コニャック滞在記2023年 冬

コニャック滞在記2023冬⑲デラマン訪問:神業的加水の秘密はフェーブルに

2023年11月5日

滞在9日目その3
2023年1月19日(木)

前回の記事
厳重に守られたHINE(ハイン)のヴィンテージ熟成庫とアーリランデッドコニャックの真相

HINEを後にし近くのカフェで昼食(予想の3倍デカいステーキ)を食べたあと、すぐ隣のコニャック デラマン(Delamain)に訪問。アポ取りの時からメールでやり取りして頂いていたデラマンのエクスポート部門担当Aristide氏が暖かく迎え入れてくれました。この日はかなり寒く、外も小雨が降っていたのでまずは紅茶を頂きたながらお互いのバックグラウンドを語りながら応接間でデラマンについての説明をして頂きました。

改装されたばかりの応接間

デラマン最大の特徴

デラマンは所謂「ネゴシアン」。自社のブドウ畑、醸造施設、蒸留器を持たないブランドです。

契約農家から蒸留されたオードヴィを購入し、それを自分達で熟成させます。熟成家ということですね。

デラマンのコニャックは全てグランドシャンパーニュのコニャックに限定されています。

また新樽を全く使用しないのも特徴です。

デラマンの製品は、最も若い熟成年数でも15年。XOクラス以上の商品しか生産していないのも特徴ですね。

ちなみに全ての商品においてノンカラメル・ノンシュガー・ノンオークチップです。

加水は行っていますが、その加水方法がかなり特徴的で、デラマンが加水の神様ともいわれている所以です。加水に関しては詳細を後述します。

HINEとデラマンの関係

実は意外と知られていないHINEとデラマンの密接な関係性。両社は建物も隣同士なのですが実は創始者の血縁関係もつながりがあります。

デラマンの歴史をたどると事の始まりは1759年。アイルランド出身のジェームス・デラマン氏が義父のJean-lsaac Rasion(ジャン=イサック・ランソン)氏と共にジャルナックの地で輸出会社Ranson & Delamainを始めました。なおランソン氏はもともとコニャック生産者だったそうです。

コニャックのネゴシアンとしてはかなり古株の存在となります。

実はここでコニャックHINEとの面白い接点があります。HINEの創設者であるThomas Hineは元々Ranson & Delamainの従業員でした。その後1792年にThomas Hineはジェームス・デラマン氏の娘であるElisabeth Delamainと結婚し、ジェームス・デラマン氏と共にRanson & Delamainで事業を広げました。

その後Ranson & Delamainは1817年に一度経営破綻しています。Thomas Hine氏は同1817年に独立しHINEを創設。ジェームス・デラマン氏は会社経営をストップしますが、彼の孫息子にあたるHenri Delamain(アンリ・デラマン)氏が1824年にMasion Delamanとしてコニャック事業を再開させ、9代続くコニャック デラマンの今に至ります。

デラマンとHINEは実は親戚関係にあたるんですね。建物が隣同士になっているのも納得です。

参考記事
厳重に守られたHINE(ハイン)のヴィンテージ熟成庫とアーリランデッドコニャックの真相

デラマンのイメージカラーは何故青なのか?

数年前までデラマンのイメージカラーは茶色でしたが、2017年あたりを境にブランドイメージカラーが青へと変わり、パッケージやラベルの色が青を主体とするものになりました。

これはデラマンファミリーがコニャック事業を始める前、アイルランドで陶器の工場を営んでいたからです。デラマンの起源を見直すため、当時生産していた陶器のメインカラーである青をデラマンのイメージカラーに取り入れたそうです。祖先の営みを大事にしたいとの想いです。

デラマンの熟成庫で樽の違いを味わう

こちらは地上1階の熟成庫

その後Aristide氏と共にデラマンの熟成庫へ移動。一面に並ぶ樽は壮観です。

先述したようにデラマンは新樽を使用しません。全体的に5~10年程しようされた古樽で熟成を始めます。そのためデラマンのコニャックはタンニンが少ない傾向にあります。一般的にグランドシャンパーニュコニャックはリムーザンオークが使用され、一般的にコニャックは新樽を使用する期間によりタンニンの量を調整しています。タンニンは長期熟成下において酸化防止剤の役目も果たすので、長期熟成が可能なグランドシャンパーニュコニャックはタンニンの量も多く、樽感も強くなりがちなのですが、デラマンの場合は新樽を使わないのでグランドシャンパーニュコニャックでありながら樽感少な目のクリアなコニャックに仕上がる傾向にあります。

デラマンは合計10ヵ所ほど熟成庫を持っていますが、こちらはデラマンの最も古いメイン熟成庫でジャルナックの市街地にあります。比較的熟成が進んだコニャックが熟成されています。1階と地下1階に分かれています。1階は風通しがよく比較的ドライ。地下1階はやや湿度高めな熟成庫です。

