コニャック滞在記2019年 冬

コニャック滞在記⑮:コニャックMaranchevilleと洗練されたクリエイティビティ

2020年1月14日

滞在5日目
2019年12月7日(土)

滞在5日目となるこの日は土曜日。

週末となる土曜日、日曜日はコニャック生産者側も訪問を受け入れていない所が多く、ヘネシーやレミーマルタンなどの大手は訪問を受け入れているが、デラマンやフラパン、ハインなど中規模生産者は休みな所がほとんどです。(稼働はしてるけど訪問受け入れなし)

そんな中、快く受け入れてくれたのが、近年自社ブランドを立ち上げたグランドシャンパーニュ コニャック生産者「Marancheville」です。

日本には未入荷のコニャックです。

日本語での発音が難しく、カタカナで書くと何て書けばいいのやら・・・

マランシュヴィル?マホンシュヴィレ?

一応Google Mapで検索すると日本語でマランシュヴィルと表記されるので、マランシュヴィルでいいのでしょう。そんな感じです。

ここはもともと、個人的によくやり取りをしてるコニャック海外通販のCognac Expart運営者のMaxからの紹介でした。

「土曜日が比較的ヒマなんだけど、どこかおすすめで知り合いのコニャック生産者いない?」

とお願いして紹介してもらったのがきっかけ。

その後、Maranchevilleのオーナーが何とコニャック在住のソムリエ野田祥子さんの親戚にあたる人であることや、クルボアジェの伊藤さんとも深い繋がりがあることも判明し、良い意味でコニャックの狭い世界を知ることになりました(笑)

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大手のプロフェッショナル蒸留所として

Maranchevilleに行く日、実はタクシーが捕まらず、最終的にMaranchevilleのオーナーGrégoire氏がホテルまで迎えにきてくれることに。

本当にご迷惑おけけして申し訳ありませんです。。。

そしてコニャック市街地から車で15分程走るとMaranchevilleに到着。Jarnacの街外れに彼らの蒸留所があります。

カワイイ中庭があるオフィスです

Maranchevilleというのはこの村の名前からとった彼らのコニャックブランドの名前であって、このブランドを立ち上げたのはここ数年前のこと。

ほんとに最近です。

ではもともと彼らは何をしていたのか?

もともと彼らは蒸留家なのです。(Distillerie Gélinaud)

蒸留を専門に行う人達。

自社ブランドを持った今でももちろんメインとして蒸留家の仕事は続けており、様々な農家からワインを受け入れ、それを蒸留し大手のコニャックメーカーに卸しています。

多くの農家とメーカーとの契約があり、農家と大手メーカーの中間を担っている重要な存在です。

ちなみにグランドシャンパーニュに35ヘクタールの自社畑も保有しています。

圧巻の蒸留機たち

蒸留家というだけあって、蒸留機の数と規模は圧巻です。

蒸留所は隣接する2か所に分かれており、7機+12機の合計19機のシャラント式単式蒸留機を保有しています。

いずれも25ヘクトリットル収容の大型蒸留機。

7機ある方の部屋はスタンダードな形状の蒸留機達。こちらの部屋の蒸留機はいずれもオリーブ型。蒸気をためておくしゃシャピトー(chapiteau)=スチルヘッドが少し細い形状になっているタイプです。

オリーブ型

12機の部屋はBRAASTADと同様に真ん中に通路があり、その通路の上にワインを温めるショーフヴァンがあるトンネル型の蒸留機達です。(主に場所の効率化を図るため。)こちらの蒸留機はすべてタマネギ型。 シャピトー(chapiteau)がオリーブ型と比べて横に膨らんでいるタイプです。

タマネギ型のほう

参考記事
コニャックのシャラント式蒸留機を詳しく見てみよう

「どんな違いがあるの?」と聞いたんですが

「ん~、微妙に変化はあるけどそんなに重要じゃないよ。」と言われてしまいました。(笑)

