カルヴァドスレビュー

洋ナシカルヴァドス:パコリ20年・30年の比較レビュー

今回レビューを行うのはカルヴァドス「パコリ(Pacory)」より、「パコリ20年」「パコリ30年」の飲み比べです。一気にやっていきましょう。

洋ナシ比率70%以上のドンフロンテ産カルヴァドス

カルヴァドスAOCの規格として、今回のパコリは「ドンフロンテ」産のカルヴァドスです。

この生産域「ドンフロンテ」の生産条件は下記の通りです。

  • カルヴァドス ドンフロンテの地域で製造すること
  • 蒸留時の洋ナシ(梨ワイン(ポワレ))の混合割合が30%以上であること(ペイ・ドージュとは逆)
  • 連続式蒸留器で1回蒸留すること(アルマニャックと大体同じ)
  • 最低3年間オーク樽で熟成させること
  • アルコール度数最低40度

その中でも注目すべきは洋ナシ比率。もともと洋ナシ比率を30%とらないといけない基準ですが、このパコリは全商品において洋ナシ比率70%以上とドンフロンテカルヴァドスの中でも洋ナシ比率が多いカルヴァドスとして有名です。

参考記事
カルヴァドスの3つの生産域の違い

果たしてそれによってどのような特徴が出るのでしょうか。

まずは20年の基本的なスペックと味わいから見て参りましょう。

パコリ 20年

容量:700ml
アルコール度数:41%
熟成年数:20年
構成:洋ナシ70% リンゴ30%
輸入業者:株式会社W
購入価格:税込10,570円(2021年9月時点)

ラベルにかわいらしく描かれている洋ナシが特徴的ですね。

パコリ20年の香り

洋ナシ70%のお酒に「洋ナシを感じる」と言うとバカっぽいけど確かにちゃんと洋ナシを感じる。あと青リンゴも。

グラスに注いだ瞬間に真っ先にイメージしたのは梅紫蘇でした。ほのかなシソの香り。

フルーティーさを拾おうとするとメロン、マンゴー、アプリコットといった要素が感じられますが、基本的にはエステリーな要素が多いです。具体的にはリコリスや木の皮、しょうが、そして溶剤や油性ペンといったものです。

パコリ20年の味わい

最初のアタックは強め。刺激もあり。

そして渋みが強い。他のカルヴァドスと比較しても渋みと酸味はかなり強い方です。

全体的に淡麗でスパイシー、ビター・・・といった印象が強く残ります。

余韻にも木の感じが残り、ほのかに洋ナシ感が抜けていきます。

ペイドージュのフルーティーでどっしりとしたカルヴァドスとは全く方向性が違うカルヴァドス。この後にカルヴァドスペイドージュの中でもフルーティー系な要素が強いアドリアンカミュとか飲むとカミュがめちゃめちゃ甘く感じます。

辛口で渋みの強いカルヴァドスが好みな方にはおすすめ。最初は面食らうかもしれないが、慣れてくるとかなり心地よい渋みです。

パコリ 30年

容量:700ml
アルコール度数:40%
熟成年数:30年
構成:洋ナシ70% リンゴ30%
輸入業者:株式会社W
購入価格:税込13,500円(2021年9月時点)

パコリ30年の香り

基本的には20年を踏襲したような形。

それに加えてベルガモットなどを使ったアロマオイルを嗅いでいるような感覚がある。20年よりもやや柑橘要素が出てきたかもしれません

それからメロン、アプリコット
やっぱり梅紫蘇(笑)
最初は少しツンとくる部分もあり少し溶剤的な香りを拾ってしまうけど、20年よりはまろやかに。ただ、そういったエステリーさもパコリの特徴の一つです。

パコリ30年の味わい

20年にスモモの要素が加わったような印象。

洋ナシのおしとやかなイメージとは良い意味でギャップのある荒々しさもまた面白い。脳みそが活性化されます。

鼻抜けには夏の牧草を嗅いだような印象も残り、とても興味深い。

そして数分後、どこか懐かしい味が口の中に残ります。そう、子供の時に味わった「ハイチュウ青リンゴ」の味です。こんな事言ったら怒られるかもしれませんが(笑)そこには確かに25年前の10歳だったころ、スーパーで母親に買ってもらった懐かしいハイチュウ青リンゴがいたのです。

20年と30年の正統進化?

パコリ20年→30年は単純にまろやかさが増しているようにも思えますが、個人的にはパコリ20年の方がいわゆる「パコリらしさ」が強く感じることができて好きかもしれません。

パコリ20年・30年に共通して感じる「パコリらしさ」とは他のカルヴァドスよりも強く感じる「酸味」「渋み」です。この要素をネガティブにとらえるかポジティブにとらえるかでパコリの評価は分かれそうです。

ペイドージュのフルーティーさ強く印象に残っている人はこのパコリ特有のエステリーさがネガティブに映ってしまうかもしれません。私も数年前に初めてパコリ20年を飲んだ時はあまりのギャップに驚いてしまいましたが、今ではふとした瞬間にこのパコリの風味が欲しくなることがあります。フルーティー要素多めのカルヴァドスやコニャックに飽きてきたなぁという方はぜひ飲んでみると良いかもしれません。

逆に言うと、このパコリの味わいはカルヴァドス、ドンフロンテの中でも少数派な部類に入ります。正直「初めてのカルヴァドス」としておすすめできるかというと、やや難しい一面もあります。

個人的には初めてのカルヴァドスは素直にペイドージュ産のカルヴァドス(中でもアドリアンカミュ12年あたり)がおすすめという方向性に変わりはありません。

パコリ20年・30年を飲んだあとにデュポン20年・30年やアドリアンカミュ18年あたりを飲んでみると、これまでデュポンやアドリアンカミュに感じられなかった「黒糖」の要素を強く感じるようになりました。パコリの渋さによってデュポンとアドリアンカミュの甘みがより強調された形です。
それだけパコリは方向性が違うカルヴァドスということがよく分かります。

参考記事
デュポン20年のレビュー
デュポン30年のレビュー
アドリアンカミュ飲み比べ

ドライでキレのあるカルヴァドスなので、割りものとも相性がよいと思います。炭酸の洋ナシジュースやリンゴジュースとの相性も抜群ですね。

一味ちがうビターなカルヴァドスを体験したい方にはおすすめのパコリでした。

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