コニャックレビュー

ボンボア産コニャックのスタンダードとは一体何なのか?

ご存じの通り(?)コニャックの生産域には次の6つがあり、それぞれのエリアは特徴の異なる土壌をもっています。

  • グランドシャンパーニュ(Grande Champagne)
  • プティットシャンパーニュ(Petite Champagne)
  • ボルドリ(Borderies)
  • ファンボア(Fins Bois)
  • ボンボア(Bons Bois)
  • ボアゾルディネール(Bois Ordinaires)

コニャックに使われる原酒は、それぞれのエリア単一で取れたもの、あるいは複数エリアをブレンドしたものの2パターンがあります。特に良質なブドウができるとされているグランドシャンパーニュやプティットシャンパーニュ、香り高いボルドリ、パワフルなファンボア・・・などこれらのエリアは単一でも人気のあるコニャックです。

各エリアの土壌の特徴や場所は是非コチラの記事を参考にしてください。

参考
コニャックの生産エリア

あと私が作ったコニャックの生産域と各ブランドのGoogle My Mapはコチラ
コニャックMapを見る

では残りのボンボアとボアゾルディネールはどうでしょう?

この2エリアで作られるコニャックは8割以上他の原酒とのブレンドに使われることが多く、単一エリアだけで商品化されているコニャックはあまり多くはありません。

その中でも我々日本人にとって最も馴染が薄い・・・というか流通している商品が少なすぎて飲む機会が少ないのがボンボア産コニャックだと思います。

ボアゾルディネール単一のコニャックはカミュが出しているイル・ドレシリーズなどもあり、飲む機会は比較的ありますが、ボンボア単一のコニャックとなると一部のプライベートボトルを除きなかなか手に取る機会は無いのではないでしょうか。

そのため「平均的なボンボアコニャックの特徴って・・・?」と聞かれてもなかなか分からない・・・という方がほとんどだと思います。今回はそんな少しマニアックなボンボア産コニャックを少し掘り下げて、私が思うボンボアコニャックとは?を書いていきます。(完全に私の独断と偏見ですが)

ボンボアコニャックの特徴とは

ボンボア全体の面積は約370,000ヘクタール。そのうち約9,300ヘクタールがブドウ畑となっています。

土壌としては粘土、砂、石灰岩が混ざったものです。

このボンボア地域はブドウ以外の作物用の畑や放牧地、松林が栗林も多く存在し、ブドウ畑が一か所に集中せずに点在していることが特徴的です。

ボン・ボア産のブドウを使用したコニャックは一般的にグランドシャンパーニュ、プティットシャンパーニュ、ボルドリ、ファンボアのエリアよりも早く熟成が進む傾向にあります。

早く熟成が進む・・・というよりも、長期熟成に向いておらず早い段階で熟成を切り上げる傾向にあるように思えます。

脂肪酸の量

またボンボアのコニャックは蒸留時のカットが他のエリアよりも早く、蒸留時に取れるエステルや脂肪酸が少ない傾向にあります。

コニャックの場合、蒸留前のワインを作る過程で高級脂肪酸が出来ます。その高級脂肪酸が蒸留を経て樽熟成という長い期間の間に酸化して「メチルケトン」という成分に変化します。

そのメチルケトンが、蒸留時にできたエステルと混ざって、いわゆるランシオと呼ばれる芳醇な香味に変化します。

ボンボアの場合どうしてもこの要素が少なくなり、30年、40年、50年という長期熟成を経てもグランドシャンパーニュコニャックのような複雑かつ華やかな香味になりにくいのが特徴です。

そのため、世間一般的にボンボアのコニャックは「薄く平坦」と言われていることも多いようです。

葡萄由来、エステル由来の香味がやや薄いため、その分樽の影響を受けやすく、極端に樽由来のタンニンを多く含み非常に渋いコニャックとなるボンボアコニャックも多々存在します。

この樽由来の渋みをあえて「個性」として全面に出しているボンボアコニャックもありますね。

ボンボア産単体のコニャックにおいてはこのように原料以外の要素による違いやブレ幅が大きく、商品によってコニャックの特徴が大きく異なるため「一般的なボアコニャックとは?」を掴むのが難しく、数をこなさないとなかなか分からない・・・といった感じです。

ボンボアコニャック6種類をテイスティング

ではここで何とか我が家にあるボンボア産100%のコニャック6種類をテイスティングしてみましょう。うち3つは同ブランドなので傾向は似てしまっているかもしれませんが、少しボンボアコニャックの方向性が掴めるかもしれません。

