コニャックレビュー

新世代コニャックCognac Philbertレビュー:シェリーカスクとソーテルヌカスクフィニッシュ!

2020年4月19日

今回手にとったのは以前から国内にも少量ながら並行輸入されており、気になっていたこのコニャック。

Cognac Philbertです!

読み方はフィルバート。

Cognac Philbertとはどんなブランド?

Cognac Philbert自体は2012年にできたばかりの比較的新しいコニャックブランド。

PHILBERT兄弟が手掛ける次世代のコニャックです。

Cognac Philbert Official WEB

こちらがPHILBERT兄弟。イケメンだ!!

かなり小さなブランドですが葡萄作りから瓶詰までの全ての工程を自分達で手掛ける、いわゆるプロプリエテールです。近年のコニャック現地の表現でいうとSingle Estate Cognac(シングルエステートコニャック)ですね。

WEBサイトやボトルの雰囲気からも分かるように、伝統的!なコニャックというよりも、どこかアメリカンな雰囲気を感じさせる何か新しい価値観を提供してくれそうな予感がするコニャックです。

Philbertのコニャックラインナップ

2020年4月現在、ラインナップは主に2つのカテゴリに分かれています。

Distiller Reserve
→所謂普通のコニャック。プティットシャンパーニュとグランドシャンパーニュの2つがある。

Rare Cask Finish
→シェリーカスクやソーテルヌカスクなどでフィニッシュした、所謂リフィル系のコニャック。

畑のある一角だけのブドウを使って作ったDovecoteというものや、89年、90年、91年のヴィンテージをブレンドして作ったRootsというラインナップもあるようです。

自分達でも「Smal Batch Cognac」と銘打っているように、 彼らのコニャックは全てバッチごとに販売され、1本1本バッチ、ボトルナンバーが記載されているのが特徴。1本1本が限定品です。

一応スタンダードラインナップはあるのですが、大手メーカーのように全てのボトルを全く同じ味わいに調整しているわけではないので、バッチが違えば味わいも少し異なったりするんだと思います。

ちなみに2020年4月現在、このボトルを輸入しているのは相変わらずマニアックなボトルを並行輸入してくれている有限会社ウィックです。

それでは今回の3本をレビューして参ります。

Cognac Philbert Distiller Reserveグランドシャンパーニュ

基本スペック

生産域:グランドシャンパーニュ100%
蒸留年:2012年
ボトリング:2016年
レンジ:VSコニャック
アルコール度数:41.5%
ノンチルフィルタード
輸入業者:有限会社ウィック
購入価格:税込5,070円(2020年4月購入)

コニャックの詳細はバッチナンバーからボトルナンバーまで詳細に書いています。熟成年数としてはおよそ3年~4年のVSレンジです。

コニャックには珍しくノンチルフィルタードの明記があります。

味わいと感想

まだ若いコニャックということもあり、香り立ちは牧草感や青リンゴといった若いコニャックに特徴的な香り+ほのかなピーチ感を感じます。

口に含むと程よくソルティー。さすがにこの若さですと「グランドシャンパーニュ特有の・・・」といった表現はできず、やや複雑さには欠けてしまいますが・・・

というか、ちょっと後半になるにつれ甘みが増す。

甘みが増すというよりも、このVSレンジによくみられるフレッシュさをあまり感じない。

これは熟成云々による蜂蜜系の甘みというよりも、やや加糖によるものが大きいような気がします。どのくらい加糖されているかは確認できていないので明言はできませんが、アルコールの刺激を無理やり抑え込もうとしている感があります。

正直コアなコニャックファンからは賛否が分かれそうな感じではありますが、逆にいうとVSレンジとしてはかなり軽快な飲みごこちでピリピリする感じもないので飲みやすいのかも。

ただ飲みやすいといっても初めてコニャックを飲む人にはストレートでは勧めにくいので、やや扱いに困る部分もありますが、この手の甘みを感じてしまうタイプのコニャックは、オンザロックにすることで活きてきます。

恐らくCognac Philbert自体もストレートで飲むことを推奨しているというよりも、ジンジャーエールなどの炭酸系で割ってみたり、氷を入れて楽しむことで本領を発揮するタイプ。

飲む人によって両極端に評価が分かれそうなコニャックではありますが、既存の価値観に捕らわれず色々な飲み方を試してほしい。そんなコニャック。

個人的にはロックがおすすめ。

→Cognac Philbert Distiller Reserveグランドシャンパーニュの現在価格チェックはコチラから

Cognac Philbert Rare Cask Finish シェリーオロロソ

基本スペック

生産域:グランドシャンパーニュ100%
オロロソ シェリーカスクフィニッシュ
蒸留年:2014年
ボトリング:2019年
レンジ:VSコニャック
アルコール度数:41.5%
ノンチルフィルタード
輸入業者:有限会社ウィック
購入価格:税込5,380円(2020年4月購入)

