今回レビューを行うのは、カルヴァドスの大御所「デュポン(Dupont)」より、デュポン20年。

デュポンのラインナップの中でも定番中の定番ですが、ちょうど我が家にはボトルが無かったので20年と30年の2本調達しました。よい機会なのでまずはじっくりとデュポン20年と向き合っていきましょう。その後30年ね。
デュポンの概要
カルヴァドスには「ペイドージュ」「ドンフロンテ」「カルヴァドスAOC」という3つの生産域があります。その中でもデュポンは「ペイドージュ」地区に存在。リンゴの栽培から発酵、蒸留、熟成、瓶詰を全て自社で行う家族経営のカルヴァドス生産者です。
参考記事
→カルヴァドスの生産域や製法について
→デュポンの特徴とラインナップ
デュポンは約30ヘクタールの自社畑に約6000本のリンゴの木を所有しており、それらの原料から作られるカルヴァドスはアメリカを中心に多くのレストランやホテル、蒸留酒ファンに愛されています。
デュポンはカルヴァドス以外にもラインナップが多く存在し、シードルやリキュール、料理に使う香り付け用のスプレーなど様々な商品を展開しています。
デュポン20年の基本スペック
今回購入したデュポン20年の基本情報を見て参りましょう。
カルヴァドス デュポン20年


容量:700ml
アルコール度数:42%
熟成年数:20年
生産域:カルヴァドス ペイドージュ
リンゴ品種:ビタースイート種85%、アシッド種15%
その他:ノンチルフィルタード
輸入業者:スリーリバース
購入価格:税込13,750円(2021年8月購入)
デュポン20年の香り立ち

まず最初に一瞬グラスに立ち込めるのはほのかにバニラのような甘い香り。
その甘い香りの後に続く、イチゴ、そして青リンゴ。若干インクを連想するアルコール感も含みつつではありますが、フルーティーながらも若々しさを感じさせる元気なオーラを感じさせてくれるのが気持ちいい。
その香りの奥に感じるのは、デュポンに特有の木のニュアンス。オークの濃い香り。これを樽感といえば樽感なのでしょうか。

グラスを置くこと約15分、明らかに香り立ちの変化を感じることができ、そこにはこれまでになかった線香・・いや、お焼香か・・?なんとも言えないお香系の日本人には心地よい香り立ちを運んできてくれます。
これは他のカルヴァドスにはなかなか感じることができないデュポン特有のものです。
デュポンのカルヴァドスに使われている原料がビタースイート系85%という点と、デュポンは熟成の際に内側をよく焦した樽を好んで使っていという点がが、このデュポン独特の香り立ちに影響しているように思えます。
デュポン20年の味わい

アタックはやや強め。程よく舌にアルコール感を感じつつも、アプリコット、乾燥した柿、洋ナシ感をふんだんに感じ取ることができます。
そして舌の奥から鼻腔に広がる白コショウを中心にしたスパイス感。秋の湿った落葉の森を歩くような独特の紅葉感。
香りでも感じることができた重厚な樽感と渋みが印象的です。
飲んだ直後の余韻というよりも、飲んだ後数分後に舌に残る香味が特徴的で、飲んだあと数分間なにも口にしないでいると、これまで感じた木や落葉とは対照的にメロンのような甘く果実味のある香味が唾液と共に口の中に広がり、全く違った側面を見せてくれます。
飲みこんだ後も、口の中に確かに存在を感じることができるカルヴァドスです。
他のカルヴァドスと比較して

他の20年前後の熟成を経たカルヴァドスと比較して、明らかに重厚感が強烈に印象に残るのがデュポンの特徴です。これは今回の20年もそうですし、30年、45年、50年といったデュポンの長熟ラインナップでも同様の傾向があります。
樽由来の渋みと言ってしまえばそれまでなのかもしれませんが、この舌に乗る感じは他のカルヴァドスにはなかなか表現できない独特の要素かもしれません。
私が個人的に好きな他のカルヴァドスと比べると
淡麗系
→クリスチャンドルーアン
重厚(樽)系
→デュポン
といった具合に綺麗に分かれる存在です。
クリアでフルーティー系のカルヴァドスを求めるのであれば他にも選択肢はあるかもしれませんが、飲んだ後もその要素が舌に強く残り、更に変化する様子を楽しめるのはデュポンが一番かもしれませんね。

デュポンの価格帯は20年物で約13,000円~14,000円ということから、1万円前後が主流の他の20年物カルヴァドスと比較するとやや高価な部類に入ります。デュポンは全体的に価格帯がやや上のブランドではありますが、やはりクオリティ的には申し分ないカルヴァドスと言えるかと思います。
コスパを重視する人はこの価格差をどう捉えるかも重要なポイントになるかもしれませんが、個人的にはこの約3000円~4000円の価格差は全く気にならず、十分に価格を満たす価値があるのではないかと感じています。
ということで、デュポン20年はスタンダードながら重厚感あふれるカルヴァドスをお探しの方にはおすすめできるカルヴァドスです。
そしてまた別記事にてデュポン30年のレビューを書いて参ります。