コニャックレビュー ブランデーグラス

コニャックグラス比較検証第2弾:その③熟成の進んだコニャック編

2017年6月7日

コニャックグラス比較検証第二弾その③。

前回の記事では比較対象グラスを使って熟成年数10年程度の若いコニャックを検証しましたが、今回は熟成年数45年以上の熟成が進んだコニャックを使っての実験です。

参考記事
比較検証に使用するグラス一覧
グラス比較検証その②:若いコニャック編

対象は次のコニャック3種類

何とも素晴らしいコニャック達。

銀座doux barの横井氏に検証協力

前回の記事に引き続き、今回の熟成の進んだコニャック編もご協力頂いたのは、銀座でコニャック・カルヴァドス・フレンチラムなどのスピリッツを中心に取り扱っているdoux barのオーナー横井貴久氏です。

コニャックのベテランは果たしてどのような評価を下すのでしょうか。

グラスの確認

では改めて今回使用するグラスをもう一度見てみましょう。

なお、今回のグラス選びのテーマは「お手軽でコスパよく楽しめるグラス」です。そのため、グラス価格帯は一脚800円~3,000円程度としており、一脚5,000円以上のちょっとお高いグラスは選定対象外としていますので悪しからず。(5000円以上のグラス検証はまた別の機会にて記事にしたいと思います)

左から

前回、熟成年数10年のラニョーサボランVSOP No.10に最もおすすめなグラスは「チポラ リキュールグラス 95」となりましたが、今回の熟成が進んだコニャック達では果たしてどのような結果になるのでしょうか。早速それぞれの香りと味わいの違いを見ていきましょう。

ウィルスバーガーアニバーサリー 9oz コニャック

横井氏

液面の面積が大きいので、ややアルコールのツンツン感が気になります。
リムがすぼんでいる分、刺激は緩和されていますが、リムを切り取ってボディの経だけで見ると、今回のラインナップの中では一番ボディ経が広いグラスですよね。

多分煙突部分を切り取ったら一番刺激が強くなってしまうグラスかも。
リムの口径も広いため、鼻をツッコむ形になり、やや香りが直接的。
また口径が広いことにより、コニャックが舌の上にドバーっと広がってしまうので、若干飲みにくさもあります。

ウィルスバーガーアニバーサリー 6oz ダイジェスティブ

横井氏

9ozよりバランスはいいです。
リムのエッジが効いているため、そこまで香りが滞留しないですが、このカーブの作り方がエレガントでウマいのか、それなりには香って上がってきます。
芳醇さとアルコールのツンツンさが同じ割合で上がってきますが、完全にはミックスされていません。おしいところで100%バランスはとり切れていません。

・・・これはこれで香って美味しいんですけどね。
容量も小さいので、滞留しきれずに、カーブと一緒にそのまま抜けちゃってる感じ。惜しいです。あと一歩足りない感じ。

タサキ 熟成ブランデー S 12oz

このグラスはフロリレージュとジャンフィユーレゼルヴヴファミリアル・ポールジローヘリテージで結構感じ方が変わりました。

フロリレージュを飲んだ場合

横井氏

うーん、また甲乙つけがたいですね・・・。
芳醇な香気が増える事によってリムの特徴が出るかなと思ったのですが、そんなに出ないですね・・・。バルーン型の限界を感じてしまいますね。

ただ、リムが開いている分、リムが窄まった普通のバルーングラスよりは香り立ちがいいですね。
VSOPの場合はもそもの香気成分は少ないので分かりにくいですが、フロリレージュは香気成分を完全に活かしきることはできず、ちょっと及第点。

ジャンフィユー レゼルヴファミリアルとポールジロー ヘリテージでは変化が・・・

横井氏

ジャンフィユーレゼルヴファミリアルとポールジローヘリテージをこのグラスに注いだ場合かなりマイルドになりました。
フロリレージュより熟成が進んでいる事と、コニャックの特性が異なることも影響しているかと思いますが、芳醇な香気がグラスを満たせるようになってきました。アルコールの揮発速度に芳醇さが追いつくようになりましたね。

