント

フレンチオーク以外の樽を使ったフィニッシュに関して

2019年12月時点でのBNIC(フランスコニャック協会)の規定としては、マーテル ブルースウィフトのバーボン古樽フィニッシュように他のスピリッツで使用済みの樽を使ってフィニッシュをかけた場合はコニャックとしては認められず、フレンチオーク以外でも未使用の新樽でのフィニッシュであればコニャックとしてはOKだそうです。

なのでブルースウィフトはコニャックとしては不認可で、Cognac Parkのミズナラ樽フィニッシュは今のところコニャックとして認可が出ている模様。ただし、フィニッシュ期間の規定は今のところ曖昧で、最大でも1年を目安としているらしい。

現時点ではまだブレの多い規定であり、今後この規定は変更される可能性も無きにしも非ずといったところです。

最初のCOGNAC PARK Mizunara(4年熟成+6ヶ月ミズナラ)は確かに実験的にマーケットにリリースしたという要素もあり、やや粗削りな部分もありますが、その後研究と改良を重ねCOGNAC PARK Mizunara 10 Years(10年熟成+9ヶ月ミズナラ)でようやくコニャックとミズナラとの絶妙なバランスに辿りついたとのこと。 今後COGNAC PARK Mizunaraシリーズは単に話題性だけのコニャックとして終わらせることは絶対にせず、Cognac Parkの定番ラインナップとして積極的にリリースしていく予定だそう。

もし4年熟成のCOGNAC PARK Mizunaraだけで終わっていた場合、日本人がこのコニャックを手にした時に「はいはいミズナラね、どうせ外国人がインパクト重視でやってみただけのコニャックでしょ」と思われても正直仕方ない商品でした。(私もそう思っていたのは内緒)

しかしCOGNAC PARK Mizunara 10 Yearsがリリースされ、それを飲んでみて私は少し安心しました。コニャックとしての風味とミズナラの風味のバランスがよい塩梅でとれており、話題性だけでなく、コニャックとしての品質も担保できる商品へと変貌していたからです。

もちろん、コニャックファンの中には「コマーシャル的だ!」という方もいらっしゃるかもしれませんが、私としてはコニャックへの新しい挑戦を試み、それを話題だけの一発屋で終わらせる事なく継続して改善しリリースしていくCognac Parkの姿勢は評価されるべきだと考えています。

今後5年、10年でこの取り組みがどのように変化していくのか大変興味深いです。

既に日本でも販売開始されていた

Coganc Parkは2020年1月下旬から日本でも販売が開始される予定でしたが、この記事を書いているタイミングで今年Cognac Parkの日本正規輸入店となったスコッチモルト販売(株)から、予定よりも早く商品が輸入できたので販売を1ヶ月早く開始するとの連絡がありました!!

ということで2019年12月現在、saketyからミズナラコニャックはじめCognac Parkのコニャック達が購入可能となっていました。

saketryのCognac Parkページ

12月に販売が開始されたばかりなので、もう少ししたら他の店舗やオンラインショップでも取り扱いが始まるかもしれません。

さて、Cognac Parkを一通り訪問し終わり18時を回りました。ここでジェローム氏とはお別れ。色々とありがとうございました!!

この後一旦ホテルに戻って少し休憩して、19:30から夕食の予定です。

この日の夕食は何と・・・コニャック在住の日本人の方々との食事(笑)

コニャック在住のソムリエで「地球の歩き方」ボルドー特派員としても活躍中の野田祥子さん、そして同じくコニャック在住でクルボアジェにてコニャック作りに携わっている伊藤さんとご一緒させて頂きました。

そしてその後、野田さん宅で美味しいコニャック飲み比べを・・・・

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お腹いっぱいで幸せいっぱい。素敵な宅飲み in コニャック!

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