今回は種類も多いので、それぞれ感じた香味を超端的に単語だけまとめています。

Domaine de Chêne Doussoux VSOP

【香り

しめった松ぼっくり
溶剤・セメダイン
絵具
スイカズラ

【味わい・余韻】
ほろ苦いさがある
生姜
余韻は短い

Domaine de Chêne Doussoux no20

【香り】
シナモン

絵具
ミント
焦げたトースト

【味わい・余韻】
ドライオレンジ
干し柿
鼻抜けにシガーボックスやシダ

Domaine de Chêne Doussoux フォルブランシュ

【香り】
ようやくフルーティーさが表れる(フォルブランシュ由来?)
レモン
レモンティー
べっこうあめ
若草
シナモン
ほんのり溶剤

【味わい・余韻】
薄い
低木
アーモンド
余韻に湿った落葉

Domaine de Chêne Doussoux XO Heritage

【香り】
低木

ドライオレンジ
イチゴ
シソ
煙たさ
ほんのりシナモン

【味わい】
イチゴ
オレンジ
余韻にライチ、ほんのりパッションフルーツ
シガーボックス
なめし革

ようやくエステルと脂肪酸が生きてくる。ほんのり果実感のある余韻が生まれてくる。

ヴァラン テルシニエ 1990

【香り】
溶剤
スパイス感
クミン
シナモン

【味わい・余韻】
オレンジ
鼻抜けに藁

一番スパイス感が強いのはこのボトル

Cognac Mauxion マルチミレジム 1973/1975/1976

【香り】
カフェラテ
エスプレッソ
バルサミコ
焦げたキャラメル
イチゴ
スパイス

【味わい・余韻】

エスプレッソ
鼻から煙
メルレC2カフェに似てる
全てを上書きする樽
渋すぎ

個性的で面白いけど葡萄由来の香味が最も少なく、ほぼ樽感。コニャックとしては正直異端だと思う。

ボンボアを代表する香味は何か?

この6つの他にもいくつか過去にテイスティングしたボンボアコニャックも振り返ってみると、やはり特徴として多い香味は次の要素ように感じられます。

  • 溶剤
  • 比較的強いウッディさ
  • シナモン系のスパイス

この要素は今回の6つのボンボアコニャック以外にも、例えばグロペラン ボンボア No38などの超長熟ボンボアコニャックにも共通して見られる傾向です。

グロペラン No38や、今回のDomaine de Chêne Doussoux XO Heritageなど40年熟成を過ぎたあたりからようやく柑橘感を伴う華やかな果実感が明確に感じられるようになります。

それ以前の30年熟成あたりのボンボアコニャックではやはり上記のようなウッディさ、スパイシーさが支配的な傾向にあります。その分その中に隠れている他の要素を見つけ出すのが楽しみでもあります。

もちろんこれはボンボアコニャックの特徴、個性として受け入れるべきものであり、グランドシャンパーニュコニャックと比較して優劣を決めることはややナンセンスなのですが、どうしても割合的に平坦な印象を受けてしまうことは避ける事はできません。また悪い言い方をすると、平坦なぶん樽での誤魔化しが効いてしまうのも特徴の一つです。

そんな中、上記のようなボンボアの個性的なウッディさ、スパイシーさを持ちつつ、その奥に華やかな果実感を十分に感じられるボンボアコニャックはやはり何か光るものがあります。そんなボンボアコニャックに出会うと思わずニヤリとしてしまいますね。

あとは好みの問題だったり、興味の度合いです。やはりその特性上、ボンボア単体のコニャックは一般的にはややコニャックを飲みなれた人向けな存在。初めてコニャックを飲む人にはややハードルの高い存在。
一通りグランドシャンパーニュ、プティットシャンパーニュ、ボルドリ、ファンボアの特性を分かりつつ、それとは違う個性を楽しむのが良いかと私は思っています。

・・・とは言いつつ、こんな私もボンボアコニャックの経験値はまだまだ浅く、これから更に数を飲んで経験を積みたい所存です。

現状、国内で流通しているボンボア100%のコニャックは数少なく貴重な存在です。

色んな種類のボンボアコニャックを楽しむには海外から個人輸入してくるか、コニャックを多く取り扱っているBarなどでの出会いに賭けるしかありません。
Barでボンボア100%コニャックに出会うことができたなら、それは大変貴重な体験だと思いますので、是非他のコニャックと飲み比べしながらその個性を楽しんで頂ければと思います。

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