コニャック滞在記2023年 冬

コニャック滞在記2023冬②3年ぶりのABK6とベテラン蒸留責任者ダニエル氏と再会!そして今年の蒸留液は・・・

2023年2月5日

滞在2日目その1
2023年1月12日(木)

朝9時半にアングレームのホテルでABK6(アベカシス)コニャックのアジアマーケット担当アルノーと待ち合わせ。

アルノーとは2019年12月に初めてABK6を訪問した再に出会いました。その時彼はABK6に入社して数ヶ月の時。その時は2日間行動を共にし、その後滞在の最終日にはストライキで電車が動かなくなり途方に暮れていた私をアングレームからパリまで車で送ってもらったりと色々助けてもらいました。そして2022年5月に日本で行われたABK6テイスティングセミナーでは私も一緒にセミナー主催させて貰ったり、一緒に東京のBar巡りをしたりなど楽しいひと時を過ごさせて貰いました。

2022年5月、東京にてアルノーと私

そんなアルノーは何と今年2023年の2月で次のステージに進むためABK6を離れます。ABK6に入って初めて会った日本人が私で、最後に会う日本人も私という何とも奇跡的なタイミングに驚きを隠せません。アルノー、今までありがとう!

3年間で変わったことは?

ABK6の基本情報は3年前と大きくは変わりません。

3年前の情報とABK6の特徴、そして訪問記は是非こちらをご参照下さい。
ABK6の全てを語ろう(1) 最大級のシングルエステートコニャック

彼らの生産体制、蒸留場所のこだわり、ファンボアだけどファンボアじゃない畑等々・・・様々な面白い特徴が分かると思います。

簡単にABK6の特徴をまとめると下記のような感じです。

ABK6コニャックはDOMAINES FRANCIS ABECASSIS(ドメーヌ・フランシス・アベカシス) という会社のコニャックブランドの1つです。
DOMAINES FRANCIS ABECASSISオフィシャル

DOMAINES FRANCIS ABECASSIS(ドメーヌ・フランシス・アベカシス) は現在コニャック3つ、その他スピリッツ1のブランドを展開しています。

コニャックに関して言えばこの「ABK6」、「LAYRAT」そして「REVISEUR」という3つが全て自社内で生産を行っているコニャック。

生産規模的には中規模の割と大きな生産者ですが、この規模には珍しい完全独系コニャック生産者です。

彼らのコニャックは全てブドウの栽培・収穫・発酵から熟成・ブレンド・ボトリングに至るまで全て自社で行っていること。原料となる葡萄の栽培から収穫、発酵、蒸留、熟成、ボトリングまで全ての生産体制を一貫して自社内で行うというのは、所謂我々が認識しているところの「プロプリエテール」に当たるのですが、彼らの言葉としては「Single Estate Cognac(シングルエステートコニャック)」という呼び方をしています。(その言葉を浸透させたいらしい)
なお、他社(大手コニャックメーカー)にも自社コニャックを降ろしていません。ノウハウを守るため全て自分たちで使い切ります。

そんなABK6コニャックですが、この3年で変化があったのは主に次の2つ。

  1. 畑の面積が増えた
  2. セラーマスター(マスターブレンダー)が交代した

です。

1.畑の面積が増えた

2019年時点でABK6は全体で370ヘクタールの畑を持っていました。

ファンボアに3か所:計117ヘクタール
プティットシャンパーニュに2ヵ所:計96ヘクタール
グランド・シャンパーニュに2ヵ所:計157ヘクタール

そして今回2022年にファンボアエリアに新たにブドウ畑を20ヘクタールほど開墾しています。

車で移動中に見ただけなので写真を撮り忘れたのですが、畑にはまだ小さなブドウの苗木がかわいく並んでいました。

ちなみに畑は勝手に増やしていいわけではなく、もちろんちゃんとした許可が必要です。コニャック的にもそうですが、フランス全体でブドウ畑を所有できる割合が決まっています。

