ブランデーの知識初級編で書いたように、ブランデーにはフランスの生産地域によって「コニャック」「アルマニャック」「カルヴァドス」と3つに分かれていることが分かりましたね。
今回はその中でも一番有名処であるコニャックについて詳しく見ていきましょう。
「コニャック」はフランスランス南西部のコニャック地域で作られたブドウを原料としたブランデーのことを指します。
正式にはオー・ド・ヴィ・ド・ヴァン・ド・コニャック(Eau-de-vie de vin de Cognac)と言います。当サイトでは分かり安く「ブランデー」とか「コニャック」と表記していますのでご了承下さい。
コニャックは6つの生産域に分かれる
実はこの「コニャック地方」の中でもさらに細かくクリュ(ブドウ畑)エリアによって6つの地域に区分けされているのです。区分けの基準はブドウを作る土壌の質です。
コニャック地域のエリア
一般的には上に行くほど高品位な土壌とされており、葡萄の取引価格も高くなっています。
- 1.グランド・シャンパーニュ(Grande Champagne)
- 2.プティット.シャンパーニュ(Petite Champagne)
- 3.ボルドリ(Borderies)
- 4.ファン・ボア(Fins Bois)
- 5.ボン・ボア(Bons Bois)
- 6.ボア・ゾルディネール(Bois Ordinaires)
地図で見ると下のような感じです。
まずはフランス全体の生産地域の分かれ方。
そして↓こちら↓がコニャック地域をクローズアップしたものです。
それでは地図と併せて各地域の特徴を詳しく見ていきましょう。
土壌によって分かれる地域
主に土壌によって、ブランデーの原料となるブドウの出来具合が変わります。
1. グランド・シャンパーニュ(Grande Champagne)
最も良い土壌とされ、熟成に年月をかけて香り高く繊細で、上品な香りがするブドウとなります。
グランド・シャンパーニュ地域は全体で34,703ヘクタールあります。このうち葡萄作付面積は13,159ヘクタールです。この地区独特の至上の繊細さと軽やかさ、フローラルのアロマを秘めたブランデーに相応しいブドウが栽培されます。熟成期間には長い年月が必要で、その間オーク樽のなかで充分な成熟を待ちます。
グランド・シャンパーニュ地域で、収穫から出荷まで一貫した作業のモノはグランド・シャンパーニュと表示できます。
有名処はこのサイトでもイチオシ「ポールジロー」シリーズですね。
(当サイト総合ランキング1位!)
ちなみに、シャンパンの産地で有名な「シャンパーニュ地方」とは全く別地域です。500km以上離れています。
地域の名前が似ていますが、ブランデーの「グランド・シャンパーニュ地方」とシャンパンの「シャンパーニュ」地方は全然別物なので注意しましょう。 (ただし土壌の質自体はかなり近しい石灰質)
2. プティット.シャンパーニュ(Petite Champagne)
グランドシャンパーニュに次ぐ優れたブランデー。比較的熟成は早い。
プティットシャンパーニュ地区の総面積は65,603ヘクタールです。そのうちの4分の1にあたる15,246ヘクタールでコニャック向けのブドウが作られています。 この地域のブランデーはグランド・シャンパーニュの洗練さには及ばないものの同様の性質を保持しています。
ちなみにグランド・シャンパーニュに50%以下の割合いでプティット・シャンパーニュのブランデーをブレンドしたものをフィーヌ・シャンパーニュ(Fine Champagne)と表示できます。
フィーヌ・シャンパーニュで代表的なのは「ネヘシーVSOP」ですね。
3. ボルドリ(Borderies)
コシが強く豊かな香りのブランデー。
この地域は6つの中で最も小さいクリュで、総面積は12,540ヘクタールです。(地図参照)
土壌は石灰層の脱炭酸化によるフリント質というものです。コニャック市の北東に位置し、この地区3,987ヘクタールのブドウ畑からはまろやかでやわらかなブランデーが産まれます。
2つの上位のグランド・シャンパーニュとプティット・シャンパーニュ地区よりも短い熟成期間で仕上がりますが、十分に高い品質のコニャックであると評価されています。
私の個人的な好みとしてはかなり好きな部類のコニャックです。
4. ファン・ボア(Fins Bois)
若々しく軽快なブランデー。
