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なぜ日本ではブランデーが流行らないのか?

2016年11月21日

前回コチラの「鯉沼康泰氏のセミナーから見えたコニャックの魅力と闇と矛盾」で述べたように、日本においてコニャック含めブランデー全般において中々日の目を見ることが少ないです。

残念ながら同じ蒸留酒であるウイスキーや焼酎並みに人気があるとは言い難い状態です。

なぜコニャックに限らずブランデー全般はあまり売れないのか?なぜ敷居が高いと感じてしまうのか?消費者を増やすにはどうしたらいいのか?私なりの解釈を交え紐解いていきたいと思います。

なぜコニャックの広告はあまり見かけないのか?

まずパッと思い浮かぶのは、コニャックに限らずブランデー類を広告やCMで見る機会が少ないということです。ウイスキーはテレビCMでも見ますし、焼酎だって雑誌の広告や電車の中吊り広告でも見かけます。

それに比べてブランデーはどうでしょう?

「見たことない」という方が大半でしょう。私もコニャックのテレビCMなどは見たことがありません。

これには主に2つの理由があります。
以前、カミュ社のブランドマネージャーに質問したことがありました。「なぜ広告を打たないのか?」

回答は「お金がないから」「原価が上がるから」でした。

お金がない

単純に、広告を打つ程売上が伸びていないからです。

これはポールジローやラニョーサボランといった自家栽培コニャックではなく、ヘネシーやレミーマルタンなどの大手メーカーでも同様の話です。

コニャック5大ブランドに着目してみる

まず、コニャックで最も売り上げの高い、所謂コニャック5大ブランドを見てみましょう。5大ブランドは次の通りです。

  • ヘネシー
  • レミーマルタン
  • マーテル
  • クルボアジェ
  • カミュ

この中で最も大きい企業はヘネシー です。圧倒的な市場規模を誇ります。

現在ヘネシーは「LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン」といって、ルイヴィトングループの一つとなっています。ヘネシーのコニャックの売上はコニャックの市場の約39%を占めており、売上規模では他の4つ(レミー、マーテル、クルボアジェ、カミュ)を足した売上よりも高くなっています。大手4ブランドをはじめ、他コニャックメーカーは全く追いつけない状況にあります。

ヘネシーの売上高と純利益を見てみる

LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトンには次のように様々な事業部があります。

ワイン&スピリッツ部門
ファッション&レザーグッズ部門
パフューム&コスメティックス部門
ウォッチ&ジュエリー部門
セレクティブ・リテーリング部門

2015年のLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン全事業部の合計売上は356億6400万ユーロ(約4兆6363億円)です。

営業利益が66億500万ユーロ(約8586億円)。
純利益は35億7300万ユーロ(約4644億円)となっています。

出典:http://www.lvmh.co.jp/brand/index.html

この中でコニャックの「ヘネシー」が属するのはもちろん「ワイン&スピリッツ部門」。この部門の2015年売上高は46億300万ユーロ(約5983億円)です。(売上全体の約13%)

ワイン&スピリッツ部門には様々なブランドが取り扱われています。ドンペリニョンはじめモエ・エ・シャンドンなどの約24の有名ブランド。コニャックのヘネシーはその一つにすぎません。24で均等割りしてもヘネシーコニャックの売上は200億円程度です。

部門別の純利益は公表されていませんが、売上全体からの純利益と同じ10%程度と考えると、ワイン&スピリッツ部門の純利益は約590億円。コニャックヘネシー単体では20億円程の純利益となります。

この数字は全世界合せての数字です。

日本での売上・利益は非公開のため正確な数字は不明ですが、さらに矮小なものとなっているでしょう。コニャック市場の39%を占めるヘネシーですらこんな状態です。

広告を打つと原価も上がる

最大手のヘネシーですら余力で広告を打つほど余裕がない状態であることと、商品原価に広告費を含めてまで価格を高騰させたくない、という背景があるようです。

そもそも、コニャックの製造はウイスキーや他のスピリッツと比べて製造原価が高い傾向にあります。コニャックはじめ、ブランデーの原料には果実が使用されるため、ウイスキーの麦や穀物と比べて原材料費自体が高くなります。上昇傾向にある原料・人件費の高騰に加えて、さらに大きな広告費まで上乗せするには大きな企業判断が必要となりそうです。

