コニャック滞在記2023年 冬

コニャック滞在記2023冬⑭神コニャック「フランソワ・ヴォワイエ」訪問

2023年4月12日

滞在8日目その1
2023年1月18日(水)

この日は今回のコニャック渡航で最も楽しみにしていた日の一つ。私の最も好きなコニャックでもあり、当サイトの最もおススメするコニャックとして君臨し続ける「フランソワ ヴォワイエ(François Voyer)」への訪問です。

今回のヴォワイエ訪問は学びが多すぎてなかなかのボリュームになるので記事は3つに分けて書いていきます。

普段色々な質問や情報の連絡をやり取りさせて頂いていたフランソワヴォワイエのマネジャーMorgan氏とコニャック市街地で待ち合わせし、車で迎えに来て頂きました。ありがとうございます。

車を走らせること約20分、Francois VoyerとCognac Vaudonがある村Verrieresに到着。

会社的にはビバルディという会社名で約10名の社員と共にフランソワヴォワイエ(Francois Voyer)とコニャックヴォ―ドン(Cognac Vaudon)の2ブランドを生産しています。

フランソワヴォワイエは主にグランドシャンパーニュの原酒を使用したコニャック。コニャックヴォ―ドンはファンボアのコニャックがメインのブランドです。日本に正規輸入されているのは今のところフランソワヴォワイエのみとなります。

ピエール氏と対面

早速蒸留所内に案内して頂き、セラーマスターのPierre Vaudon(ピエール・ヴォ―ドン)氏と対面。ピエール氏はコニャックヴォ―ドン、フランソワヴォワイエのコニャックの原料となる葡萄からワイン造り、蒸留、熟成、ブレンドの全てを管理しあの素晴らしいヴォワイエコニャックを世に輩出しているまさに人間国宝のような方。今回そんなピエール氏に約6時間にわたり蒸留所や熟成庫、テイスティングをご一緒させて頂き様々な事をお話頂きました。

本当に貴重な機会をありがとうございます。

左がピエール氏

ファンボアの蒸留真っ最中

今回伺ったタイミングはちょうどコニャックヴォ―ドンの原酒となるファンボアのオードヴィーを蒸留しているヴォンヌショーフのタイミングでした。

こちらでは12月上旬までにグランドシャンパーニュの蒸留を完了させ、その後12月中旬から3月まではファンボアの蒸留に専念するそうです。

蒸留器は25ヘクトリットル容量と20ヘクトリットル容量の2基。

この写真で作り出されているのは実際にコニャックとなるハートの部分。これから徐々にアルコール度数が下がっていき、アルコール度数59~57度まで下がったタイミングでカットを行います。

ハートやテールなどのコニャック蒸留の流れはコチラの記事をご参照下さい。

アルコール度数はあくまでも目安で、実際のカットタイミングは全てピエール氏の判断の元行われます。留液の香りからケミカルな香りや石鹸のような香りが発生するようになってきたらカットのタイミングが近い証拠。

全てはピエール氏の鼻にかかっている

カットのタイミングが近づくとオードヴィーの状態は非常に不安定になります。アルコール度数も上がったり下がったり、オードヴィーの質もまるで水のように薄い香味と豊かな香味を行ったり来たりします。

この行ったり来たりしている不安定なオードヴィーが完全に薄いオードヴィーになる直前がカットのタイミングです。このタイミングは早すぎても遅すぎてもダメ。

気温や気圧によってもカットのタイミングが変わるため常に自然の気候も読みながらカットタイミングを見極めるそうです。特に気圧の変化は蒸留時の蒸気に大きな影響を与えるため結構気にするそう。そのため3月末までの蒸留時期はこの蒸留所に付きっきりだそう。いくら機械化が進んでも最終的な判断は熟練の経験を要します。もうこの辺は神業の領域です。

また連日のオードヴィーの状態を比較するため5日分のオードヴィーのサンプルが小瓶に分けられすぐそばに置いてあります。

5日分のファンボアのオードヴィーと、グランドシャンパーニュのオードヴィーの香りを比較させて頂きましたが、この時点でかなり特徴が異なるので改めて驚きです。

カットをさせてもらう

カットのタイミングが近づくとピエール氏のお父さんが蒸留所にやってきました。ピエール氏の父であり師匠でもあります。

ピエール氏のは小さいころから熟練の技術をお父さんから学んできたそうです。

蒸留所に入って約40分後、奇跡的にカットのタイミングに立ち会うことができました。

「切り替えやってみる?」

とピエール氏。

いいんですかー!?ありがとうございます!!