若いコニャックだとアルコールが先に出てきてしまうので明らかにダメなのですが、熟成が進んで行くにつれて使えるようになります。
とは言ってもこの50年熟成程度でもややアルコール感がキツイ印象がありますので、100年熟成くらいのもっと熟成が進んだコニャックであればハマるかもしれません。でもこのグラスにバチっとハマるコニャックを見つけるのは難しいでしょうね。

タサキ 若いブランデー 12oz

横井氏

残念ながらあまり香りが立ちません。
せっかくの長期熟成の香気成分がうまく滞留せず、空気とミックスされないので、アルコールの刺激が多く上がってきてしまいます。
この熟成までくるとちょっと期待してたんですけどね・・・。

余談ですが、家に帰ってこのタサキ 若いブランデー 12ozでビール飲んだらめっちゃ美味しかったです。

ポリ社グラッパグラス

横井氏

ボディが小さすぎるため滞留が足らず、うまく香りが上がってきません。
やはりグラスの液面を直接嗅いでいるようです。やや物足りなさを感じますね。

チポラ リキュールグラス 95

サントリー ウイスキーフライトテイスティンググラス

横井氏

VSOP(10年)で検証した時はベストなグラスでしたが、今度は芳醇な香りに対してのボディの大きさが小さすぎます。
VSOPと違い、滞留してうまく混じってミックスする前に、鼻にアルコール臭が入ってきてしまいます。
フロリレージュ45年、ポールジローヘリテージ50年、ジャンフィユーレゼルヴファミリアルのポテンシャルを引き出してない感じ。ちょっと勿体ないですね。

ルイジボルミオリ スキップ 5oz

ルイジボルミオリ ヴィノテクスピリッツ(フタ付き)

横井氏

うん、これはバランスがいいですね。
液面の面積と滞留具合が丁度良く、熟成の進んだ香気成分とアルコールがうまくミックスされてリムから上がってきます。
スタンダードな形状ですが、やはり優等生です。
また、リムの上に鼻の穴が来るので、滞留されミックスされた香りがちょうどよく鼻に入ってくる感じ。

グレンケアン ブレンダーズ モルトグラス

横井氏

意外とグレンケアンは香りが立たない。ルイジボルミオリと形状は似ていますが、この微妙なボディの膨らみ加減とリムの反り具合で滞留具合が結構違いますね。
またガラス素材もルイジボルミオリは無鉛クリスタルなのに対し、こちらは普通のソーダガラスなので、それも素材の差もあるのかもしれません。
グレンケアンもいけるかな?と思いましたが、やや期待外れでした。

テイスティンググラス(リカーズハセガワ)

横井氏

このグラスもお手頃でいいのですが、ボディの膨らみが足りないため、香りの滞留に乏しい印象です。

最もバランスの良いグラスは

なるほど・・・ では、この10種類のグラスの中から、熟成が進んだコニャックにおすすめグラスを選ぶならどれでしょう?

横井氏

今回検証したラニョーサボランフロリレージュ、ポールジローヘリテージ、ジャンフィユーレゼルヴファミリアルに絞って考えると、次の2つですね。

うーん、あまりにもスタンダードで面白くない結論ですみません(笑)
でもやっぱりこの形がバランスいいんですよね・・・。

このくらいの熟成年数(45年以上)になってくると、ラニョーサボランVSOP(10年)の時よりもややボディが広めで香気成分がうまく滞留できる空間が必要です。そのバランスが最もよいのがこのグラスですね。

2つのグラスの違いは?

ルイジボルミオリ スキップ 5oz
ルイジボルミオリ ヴィノテクスピリッツ
この2つのグラスの形はほぼ同じですが、差はありますか?

微妙な違いはリム経と容量。ヴィノテクスピリッツの方がリムが1mm広く、容量も10mlだけ大きいです。

横井氏

うーん、これはほぼ同じです。(笑)
ヴィノテクスピリッツの方が容量が10ml多いので、熟成具合によってはヴィノテクスピリッツの方がまろやかに感じるかもしれません。
正直この2つで香りと味わいを区別して使い分けるのはちょっと難しいです。

リッド(蓋)は必要か?

ルイジボルミオリ ヴィノテクスピリッツにはリッド(蓋)付きバージョンと蓋なしバージョンが販売されていますが、蓋ってあった方がいいですか?

