ブランデー知識【上級編】

なぜコニャックは加水を行うのか?

2016年12月4日

コニャックではAOC規格基づいて、いくつかの添加物が認められています。

  • 蒸留水による加水
  • カラメル
  • オークチップ

AOCの一定の基準に沿って、添加が認められているこれらの添加物ですが、今回は最もコニャックの風味に影響の大きい「加水」について見ていきましょう。

加水を行う理由

まず、加水を行う主な理由は「アルコール度数を下げるため」です。

加水は主に蒸留後の熟成期間に行われます。蒸留したてのコニャック(他のブランデーもそうですが)はアルコール度数が72%近くあります。そのアルコール度数を加水によって40%近くまで下げることを主な目的としています。

加水する場合と加水しない場合

加水するのは主に「若い」コニャックです。メーカーによって様々ですが、年数の目安として、熟成年数15年~20年以下のコニャックやVS、VSOPなどの熟成年数のコニャックはほぼ加水によってアルコール度数を下げています。

熟成年数が長ければ長い程、加水をしなくてもアルコール度数は熟成中に下がっていきますが、VS(2年熟成)やVSOP(4年熟成)、15年熟成程度では、一般的に飲みやすいアルコール度数として出荷できるほどアルコールが自然に下がらないので、加水によって下げてあげる必要があるからです。

そのため、ほとんどの15年~20年熟成以下のコニャックは加水が施されている状態で出荷されています。(一部例外はあります)

熟成年数が長いコニャックは加水しない?

先述したように、加水は「若い」コニャックに対して行われます。逆に50年熟成や100年熟成を目標としたようなコニャックには加水は行われません。

加水を行うと50年もの長期間コニャックが持たないからです。そのような長期熟成を目指したコニャックは加水せずに自然に熟成過程でアルコール度数が下がるのを樽の中で待ち続けるのです。

大手メーカーでもプロプリエテールでも、熟成年数によって加水されているものがあったり、加水されていないものがあったりするのはこのためです。

加水方法はメーカーによって様々

何年熟成でどれだけ加水するか等の、熟成過程における加水の方法はメーカーによって様々です。大きく分けると、次の2つです。

  • 1.毎年毎年少しずつ加水する場合
  • 2.仕上げに一気に加水する場合

1番目の「毎年毎年少しずつ加水する場合」は、コニャックの風味が分離するのを防ぎ、若い熟成年数でも風味を損なわずにアルコール度数を下げることができるのですが、手間と人件費がかかります。

2番目の「仕上げに一気に加水する場合」はビン詰出荷の6ヵ月程前に一気に加水する方法です。手間もかからず効率も良いですが、コニャックの風味と水が分離しやすくなり「水割りコニャック」のような風味を損ねたコニャックになりがちのようです。どちらかというと大手に多い手法のように見受けられます。

樽の積み上げ方式も影響しているようです。大手メーカーは隙間のないくらい熟成樽を積み上げて保管するため、熟成過程での加水調整ができず、最後に一気に加水する他ないといった所も多いようです。

メーカー別加水方法の特徴

私が聞いたコニャックメーカー別の加水方法の例を見てみましょう。

フラパンの場合

加水が上手なメーカーとしてフラパンは有名です。フラパンは「1.毎年毎年少しずつ加水する」方式を取っています。

フラパンの場合は、熟成開始後、最初の2年(VSとして出荷できるまで)で加水により72%→56%までアルコール度数を下げているそうです。その後は1年間に5~10%ほどずつアルコール度数を下げていきます。VSOP(4年熟成)として出荷できるまで平均して1年間に8%ずつアルコール度数を下げている計算です。

加水後のアルコール度数変化イメージ↓
72%(蒸留直後)→64%(1年目)→56%(2年目)→48%(3年目)→40%(4年目)→フラパンVSOPとして出荷

参考:↓フラパンの熟成所↓

画像出典:http://www.cognac-frapin.com/

この「フラパン方式」は毎年加水量やアルコール度数を調整する必要があるため、かなりの手間と人権費を要します。しかし一般的には最も味を損なわない、よい加水方法と言われています。

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デラマンの場合

「神がかり的な加水技術」として知られるコニャックメーカーがデラマンです。少し変わっていて、誰にも真似できない加水手法を取り入れています。

デラマンはプロプリエテールではなくネゴシアンなので、基本的には他の複数農家(4農家ほど)から15年ほど熟成されたコニャックを買い取っています。それらのコニャックをブレンド・熟成させデラマンのコニャック として出荷しています。

デラマンは加水に「フェーブル」と呼ばれるものを使っています。

フェーブルとは、蒸留水とコニャックを混ぜ合わせ、何十年か寝かせた液体の事です。デラマンの場合はアルコール度数15%程のフェーブルを使用しています。その液体をトノーという大きな容器に入れて保管しています。

そのフェーブルを8年間にわたり少しずつ加えていきアルコール度数を下げていきます。8年目以降はフェーブルを加えなくても自然にアルコール度数が下がるのを待って、ちょうど40%程度になるように調整を行っているようそうです。

ちなみに加水作業を行いやすいよう、デラマンの熟成樽は積み上げられておらず、平置きされています。
↓デラマンの熟成所の様子↓

画像出典:http://www.delamain-cognac.fr/

そのフェーブルを使用した加水調整のお陰で、アルコールと水がバラバラにならず、風味を損なわないコニャックができるのです。

このフェーブルを利用した微妙な調整がデラマンの特徴で「神がかり的な加水技術」と言われる所以なのです。

クルボアジェの場合

クルボアジェはVSとXOで加水方法が異なるります。

VS→加水あり

XO→加水なし

ポールジローの場合

プロプリエテールの有名処ポールジローはまた少し変わっています。

ポールジローの熟成所はシャラント川のほとりにあるため、とても湿度が高く、アルコール度数の自然低下がかなり早いスピードで進みます。そのため15年熟成であっても加水することなくアルコール度数は40%近くまで下がるそうです。

15年熟成にあたるのはヴィエーユ レゼルヴ ですね。

15年程の若い熟成年数でも加水されていないコニャックを作ることができる大変貴重なメーカーです。

コニャックの加水まとめ

アルコール度数を下げるために加水を行う
20年熟成以下の若いコニャックは加水されることがほとんど
50年以上熟成を目標としたコニャックは基本的に加水しない
コニャック加水方法はメーカーによって様々
加水は各社の特徴や技術が現れる工程の一つ

以上、コニャックの加水に関するまめ知識でした。

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