ピエール氏がOKというタイミングでこのスイッチを上にあげます。スイッチを切り替えると留液の流れる管が切り替わり、これまでとは別のタンクに流れるようになります。これがスゴンドとなり、次の蒸留時のブルイと一緒に再蒸留されます。

切り替えのタイミングを見極めるピエール氏。見ている私まで緊張してきました・・・。

慎重にタイミングを計るピエール氏
先代も一緒に

しばらくしてOKのサインが!

ガチャン!をスイッチを切り替え、カット完了!

・・・といってもスイッチを下げただけですが。
後ほどこの私がカットさせて頂いたオードヴィーをお土産として頂きました!ありがとうございます。アルコール度数は70.6%ありますが、もうこの時点で素晴らしい香り立ち。

このオードヴィーは私の宝物になりました。毎日大切にスーハーと香りをかがせて頂きます(笑)

(Voyerと書いているけどVaudonの間違い)

澱を使うか使わないか

フランソワヴォワイエとコニャックヴォ―ドンでは蒸留の方法も少し異なります。

大きな違いの一つは蒸留するワインの澱を使うか使わないか。

フランソワヴォワイエ、コニャックヴォードン供に「このバッチは短熟向け」「このバッチは長熟向け」という方向性を決めた上で蒸留を開始します。

その際に重要なのがワインを蒸留する際に混ぜる澱の存在です。

ヴォワイエの場合

グランドシャンパーニュコニャックであるフランソワヴォワイエは100%澱を使用し、力強いオードヴィーに仕上げます。

コニャックヴォ―ドンの場合

ファンボアコニャックであるコニャックヴォ―ドンは澱を使うか使わないかはその時のオードヴィーの状態を見て判断するそうです。具体的にはより力強くトーストのような香味を求める場合は澱を加え、よりフローラルでクリアな仕上がりにしたい場合は澱と一緒には蒸留しません。また澱と一緒に蒸留したオードヴィーの方が長期の熟成にも耐えられ、長熟になればなるほど香味豊かになる傾向にあるので、20年や30年と熟成させるコニャックには澱と一緒に蒸留したものを使用するそうです。具体的にはコニャックヴォ―ドンXOやコニャックヴォ―ドンEXTRA向けのオードヴィーですね。

逆にVSやVSOPなどの長期熟成を必要としない若いファンボアコニャックにおいては、よりfiness(という表現)を求めるため澱を混ぜないで蒸留する方式を取るとのことでした。

その判断は各バッチ毎にどういう方向にもっていくか今後の熟成過程まで考慮してピエール氏が判断します。

もちろん最終的に完成形となるVSやVSOPが全て澱を使用しないコニャックかというとそうではなく、最終的にはピエール氏のブレンドによって決定されます。あくまでもそういう傾向にある、くらいで捉えて下さい。

フランソワヴォワイエの秘密が詰まった熟成庫

蒸留の様子を一通り見させて頂いたあと、ピエール氏と共に熟成庫へ移動。

どのような樽の種類が使われているのか、どのように熟成が進むのか・・・をみっちり教えて頂きました。

そして最もエキサイティングな時間であるパラディセラーではとんでもないコニャックをテイスティングさせて頂き・・・

ということで長くなってしまったので熟成庫の話はまた次の記事で!

次回
→フランソワヴォワイエの熟成庫に潜入:神の領域に達したコニャック達(準備中)

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