
今回のコニャックはコニャック ディスティレリー・デュ・ペイラです。
こちらの生産者は実は2023年のコニャック渡航の際に一度訪れて印象的だった生産者さんです。(訪問記が未だに書けてない・・・)
息子さんと共に暖かく迎え入れて頂いた記憶がまだ新しいです。お父さんの方はジャパニーズウイスキーの知多が好きで、また飲みたいと言っていたので、次持ってくるよ!と言ったけど再訪できていないので次回コニャック渡航の際は是非もう一度訪れたい生産者のひとつです。

今回コニャックでもお世話になった野田さんが運営するアリエノールが輸入を開始されたとのことでXO oldを購入しました。2023年に訪問した時はこのXO oldはテイスティングできなかったので楽しみな1本です。
デュ・ペイラ XO oldの基本情報

アルコール度数:40%
生産域:プティットシャンパーニュ
熟成年数:最低12年
容量:500ml
その他:ヴォワザン方式での蒸留
輸入業者:野田工業株式会社 アリエノール
購入時期:2026年2月
購入価格:19,800円(税込)
ヴォワザン方式とは何か?

このデュペイラは蒸留方式に「ヴォワザン方式」という手法を採用しています。これは蒸留時にテットとスゴンドの量を減らす方法です。
私が2023年に訪問した際に聞いた話によると、このヴォワザン方式は元々レオポルドグルメルのヴォワザン氏が発案した手法だと伺いました。その方式をデュペイラでも受け継いでいるのだとか。
テットとスゴンドとは、2回目の蒸留にあたるボンヌショーフの際に、コニャックの原酒として使用されるハートの部分の前後に発生する留液のことです。下記蒸留図はカミュではなくABK6コニャックのものですが、基本的な流れは同じなのでご参照ください。

つまり通常であればテットやスゴンドといった留液は通常は切り捨てられたり、再度蒸留留にまわされる部分であるのですが、そこの一部をあえてコニャックの原酒(ハート)として採用するという方式です。
このコニャックとして使用する液体のHeadsとHeartの最も大きな違いは何か?それは脂肪酸とエステル(Esters)の量です。
これは特にテットに含まれるエステルをより多く取り入れ、コニャックの風味に大きく左右するエステル成分は主にオレンジなどの柑橘系はじめ、リンゴや洋ナシ、バナナなどフルーツ系の香りをより際立たせることを目的としています。
この方式は実はカミュのIntensely Aromaticシリーズのカット方法と少しだけ似ています。カミュの場合はテットの部分をより多く取る事でエステルを芳醇に含んだ原酒を採用することで柑橘感あふれるコニャックを熟成させる方式を採用しています。
参考記事
→これはやりすぎ?カミュXO Intensely Aromaticを味わった結果
違いはスゴンドを採用するかしないかです。ヴォワザン方式の場合はスゴンドの一部もハートに含み、原酒として使用しています。留液の後半であるスゴンドも一部採用することで、オイリーさが増し、酒質の重厚感の向上に寄与しているといった感じでしょうか。

なぜヴォワザン方式を採用するのか?
これは私が訪問した際に伺った話なのですが、デュ・ペイラのファンボアの畑は「ペイ・バ」と呼ばれるやや粘土質の強い土壌となっています。このペイ・バはボルドリ地区やファンボアの一部の地域にある標高の低い位置にある畑で、一般的な土壌よりも水分を多く含んでいる特性を持っています。
詳しいプロセスは省きますが、その土壌で育ったブドウに最も合う方式がこのヴォワザン方式とのことでした。
私が伺ったのはファンボアでの話でしたが、今回このデュ・ペイラ XO oldはプティットシャンパーニュエリアのコニャックとなります。果たしてプティットシャンパーニュコニャックでヴォワザン方式を採用した場合にどのような特性が現れるのか、早速テイスティングしてみましょう。
香り立ち

グラスから立ち上るのは、オレンジを中心とした鮮やかな柑橘香。サフランや洋ナシのニュアンスが重なり、奥にはシナモンやバニラといったスパイス、さらにほのかなミントの清涼感も感じられます。
時間の経過とともに印象は変化し、10分ほどでブラッドオレンジのような瑞々しさが一層際立ちます。フルーティーな香りとしては非常に完成度が高く、トップクラスと言える華やかさです。
30分ほど経つと、ミントのような爽快感が前面に現れ、より軽やかな印象へと移行します。最後の5mlくらいになるとグラスの淵についた液面も相まって、これまでいなかったレモンティーのような要素も顔を出すようになってきます。変化が面白い。
柑橘系のフルーティーな香り立ちを最大限楽しむなら、注いでから15分前後が一つのピークでしょう。
味わい
口に含むと、まず穏やかなスパイシーさが感じられます。香りほど強くはないものの、オレンジのニュアンスもきちんと追随し、加えて砂糖漬けのプラムのような甘やかさが広がります。
ウッディな要素は控えめですが、舌の上にここちよく滞在するオイリーな酒質を感じられます。このオイリーさはヴォワザン方式によるフーゼル油や脂肪酸由来のものなのかもしれません。
適度なオイリーさはあるものの、全体としては飲み疲れしにくい仕上がりです。
余韻
余韻は中程度。鼻に抜ける香りは穏やかで、時間の経過とともに口内には砂糖漬けのオレンジのような甘みがじんわりと残ります。
ひと口飲んで時間を置くよりも、短い時間で杯を重ねる方がこのコニャックの特徴である柑橘感をより断続的に、増幅的に感じることができます。
デュ・ペイラ XO oldまとめ

昨今の飲み手が好んで手にするような南国系のトロピカルな要素は控えめで、あくまで柑橘系のフルーティーさにフォーカスした一本です。口に含んだ際にはやや落ち着くものの、香りの完成度が非常に高く、このコニャックの最大の魅力となっています。
柑橘兼の香り立ちの強さは例のヴォワザン方式が寄与している部分が大きいのかもしれません。カミュのIntensely Aromaticの手法は個人的には蒸留初期に見られる鉄っぽさやツンとくるアロマが目立ったので正直苦手だったのですが、デュ・ペイラの場合はテットやスゴンドのネガティブとなる要素はうまく除去し、エステルによるオレンジや洋ナシなどのポジティブなフルーツの香気成分が高いレベルで機能しているコニャックだと思います。
ウッディで重厚なスタイルというよりは、分かりやすい柑橘系の香味とオイリーさの満足感を好む方に特におすすめできる、洗練されたXOコニャックです。