ポールジローファンであればご存じの「ポールジロー スパークリング・グレープジュース」。
そんなポールジローが毎年手掛けるスパークリング・グレープジュースですが、2017年はこのジュースが現地フランスの「悪天候」の影響で生産できなくなった事は記憶に新しいです。
【参考】
→JISの発表
そもそも今年(2017年)のフランスの「悪天候」とは「霜」の事を指します。
ポール・ジロー氏のブドウ畑では、霜の影響により作付面積の75%が無収穫という甚大な被害が出たため、ポールジロースパークリンググレープジュース2017は生産不能となりました。
うーん、残念・・・。自然の産物なのでしょうがない事です。
影響はポールジローだけじゃない
この霜、ポールジローの生産に影響が出たことは知られていますが、他の生産農家への影響はあまり知られていません。というか日本ではあまり公表されていません。
ポールジローのジュースが今年生産されない事ばかりが注目されていますが、実はフランス全体のコニャック生産に大きな影響をもたらしています。
70年に一度の悪天候?
フランスコニャック協会(BNIC)によると、この霜の影響により、今年2017年のコニャック全体のブドウ収穫量は1945年以降で最も少なくなると予想されています。
この酷い「霜」は2017年3月頃フランスで発生したものです。
実は2107年の3月以降、今年の霜に関する事や、今年の天候によるブドウの早熟の影響はかなり懸念されており、BNICの公式サイトでは様々なアナウンスが出ていました。
(全部フランス語ですが・・・)
酸度が上がりすぎる
早熟なブドウは酸度が上がりすぎる傾向にあり、その後のコニャック製造過程におけるブドウの発酵、蒸留に大きな影響をもたらします。
糖度が低く、酸度が高いと発酵時のアルコール度数が低くなります。
BNICによると、2017年収穫ブドウの平均酸度はpH2.7で11.1g / L HsSO4。潜在アルコール度数は7.4%と予想されています。
「何のこっちゃ??」
という感じかもしれませんが、ワインも同じですが、コニャック作りにおいてブドウの発酵時のアルコール度数は、ブドウの糖度と酸度からある程度算出と予想が可能なのです。(この辺の説明はまた別記事にて)
要約すると、今年2017年に収穫されたブドウをそのまま発酵させると大体アルコール度数7.4%くらいになってしまいますよ~。といこと。
コニャックにおいて最適な発酵時のアルコール度数は発酵時のアルコール度数は8.5%程度とされています。
※BNIC公式の推奨値は「酸度7.5g / l H2SO4 アルコール度数8.5~10.%の間」。
発酵時のアルコール度数が例年と大きく異なることで、その後の蒸留過程にも大きな影響が出てくるので、要注意喚起が出されていたようです。
収穫量が激減
この2017年3月の霜は、ブドウの収穫量に大きな影響を及ぼしました。
通常、コニャックAOCのエリアでは、ブドウ園1ヘクタール(ha)対し110~120ヘクトリットル(hl)のワイン製造が見込まれています。(1ヘクトリットル=100リットル)
しかし、今年の霜の影響の影響を受けた地域のワイン製造量は平均して半分以下まで落ち込んだそうです。
通常であればコニャック用ワインを80~90 hl / ha製造できる地域が、霜被害により40~50 hl /haしか製造できなかったとの報告が挙がっています。
ポールジロー氏の畑は実に75%が収穫不能との事だったので、その中でもかなり被害が大きかった地域と予想されます。
ちなみに、コニャックAOCにおいて、ここ10年の1ヘクタールあたりのワイン製造量は平均100ヘクトリットルを超えています。いかに2017年が少なくなってしまったかが分かります。
本当に影響が出るのは数年後、数十年後・・・
さて、結果的にこの2017年はコニャック業界においてある意味「大恐慌」な年となってしまいました。
製造量の影響は現時点でも分かりますが、更に影響を受けるのは今後の蒸留・熟成です。この霜の環境の中で収穫されたブドウを原料としたコニャックがどのような仕上がりになるのか、その結果を知るには商品として世に出る早くて3年、長ければ何十年という歳月がかかります。
いつもと変わらない年になるのか、「最悪の年」と呼ばれる事になるのか、「実は凄く良い年」と呼ばれるようになるのか、各農家やセラーマスターの腕にかかっています。
数十年後となると、ポールジローの場合はどう考えてもポールジロージュニアの世代・・・
頑張れ息子ポールジロー!!!
どのような形であれ、「2017年収穫のブドウ」が使われているコニャックはこの先注目ですね。