横井氏

そうですね・・・僕の個人的な見解になりますが、ウイスキーの場合は香味成分がそんなに高くないので、蓋をして香りを閉じ込めて、蓋を開けた時にパッと香りを開放させる意味はあります。
しかし、コニャックの場合は香味成分が多く蓋をしなくても充分に香り立つので、そこまで閉じなくてもいいのではないかと思います。

なるほど、コニャック向けにルイジボルミオリ ヴィノテクスピリッツを買う場合は蓋はなくても問題ないと。
ちなみに蓋なしならルイジボルミオリ ヴィノテクスピリッツは1,000円くらいで購入可能です(2017年6月時点)。安い・・・。

本当なら個体ごとにグラスを選びたい

横井氏

ルイジボルミオリ スキップ 5oz、ルイジボルミオリ ヴィノテクスピリッツ、このグラス形状は本当にスタンダードで、ある程度どのコニャックでも可不可なく対応できる優等生グラスだと思います。

本当ならば、ブランド別、熟成年数別に各コニャックの特性を理解したうえで適切なグラスを選び抜くのがベター。
ただ、全てのコニャックでそれをやろうとすると現実的にちょっと難しいです。

横井氏

「コスパよく、ある程度どんなコニャックでも美味しく飲めてしまう優秀なグラスは?」

と聞かれるとこのルイジボルミオリ ヴィノテクスピリッツという回答になるかと思います。
前回のVSOP編ではチポラリキュールグラスが最適でしたが、このグラスでももちろん対応はできます。そういった意味では万能型のハズレがないグラスですよね。
これからコニャックを飲まれる方で、最初に買ってみるグラスとしてはベストだと思います。

あまり面白くない回答ですみません。。。
本当はウィルスバーガーアニバーサリーあたりに逆転ホームランを打ってほしかったのですが、結果的にこのスタンダードな形状のグラスが勝利してしまいました。

いえいえ、結果的にこのスタンダードなグラスが一番良かったという事実を再確認できたことは大きな成果だと思います。

横井氏

うーん、結局このグラスか・・・面白くない・・・

↑最後まで諦めきれない横井氏(笑)
次はまた違うグラスで再検証ですかね。

まとめ

と、いうことで

熟成が進んだコニャック

を対象としたグラス検証。

お手軽でコスパよく楽しめるグラス」というテーマに沿って今回最もおすすめとなったのは

でした。

ルイジボルミオリ スキップ 5ozでもよいのですが、理屈上やや容量が大き目のヴィノテクスピリッツの方が熟成の進んだコニャックの場合はまろやかになるということで、ヴィノテクスピリッツ僅差の勝利ということにします・・・。

グラス検証の今後

今回の検証はラニョーサボラン フロリレージュ(45年)、ポールジローヘリテージ(50年以上)、ジャンフィユー レゼルヴファミリアル(50年以上)を対象としたお手頃グラスの最適解を見つける検証会でしたが、グラスとコニャックの組み合わせは無限大。まだまだ様々な可能性がありそうです。

また、価格帯5,000円以上のちょっとお高いグラスはまた別の機会に検証会を企画したいと思います。

次回はこれらのお手頃グラスと、王道リーデルグラスと比べてみます。
果たして今回最適グラスに選ばれた一脚1,000円グラスとリーデルの一脚16,000円グラスとではどのような差がでるのでしょうか。価格差にして10倍以上。その差は果たして・・・・

次回
「コニャックグラス比較検証第2弾:その④お手頃グラスVSリーデルグラス」
をお楽しみに。

2017/6/21記事追加

その④お手頃グラスVSリーデルグラスを読む

なお、今回最適解に輝いたルイジボルミオリ ヴィノテクスピリッツはかなりお手頃価格で入手可能なので、是非とも皆様お試しくださいませ。

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検証協力:銀座doux bar

doux bar
コニャック・カルヴァドス・フレンチラムなどのスピリッツを中心に取り扱っている銀座のオーセンティックバーです。オーナーの横井貴久氏が長年情熱をもってコレクションされているボトルが沢山あります。コニャック好きなら是非一度^^

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