レミーマルタンはプロモーションに積極的

ちなみにレミーマルタン はブランドプロモーションやイメージキャラクターの起用には他社に比べてお金をかけています。

ここ数年レミーマルタンの公式サイトや宣伝に出てくるのはハリウッド俳優のジェレミー・レナー。アベンジャーズのホークアイ役やミッションインポッシブルにも出演している俳優です。私も個人的に好きな俳優さん。

レミーマルタンのオフィシャルサイトはコチラ

出典:http://www.remymartin.com/jp/one-life-live-them/

その他にも多くの著名人を起用したり、輸出先各国の販売代理店でコンテンツを企画したりと、最もブランドアピールに力を入れているコニャックメーカーだと思います。

なぜブランデーは敷居が高いと感じるのか?

ブランデーを普段飲まない一般の方々にブランデーのイメージを聞くと、必ずと言っていいほど返ってくる回答が「よく分からない」と「敷居が高そう」です。 問題は後者の「敷居が高そう」です。

敷居が高い事は良い事か?悪い事か?

そもそもブランデーのイメージとて敷居が高そうと思われることが良い事か、悪い事かという議論になりそうです。

これは正直分かりません。どちらにも賛否両論はあるでしょう。セレブレティな高級酒としてのイメージを定着させていくべきか、もっとテーブルワインのように気軽に楽しめるものにするべきか。

私なりの最適解を言うのであれば「もう少し親しみやすくしてもいいのではないか?」です。何とも抽象的な表現となりますが、「親しみやすさ」を向上させることは大きな意義があると思っています。

高級志向のブランデーを求めるのか、気軽なブランデーを求めるのか、まずはブランデーそのものに親しくならなければ始まりません。

では「親しくない」現状を作りだしている要因は何でしょうか?

個人的に着目したいのは「奥深さ」と「価格」の2つです。

お酒の「奥深さ」の功罪

これはブランデーに限った話ではなく、ワインやウイスキー、その他さまざまな嗜好品に言える事ですが、特にブランデーにおいては日常的に目に触れる機会が少ないだけに、この「奥深さ」が一つの要因のように思われます。

つまりマニアックになりすぎるということ。

これは当サイトも反省しないといけないことなのですが、ブランデーはじめ、様々な「趣味」はハマればハマる程より深い知識、経験を求めるようになります。

そしてそれはいつしか「趣味ではない人たち」との「壁」を作ります。その壁があたかも「知識がないと飲めないお酒」という感覚に陥らせてしまう一要因でもあるのだと思います。

以前コチラの記事にこんな事を書きました。

「大手メーカーではなく、本当に美味しいコニャックは沢山あるけど埋もれているからもっと飲もう!」だけでは全く伝わらないのです。

「コニャックは素晴らしいのになぜ分かってくれないんだ・・・」
「コニャックの魅力を分かってない!」
「この年代のコニャックは◯◯で、このコニャックの熟成年数が云々・・・」

という言い分はコニャック好きの我がままに尽きるという事を感じました。

私が最も懸念しているのはこれです。コニャック好きな方々と、コニャックを知らない方々とのあまりにもかけ離れた認識の違い。ライトな消費者層とのかい離はここにあります。

このかい離は、コニャック(ブランデー)を好きになればなるほど盲目的になりがちです。

私が最も懸念しているのはこれです。コニャック好きな方々と、コニャックを知らない方々とのあまりにもかけ離れた認識の違い。ライトな消費者層とのかい離はここにあります。

このかい離は、コニャック(ブランデー)を好きになればなるほど盲目的になりがちです。

感覚的に高い販売価格

そして最も大かった意見の一つに「そもそも高いくて買えない」です。

どうしても「ストレートで美味しく飲める」質のコニャックをおすすめすると、やはり一般的には少し高いという感覚に見舞われます。レンジとしてはボトル8,000円~くらいでしょうか。

