ブランデーの王様(?)ともいえる存在「コニャック(Cognac)」の作られ方まとめです。
別記事にて『【保存版】コニャックの製造工程、原料ブドウ、生産エリア、熟成年数:コニャックに関する基礎知識まとめ』というコニャックの生産プロセスに関する記事を書きましたが、文字数も2万字以上で、内容が細かすぎるため(笑)今回はもっと要点だけをまとめ、ボリュームを5分の1くらいに圧縮した入門向け的な内容となります。
もっと細かい方がよい方はコチラの【保存版】記事をご参照ください!
まずコニャックとは何か?コニャックと他のブランデー、ウイスキーとの違い
コニャックはブランデーの一種ですが、全てのブランデーをコニャックと呼ぶことはできません。
フランスのコニャック地方で作られ、製造方法においてある一定の条件(原産地呼称統制=Appellation d’Origine Contrôlée=AOC)に則ったブランデーだけが「コニャック(Cognac)」と名乗ることを許されるのです。
コニャックとは
- フランスのコニャック地方で作られるブランデー
- 原料は白ブドウ
- シャラント式単式蒸留器で2回蒸留用
- オーク樽で最低2年の熟成を完了(=3年以上)させる
ちなみに広い意味でのブランデーとウイスキーの違いは次の通りです。
- ブランデー:果物(白ブドウ、リンゴ、洋ナシ等々)を発酵・蒸留させたお酒
- ウイスキー:穀類(大麦、ライ麦、トウモロコシ)を糖化・発酵・蒸留させ、木の樽にて熟成を行ったお酒
コニャックの原料となるブドウ
上記6地域でコニャックとして認められるブドウの品種のは以下の3種類です。(白ブドウ)
「ユニ・ブラン」「コロンバール」「フォル・ブランシュ」
- ユニ・ブラン
- コロンバール
- フォル・ブランシュ
なお、このうち95%という圧倒的な数字でユニ・ブランが使用されています。
なお、コニャックを作る際に全体の10%までなら以下の品種も混合することが認められています。
「フォリニャン」「ジュランソン・ブラン」「メスリエ・サン=フランソワ」「モンティル」「セレクト」「セミヨン」
コニャックの生産エリアは6つ
コニャックの原料となるブドウの生産域 (クリュ=Cru)は土壌の性質によって6つのエリアに区分けすることができます。
- グランド・シャンパーニュ(Grande Champagne)
- プティット・シャンパーニュ(Petite Champagne)
- ボルドリ(Borderies)
- ファン・ボア(Fins Bois)
- ボン・ボア(Bons Bois)
- ボワ・オルディネール(Bois Ordinaires)
1. グランド・シャンパーニュ(Grande Champagne)
プルミエクリュとも呼ばれるこのグランド・シャンパーニュエリアは最も良い土壌と言われており、繊細さと柔軟さ、上品なアロマもったコニャックを作ることができるブドウが栽培されます。このグランド・シャンパーニュのコニャックの熟成期間は長い年月が必要で、オーク樽で十分成熟させることによってグランド・シャンパーニュ独特の風味を引き出すことができます。
2. プティット・シャンパーニュ(Petite Champagne)
土壌の性質としてはグランド・シャンパーニュに似た性質がありますが、プティット・シャンパーニュの方がより石灰岩の粒が細かい傾向にあります。一般的にはよりライトなボディに仕上がり、グランド・シャンパーニュの方が長期熟成に向いているといわれますが、グランド・シャンパーニュとはまた違った特徴を楽しむことができます。
3. ボルドリ(Borderies)
6つの生産域の中で最も小さいエリア。 ボルドリ地区からできるコニャックは一般的にスミレのアロマが感じられると言われており、まろやかでやわらかいものが生産され、グランド・シャンパーニュやプティット・シャンパーニュと比べて短い熟成期間であっても上質で素晴らしいコニャックができると言われています。
4. ファン・ボア(Fins Bois)
グランド・シャンパーニュ、プティット・シャンパーニュと同様に石灰岩+粘土質なのですが、より硬く、きめが粗い、赤い砂利状の土壌であることが特徴です。
比較的熟成期間が短くフレッシュな果実味が特徴的なコニャックとなります。
5. ボン・ボア(Bons Bois)
土壌としては粘土、砂、石灰岩が混ざったものです。 ボン・ボア産のブドウを使用したコニャックは一般的に他の上記①~④のエリアよりも早く熟成が進む傾向にあります。
6. ボア・オルディネール(Bois Ordinaires)
かなり砂地質が強い土壌であることが特徴。
カミュのイル・ド・レシリーズでも知られる「レ島」などの沿岸部の地域も含まれており、ここで作られるコニャックはかなり独特な風味に仕上がる傾向にあります。
コニャックの製法工程・チャート
