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日本に忍び寄る黒船:ブランデー海外通販の足音

2019年5月28日

「あと2、3年もすれば日本におけるコニャック・アルマニャック・カルヴァドスの一般消費者への流通は海外通販がメジャーになるかもしれない。」

というのがここ最近私の思う所です。今回はブランデーのレビューなどからは離れ、ブランデーのネット市場を少し見てみましょう。

私はじめ多くの人にとってコニャック、アルマニャックなどのブランデーを買う手段は大きく2つです。

・実店舗で買う
・ネットショップで買う

特にブランデーにおいては、ウイスキーやワインなどのメジャージャンルと比較すると専門店が圧倒的に少なく、たとえ専門店であっても取扱い種類がかなり限られているのが実状です。可能であれば信頼のおける実店舗で実物を手に取って買いたいものですが、なかなかそうはいかない場合もあります。

コニャックはじめ、ブランデーを買う場合、私はかなりの割合でネットショップを利用しています。国内でのネットショップでいうと、モールであればAmazon楽天。その中でも店舗を絞るとすると、信濃屋リカーズハセガワお酒のちゃがたパーク河内屋などが代表格に挙げられるでしょう。

その他、Amazonや楽天などのモールに出店していないネットショップとしては武川蒸留酒販売武蔵屋などといったところでしょうか。

海外通販を利用する

その他、国内で手に入らないブランデーに関しては主に海外通販を利用し、フランスや諸外国から個人輸入しています。

「個人輸入」と聞くとハードルが高く感じるかもしれませんが、別にそんなことはありません。フツーに海外のネットショップで買って、日本に送ってもらうだけです。少しハードルがあるとすれば、

・基本的に英語かフランス語
・日本への発送に対応しているショップのみ
・一度の購入本数に制限がある場合がある
・送料がやや高い
・関税がかかる場合がある

税関と聞くとこれまたビビりますが、ほとんどの場合は代引きと同じで、商品受け取り時に配送業者に自宅前で現金で清算します。わざわざ税関に出向くなんてことはありません。そもそも一度に760mlボトル3本までの個人輸入であれば免税なので特に申告も支払も不要です。

コニャックの海外通販と言えば、有名処としてCognac ExpartCognathequeなどが挙げられます。これらの海外ショップは国内ではなかなか手に入らない日本未輸入のブランドやボトルが数多く揃えられており、多少送料や関税がかかったとしても「欲しい!」と思うものばかりで、見ていて飽きません。

実は虎視眈々と狙われる日本

コニャックを代表例として挙げると、今やメインの市場となっているのはアメリカと中国です。この2強市場に比べると日本のコニャック市場はとても矮小なもので、バブル期などの全盛期(?)と比べると10分の1以下の市場規模とも言われることも・・・。

しかしながら、このBrandy DaddyやInstagramを運営して以来、海外のネットショップ運営者から度々お問合せを受ける機会があります。
そのほとんどが

・日本でコニャックをネットショップで買う場合、皆どこで買っているのか?
・どのような商品が売れ筋がよいのか?
・うちのネットショップのレビューを書いてくれないか?

等々です。

そして色々話を聞いていくと口を揃えて言うのが

「実はこれから日本語も対応して、日本人にも買い物してもらえるようにしたいと考えている。」

という事です。もちろん売上が低迷している日本への進出姿勢は慎重です。

ポイントとしてはコンタクトを取ってきた媒体がコニャックの“メーカー”ではなく、コニャックを多く取り扱う“ネットショップ”からのコンタクトであることです。具体的にどこのネットショップかまでは公言しませんが、少なくとも某コニャック専門ネットショップ3店舗と某アルマニャック専門ネットショップ2店舗以上とでそのようなやり取りがありました。しかもより現実的に、より早期に。

他業界に見る海外通販の進出

海外通販の壁といえば、先ほどの「ハードル」に挙げた点でも「基本的に英語かフランス語」という言語の壁は比較的大きいのではないでしょうか。

私の場合は仕事柄英語を使ったり海外の方々とやり取りする機会に恵まれましたので(一応TOIEC 940点あるんだぜ!←)特に多言語には抵抗はありませんでしたが、日本語以外のやり取りに慣れていない方の場合、「万が一トラブルになった際にどうしたらいいのか・・・」「何かめんどくさそう・・・」といった不安が必ず頭をよぎります。

自動翻訳された怪しい日本語などであった場合、余計に不安になります。

しかし、もしも怪しい日本語でなく、ちゃんと翻訳された日本語で、しかも日本語対応ができるカスタマー担当者がいてメールやチャット、電話でも日本語で対応してくれる海外ショップだったら・・・。その言語の壁が取り除かれただけでも、個人輸入のハードルは一気に下がります。

他の業界ではどうか・・・

ウイスキーやワイン等のシェアが大きいお酒に関しては海外から個人輸入しているファンも少なくはないかと思います。

他の業界はどうでしょうか。メジャーなジャンルであればあるほど、先ほどの言語の壁は取り除かれ、送料や関税といった追加料金の問題も割引クーポンなどによって間接的に実質負担がないようなところも多く存在します。