ここの蒸留所が建てられたのは1950年代。およそ70年前でGrégoire氏の奥さんのおじいさんが作ったものだそうです。

ノウハウを蓄積

蒸留機の数も多く、様々なオードヴィーを輩出しているので、もちろんGrégoire氏が全て行っているという訳ではなく、何人かの蒸留責任者が存在します。

やや記憶があいまいなのですが、確か4人の蒸留担当者がいて、毎日交代で蒸留を担当しているとか。

いくつかはオートマ式もありますが、ほとんどは彼らの手でガスの調整やカットするタイミングを判断しているそうです。とはいっても24時間つきっきりというわけではなく、ちゃんとスケジューリングされたタイミング(1時間ごととか)で蒸留状態を確認し回る感じです。

彼ら蒸留家にとっては、そのノウハウが何よりも重要なことで、その技術と知識を蓄積して次の世代に繋げることに重点を置いています。完全に効率重視の機械任せにしないのはそのため。

その中でも最も驚いたのは、ちょうどこの日担当として来ていた蒸留担当者は何と21歳の青年!!レオさん。

これまで回ったどの蒸留所よりも若い担当者です。

でも、彼のコニャックに対する情熱と知識、そして学習意欲は本当にすごいらしく、それが彼を雇った最大の理由だそう。今後の5年、10年先の未来で彼の存在は大きな財産となるでしょう。

オリを残すか残さないか

蒸留時にワインのオリを使うか使わないかは基本的にブドウの生産域によって使い分けています。

これはどこのメーカーに提供するかによっても違うのですが、Maranchevilleの場合、グランドシャンパーニュはオリを入れた状態で蒸留し、ファンボアはオリ無しで蒸留しています。これは彼らの最大の提供先がクルボアジェであることも関係しているのですが、Grégoire氏自身も特にVSやVSOPのファンボアコニャックにオリを入れた蒸留液を使用するとちょっとヘビーになりすぎるので、やはりそう使い分けた方がいいんじゃない?とも考えているようです。

Maranchevilleの自社コニャックは全てグランドシャンパーニュなのでオリありのワインを蒸留したものが使用されています。やはりグランドシャンパーニュコニャックはそのパンチ力が魅力の一つ。

Maranchevilleの熟成庫でダイレクト試飲

彼らは合計15ヵ所の熟成庫を保有しています。

自分達のブランドのためのコニャックだったり、他メーカーに売るためのコニャックだったり様々なコニャックが保管されています。

Maranchevilleの蒸留所の近くには4ヵ所あり、そこは比較的ドライな熟成庫。パワフルなコニャックに仕上がります。

その他はシャラント川のほとりだったり、コニャック市街地の近くだったりに点在しています。シャラント川近くの熟成庫はやはり湿度も高く、スムースなコニャックに仕上がります。

今回は蒸留所のすぐ横にある熟成庫に案内して頂き、いくつか樽からダイレクトに試飲させて頂きました。

薄くてライトな樽を使用

提供するコニャックにもより、トロンセ産かリムーザン産かは様々ですが、基本的には薄くてライトな樽を好んで使用しているそうです。あまりウッディな側面を出すよりもコニャックそのものの味わいを前面に出すことが目的。

これも熟成する場所や提供先にもよりますが、基本的には最初の1~2年を新樽で熟成させ、その後古樽に中身を移動させ長期の熟成に移ります。この辺は他とも同じ。

まずは熟成途中のグランドシャンパーニュコニャックを試しのみ。

大体13年くらいの熟成年数でアルコール度数は47度です。(加水済み)

まだまだ若くてパンチが効いてます

さらに他メーカーに提供する予定の30年熟成のボルドリコニャック。アルコール度数54度。↓

そして最後に様々な40年程の熟成のコニャックがブレンドされた樽からの試飲。(写真撮るの忘れた!!)

この樽は将来的にMaranchevilleのExtraカテゴリとして商品化するそう。さすがにExtraクラスというだけあり、かなりリッチな味わい。先行して飲ませて頂きました。わーい!

