コニャックレビュー

ヘネシー8代目当主と対面:ヘネシーブランドアンバサダー来日セミナーレポート

2019年4月17日

2019年4月某日、コニャック市場では最大手ブランドとなるHennessy(ヘネシー)の8代目当主でありブランドアンバサダーであるモーリス・リシャール・ヘネシー氏来日イベントに参加して参りました。

場所は銀座のど真ん中、高級ブランドのブルガリ銀座タワー8Fのホールです。この辺はよく仕事などで通るのですが、いつも通過するだけで、タワーの中に入ったのは初めてです。さすがレミーマルタンといいヘネシーといい、ラグジュアリー感満載です。ちなみにブルガリはヘネシーと同じLVMH(ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー)グループの傘下にあります。

コニャックのセミナーといえば人口密度120%くらいで男率ほぼ100%の空間でマニアックな話をするのが日常化(笑)していたので、こんなラグジュアリー空間でコニャック飲むとなると妙に緊張してしまいます。

1Fの受付を終えてエレベーターに乗ったのですが、受付の人のカードキーがないと動かないエレベーターでした。8Fのボタンを連打したけど、動かなくて恥ずかしい思いをしたのはここだけの秘密です。

↓ウェルカムドリンクのヘネシーXOトニックウォーター割り↓

8代目当主の登場

さて、今回のイベントはヘネシー8代目当主のモーリス・リシャール・ヘネシー氏の来日に合わせて行われました。下の写真右側がモーリス・リシャール・ヘネシー氏。左は私。緊張して変な口になってしまった。

今回のイベント?でメインとなるのは定番品の

ヘネシーXO

そして

Hennessy Padaris Imperial - ヘネシー・パラディ・アンぺリアル(インペリアル) -

のプロモーションです。試飲アイテムももちろんこの2つ。

ヘネシーXOが出るのは分かるのですが、ヘネシー・パラディ・アンぺリアル(インペリアル)まで飲めるのは意外でした。何せこのボトル、普通に買うと小売価格17万~21万円くらいするやつです。

モーリス・リシャール・ヘネシー氏のお話

主にヘネシーの歴史とヘネシーXOの製造について。

ヘネシーの歴史から、ヘネシー家とフィリュー家との繋がりについてのお話がメインでした。

ブレンドが全て

フィリュー家は代々ヘネシーのマスターブレンダーを務めている家系。

現マスターブレンダーは、あの有名な7代目ヤン・フィリュー氏から代替わりして、8代目のルノー・フィリュー・ドゥ・ジロンド氏が引きついでいます。(7代目の甥)。彼なくしてヘネシーの味は生まれない。「ブレンド技術が全て」とモーリス・リシャール・ヘネシーも仰っていましたが、数千の農家から原酒を買い付け、それらをブレンドして同じクオリティのヘネシーの味を何年も保つ、というのは翌々考えれば凄いことですね。

このブレンドに関してはコンピューターで完全に制御する事はできません。製造の規模が大きければ大きいほどやはりブレンダーの腕が問われ、ヘネシーの味を左右する最も重要なポイントです。

ちなみに、ヘネシーには「テイスティング コミッティ」と呼ばれる委員会があります。そこでは上質なコニャックをつくるため毎朝11時にメンバー全員を集めて、オー・ド・ヴィーを試飲・選別を行います。ヘネシーには現在約10人ほどのブレンディングのエキスパートがいるそうですが、彼らは主にこの「テイスティング コミッティ」から輩出されます。

その中でも一番興味深かった話は、ブレンダー見習いの話。毎日テイスティングを行う彼らですが、所謂弟子入りしてから10年はテイスティングの際に一切コメントをすることを禁じられているそうです。その間は先輩テイスターのコメントをしっかりと聞いて、味わいと表現を頭に叩き込むのがヘネシー流だそう。修行中にテイスティングする樽の数は1万樽以上。そしてようやく10年の修業期間の末コメントが許されるのです。

そのようにしてヘネシーの味が受け継がれている事を力説頂きました。まさに厳しい職人の世界。
・・・ホリエモンはめっちゃディスりそうだけど。

お待ちかねのテイスティングタイム

話自体は20分ほどで終了。その後はほとんどヘネシーXOとフードペアリングを楽しむ会となりました。

ペアリングとして出てくる料理がめちゃめちゃ美味しかった。同じ建物内にブルガリのレストランがあるのですが、そのレストランのコースで出てくるような内容で、ボリュームを4分の1にした感じ。

ヘネシーXOはロックスタイル

最初に出てきたヘネシーXOは最初からオンザロックで出てきた。これは意外。

レミーマルタンの際もロックを進められましたが、ここ最近はロック推しが多く見受けられます。ロックにすると一瞬フレーバーが少し開く感じはするのですが、やはり余韻や重みといった部分は弱くなるように思えるので、個人的にはやはりストレートで頂きたいころ。あと氷混ぜると少しエグみが出て苦く感じることもあるので・・・。

2杯目遠慮なくおかわりしてストレートで頂いたヘネシーXOはやはりヘネシーXOだった。

参考
大手コニャックXOクラス飲み比べ!

