コニャック滞在記2023年 冬

コニャック滞在記2023冬⑬至高のボン・ボア コニャック

2023年4月6日

滞在7日目その4
2023年1月17日(火)

前回の記事の続き。ボン・ボアエリアの家族経営コニャック生産者「Domaine de Chêne」にて至高のピノー・デ・シャラントを一通り楽しませて頂いた後、別の熟成庫に移動。次はコニャックを試飲させて頂きました。

ここは8つの熟成庫のうちの一つ。比較的長熟のコニャックが保管されている場所です。もちろん全て彼らの畑からできたボン・ボア産のコニャック達です。

至高のボン・ボアコニャックが眠る熟成庫へ

訪れた熟成庫は比較的ドライな熟成庫。先程のピノーデシャラントが保管されていた熟成庫とは少し空気が違い、室温も少し寒いように感じました。

ここではまず20年熟成になるコニャック達を試飲。

その後ヘリテージとなる40~50年熟成のコニャックを試飲。

最後に1989ヴィンテージのシングルカスクコニャックを試飲。

どんな樽が使われているか?

Domaine de Chêneで使われている樽は割合としては繊維の隙間が大きいリムーザンタイプの樽が多いですが、繊維の細かいトロンセタイプの樽も使用しています。

どのタイプを使うかはそのコニャックの個性に合わせてセラーマスターが選定。もう少しタンニンが欲しいなと思ったら新樽も使用しますし、樽の内部表面を削って使うこともあるそうです。ちなみにDomaine de Chêne的にはいわゆる「古樽」と呼ばれる樽は使用期間5年目くらいからとのこと。古樽(old barrel)の定義は生産者によって色々期間が違ったりするので毎回聞くのも面白いです。

素晴らしいボン・ボアコニャックの最適解

グランドシャンパーニュ、プティットシャンパーニュ、ファンボア、ボルドリ、ボン・ボア、ボアゾルディネール、そしてボン・ボアという6つのコニャック生産域のなかでこれほどまでにボン・ボアのコニャックに向き合ったことがこれまにあっただろうか。

私含めコニャックファンの関心はどうしても最良の土壌とされるグランドシャンパーニュやプティットシャンパーニュにいきがちです。しかしながら、それは土地や葡萄の優劣ではなく特徴としてうまく捉えることができます。

ボン・ボアの土壌はミネラルを多く含むグランドシャンパーニュと比較すると中央山塊から運ばれてきた砂地質の土壌が多く、やや痩せている土壌といった風に言われることもありますが、それ自体は短所だけでなくその土地の個性としてうまく生かすことができるものだと改めて認識することができました。

ボン・ボアコニャックの原酒は大手コニャック生産者でもブレンドの一部として部分的に使われることはありますが、ボン・ボアがメインで使われることはありません。また他のボン・ボアエリアのコニャック生産者で突出して高い評価を得ている生産者が少ないのも事実です。それは多くの生産者からのコニャックをブレンドする大手コニャック生産者や、他のボン・ボアエリアの生産者にとってボン・ボアコニャック単体をグランドシャンパーニュやプティットシャンパーニュと同じレベルまで高品位なコニャックとして昇華するのがいかに困難かを示しています。

対して今回訪問したDomaine de Chêneにおいては彼らのシングルカスクコニャックDoussoux Single Cask N. 89がワールド・コニャック・アワード2020で数ある有名コニャック生産者を抑え、最優秀賞であるワールドベストコニャックを受賞し、さらに2022年彼らのフラッグシップボトルであるDoussoux XOヘリテージがワールドコニャックアワード2022でまたも最優秀賞を獲得し、多くのコニャックファンからも評価されたボン・ボアコニャックとして君臨しています。

当初、こういったアワードやコンペは実際に飲んでみるまで私も眉唾ものだと思っていた部分が正直あったのですが、実際に現地を訪れ彼らの話を聞き、テイスティングさせて頂き、その実力をしっかりと体感することができました。

最良のボン・ボア コニャック?「Jean Doussoux XO Héritage」

ボン・ボアコニャックはその特徴を掴むのが大変難しいコニャックでもあります。実際、ボン・ボアコニャックは生産者によって香味が大きく異なり、グランドシャンパーニュコニャックのように「オレンジ感」、ボルドリコニャックの様に「フローラル」といった代表的な香味を当てはめるのが難しいコニャックだと感じます。

