コニャックレビュー

【バニュルスカスクフィニッシュ】フェラン コニャック シングルカスク コレクション 2014のレビュー

2022年6月15日

タイトルが長くなってしまいましたが・・・・

新たに購入したのは、コニャック「フェラン」が手掛けるシングルカスクシリーズ。

これまでもチェスナットバレルフィニッシュなど色々とチャンレンジングなコニャックをリリースしてきたフェランですが、今回は甘口ワインで有名な「バニュルス」のワイン樽で1年間フィニッシュさせた変わり種。果たしてその香味とは。

比較的若いコニャック

今回のコニャックの熟成年数自体は非常に若い。

グランドシャンパーニュ100%のシングルカスクですが、2014年蒸留、そして6年間フレンチオークでの熟成後、1年間バニュルスワインカスクでフィニッシュをかけた計7年熟成という期間になっています。

グランドシャンパーニュコニャックとしてはかなり早い段階でのリリースです。

今回カスクフィニッシュに使われたバニュルスのワインは、もとより南フランスで最もテーブルワイン用のワインの生産量が多いラングドック・ルーション地方の南部で作られており、スペインとの国境にも近い位置にある生産地です。AOCとして認められているのは甘口ワインのみ。

ワインの入った大きなガラス瓶を陽に当ててブドウの発酵を促す、珍しい製法の甘口ワインです。

赤ワイン白ワインどちらも生産されていますが、今回このコニャックに使われている樽が赤ワイン用だったのか白ワイン用だったのかは明記されていません。生産量的には圧倒的に赤が多いはずなのですが、コニャックと合わせて白ワインの方を使っているかもしれません。

いずれにせよ、フィニッシュに使用されている樽情報からもかなり甘口の仕上がりが予想されます。

バニュルスワインカスクでフィニッシュをかけたブランデーといえば2020年に発売されたマルキドサンループ15年バニュルスカスクが記憶にあたらしいですね。こちらはカルヴァドスなのでコニャックとはやや塩梅が異なりますが、その比較も面白そうです。

フレンチオークだから使用済み樽のフィニッシュでもOK?

ちょっとここで一つ疑問だったのが、コニャックのフィニッシュにおいて使用済みの樽の使用はOKになったのかということです。

近年コニャックの熟成に関する規定が徐々に変わりつつあり、これまではNGだったフレンチオーク以外の樽の使用も約1年未満であればフィニッシュに使用することがOKになりました。

例えばコニャックパークのミズナラ樽フィニッシュや、フランソワヴォワイエのアメリカンオークフィニッシュなど、これらは全て新樽でのフィニッシュであるが故にコニャックと名乗ってOKというものでした。そのためマーテルのブルースウィフトは使用済みのバーボン樽をフィニッシュに使用していたので自主的にコニャックと名乗るのをやめてリリースされました。

なので今回のバニュルスワイン樽フィニッシュや、フェルベルトという生産者が出している「フィニッシュもの」は一度別のお酒(ワイン)が詰められた樽を使用しているので、これはOKなの???と疑問に思ったのですが、よくよく考えるとバニュルスもソーテルヌも「フレンチオーク」だから使用済みでもOKという枠組みだったのかもしれません。(シェリーカスクは謎)

そう考えると納得・・・。あくまでもフィニッシュの際に新樽を使わないといけないのはフレンチオーク以外の樽(アメリカンオークやミズナラなど)の場合であって、フレンチオークで1年以内のフィニッシュだったら使用済み樽でもOKなのですね。たぶん。

ちょっとこの辺は私の憶測も入っていますので、詳細は後日BNICにも確認したいと思います。

2023/2/9追記

フレンチオーク以外の樽の使用規定についてBNICに確認が取れました。
コニャックの熟成樽については2023年2月時点で下記のような規定となっています。

  • オークの新樽であればフレンチオーク以外でも何年でも使用可能
    →未使用のアメリカンオークやミズナラオークなど、1年半などの期間の制限はない。オークであればエリアは限定されない。フィニッシュに限らず10年でも20年でも熟成に使える
  • ブドウ由来の酒(シェリーやワインなど)に使われたオーク樽であれば古樽でも使用可能。これも使用年数は問わない
  • オーク以外の種類の木からできた樽は新樽でも古樽でも使用できない
    →チェリー樽やアカシア樽などは使用不可
  • ブドウ由来以外の酒(ウイスキーやラムなど)に使用された古樽は使用不可
    →なのでバーボン樽を使ったものやラムで使われた樽の場合はオークであろうがなかろうがコニャックとしては認められない

追記ここまで----------------------

↑コニャックパークのミズナラフィニッシュに使われるミズナラ樽

フェラン コニャック シングルカスク 2014 バニュルスカスクフィニッシュの基本スペック

ではここで改めて今回のコニャックの基本情報のおさらいをば。

容量:700ml
アルコール度数:51.8%(カスクストレンクス)
ヴィンテージ:2014年
熟成年数:フレンチオーク6年、バニュルスワインカスク1年の計7年
生産域:グランドシャンパーニュ100%
その他:ノンキャラメル、ノンチルフィルタード
輸入業者:株式会社アバンテ
購入価格:税込13,200円(2022年6月購入)