こちらは地下1階の熟成庫

デラマンの定番商品「ペールアンドドライ」は郊外のドライな熟成庫で熟成された後、最終的にこの地下1階の熟成庫に運ばれ、少しの間眠ります。そしてその後大きなタンクに移されてブレンドされ、ペールアンドドライとして完成を迎えます。

ちなみにここにある最も古いコニャックはこの1865年。オークでの樽熟成は終えているので大切にディミジョン(ガラス瓶)に保管されています。

ここでテイスティングさせて頂いたのは若いコニャック3種類。

樽に入れて数年経ったコニャック(アルコール度数70度)
ちょっと経ったコニャック(アルコール度数69度)
更に数年経ったコニャック(アルコール度数65度)

アルコール度数は高いですが、コニャック好きであればこのままでも十分に楽しめるフルーティーさです。

この時点でコニャックの基準ではXOクラス(最低10年熟成)を満たしており、XOコニャックとして出荷は可能ですが、まだ品質的にデラマンの基準を満たしていないためまだまだこれから熟成させます。先述したようにデラマンは若いコニャックはリリースしておらず、最低でも20~25年熟成させたものがXOとして製品化されます。

そしてこちらがようやくデラマンのコニャックとして最低限ブレンド可能となった状態のコニャック。2002年ヴィンテージで熟成年数は約20年。アルコール度数は61度です。この段階からようやくデラマンのコニャックとして認められます。ここから次のステップに進みます。そう、神がかり的な加水です。

ちなみに話は飛びますがこちらがデラマンのチルフィルター。

約マイナス6度でフィルターします。これにより温度変化による発生するコニャックの不純物を取り除きます。全ての商品にチルフィルターするわけではありませんが、デラマンXOペールアンドドライなどの定番商品には品質を保つためにチルフィルターを通します。

神がかり的な加水の秘密:デラマンのフェーブルとは?

20年経ったコニャックでもアルコール度数60度前後とまだ高いので、ここから必要に応じて少しずつ加水します。

なお、デラマンのコニャックで加水が行われるのは基本的に定番商品である「ペールアンドドライ」「XO(旧デラマン ヴェスパー)」「XXO」のみです。他のシングルカスクやプレイヤードシリーズや限定商品などは基本的に加水は行わず自然に下がったアルコール度数のままです。

この加水に使用されるが「フェーブル(Faible)」と呼ばれる蒸留水とコニャックを混ぜて熟成させたアルコール度数15%の液体です。この加水に使用するフェーブルとその加水タイミングがデラマンコニャックにおいてはかなり重要。

ここにフェーブルが保管されています。

フェーブルが入った大樽

このフェーブルを加水に使用しアルコール度数を下げることで、蒸留水のみを使った場合よりもよりコニャックの風味を損なわずにアルコール度数を下げることができます。

ペールアンドドライの場合

ペールアンドドライ」「XO(旧ヴェスパー)」「XXO」においてはフェーブルによる加水を1回だけ行います。例えばペールアンドドライの場合、ボトリングの直前に加水されるわけではなく最低でもボトリングの24ヶ月前に1回だけフェーブルによる加水が行われます。ボトリング直前に一気に加水すると香味が崩壊するからです。

そしてフェーブルで加水しアルコール度数が46%くらいまで下がった後はこの湿度の高い熟成庫で1年半ほど寝かせ、自然にアルコール度数が42%に下がるまで待ちます。

デラマンのフェーブルを味わう

ここで我儘なお願いを聞いて頂き、デラマンのフェーブルを飲ませて頂きました。ずっと飲んでみたかった。

これがデラマンのフェーブル

色はこんなこんな感じ。アルコール度数は15%なので味わい的にはコニャックの薄い水割りに近いのですが、これ単体でも美味しかったです。まぁ好んで飲むものではないですが・・・。とりあえずフェーブルを飲めただけでも満足でした(笑)

※重要:デラマン以外のフェーブル※

フェーブルとはフランス語で「faible=弱い」を意味する言葉で、その名の通りアルコール度数の弱い液体の事を指します。実はコニャックのAOCにおいてFaibleの規定はありません。コニャックの規定では加水は「蒸溜水」を使用することが義務付けられています。

デラマンの場合は蒸留水とコニャックを混ぜたものを使用していますが、他の生産者が使っているFaibleはまた違ったりします。例えばコニャックを混ぜるのではなく、コニャック空樽に蒸留水を入れて、樽とコニャックの成分を蒸留水に加えたものを使用したりする生産者もあります。