このクリュ(ブドウ畑)は赤身がかった粘土質の土壌が多い地域です。粗く砂利状となっています。
ファン・ボアの総面積は349,803ヘクタール、うち31,001ヘクタールのブドウ畑かしなやかで熟成期間の短いブランデーが作られます。
5. ボン・ボア(Bons Bois)
香味が、やや痩せている。
ボン・ボアは沿岸部の砂地質の土壌や谷、また南部のブドウ畑に位置します。 この砂は中央山塊が侵食されて運ばれたものです。
このボン・ボアのブドウ栽培の特色は、他の作物や放牧地、または松林や栗林と隣り合わせになり栽培地が集中していないことが挙げられます。 このボン・ボア地区の総面積は372,053ヘクタール。うち9,308ヘクタールがコニャック用のブドウ生産に使われています。
6. ボア・ゾルディネール(Bois Ordinaires)
やや荒い風味のブランデー。このボア・ゾルディネールの総面積は260,417ヘクタール。その中で1,101ヘクタールのブドウ畑がコニャック用として展開されています。 土壌は砂地が特徴的です。
ボア・ゾルディネール単体のコニャックはかなり数が少ないですが、ボア・ゾルディネールに位置するレ島で作られるカミュ社の「イル・ド・レ」シリーズなどはボア・ゾルディネールコニャックとして有名です。
多くのコニャックは様々な生産域のブレンドである
これら6つの生産域に分かれているコニャックの原料ですが、その地区のみの葡萄で作られたコニャックのみラベル等に栽培区の名称を記載することができます。
例えば、ポールジローやジャンフィユーなどはグランドシャンパーニュ産のみの葡萄で作られたコニャックなので、ラベルに堂々と「Grande Champagne」と表記されています。ラベルや箱に生産域の明確な表記があるのは、その地区の葡萄オンリーで作られた単一生産域のコニャックだけです。
その他、多くのコニャック(特に大手になればなるほど)は様々な生産域の葡萄が原料の原酒をブレンドしてコニャックを作ります。それはそれぞれの商品によって異なりますが、例えばプティットシャンパーニュ60%+ファンボア40%、グランドシャンパーニュ30%+ボルドリ70%などなど・・・
そういった場合にはコニャックのラベルや箱に明確な生産域の表記はありません。詳細なブレンド比率や、どこの葡萄を使っているなどの情報は公に表記されていない場合が多く、メーカーの詳細資料を見たり直接メーカーに問い合わせないと分からない場合があります。
主なブドウの品種は?
上記6地域でコニャックとして認められるブドウの品種のは以下の3種類です。(白ブドウ)
「ユニ・ブラン」「コロンバール」「フォル・ブランシュ」
- ユニ・ブラン
- コロンバール
- フォル・ブランシュ
なお、全体の10%までなら以下の品種も混合することが認められています。
「フォリニャン」「ジュランソン・ブラン」「メスリエ・サン=フランソワ」「モンティル」「セレクト」「セミヨン」
ユニブランなどのコニャックで原料として使用されるブドウは酸味が多く糖度が低いためワインとしてはあまり高級な部類に入りませんが、ブランデーにとっては素晴らしい素材となります。理由としては主に以下2点です。
- その1:酸が多いと果汁が酸性になり、雑菌の繁殖を抑制でき、香味成分の生成を促すことができる。
- その2:発酵時のアルコール度数が高くなりにくいため、大量のワインから少量のブランデーしか蒸留されず、その分ブドウの香味成分が濃縮されやすくなる。
ちなみに、大手のメーカー(カミュやヘネシー等々)がグランド・シャンパーニュ規格のコニャックをあまり製造しないのには理由があります。グランド・シャンパーニュ地区の面積が狭く、生産量が確保できないからです。
まとめ:コニャックの6つの地域
ポイント
- フランスのコニャック地方で作られるブドウを原料としたブランデーが「コニャック」と呼ばれる。
- コニャックの中にもブドウを作る土壌によってランクが分かれている
1. グランド・シャンパーニュ(Grande Champagne)
2. プティット.シャンパーニュ(Petite Champagne)
3. ボルドリ(Borderies)
4. ファン・ボア(Fins Bois)
5. ボン・ボア(Bons Bois)
6. ボア・ゾルディネール(Bois Ordinaires) - 使われるブドウの品種は主に3種類
「ユニ・ブラン」「コロンバール」「フォル・ブランシュ」