先ほどのPhilbert Distiller Reserveグランドシャンパーニュをベースにオロロソシェリーカスクでフィニッシュさせたコニャック。

マッカランはじめ、スコッチウイスキーでもシェリーカスクがフィニッシュに使われることがありますが、それのコニャックバージョン。

正確なフィニッシュ期間は不明ですが、おそらく4ヶ月~7ヶ月程度なのではないかなと予想しています。

というかコニャックにおけるリフィルの条件としては一応

  • 新樽のみ(他のお酒で使用された樽は使用不可)
  • フィニッシュ期間は最長でも1年以内

という目安条件があるはずなのですが、このボトルはシェリーカスクフィニッシュというくらいだから一度シェリーで使われているのもが使用されているのだろうか。そうなるとこのコニャックの定義とは一体・・・。

Cognac Parkミズナラはミズナラ新樽を使用していたことでコニャックの規定としてはOKでしたし、逆にバーボン古樽を使ったマーテルブルースウィフトや、栗樽を使ったピエール フェラン レネゲード♯2 チェスナッツ ウッド バレルなどは「コニャック」とは銘打っていません。

しかしこのPhilbert Rare Cask Finish シェリーオロロソはラベルを見る限り堂々とCognacを名乗っているのですが、その辺どうなのかしら。ただのブランド名として通しているのか?相変わらずこのコニャックのリフィルに関してはその辺りが非常に曖昧だ・・・。

このあたりは一度Philbertに伺ってみようと思います。

2023/2/9追記

フレンチオーク以外の樽の使用規定についてBNICに確認が取れました。
コニャックの熟成樽については2023年2月時点で下記のような規定となっています。

  • オークの新樽であればフレンチオーク以外でも何年でも使用可能
    →未使用のアメリカンオークやミズナラオークなど、1年半などの期間の制限はない。オークであればエリアは限定されない。フィニッシュに限らず10年でも20年でも熟成に使える
  • ブドウ由来の酒(シェリーやワインなど)に使われたオーク樽であれば古樽でも使用可能。これも使用年数は問わない
  • オーク以外の種類の木からできた樽は新樽でも古樽でも使用できない
    →チェリー樽やアカシア樽などは使用不可
  • ブドウ由来以外の酒(ウイスキーやラムなど)に使用された古樽は使用不可
    →なのでバーボン樽を使ったものやラムで使われた樽の場合はオークであろうがなかろうがコニャックとしては認められない

追記ここまで---------------------------

味わいと感想

これは良い。

上記のフィニッシュに関する細かいあれこれを抜きにして考えると、大変飲みごたえのあるものに仕上がっています。

シェリーオロロソの特性がよく出ており、香り味わい共にふくよかさと重厚感が十分に増しています。1つめのDistiller Reserveグランドシャンパーニュとは全く別物。

味わいの傾向としては樽感がやや強く出ており、松の木の香りっぽいウッディさがより強調されています。オイリーさと共に熟れたリンゴやチェリーそしてハチミツの甘み、キウイ、そしてアーモンドの芳ばしさを感じさせてくれます。

余韻も樽香強めではありますが、このVSレンジには感じた事がないくらいよく長く残ります。

こんな事いうとウイスキーファンに怒られるかもしれませんが

「マッカラン 12年シェリーカスクをよりブランデーっぽくブドウ果実系寄りにした感じ」に近い。

(・・・でもマッカラン12年のコスパには敵わないかもしれない)

ただ、どうしてもシェリーカスクの風味が強く、ブランデーを飲み慣れている人にとっては

「コニャックというより、もはやブランデー・デ・ヘレス」

※ブランデー・デ・ヘレス:スペインで作られるシェリーブランデーの一種

というのが正直な感想かもしれません。

そうなってくると、Cognac Philbert Rare Cask Finish シェリーオロロソのライバルはコニャックではなくブランデー・デ・ヘレス。つまるところ恐らく日本で最もシェアの高いヘレスブランデーであるバルデスピノやルスタウのブランデーあたりだ。

・・・となると同じ5000円程の価格帯である「ルスタウ ブランデー デ ヘレス ソレラ グラン レセルバ (10年)」と比較してどうかということになるのですが、これ以上言及すると