全体像としてざっくりとした製造工程のチャートを作りましたので下の図をご覧ください。
※クリックで拡大↓
次のようなサイクルでコニャックの生産が行われまます。
②9月~10月:発酵・ワイン作り
③11月~翌3月31日まで:シャラント式単式蒸留器で蒸留
④熟成
⑤ブレンド
⑥ボトリング
①原料となるブドウの栽培・収穫・プレス
毎年9月中旬~10月下旬にかけてブドウの収穫が行われます。
一部手掴みで行っている生産者もいますが、ほとんどは専用マシンによる機械収穫です。
②発酵・ワイン作
プレスを終え搾り取られた果汁はワインにするために発酵タンクへ送られます。
発酵期間は生産者や収穫量によっても異なりますがブドウ収穫後3週間程続きます。
1タンクあたりの発酵はおよそ5日~8日程かけて行います。
③蒸留工程(シャラント式単式蒸留器)
発酵タンクで作られたワインはその後蒸留され、最終的にオーク樽で熟成されるコニャックの原液「オー・ド・ヴィー(eau-de-vie)」が出来上がります。
蒸留には「シャラント式単式蒸留器」を使用して、「2段階蒸留」を行う必要があります。
コニャック蒸留の工程を見てみよう
直火での加熱
コニャック蒸留に使用される単式蒸留器は蒸気熱などで加熱するのではなく、必ず直火で加熱し蒸留することが義務付けられています。
蒸留回数は2段階
コニャックの蒸留では基本的には「初留×3回」→「再留×1回」という2段階が1セットとなります。
蒸留のもととなる白ワインはのアルコール度数の低い(8~10%ほど)白ワインです。
④コニャックの熟成:VS・VSOP・XOなどの規格について
蒸留されたオードヴィーはオーク樽に入れられ、コニャックとして世に出るまで最低2年の熟成を完了する必要があります。長いもので30年、50年、60年、70年・・・と熟成庫で長い眠りにつきます。
VSやVSOP、XOなどの表記基準は何?
コニャックでよく見るVSやVSOP、ナポレオン、XOといった表記はコニャックの最低熟成年数に応じて定められている表記です。
- スリースター:コント2以上
- V.S.:コント2以上(平均熟成年数4~7年)
- V.S.O.P.:コント4以上(平均熟成年数7~10年)
- ナポレオン:コント6以上(平均熟成年数12~15年くらい)
- X.O.:コント10以上(平均熟成年数15~30年くらい)
- Hors d'âgeやExtraなど:コント10以上(一般的にXOよりクオリティが高いとされるもの)
「コント」という言葉を知っておこう
コニャックの周期は毎年4/1~翌年3月末日です。翌年3月末日までに蒸留を終えなければなりません。
まず、蒸留した年のコントは「コント00」となります。翌4月1日から樽の原酒はコント0と数えられ、それは翌年の3月末日まで続きます。次の4月1日からはコント1となり、以降4月1日が来るごとにコント数が繰り上がります。コント2以上(つまり2年熟成完了)にならなければコニャックとして売ることはできません。
多くのブランデーは、その商品コンセプトに従って、様々な熟成年数のブランデーが調合(ブレンド)されて最終的に瓶詰されます。実は単一の熟成年数のブランデーのみで出荷されるブランデーはほとんどありません。
その調合されたブランデーの中で最も若いブランデーの熟成年齢に従ってVSOPやXOといったランクの呼称が定められています。例えば4年熟成(VSOP)のコニャックと11年熟成(XO)のコニャックがブレンドされた場合、そのコニャックはVSOPクラスとなり、XOとは名乗れません。
⑤ブレンド
コニャックはブレンドによってできる蒸留酒であり、多くのコニャックは様々な熟成年数の樽からブレンドしたものを商品として完成させます。
このブレンド工程においてはマスターブレンダー(またはセラーマスター)が大きな役割を果たします。
蒸留~熟成を経たコニャックはそれぞれが異なるコニャックです。シングルバレルや限定品などを除き、通常の定番品として出しているコニャックは同じ品質を保つ必要があります。異なるコニャックを調合し、これまでと同じ品質を保ったり、目指すべきコニャックになるようにブレンドを行います。それがマスターブレンダーの真骨頂です。
⑥ボトリング
コニャックのボトリングは半手作業によるボトリングと大きな生産ラインを使ったボトリングに分けられます。
大手メーカーになるほど大きなボトリングラインを持っていますし、小さな生産者の場合は手作業によるボトリングを行う所が多いです。
もっと詳しく・・・
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→【保存版】コニャックの製造工程、原料ブドウ、生産エリア、熟成年数:コニャックに関する基礎知識まとめ
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