ここであまり飲みすぎると後のテイスティングに響くので、この辺で熟成庫での試飲はお開き。もっと飲みたかったなぁ(笑)

Maranchevilleのラインナップ試飲会

現在Maranchevilleには4つのラインナップがあります。すべてグランドシャンパーニュ100%コニャックです。

Marancheville VS

→熟成年数7~8年の原酒がブレンド

Marancheville VSOP

→熟成年数10~15年の原酒がブレンド

Marancheville XO

→熟成年数30~35年の原酒がブレンド

Marancheville L’exemplaire N°

→熟成年30年くらい。

このうち、最後のL’exemplaire N°3は限定ボトル。数量限定で20年~50年熟成のいくつかの小さな樽からGrégoire氏達が独自ブレンドを行ったもの。そのため、これまでN°1(平均27年熟成)とN°2(平均25年熟成)もありましたが、それぞれその時によて味わいも全く異なるものだそう。彼らのセンスとクリエイティビティが詰まったボトルです。

Maranchevilleのコニャックは全てグランドシャンパーニュですが、グランドシャンパーニュ的なパンチ力を前面に出すというよりもスムースさ、円やかさに重点をおいているそうです。

それは先述したあえて薄くライトな樽を使用するという樽の選出方法からも分かります。あえてウッディなコニャックになる要素は避けているとのことでした。

VSやVSOPも一般的なVS、VSOPクラスのコニャックよりも熟成年数が長めで、カクテルベースではなくそのままストレートで飲んでも軽やかで飲みやすいコニャックとなっています。

Grégoire氏は言いました。

We make Cognac that we want to drink.

この一言にがMaranchevilleのスタイルを表現していますね。

もっと多くの商品をこれから出すのか?

先ほど熟成庫で40年熟成のExtraコニャックになりうるヤツを飲ませてもらいましたが、商品化されるのはまだ先になるようです。

Marancheville自体はブランドとしてはまだ若く、知名度的にはまだまだこれからといったブランドです。

まずは現在あるVS、VSOP、XOという通常ラインナップでどこまで通用するかというのを見極めた後、Extraやそれ以上のクラスのコニャックを出すのがこれからの課題となるそうです。

少なくともあと数年はこの通常ラインナップで様子を見るそうです。

ブランド立ち上げの黎明期というのは様々な葛藤があると同時に、最も想像力が働く時期でもあります。

実はこのボトルのロゴに関しても様々な利権がらみの泥臭い裏話や、数えきれない試行錯誤、人間ドラマがあったそうです。とある写真からインスピレーションを受け、現在のこのMaranchevilleのロゴが完成したのですが、このロゴに行く着くまでにも1年以上の歳月を要しています。

そういったコニャック作りとは直接的に関係ない部分もブランド作りの難しいところでもあり、醍醐味でもあります。

私は以前から言っているように、コニャックの中身以外でもブランドの背景やロゴ、ボトルデザインに至るまで、その商品が出来上がるまでの過程もコニャック作りのプロセスとして重要だし、表立っては出てこない過酷な過程があるものです。私がラベルやボトルに興味をもつのは、なぜ彼らがそのデザインを選び、採用したかを知ることでそのコニャックのバックグラウンドをより理解することができるからです。

蒸留家として確実な実力と技術力を持つ彼らが今後どのようなコニャックを世に輩出して、どのように発展していくのか今後5年、10年は目が離せませんね~。

XOをお土産にまた来年

色々と話ながらテイスティングしているとあっという間に数時間が過ぎてしまい気づけば17時過ぎ。

Grégoire氏の計らいにより、Marancheville XO(フルボトル)をお土産として頂きました!わーい。

誰か一緒に飲みましょう。

ここ数日は色々と訪問先を詰め込んで濃い数日だったので、今日はこの後ホテルに戻り少しゆっくり過ごします。

明日の日曜も多くのコニャック生産者は休みで訪問を受け付けていないため、明日の予定はゆったり。

コニャック市街地を回遊し、午後からは唯一訪問を受け入れているコニャック城、バロン オタールの本拠地を訪問します。

訪問といってもガイド付きのツアー形式で他のビジターと一緒に回るので、観光要素強めの1日です。フランス6日目にしてようやく普通の観光っぽい観光です。

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