ライトなワイン消費者層の場合、やはり2,500円以上になると高いと感じる方が多いような・・・。

あとは圧倒的にスーパーや酒屋に置いてる量が少ないのも。どこに行っても置いているのはたいていサントリーVOかレミーマルタンVSOPくらいまで。やはり全くお手頃感はない。

サントリーは頑張っている

「敷居が高い」「価格が高い」という点を克服して、世の中の若い人(とくに女性)にブランデーを広めようという試みが一番見られるのは国内企業においてはサントリーです。

サントリーのブランデー「サントリーVO 」を使用した自家製フルーツブランデーシリーズ。(公式サイト)

人気の女性ブロガーを起用したり、サイトデザインも女性向けにかわいく構成されていたり。これまでブランデーのターゲットとなりにくかった20~30代の女性をターゲットとした方向性がとても素晴らしい。

「ブランデーはもっと気軽に楽しく飲めるんだよー」という試みとメッセージがよく伝わってきます。(浸透しているかどうかは別として)

やはりブランデー普及のとっかかりは「気軽」「安い」「楽しい」にあるのだと思う。そこから高級志向に行くか、日常志向に行くかはその人の選択に任せるしかないでしょう。やはり大事なのは「きっかけ」です。

コニャックが最も売れているのはアメリカ

2015年、最もコニャックの消費が伸びた国はフランスでもなく、中国でもなく、アメリカだったそうです。

その一つの背景としてHIP HOP界やR&B界などの音楽の著名人の間でコニャックが流行りだし、それをTwitterやSNSなどで目にしたファン達が彼らに憧れてコニャックを手にし始めた、という現象があったそうです。

憧れからくるコニャック消費。サントリーとはまた違った方面からの展開ですね。どちらかと言うとこれまでの高級志向に近い形の波及。

日本だと誰が影響ありそうかなー。これまでのコニャックの高級イメージにとらわれない有名人だといいですね。渋いおじさま俳優より、20代でハツラツとした女性のほうがよいかと。

うーん、少し前だと、上戸彩さんとかよかったけどなー。あとは、もう鏡月で使われてしまっているけど石原さとみさんとか? めっちゃお金かかりそうですね・・・。

当サイトの使命は

フルーツブランデーにしろ、有名人への憧れにしろ、大事なのはコニャック含むブランデーに興味を持ってもらうきっかけを作ることです。

そう、当サイトの1つの使命は「きっかけ」作りです。

ブランデーが好きな人にはもっとブランデーを好きになってもらうこと。
ブランデーを知らなかった人にはこれから興味を持ってもらう事。
特に大事なのは後者です。

当サイトはブランデーのwebサイトです。
ブランデーを知らなかった人にはこれから興味を持ってもらうためには、いかにしてブランデーに興味がなかった人がGoogle検索などの検索エンジンやSNS等から流入して、コンテンツを楽しんでもらえるかが一番重要なのです。そのためには様々なキーワードで当サイトまでたどり着けるようなコンテンツが必要となります。

そして大手メーカーや大企業にはできない、一個人が運営している当サイトならではのアプローチ方法を考えること。そこにBrandy Daddyの存在意義があるのだろうと思います。

と、いうことで、ライト層にもヘビー層にも、より一層ブランデーに興味を持ってもらえるようなコンテンツや記事に力を入れていきたい所存です。

サイト名ももっと親しみやすい名前に変えようかなぁ・・・とか。
ブランデーを擬人化、キャラクター化してみようかなぁとか。
全く違うジャンルの人たちとコラボ企画したいなぁとか。
色々考える事があります。

当サイトならではのアプローチをした結果、ブランデー業界にどんな影響を与えられるか分かりませんが、きっと何かしらの影響は与えることができるはずです。

そんな事を信じてこれらもBrandy Daddyは「日本ではなぜコニャックが流行らないのか?」の一つの解となれるよう、地味にコツコツと頑張ります。

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