Faibleとは加水の際になるべくコニャックの味わいを壊さないように工夫された各生産者ごとの加水テクニックなのです。

厳重に鍵が掛かったヴィンテージエリアへ

一通り熟成庫でのテイスティングを終えたあとはデラマンのヴィンテージ熟成庫へ移動。

デラマンもHINEと同じくヴィンテージ専用の熟成庫を保有しており、そこには二重の鍵穴があります。

HINEの記事でも書きましたが、コニャックをヴィンテージとして出荷するには厳しい制約があります。その一つが樽の保管です。

正式なヴィンテージコニャックとして出荷するには次の2つのいずれかを守る必要があります。

  • 樽に蝋封をかけてBNIC(コニャック協会)立ち合いのチェック時以外は開封しない
  • ヴィンテージせ専用の熟成庫に2つ鍵をかけ、一つはBNICが保管する

ほとんどの生産者の場合、ヴィンテージ用の熟成庫を用意するのは大変なので前者を選ぶことが多いのですがHINE(ハイン)と同じくデラマンの場合は2つ目熟成庫自体にカギをかける方法を取って厳重に保管されています。なのでヴィンテージ熟成庫内の樽には蝋封は施されていません。

ヴィンテージ熟成庫内のヴィンテージ樽達

デラマンのアーリランデッドコニャック

デラマンもHINEと同じくアーリランデッドコニャックが存在します。

デラマンのアーリランデッドコニャックはリバプールの川沿いの熟成庫で熟成されたもの。めちゃめちゃ湿度が高いらしく、21年間でアルコール度数70度→45度まで自然に下がったそう。

アーリランデッドコニャックとは?

アーリーランデッド(Early Landed)コニャックとはコチラの記事に詳細をまとめていますが、

フランス・コニャック地方で収穫から蒸留・樽詰めまでを行った後、樽の状態で英国に運ばれ熟成・瓶詰めされたコニャックの事を指します。アーリーランデッドとは「熟成前に陸揚げされた」という意味を持ちます。

熟成場所としては主にイギリス南西部の港ブリストルや、ロンドンのテムズ川沿いの倉庫を指すことが多く、これらイギリスでの熟成環境は、年間気温も低く(8~12℃)、湿度も平均95%となっているため、水分の蒸発が遅く、よりまろやかでフローラルな香りとなるのが特徴的です。

ゆっくりとデラマンコニャックテイスティングタイムへ

偉大なるヴィンテージエリアを見せて頂いた後はテイスティングルームに戻ってAristide氏と共に一通りデラマンのコニャックをテイスティング。

日本でも入手可能な定番商品「ペールアンドドライ」「XO(旧ヴェスパー)」に加え「XXO」。

そしてプレイヤードシリーズを飲ませて頂きました。 プレイヤードシリーズは日本だとこの1種類しか入ってないっぽいのでこれは素直に良い機会を頂きました。

デラマン プレイヤードシリーズとは?

https://delamain-pleiade.com/

プレイヤード(PLEIADE)シリーズはデラマンが2021年ころから始めたシングルカスク、シングルヴィンテージシリーズです。プレイヤードシリーズは3つのカテゴリに分けられているのですが、あまり日本だと浸透していないのでその判別を書いておきます。

デラマン プレイヤードシリーズ公式サイト

PLEIADE Collection Révélation

ブルーラベルのラベル。最も若いカテゴリ。20~30年のシングルデラマンコニャックがメイン。
2023年時点だと次のボトルがラインナップとしてある。

各ボトルの詳細はコチラから確認可能です。→PDFを見る

PLEIADE Collection Plénitude

シルバーのラベル。中間カテゴリ。熟成年数30~50年のラインナップがメイン。
2023年時点だと次の2ボトルがラインナップとしてある。

PLEIADE Collection Apogée

ゴールドのラベル。最も熟成を経たカテゴリ。熟成年数50年以上のラインナップ。
2023年時点だと次の2ボトルがラインナップとしてある。

各詳細のテイスティングコメント詳細はここでは控えますが、この中ではCollection Apogée ヴィンテージ1967年がとても印象に残りました。そしてこの1967年は樽の使い方も大変面白い使い方をしています。

通常コニャックの樽は主にトロンセタイプかリムーザンタイプに分かれますが樽の板を両タイプ交互に組み合わせたハイブリッド型の樽がこの1967ヴィンテージには使用されていて、それ由来なのかとでも独特。良い体験をさせて頂きました。

コニャックの市街地まで送ってもらう

Aristide氏と共にテイスティングタイムを終えた後、クルボアジェに赴任しているサントリーの伊藤さんと待ち合わせして一緒にコニャック市街地に帰りその足で一緒にディナーの予定だったのですが、待ち合わせ時間よりも何と3時間近く早く予定が完了してしまったため急遽Aristide氏にコニャック市街地まで送ってもらうことに。雨もやや本降りになっていたので大変助かります。ここまで色々とよくして頂いたAristide氏、本当にありがとうございました!!

朝からコニャック→ジャルナックの徒歩旅でやや疲れも残っていたので16時過ぎに部屋に帰り、伊藤さんとディナーの約束の19時まで少し仮眠をとることに。

仮眠を取ること約2時間。18時に起きて窓の外を見ると・・・・そこは一面大雪の銀世界。

・・・え!!?何で!!!??何事!!!?

次回
シャトー・ド・モンティフォー訪問:野田祥子さんの1日ガイド

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