このブログを見て下さっているコニャックファンの方々も「ボン・ボアコニャックの特徴って何?」と問われるとなかなかピンと来ないという方も多いのではないでしょうか。

ある生産者では香味が土の香りが強いと思えば、ある生産者では極端に樽を効かせたようなものもあります。土地的な特徴というよりも生産者毎の個性が非常に強いエリアと言えます。これはボンボアの土壌柄、柑橘系や桃系などの複雑なフルーティーさを前面に出した作りがやや難しいこともあり、樽由来のタンニンで力強さを強調し個性を出す傾向が強いという背景にあるように思えます。(これは私の所感です)

私の感覚的に、ボン・ボアコニャックの特徴的なアロマとして挙げられるのはグランドシャンパーニュよりもより強い「レザー」「ヴァニラ」「湿った土」とったウッディ要素です。しかしそれだけでは確かに単調になりがちなので、コニャックに豊かさを与えるフルーティーな香味をどこまで引っ張り出すことができるかがボン・ボアコニャックの鍵となると思います。

そんなボン・ボアの特徴的な香味、そしてフルーティーさを兼ね備えたコニャックがDomaine de Chêneのコニャックでした。

そして私が最良のボン・ボアコニャックとして猛プッシュしたいのは先述した40~50年熟成の長熟ボン・ボアコニャック「Jean Doussoux XO Héritage」です。

Jean Doussoux XO Héritage

ボン・ボアの特徴的な「レザー」「ヴァニラ」「湿った土」といった香味を十分に感じつつ、余韻には長期熟成に現れるピーチ、そしてパッションフルーツといった南国フルーツを思わせるランシオ。ランシオ香の種類にはいくつかのステップがありますが、このランシオは間違いなく40年~50年の長期熟成ステップに存在する、エステルが凝縮され、果実味を伴ったランシオです。

参考記事
ランシオ香とは何か?ランシオの正体とランシオを感じるおすすめコニャック5選

この香味の違いは同じDomaine de Chêneのコニャックでも20年熟成のもと比較すると差が明らかで、20年熟成のボン・ボアコニャックには存在しない果実味がこのヘリテージには存在しました。

何が凄いって、ボン・ボアエリアのコニャックでここまで長期熟成に耐えられるコニャックを作っていることです。一般的に長期熟成に耐えやすいグランドシャンパーニュのコニャックと比べ、ボン・ボアのコニャックはそこまで長熟に耐えるのが難しいと言われていますが、50年以上の樽熟に耐え、長熟ランシオを持つコニャックに昇華させるのはさすがの技術としか言いようがありません。

これまで私が飲んできたボン・ボアコニャックの中で最良のものは何か?と聞かれたら、このボン・ボアの代表的な香味をふんだんに含みつつ、長熟ランシオの余韻を十分に感じさせてくれる「Jean Doussoux XO Héritage」が最適解であると断言できるでしょう。

再訪を約束しDomaine de Chêneを後に

熟成庫でのテイスティングを終え、応接室へ移動。

ここでもいくつかのコニャックを改めてテイスティングさせて頂きました。

やはり何回飲んでもJean Doussoux XO Héritageが素晴らしすぎたので、2本購入。ちなみに現在Jean Doussoux XO Héritageは通常ボトルタイプとデキャンタタイプの2種類ありますが、中身は同じです。デキャンタの方が50ユーロくらい高いのですが「瓶代なのでフツーの方がいいよ(笑)」と言ってフツーの方をおすすめしてくれましたありがとうございます。

そしてお土産に200mlのJean Doussoux VSOP、Jean Doussoux XO 20年、Jean Doussoux フォルブランシュの3本を頂きました。ありがとうございます!日本に帰ってじっくり飲み比べさせて頂きます!

そんなこんなでブランデーダディ史上最も素晴らしいボン・ボアのピノー・デ・シャラントとコニャックを堪能させて頂きあっという間の3時間となりました。

また次は収穫シーズンに伺い、美しい葡萄畑を一緒にまわることを約束し、コニャック市街地へと帰路につきます。(また車で送ってもらった)

翌日はいよいよグランドシャンパーニュで勢いのあるコニャック生産者で、私が最も好きなコニャックブランド「フランソワ・ヴォワイエ」を丸1日訪問させて頂きました。現オーナーのピエール・ヴォ―ドン氏と数時間にもおよび対談をさせて頂き、神のようなコニャックを飲ませて頂き・・・濃すぎる1日をお楽しみに!!

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