↑グラス底にHennessyの文字が浮かび上がるグラス。ちょっと欲しい。

ヘネシー・パラディ・アンぺリアル(インペリアル)

さてさて、後半30分でお待ちかねのヘネシー・パラディ・アンペリアルの登場です。

ちなみにヘネシーにはもう一つノーマルのパラディがあります。
↓これ↓

こちらは小売価格で大体9万円~11万円くらいの間で購入可能です。ノーマルなパラディは熟成年数20年~100年のものがブレンドされていますが、パラディ・アンぺリアルは30年~100年の原酒がブレンドされています。

ヘネシー・パラディ・アンぺリアルのテイスティングはこんなグラス(下写真)で提供されました。美しいグラス。これも欲しい・・・。

まぁ、この辺は細かなブレンド比率なんかは不明なので、あまり大々的な違いではありませんが、最も特徴的な違いとして保管の仕方が挙げられます。パラディ・アンペリアルは最良の状態だと判断された原酒は早い段階で即座にティエルソンという大樽に移し替えられます。これは大樽に移すことで液体と樽が触れる表面積を少なくし、その最良の状態からなるべく樽の影響を受けないようにするためです。そうして厳選・熟成された原酒が使われているとのこと。

なので、ノーマルのパラディよりもパラディ・アンぺリアルの方が意外とライトな舌触り。コニャックの特性や結構味わいは異なります。そして実はヘネシーXOよりも色はだいぶ薄いです。私もその一人なのですが、人によってはパラディ・アンぺリアルよりもノーマルパラディの方が好み、という人もいるかもしれません。

パラディ・アンぺリアルの好い所は口に含んだ瞬間。その一瞬はまるでお花畑に囲まれた空間でオレンジやライチを食べているかのようなフルーティーさが口いっぱいに広がります。確かにこの一瞬のフローラルは凄まじい。

ヘネシーXOと方向性や特性は大きく異なり、そこにはヘネシー特有の「甘く、スパイシー」という要素はほとんど姿を見せません。決してヘネシーXOの延長線上にあるというコニャックではありません。パラディ・アンぺリアルにのみ存在するフローラル感フルーツ感、華やかさにインパクトがあり大変印象に残ります。人工的な甘味はなく、これだけ長期の熟成を経てもなおどこかに心地よいフレッシュさが花開きます。

が、正直余韻や舌に乗る感じというのはだいぶ控えめで、これをパラディインペリアルの特性と感じるのか、物足りないと感じるのかは人によるところ。話を聞くと納得するけど、何も聞かないで飲むと「ん?」となるかもしんない。

しかし何と言ってもポイントはこのヘネシー・パラディ・アンぺリアルの価格であり、普通に小売価格で買うと1本約16万~18万円くらい。一般消費者が買うのにはなかなか勇気がいるお値段だ。

一番の障壁となるのはお店で出す場合の値段である。銀座や六本木のラグジュアリーなクラブやホストクラブ、高級ラウンジなどでは出るかもしれない。最も疑問に思うのは「コニャックを取り扱うオーセンティックバーで提供するか」という所。

1本16万円相当となると、グラス1杯あたりの値段は恐らく1万円~2万円の間あたりで提供されることになるかと思います。コニャックを求めにオーセンティックバーにやってくる人たちは傾向的にやはり舌が肥えていたり、コニャックを飲み慣れている人も多い。仮に間をとって1杯1万円5千円で提供された場合、彼らを満足させることができるのかという所に尽きると思います。もちろん、その判断基準はそのお店次第なので、一概に良い悪いというものではないのですが。(そもそも1杯1万円越えのオーダーはなかなか出ない)

マスターブレンダーのルノー・フィリュー氏によれば、ヘネシーで最もエレガントで繊細なコニャックはこのヘネシー・パラディー・アンペリアルであると評しているくらいなので、こんなこと言うのは甚だ恐れ多いのですが、こと私の主観的な感覚からすると正直やや割高感が否めな・・・ゴホンゴホンッ・・・・ゴニョゴニョゴニョ。
おっと誰か来たようだ。

ラグジュアリーという空間の提供

さて、不思議な力により言葉がゴモってしまいましたが、よい経験をさせて頂きました。

ヘネシーの方がセミナーの最初にこのように発していました。

「スペシャルな日はヘネシーと共にラグジュアリーな時間を過ごして下さい。」

ヘネシーやレミーマルタンはじめXO以上のクラスにおいては「非日常を味わうためのコニャック」という方向性とブランドイメージはやはり一貫しています。

一方でプロプリエテールはじめ中小生産者においては同等クラスのXOやそれ以上のものがどう考えてもお手頃な価格で手に入ってしまう現状。改めてその対比も面白いものです。

今やコニャック業界の全体の半分以上の売上を占めるヘネシー。やはりその影響力、規模感は色んな意味で脱帽せざるを得ません。ヘネシー8代目当主のモーリス・リシャール・ヘネシー氏にお会いできる貴重な機会を頂き、ありがとうございました。

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