フェランのコニャックといえば割と加糖されている物がメジャーだったが故、日本での評価もイマイチ(笑)なところもありますが、今回はたぶん加糖なし・・・だと思う。

実はラベルに「Unfiltered」「Uncaramakized」とはハッキリ明記されているのですが、「Non-sugar」らしき表記は見当たらないんですね(笑)ただ、シングルカスクのカスクストレンクスで出すのですから、ここにきての加糖は正直無意味、というか意味をなさないでしょう。そもそもバニュルス樽フィニッシュなので加糖せずとも相当甘口な仕上がりになっているはずなので、さすがに加糖はナンセンスなのでしていない・・・という風に信じておきましょう(笑)

色がめちゃめちゃ濃い

テイスティングの前に、この色よ色。

とても7年熟成とは思えないほどの色の濃さ。ノンカラメルであることは明記されているので、この濃さはカラメルによる色の調整ではなく樽由来のものです。

最初の熟成に使用したフレンチオークの新樽でここまでの色を出すのであれば相当タンニンが濃い状態になっているはずです。恐らく6年という短期間でフレンチオーク由来の色の濃さであれば渋みが強くてかなりキツい味わいになると思うので、恐らくこの色はバニュルスワイン樽の影響ではないだろうかと思います。

それでは早速抜栓直後のテイスティングへと進んで参ります。

香り

まず感じるのはシガーの箱やタバコの葉っぱを連想させるウッディさ。

チョウジ、ハーブ系のスパイシーさも強く感じることができます。

果実感を拾おうとするとほんのりオレンジっぽさを感じない事もないのですが、全体的にグランドシャンパーニュっぽい柑橘系の果実感は少な目。

若いコニャックに特有の草っぽさは少ない分、やはり樽香がやや支配的な印象を受けます。樽香といっても渋みのある感じではなく、先述のスパイシーさを後から追うようにバニラ香と蜂蜜を含んだ樽っぽさといいましょうか・・・シンプルに言うとかなり甘ったるさと木のニュアンスを入り混ぜたような香り立ちです。この辺りは明らかにフレンチオーク熟成オンリーのコニャックとは異なる香気成分なのでバニュルスカスクの風味が十分に染み出ているように思えます。

少々頭が混乱しますが、良くも悪くもコニャックっぽくなく、どちらかというとペルノやウニクム・・・とまではいきませんが甘苦薬草系スパイス感を強く拾うことができます。3つの要素でまとめるのであれば、スパイス感強めの薬草+樽+ほんのりバニラという特徴的なアロマとなっています。

味わい

これは本当にコニャックなのか・・・

一瞬本当にアルコール度数高めのペルノを飲んでいるかと思ってしまう味わい。アニス系のスパイス感と度数強化したリキュールを飲んでいるかのような甘み。

7年熟成としては異常なまでに濃い色合いに反して新樽由来のタンニンが強く聞いた渋みはそこまで強くないので、やはりこの色合いはバニュルスカスク由来のもの。その分新樽フレンチオークには無いバニラ系の甘みを感じることができます。

コニャックのそれとは大きく異なる味わいに、恐らく何も言われないでブラインドテイスティングすると他のお酒と間違ってしまうレベルです。

余韻としては短めですが、飲んだ後にはほんのり渋みのあるオレンジとタバコ、そしてバニラの順に鼻から抜けていきます。

色合いの部分で書いたように

フェラン コニャック シングルカスク 2014 バニュルスカスクフィニッシュまとめ

独特のスパイス感やバニュルスカスク由来の甘みはとても面白いし、お酒としては大変楽しむことができるボトルです。しかし良くも悪くもコニャックとはもはや別物のお酒である感は否定できません。

私も前衛的な試みはとても大好きで、今回のようなバニュルスカスク1年フィニッシュという強気のチャレンジにはとても興味深々です。

だがしかし・・・うーん、しかし・・・これは果たしてコニャックである必要があるのか・・・というレベルに達しているのもまた事実。

経験としてはとても面白いですが、熟成樽の違いの大きさに驚かされたと同時に、フレンチオークの大切さを改めて学んだボトルでもありました。(何でもかんでもフィニッシュ樽を変えればいいというものではない)

コニャックの伝統を守りつつ、新しい事にもチャレンジする・・・やはり色々と難しいものですね。

もちろんこのチャレンジを否定しているわけではありません。スペックからも大方予想はしていましたが、一般的なコニャックと思って飲むととても驚くボトルです。これまでコニャックをある程度飲んできて、新しい試みに興味があったり、Barなどで常連さんに「こんな面白いのもありますけど、どうです?」といった具合に勧めるのにはとても面白いボトルです。ただいずれにせよやや玄人向けの・・・という部分はありますね。

価格的にも約14,000円という一般的な7年熟成としてはかなり強気の値段でもあります。もちろんシングルカスクで特別なフィニッシュってのは分かるんですが。よほど変わり種に興味ある人しか手が出ないよね感はあります確かに。

ポジティブな側面をとらえて、逆に言うと先述のようにこれまでの一般的なコニャックとしては捉えず変わり種コニャックとしてはとても面白いし、「こんなのもあるんだ!」という経験にはとても良いボトル。価格を気にしないのであれば是非ともトライしてみてほしいボトルでもある。

連続で飲むと疲れてしまうので個人飲みだと1本飲み切るのに最低でも3~4年くらい見といていいボトル。恐らく私は1本で十分。

チェスナットバレルや今回のバニュルスカスクはじめ、前衛的なチャレンジを進めるフェランにはこれからもこの方向で私達を楽しませてほしいと思う( )。

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