コニャック滞在記2023年 冬

コニャック滞在記2023冬⑮フランソワヴォワイエの熟成庫に潜入:神の領域に達したコニャック達

滞在8日目その2
2023年1月18日(水)

フランソワヴォワイエの蒸溜所でのトークを一通り終え、次は熟成庫へ移動。

※前回のフランソワヴォワイエ記事はコチラから

まずは先ほど蒸留されたばかりのオードヴィーが運ばれてくるタンクへ。これはまさにさっき私がカットさせて頂いたコニャックの元となる蒸留液がタンクへ注入されている様子。
少しでも自分が携わったものが十数年後のコニャックになると思うと何だか感動的です(笑)

ちなみにこの出来立てのオードヴィーはアルコール度数71度くらいですが、ヴォワイエの場合、樽入れの際はアルコール度数68~69度くらいになるように少し加水します。主に熟成速度の調整のためで、70度超えと70度を下回る場合とでは結構影響が違うとのことです。(樽入れの際に70度を超えると熟成が遅い)

若いコニャックが眠る熟成庫へ

フランソワヴォワイエ、Cognac Vaudonのもつ4つの熟成庫のうち、ここは比較的若いコニャックが眠る熟成庫。性質としてはややドライな熟成庫です。

樽のタイプはリムーザンタイプ、トロンセタイプ両方を使用しています。基本的に若いコニャックにはタンニンの量を調整しやすいリムーザンタイプの樽が使われています。

ヴォワイエでは毎年40樽程の新樽を購入するそうです。

こちらでの新樽と古樽の定義としては下記の通り。

新樽:1~3年
ミディアム:4~10年
古樽:10~50年以上

良い樽を長く持たせるポイントは、樽を空にしないこと。1度空にすると数ヶ月で樽がダメになってしまうそうです。これはコニャックに限らず度の蒸留酒でもそうですね。

若いコニャックをテイスティング

こちらの熟成庫でまずは2種類のコニャックをテイスティング。

2020年に蒸留されたばかりのグランドシャンパーニュとファンボアのコニャックです。

アルコール度数はグランドシャンパーニュ69度、ファンボア68度。ファンボアの方が少し若い樽で熟成させていたようなので、色合いも少し濃い仕上がりになっています。

まだ2年程しか経っていないので69度という高い度数ですが、これでもグランドシャンパーニュとファンボアの違いがよく分かります。ファンボアの方が度数高いですが、よりスイート。グランドシャンパーニュの方がボディが太めです。

全てのバッチ、樽の全ての香味をコントロールするピエール氏。多くのヴィンテージを隅々まで知り尽くしているからこそ安定したブレンドが可能となります。

10年熟成をテイスティング

その後試飲させて頂いたのは2010年のグランドシャンパーニュとファンボアのコニャック。どちらもアルコール度数は63度。

先ほどの2020年のものと比べると明らかに熟成が進んで、このあたりはVSやVSOPのブレンド元となるコニャックです。まだアルコール度数は高いものの少しずつフルーツ感と程よいウッディ要素が相まみえ、ヴォワイエっぽさが出てきたように感じます。

このセラーは比較的ドライなため、アルコール度数が減少しにくい環境にあります。(アルコール度数よりも水分が先に蒸発するため度数が下がりにくい)

全てのコニャックは熟成庫の湿度に影響を受けます。ここにあるコニャック達(特にグランドシャンパーニュのコニャック)はよりパワフルな香味を持つコニャックに育てるためこの熟成庫が適しています。逆により円やかなコニャックに仕上げる場合はもう少し湿度の高い熟成庫に移します。

ドライな熟成庫は変化も激しいためより繊細なコントロールが必要ですが、フランソワヴォワイエ、Cognac Vaudonのキャラクターとしてはやはり力強さを求めるためドライセラーでの熟成は最重要ポイントです。

35%のコニャックは大手メーカーへ

フランソワヴォワイエ、Cognac Vaudonのコニャックの約35%を大手生産者に供給しています。残りの65%が自社ブランド用のコニャックです。

売買バランスとしては今のそのくらいの割合がちょうどよいそう。

より熟成が進んだ樽へ

それから少し移動でして、より熟成が進んだコニャックが熟成庫へ。

ここでは1978年グランドシャンパーニュと、1975年ファンボア、そしてフランソワヴォワイエ オルダージュとなるコニャックを樽から直接テイスティングさせて頂きました。