イメージとしてはフランス全体の畑面積の上限が決まっていて、その何パーセントの割合がコニャックに割り当てられます。それをさらに生産域ごとに分配しているイメージです。

グランド・シャンパーニュ地区やボルドリ地区などはエリアが狭いので基本的にこれ以上新たにブドウ畑を開墾することはできません。それらの地域で新たに畑を取得するには現在の所有者から畑を買い取ったり譲渡してもらうのが一般的です。

しかしコニャック生産域で最大の面積を誇るファンボアエリアはまだ開墾できる面積が残っています。

もちろん新たに開墾するにはBNICの許可を得なければいけないので、生産規模や管理能力など様々な審査が必要です。新たに20ヘクタール畑を増やせるのはそれだけABK6の事業規模も大きくなってきているということです。

2. セラーマスター(マスターブレンダー)が交代した

2022年の春にABK6含むDOMAINES FRANCIS ABECASSIS(ドメーヌ・フランシス・アベカシス) 全体のマスターブレンダーが交代しました。

これまではイザベルさんでしたが、現在はFrédéric David氏となっています。

David氏(左)と私

2019年の参考記事
ABK6マスターブレンダーとの貴重な2時間対話と10分で作ったオリジナルブレンドコニャック

David氏は少し変わった経歴の持ち主で、フランスの行政区画でありラムの産地としても有名なグアドループにてラム作りに長年携わってきた方です。13年間、Rhum Bologneとうアグリコールラムのマスターブレンダーとして活躍していました。この度コニャックのマスターブレンダーとしてABK6に抜擢されました。

ラム業界からコニャックのマスターブレンダーに転身と聞くと驚く方も多いかもしれませんが、意外と多いみたいです。(クルボアジェもそう)

新設されたボトリングライン

現在ABK6はじめDOMAINES FRANCIS ABECASSIS(ドメーヌ・フランシス・アベカシス) には2つのボトリングラインがあります。

一つは昔からあるボトリングラインですが、もう一つは2021年頃に新設された施設です。これも変化があった出来事の一つですね。

昔からあるタイプのボトリングラインは全自動式なのですが、基本的にスリムボトルしか対応していないタイプのボトリングラインでした。そのため幅広のデキャンタタイプのボトルはほとんど手作業で瓶詰作業を行っていました。

それに対応すべく新設されたのがこちらの様々なボトルの形に対応できる新型ボトリングライン。

新設されたボトリングライン

といっても半自動式で、細かな調整や最終チェックなどは人の手によって行われます。

ボトリングの流れは基本的にどこも同じなのですが、
①瓶内洗浄→②コニャック注入→③コルク締める→④ラベル貼る→⑤クリアキャップ占める→⑥ボトル検品→⑦箱入れ→⑧最終検品
という流れです。

①の瓶内洗浄は消毒も兼ねていますが、瓶内に残っている小さなホコリやチリなどを除去する目的が大きいです。洗浄に使われる液体はメーカーによって様々なのですが主に下記ようなものが使われます。

  1. 商品と同様のコニャック
  2. 商品より少しアルコール度数の高いコニャック
  3. 蒸留水
  4. 無味無臭のウォッカ

1と2の使い分けはアルコール度数の違いで、洗浄に使用したコニャックが瓶内に残留した際に少しアルコール度数が下がってしまうことがあり、最終的に全体的な度数が40度を下回らないようにするため2を使うメーカーもあるのだそう。

ちなみにABK6の場合は4の無味無臭のウォッカ(自社製品)をコニャックボトルの洗浄に使用しています。コニャックの洗浄にウォッカを使うというは意外で、ビックリする方も多いかもしれません。

ボトルを逆さにして下から洗浄用の液体が噴射されます

ボトリングラインの様子を撮影したので、興味ある方は是非ご覧ください。(掲載許可済み)