つまり、発送拠点が海外にあるだけで、フツーにネットショッピングするのと同じ感覚なわけです。そこに国境はありません。

例えば、私はブランデー以外にもロードバイクやカメラが趣味で、よく海外からパーツを個人輸入しています。海外通販を利用した場合の方が圧倒的に安く済むことが多いからです。5年ほど前まではあやしい日本語対応していなかったロードバイクの海外通販サイトも、今では日本人スタッフが常駐し、ほぼ完璧な日本語サポートを受けられるようになりました。

最初は不安だった商品の品質や返金に関してもしっかりと担保されるようになり、そのサイトが発展するにつれてクオリティが高くなっているのを感じます。

日本に広がる未輸入のコニャック達

日本においてコニャックやアルマニャック、カルヴァドスといったブランデー達はまだまだ全体の数パーセントしか入手することができません。

海外から気軽に個人輸入ができるようになると、その圧倒的な品揃えは大きなアドバンテージになることでしょう。そしておそらく国内で買うよりも安く手に入るものが多く出てきます。

テセロンLot29なんかはジャパンインポートシステムの正規輸入品ですら2015年までは日本でも小売価格6万円後半くらいで手に入ったのに、2018年後半から約8万円後半~9万円台と大きな値上がりとなっています。(ジャパンインポートさん・・・・)

しかしながら、海外の某通販サイトに目を向けるとテセロンLot29は未だに約560ユーロ(約68,000円)で入手することが可能であり、送料や関税を考慮しても「海外から個人輸入した方がいいのでは?」と思う人も多くいることでしょう。

もちろん品質に問題が無い事は前提条件であり、細かいところに目が行ってしまう我々(?)にとっては、その品質や保管・輸送の状態などは大変気になるところでもあり、それをどのような形で品質が担保されているのかを示すのかは今後の課題としいて挙げられるかもしれません。(私の経験上、品質自体は問題なく、それを分かる形で「どう示すか」が課題)

余裕こいてる場合じゃない日本の通販事情

この海外ネットショップ勢による圧倒的な品揃えと価格は、我々消費者にとっては大変な魅力であると同時に、国内の販売業者にとっては大変な脅威でもあります。

ロードバイクの場合も、数12年前までは「お店にパーツを買いに行こう!」だったのが、10年前には「楽天やAmazonで探してみよう」になり、5年前からは「海外通販で仕入れよう」という流れに完全に変わっており、実店舗での販売は縮小するばかり。国内の楽天やAmazonにも売っていない高価なパーツも海外通販で20%オフ、40%オフという実店舗で買うには馬鹿らしくなるくらい格安で手にはいってしまうため、国内の販売店はネットショップも含めやられっぱなし状態である。

これと同じことがコニャック・アルマニャック・カルヴァドス市場でも起こり得る可能性があるという事を強く言っておかなければなりません。

私はブランデーが国内通販で売れようが、海外通販で売れようが、より良いものがより広く手に入るのであれば良いという考えなのですが、このブランデー市場における海外通販が世に広まることが結果的にブランデー業界にとってプラスに働くのか、マイナスに働くのかは断言するのは難しいです。

日本におけるブランデー市場はまだまだ鎖国状態に近い現状があります。どちらに転ぶにせよ、マニアックな(?)ファンが多いコニャック・アルマニャック・カルヴァドスに関してはこれまで国内の販売店で購入していた人たちが一転して海外通販に走るという事も充分に考えられます。

より珍しいものがより多く、品質が保たれた状態で(しかも安く)手に入るとなると、どう考えても海外から個人輸入した方がメリットがあるからです。

「うちは色々仕入れているから大丈夫」
「うちには常連の固定客がいるから大丈夫」
「うちはネットショップも力入れてるから」

などとたかを括っている販売店には警鈴を鳴らしたい。本当にそうなのか一度考え直した方が良いかもしれない。言語の壁、送料の壁、関税の壁が薄くなるにつれて確実に黒船にヤラれちゃいますぜ。

これはここで私が言おうが言うまいが、必然的にやってくる現実です。

酒税法上、小売業者であっても酒類販売免許(一般と通販)を持っていれば海外から自身で輸入したコニャックを一般消費者に売る事は可能だし、個人の場合は免許なんかもってなくても小売店をすっとばして直接個人輸入することも可能です(ヤフオクとかで継続転売しない限りは)。その場合最も不利益を被るのはインポーター・卸業者かもしれません。

我々にコニャック・アルマニャック・カルヴァドスを提供してくれている日本のインポーターは大変優秀であり、とても良い商品をもたらしてくれます。そこはいち消費者としてとても感謝しています。一番良いのは国内販売も海外販売も良い具合に競合して切磋琢磨してより良いものを広めてくれることなのですが、国内インポーターの衰退は結果的に日本コニャック市場の衰退にも繋がりかねない事が懸念されます。そこだけがちょっと心配。

ということで、今後2、3年のコニャックネット通販事情は注目度が高いと思われます。これからの動向も要チェックですね。

とりあえずさ、テセロンLot29値上げしすぎじゃないかな・・・。

テセロン LOT 29 700ml

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