フランソワヴォワイエ オルダージュが眠る樽

ここまでくるともうさすがの一言。まさにヴォワイエのキャラクターとなるトロピカルなランシオが一気に出るコニャック達です。

フランソワヴォワイエ オルダージュは年間280本ほどしかリリースされない貴重なボトル。日本にもいくつか輸入されていますね。60年熟成近い超貴重なコニャックなのですが、ダイレクト試飲させて頂く機会を頂き感謝感謝です。。。

その後、最近リリースされたBar Dorasさんのプライベートボトルでもあるフランソワヴォワイエ1977ヴィンテージの話も盛り上がり、「あのヴィンテージはよかった・・・」と皆口をそろえて頷いていました。

まさに天国:パラディセラーへ

そんなこんなで一通り楽しませて頂いたあと、究極のヴィンテージコニャックが眠る天国の熟成庫:パラディセラーへ移動。

ここではフランソワヴォワイエのフラッグシップボトルとなる、フランソワヴォワイエ オルダージュ、アンセストラル、そしてフランソワヴォワイエ究極の90年熟成を超えるボトル「Collection Personnelle」の原酒となるコニャック達が眠っています。

このパラディセラーで最も若いのは1960年ヴィンテージ。最も古いのは1914年ヴィンテージのコニャックです。

樽熟成のピークは過ぎたため、ガラス瓶(ダムジャン)に移し替えられ大切に保管されています。(だいたい樽熟成50~60年を超えるとガラス瓶に移される)

今回何とそれぞれのヴィンテージをテイスティングさせて頂くことになりました!もうこれだけで天にも昇る思いです。

まず頂いたのは1960年ヴィンテージ。フランソワヴォワイエ オルダージュとアンセストラルのブレンドの一部になるコニャックです。

1960ヴィンテージ

続いて頂いたのは1930年ヴィンテージ。こちらはフランソワヴォワイエ アンセストラルとCollection Personnelleのブレンド元となるコニャックです。ピエール氏の祖母の時代に作られたコニャックで、彼お気に入りのヴィンテージの一つです。

そして最後に頂いたのは1914年ヴィンテージ。マッシュルームを伴う熟成感そして弾けるようなピーチ・・・もうそんな言葉では表せられないほどの幸福感です。これを味わせて頂くだけでも今回コニャックに訪問した意味がありました。本当にありがとうございます。。。

1914ヴィンテージ

オルダージュは年間280本前後、アンセストラルとCollection Personnelleも年間の生産量が非常に限られたコニャックです。ちなみにオルダージュに関しては約3年に1回新しいブレンドを行います。(直近では2022年と2019年)

大切なのは生産量をセーブして古い貴重なヴィンテージを大切に使って長く良いコニャックを供給できるようにすること。

ブレンドでさらに魅力を引き出す

ここで重要なのは、この素晴らしいヴィンテージがブレンドされて一つのコニャックに仕上がるということ。

ピエール氏曰く

それぞれのヴィンテージはもちろん単体でも十分素晴らしい。しかしそれらをブレンドすることで更に魅力を引き出すことができる。特に1960年の持つタンニンと1930年が持つエレガントな余韻が交わると最高のコニャックになる。

単一ヴィンテージでも十分素晴らしいコニャックをブレンドにより更に一段階上のレベルに昇華させる。その技術はまさに熟練の神業です。まさにコニャックの神髄はブレンドにあり。

その技術はいかに機械化が進もうとも誰も真似できない一子相伝の伝統なのです。

蒸溜所での対談

一通り天国の熟成庫を回らせて頂き、蒸留所に戻ります。

そしてここでは更に2時間ほどピエール氏と共にじっくりとフランソワヴォワイエの全てのラインナップをテイスティングさせて頂く事に。

テイスティングと合わせて2時間以上の貴重なお時間を私との対談に使って下さり感謝感謝です。

最も興味のあったフランソワヴォワイエのランシオについて色々と教えて頂きました。その神髄とは・・・

次回
→ヴォワイエコニャックを隅から隅まで:究極のランシオに迫る(準備中)

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