蒸留責任者ダニエル氏と再会

ABK6含む、LEYRAT、REVISEURといったDOMAINES FRANCIS ABECASSIS(ドメーヌ・フランシス・アベカシス) が保有する3つのブランドには、ファンボアエリアに1ヵ所、プティットシャンパーニュエリアに1ヵ所、グランド・シャンパーニュエリアに1ヵ所の合計3ヵ所に蒸留施設をもっています。そして合計で9人の蒸留担当者が存在します。

この日伺ったのは本社横にあるファンボアエリアの蒸留施設。ファンボアエリアの蒸留施設はABK6のメインオフィスのすぐ隣にあります。場所は Domaine Chez Maillard とよばれるところです。

ファンボアエリアの蒸留器

ここにはABK6で長年蒸留責任者を務めるダニエル氏がいらっしゃいます。ここの蒸留担当はこの大ベテランのダニエルさん1人のみです。2019年に伺った際もたくさんの事を学ばせて頂きました。

参考記事
ABK6の蒸留と熟成庫

3年前と変わらない癒し系笑顔で出迎えてくれて私もほっこり。

ちょうどこの日も蒸留真っ最中で、タイミング的にボンヌショーフ(蒸留の2回目)で、コニャックの元となるハートを取り出している最中でした。

参考に3年前にまとめたABK6コニャックの蒸留工程の図を再掲しておきます。
※クリックでPDF表示

これはあくまでも2019年時点のABK6のファンボア地区での蒸留方法です。細かい蒸留方法(特にヘッドやスゴンドの扱い)は生産者や蒸留器の大きさやによっても異なりますのでご注意下さい。

今年のボンヌショーフはアルコール度数高めでベリー系強し?

さて、今回も蒸留したて出来立てのボンヌショーフを頂いてきました^^

頂いたといってもアルコール度数70度くらいあるので、香りを楽しんで少し舐める程度です。

それでもコニャックの元となる液体ですので、様々な香りを楽しむことができます。

ダニエル氏によると、私が訪れた2019年と比較すると今年はもう少しベリー系の香味が強い傾向にあるとのこと。

糖度が上がり、アルコール度数の上限が変わった

これはBNICのニュースでも発表があったのですが、2022年の夏は猛暑により気温が例年よりもかなり上がり、コニャックの生産域が全体的にブドウの糖度が上がりすぎてしまいました。

糖度が上がるとコニャックに十分なクオリティを得るためのワインのアルコール度数も上がります。ワインの度数が上がると、コニャックの芳醇な香味を凝縮するために作る蒸留液の度数も上げる必要があります。(ハート→スゴンドのカットのタイミングが通常よりも早くなる)

そのため、これまではコニャックに使われるオードヴィー(上の図でいう「ハート」の部分)のアルコール度数は72.4%が上限だったのですが、今期(2022年10月~2023年3月までの蒸留)は例外的に上限73.7%まで認められています。

この糖度の高さと度数の高さがベリー系の香味を強くしている要因の一つだそうです。

私が以前訪れた2019年も比較的猛暑で、イチゴ系の香味が強かったのです。(自分の過去記事読み返して思い出した(笑)
それよりも更にベリーの香味が強くなって本当にベリーベリーとのこと。

その後ダニエル氏と今年の蒸留の状況を色々と教えてもらい、最後に記念撮影^^

また来年も会うことを約束して蒸留施設を後にします。

未来の蒸留器を初めて見る

ファンボアの蒸留施設を後にして、車で10分程のレストランで昼食をとった後は、マスターブレンダーとのパラディセラーでのテイスティング会、そしてグランド・シャンパーニュ地区に移動して様々な話を伺います。

グランド・シャンパーニュではコニャックにまだ2台しかない未来の蒸留器を初めて目にすることができました。

これまでのシャラント式蒸留器と大きく異なるその画期的な仕組みとは・・・

次回
地球環境と蒸留器とコニャック:伝統 vs エコロジー

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