「え、じゃあルスタウ ブランデー デ ヘレス ソレラ グラン レセルバ (10年)でよくない?」

なんてことになりそうな気がするので、これ以上はあまり考えないようにしたい。笑

ただ、やはりルスタウ ブランデー デ ヘレス ソレラ グラン レセルバ程熟成が進んでしまうと全く別のお酒となってしまうので、3~4年熟成のVSレンジのコニャックでオロロソシェリーのエッセンスを加えたという所に意味があり、これはこれで大変楽しめるボトルです。

これまでのVSコニャックではあり得なかった丸みとふくよかさが味わえます。

もしお財布に余裕があって新しいコニャックを求めている方には是非とも手に取って頂きたい1本でもあります。

→Cognac Philbert Rare Cask Finish シェリーオロロソの現在価格チェックはコチラから

Cognac Philbert Rare Cask Finish ソーテルヌカスクフィニッシュ

基本スペック

生産域:プティットシャンパーニュ100%
ソーテルヌカスクフィニッシュ
蒸留年:2014年
ボトリング:2019年
レンジ:VSコニャック
アルコール度数:41.5%
ノンチルフィルタード
輸入業者:有限会社ウィック
購入価格:税込5,380円(2020年4月購入)

先ほどのシェリーカスクフィニッシュと違う点は、元となるコニャックがグランドシャンパーニュではなくプティットシャンパーニュであるということ。

そしてフィニッシュに使用しているのはフランスの甘めのワインで有名なソーテルヌワインの樽でフィニッシュされたコニャックであるということ。

フィニッシュの定義に関しては先述した通りなのでここでは詳細は割愛します。

味わいと感想

ソーテルヌカスクでフィニッシュされたコニャックというのも実は私初めて飲みました。

これもまたプティットシャンパーニュ特有というよりも、ソーテルヌカスクの要素が強くでるボトルです。

これの元となっているコニャックであるPhilbertのプティットシャンパーニュコニャックはまだ飲んでいませんが、 先ほどのシェリーカスクフィニッシュが蜂蜜+ウッディさが際立ったのに対し、こちらは香り立ち、味わい共にとてもシナモン+オレンジ+蜂蜜系の要素を多く感じることができます。

余韻はピーチ感が強め。

重厚感というよりも、爽快な爽やかな甘み。

オイリーな舌触りが苦手なひとにはこちらの方が好みかもしれません。

こちらのソーテルヌカスクフィニッシュの方がVSコニャックとしての要素は残っている感があります。

「コニャックで作ったシナモンハニーリキュールの甘さをかなり控えめにしてアルコール度数を41.5%にしたもの」という表現が一番近いかもしれません。(え

あ、でもこれはこれであり。

個人的にはジンジャーエール割りがめちゃめちゃ合う。多分この3本の中では最も炭酸割りが合うコニャック。通常のVSコニャックとジンジャーエールで作るコニャックハイボールよりも味わいのが変化がよりバラエティー豊かになります。これは間違いなく炭酸水やトニックウォーターではなくジンジャーエールがベストチョイス。

→Cognac Philbert Rare Cask Finish ソーテルヌカスクフィニッシュの現在価格チェックはコチラから

おすすめなCognac Philbertは?

私個人的なおすすめとしては

ストレートで楽しむのであれば「Philbert Rare Cask Finish シェリーオロロソ」。

炭酸割りで楽しむのでれば「Cognac Philbert Rare Cask Finish ソーテルヌカスクフィニッシュ」。

ブランデーカクテルのベースにするのであれば・・・・レミーマルタンVSOPを買ったほうが良い。

です。

総括としては、やはりフレンチオーク以外の樽でフィニッシュされたコニャックは大変興味深いものがあります。

先述した通り、これがどこまでコニャックなのか、また果たしてこの味わいはコニャックと呼べるのかなどはやや疑問な点が残りますが、Cognac Parkミズナラはじめ、フィニッシュする樽の違いでここまで味わいの変化が楽しめるのはとても探求心をくすぐられます。

往年のコニャックファンやコダワリの強い方にとってはもしかしたら批判的な意見もあるかもしれませんし、それは理解できます。が、しかし、既存の価値観に捕らわれず次世代のコニャックを展開し、様々なアイディアや新境地を人々に与えるにはとても良い試みだと感じます。

Cognac Philbertは2012年にできた新興ブランドであるため、熟成年数も若いラインアップが中心ですが、このブランド、PHILBERT兄弟が今後10年、20年後に展開するコニャックが果たしてどのようなコニャックに仕上がっているのか、これから先がとても楽しみです。

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