今回新たに購入したのは、数年前に一度バーで飲ませてもらってからその衝撃がずっと頭から離れなかったカルヴァドス。
カルヴァドス モラン レゼルブ アンセストラル
Calvados Morin Reserve Ancestrale
です!
とうとうボトルを買っちまったぜ。
基本スペック
カルヴァドス モラン レゼルブ アンセストラル
生産域:カルヴァドス ペイドージュ+カルヴァドスAOC
熟成年数:およそ40年~50年くらい(オーク樽で30年程+瓶で10年程)
アルコール度数:42%
輸入業者:有限会社ウィック
購入価格:税込23,000円(2020年5月購入)
カルヴァドス モランの背景
カルヴァドス モラン(Calvados Morin)は1889年創業。 フランス、ノルマンディー地方のウール川の畔に位置する老舗カルヴァドスブランドの一つで、創業者から親子代々家族経営でカルヴァドスを生産しています。
モラン社自体は「ネゴシアン・エルヴェール」にあたり、主に蒸留者から優良なカルヴァドスを買い取り、それらを自社で熟成しボトリングしている生産者です。
その他モラン社の詳細はコチラから
→カルヴァドス モランの特徴とラインナップ
衝撃的なボトル外観とその秘密
モランの詳細を語る前に、まずはこのボトルを見て頂きたい。
堅牢な木箱を空けると・・・
ドン!!
ドドンッ!!!
この明らかに他のボトルとは異なる佇まい。
ボトルの回りを覆っている「何か」。
これはモランのカルヴァドスのフラッグシップボトルでもあるこのアンセストラルにのみ許された貴腐カビです。
モランの熟成庫
モラン社には地下の洞窟内に作られた特別な熟成庫があります。
その熟成庫は石灰岩と粘土質の土に覆われた丘陵地に掘られた洞窟の小部屋です。この洞窟内の気温は年間を通してずっと13℃程。そして湿度は80~100%という高い数値を維持しています。
リムーザンオークの樽で熟成されたモランのカルヴァドスの中でも選ばれし原酒達がこの地下洞窟の中でじっくりと熟成されていきます。
樽で30年、瓶で10年・・・
今回手に取ったカルヴァドス モラン アンセストラルは、リムーザンオークでおよそ30年程熟成された後ボトリングされ、ボトルの状態のままこの暗く静寂な地下洞窟の中で10年の時を経た特別なボトルです。
年間の生産数は300本限定です。
このボトルの回りを覆っている特徴的な貴腐カビはその地下洞窟での10年の間に付着したもの(らしい)。
長期の熟成と、モランの個性的な熟成スタイルを象徴するかのように取り除かれずにそのまま商品化されます。
・・・・じっくりと見れば見るほど、うどんとかに入っている
「とろろ昆布」がふやけたヤツ
にしか見えなくなってきた(笑)
触ると綿アメのようにフニフニと柔らかく意外と触り心地が良いです。
綿アメというか、何かこの触感、さわり覚えがあるなぁ・・・・
うーん・・・・
あ、
わたパチだこれ (笑
完全にわたパチを触っている感じ。
懐かしすぎ。
この「とろろ昆布わたパチ」が本当にカビそのものなのか、何かの繊維っぽいものなのか、ぶっちゃけ何なのかよく分かりませんが、とにかく雰囲気だけでもすごい重圧を感じるボトルです。
丁寧に剥がしていけばボトルのラベルも見えるのですが、この状態だと何が何だか分かりません。
Amazonの商品ページや楽天の商品ページには「不良品ではありません。」の注意書きがあるほど、何も知らない人が買ったらクレーム必至の商品だ(笑)
そもそも何も知らない人は買わないボトルかもしれないが・・・
さっそく抜栓・テイスティングへ
それではさっそく開封してみましょう。
個性的なボトルだけあって、どう空けるのが正解なのかよくわかりませんが、とりあえず蝋封周りの「とろろ昆布わたパチ」を少し取って、蝋封を剥がし、コルクを抜きます。
まず、ボトルをつかんだだけでも手が真っ黒です(笑)
この周りのヤツは結局全部剥いだ方がいいのだろうか・・・・?触るたびにパラパラと何かが落ちてくるのだが(笑)
相変わらずカルヴァドスの高級ラインナップはめちゃくちゃ開けにくいものが多い。
そしてブランデーとしては珍しく、コルク抜きで抜栓するタイプのボトルです。
ボトルのまま何年も熟成庫に置かれているのですがから、厳重な封が必要です。
コルクに穴を通した瞬間、「プシュ」という小さな音が。もちろん炭酸などは入っていませんが、ボトル内での長熟により長年溜まったガスのようなものが抜けるのを感じることができました。
そして抜栓だけでもテーブルがこのあり様。(私が下手くそなだけ)
ちなみに木箱の中にはちゃんと替え用のコルクが付属しています。
抜栓後はこちらの新しいコルクに交換します。交換用コルクは天然コルクではなく圧縮コルクの模様。
抜栓に格闘+掃除すること約10分。
ようやく飲む準備が整いました。
カルヴァドス モラン アンセストラルの香り立ち
もう抜栓した瞬間から数メートル離れていても漂う豊潤な香り。
まず一発目のアタックはシトラス感の混じった焼きリンゴ、続いてミント、そしてシナモン。
何よりも感じるのがこの独特な燻製香。正露丸を15倍くらいに薄めたようなこのモラン アンセストラルに特徴的な香り。
アイラモルトウイスキーのようにピートを焚いているわけではありませんが、カルヴァドスの中では突出した渋い香り立ちです。
これがまたクセになります。
鼻をグラスの中に突っ込んでもアルコールの刺激臭を極端に感じることは無く、心地よい森林の中にいるような感覚に包まれます。
カルヴァドス モラン アンセストラルの味わい
キャラメル+干し柿。そして鼻から抜けるミントっぽさと燻製香。
時たま感じる栗きんとん。
余韻はさすがの長さ。飲んだあと10秒くらい口のなかの香りを確認すると、ここで少しだけ南国系フルーツのようなドライオレンジのような果実感を感じることができます。
前回飲んだアドリアンカミュ・カミュでも同一の価格帯である「アドリアン」とは全く異なる方向性。
アドリアンがバナナやバニラといった甘め・果実系だったのに対し、このモラン アンセストラルは明らかに薬草・木材系のカルヴァドス。
ここまでキャラクターが異なるとかなり面白いです。
個性的で面白く私は好きなのですが、この渋さは好き嫌いが分かれるテイストだとは思います。
この特徴的な香味はやはり地下の熟成庫の影響によるものなのか、意図してこのような味わいにしているのか、興味はつきません。
とろろ昆布はダテじゃない!
個性あふれるおすすめカルヴァドスのひとつ
やはり数年前に初めて飲んだ時の衝撃は色々な意味で顕在でした。
特にこの忘れられない燻製感と余韻。
好みは分かれるかもしれませんが、どこかひと味違ったカルヴァドスを体験してみたい方にとっては私の中で最もおすすめできるカルヴァドスの一つです。
ノルマンディーの地下深く、暗闇と静寂の中で何十年もの時をすごした歴史をカルヴァドスモランアンセストラルと共に味わってみてはいかがでしょうか。