今回のコニャックは2020年9月にリコルクされたコニャック「ROULLET(ルレー) No.45」です。1945年蒸留のコニャックです。
今回私が購入したこのレルーのNoシリーズはNo.26、No.29、No.45とリリースがあり、それぞれ以前2000年代にリリースされたもので一度日本に輸入されたものです。それら輸入元で保管されていたボトルの古いコルクを外し、目減りしたコニャックを各々同じヴィンテージのボトルにて継ぎ足し、新しいコルクで封印した再販バージョンとなります。
ちなにみにルレーNo.26(1926年蒸留)の方はリコルクバージョンですと税込8万円を超える価格帯ですが、2010年あたりは2万円代で販売されていた模様。うーむ時の流れは恐ろしい・・・。まぁそのころはテセロンLot29も2万円代とか3万円代とかだったようでその辺りは「古き良き時代」といった懐古的な情に浸るしかないのでしょう。
ルレーコニャックの今
ROULLET(ルレー) は1772年にコニャック地方のフーシニャック村に元貴族のPaul Frédéric Roulle(ポール・フレデリック・ルレー)氏がワイン畑を購入したことが始まりとされています。(その後1780年に醸造所を設立?だそうです)
その後数世代にわたりコニャックの製造と流通に携わり、現在はSAS LES VIGNOBLES REUNIS-ROULLET社という大きな会社の一部となっていますが、数世代にわたって蓄積されたノウハウを武器に高品質なコニャックを作り続けています。
現在約200ヘクタールの自社畑を所有し、うち140ヘクタールがファンボア、48ヘクタールがグランドシャンパーニュ、16ヘクタールがプティットシャンパーニュとなっています。
フーシニャック村は地区的にはファンボアに位置しますが、他にもギィピナールなど一流のコニャック生産者がいることでも有名ですね。
ルレーの蒸留器は2基あり、15ヘクトリットルと18ヘクトリットルというなかなか小型の蒸留器での蒸留を行っています。小型のためより凝縮されたコニャックが作られるわけですね。
ルレーNo45の熟成年数と基本スペック
それでは改めて今回のボトルを見てみます。
ROULLET(ルレー) No.45
容量:700ml
アルコール度数:42.5%
蒸留年:1945年
熟成年数:約50年熟成。その後ディミジョン(ガラス瓶)にて保管。
生産域:詳細不明
輸入業者:株式会社ローヤルオブジャパン
購入価格:税込28,800円円 円(2022年5月購入)
熟成年数に関しては輸入元の説明には明記されていないものの、箱の中の説明には
"From family reserves Roullet et Fils have selected extremely old single vintage cognacs that have been transferred after 50 years in the barrel into glass containers known as dames-jeannes."
との記載があることから、最低でも50年熟成は経ているものと考えてよいかと思います。
ちなみに1945という明確な年数表記ではなく、No.45のという「No.」での表記が採用されている理由は正式なヴィンテージ保管の手続きが取られていないため。コニャックで西暦での年数表記を行う場合は全てコニャックAOCを管理しているBNICの厳しい管理下の元、樽を蝋封するなどして一切中身を触れないようにする必要があります。そういった企画に沿っていない場合は西暦表記ではなくNoなどの表記で西暦の下2桁を表す場合があります。このコニャックの場合はルレー独自でヴィンテージ管理を行っていた1945年蒸留のコニャックのため西暦ではなくNo表記が採用されています。
コニャックのヴィンテージに関しての詳細はコチラの記事を参照してください。
ルレーNo45の香り立ち
まず最初に言わないといけないのは
「開くまで1時間待つと良い」
ということです。
何を言ってるんだ・・・と思うかもしれませんが、注いだ直後と1時間後では印象が大きく異なるコニャックです。1時間十分に空気に触れされることで最高のポテンシャルを引き出すことができるコニャックと言って間違いないでしょう。
もちろん、これは開栓してからの日数や状態にもよると思います。ましてリコルクされたボトルですからボトルによって個体差も大きいかもしれません。しかし少なくとも私が手にしたボトルは開栓後グラスに注いで1時間グラスの中で待たせることでこのコニャックの真価を発揮できると感じました。
グラスに注いだ直後はかなりレーズンに特化した実直でストレートな香りだったのですが時間が経つにつれて、ただのレーズンから甘い芳香を伴うレーズンジャムへ、そしてスイカズラのようなフローラルさ、ほんのり紫蘇・プラムとオレンジピールといった多くのよう要素が顔を出し始めました。
樽の要素としてレザーのような香りもありますが、あまり強くはありません。タンニンは弱めな印象。
香り立ちの方向性としては酸味を伴う果実味と黒糖・キャラメル・蜂蜜といった甘みを伴う香気成分が心地よく鼻へ抜けていきます。
通常のコニャックグラスでも良いですが、これくらい上品でトゲのないコニャックだったら大振りのバルーングラスに注ぐとかなり幸せな香り立ちを楽しむことができるでしょう。
ルレーNo45の味わい
とても上品で落ち着いたコニャック。
チョコレート系と蜂蜜、リンゴ飴を連想させる粘性と甘みを持った香味と、しばらくすると感じる奥に潜むピーチ感。このほんのりピーチは50年熟成におけるランシオを彷彿とさせます。
香り立ちで感じた時よりもタンニン感は思ったよりありました。タンニン、樽感というか・・・どちらかというとややスパイシーな印象。
余韻は中程度で、喉の奥に瑞々しいブドウが残ります。
同じく50年熟成程のフランソワヴォワイエ エクストラやジャンフィユーCF50のようなグランドシャンパーニュ系の南国系ランシオ炸裂!とは全く逆方向のコニャック。果実味炸裂系を期待すると拍子抜けしてしまうかもしれないのは確か。
印象としてはAEドールNo8などに非常に近い感じ。上品系50年熟成の代表格的な味わい。
人間でいうと100歳くらいの人生経験豊富なおばあちゃんだけど、肌ツヤは20代の瑞々しさを持ったコニャック・・・そんな感じ(何言ってるかわからねーと思うが)
ルレーNo45まとめ
これは久々に買ってよかったと思ったコニャック。どうしてもっと早く出会っていなかったのだろう・・・。
先述したように開栓後の経過日数やボトルの個体差はあるものの、じっくりと焦らずグラスの中で開くのを待つべきコニャック。1時間というのは極端な話かもしれませんが、せめて1杯30分以上はかけて大振りのグラスでゆっくりと空気に触れさせながら飲んで頂きたい。
寝る前にゆっくりと暗い部屋で穏やかでスローテンポなピアノジャズを聴きながらじっくりと楽しみたい一杯として筆頭候補のコニャックです。