コニャック買い増し。
今回のレビューはグランドシャンパーニュコニャックのプロプリエテールとして有名な作り手ダニエル・ブージュより、ダニエル・ブージュ トレヴィユー(Daniel BOUJU Très vieux)です!
何気に当サイトでダニエル・ブージュを取り扱うのは初めてかもしれません。ダニエル・ブージュはバーで飲むことがほとんどで、これまで家には置いていませんでした。
ダニエル・ブージュとは・・・
1805年創業のダニエル・ブージュ社は、グランシャンパーニュ地区のほぼ中心にあるサン・プリュイユ村に約24haの広大なブドウ畑を所有する家族経営のコニャック生産者。現在はダニエル氏と息子フランソワーズ氏の二人が、収穫から瓶詰めまでの全工程を管理するプロプリエテールとして自宅の敷地内でコニャック造りに取り組んでいます。
通称「ブラック コニャック」
ダニエル・ブージュのコニャックは別名「ブラック・コニャック」とも呼ばれています。その所以はこの色!
ブラック!!!
これはカラメルの色ではありません。樽から得られた自然の色合いでここまで濃い色が出ています。その理由はダニエル・ブージュの熟成方法にあります。
ダニエル・ブージュの最大の特徴は
「最低でも新樽で5年間熟成させること」です。
多くのコニャックの作り手は蒸留したオードヴィーを半年から長くても3年程度新樽で熟成させます。その後古樽に移されて長期熟成を経ます。
新樽を使う理由としては、新樽から出るタンニンによる豊かな味わいを出したり、後々の熟成に必要なタンニンの量を計算するためです。
しかし、このダニエル・ブージュの新樽熟成期間は最低でも5年です。最低5年ですよ5年。通常の新樽比率よりもかなり高めです。
この黒色はまさに新樽の色。もちろん砂糖・カラメルを不使用のため、原料となる葡萄の味わいと、新樽によるウッディで厚みのある味わいが特徴的なコニャックに仕上がります。
ダニエル・ブージュの蒸留
コニャックにはワインをシャラント式単式蒸留器で蒸留する際、主に2つのパターンがあります。
- ワインのオリをフィルターで除去して蒸留する方法:マーテル方式
- ワインのオリを除去しないで一緒に蒸留する方法:レミーマルタン方式
この2つのうちダニエル・ブージュはオリを除去しないで一緒に蒸留する方法、いわゆる②レミーマルタン方式を採用しています。この②レミーマルタン方式は蒸留器の窯の中をオリで焦げ付かせないよう手間と時間がかかります。しかし、これを行うことによって厚みやふくよかさといった要素がより出やすくなり、グランドシャンパーニュ産のコニャックポテンシャルをより引き出すことができます。
ダニエル・ブージュ トレヴィユーのスペック
ではここで改めて今回のダニエル・ブージュ トレヴィユーのスペックを確認しましょう。
ダニエル・ブージュ トレヴィユー(Daniel BOUJU Très vieux)
グランドシャンパーニュ100%
アルコール度数:40%
容量:700ml
熟成年数:40年
輸入元:(株)日本グランドシャンパーニュ
購入価格:税抜18,980円(2019年9月)
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ダニエル・ブージュ トレヴィユーのデザイン
重厚感のある木箱入りです。
開封するとこんな感じ。
コルクは蝋風によりしっかりと封印されています。
40年熟成でここまで堅牢な作りのボトルは珍しいです。
開栓
蝋風なので、ナイフでゴリゴリと回りを削っていきます。
バリバリと削りカスが落ちるので、何かペーパーの上とかでやった方がいいですね。
もうこの時点で香りハンパない。
ダニエル・ブージュ トレヴィユーの色合い
いやぁ改めて明るい場所で見るとめっちゃ濃い・・・。本当にブラックコニャックです。
ちなみに同じ40年熟成コニャックとの比較。
左がダニエル・ブージュ トレヴィユー。
右がフランソワヴォワイエ エクストラ。
フランソワヴォワイエも新樽で3年熟成させるコニャックで、比較的新樽比率が高いコニャックなのですが、改めて比べると全然違うな・・・。どちらもカラメル無添加です。
ダニエル・ブージュ トレヴィユー香り立ち
予想はしていましたが、かなりスパイス系の香りが強いです。同じグランドシャンパーニュのプロプリエテールコニャックのフランソワヴォワイエで感じる果実系、ジャンフィユーで感じるフローラルさとも全く違う方向性。熟したレーズンと樽のウッディーさ、ところどころ落葉やシナモンのような要素が入り混じります。
恐らくどのコニャックにも属さない香り立ち。
ダニエル・ブージュ トレヴィユーの味わい
まさに辛口。凄いパンチ力。辛口といっても、スーパードライのような「キレ」がある辛口ではなく、ちゃんと余韻がのこる辛口。
スパイスやハーブといった恐らく樽に強く依存する味わいを強く感じることができます。渋い。その他にはナッツやトリュフといったキノコ系。ダニエル・ブージュの場合は新樽を焼かないでそのまま熟成に使用するため、渋いといってもピート感のような渋みではありません。
また、舌にはずっしりとのってきます。この重厚感はダニエル・ブージュ特有の熟成に加えて、レミーマルタン方式のオリを除去せずにそのまま蒸留する蒸留方法も寄与しているのだろうなと感じます。
余韻や鼻抜けにおいて「果実感がフワッと花開く」というよりも、ジトーとスモークされたクリームブリュレを味わっているよう・・・。しかし、余韻が消えかかろうとした最後の瞬間にほんのりとオレンジを思わせるようなフルーツ感を伴うランシオを感じることができます。
どれをとっても他のコニャックとは一線を画す属性を持っています。
玄人むけコニャック?
ダニエル・ブージュは、その辛口で渋めな味わい故、実は私にとってコニャックを飲み始めた当初少し苦手な存在でした。今のちょっと苦手分野でもありますが・・・。
まさしくブラックコニャック。
ビールで例えると、
フランソワヴォワイエがプレミアムモルツ<香る>エールだとすると、ダニエル・ブージュはプレミアムモルツ<黒>The Blackだ。あの黒ビールで有名な「ギネス」的な立ち位置といてもいいかもしれません。(こんな事いったらダニエル・ブージュファンに怒られるかもしれんが・・・)
ほんとにまさに黒ビール的なコニャック。
この渋みと独特のスパイス感、そしてほのかに香る果実感はダニエル・ブージュ最大の特徴といって良いでしょう。
故に意外と好き嫌いが分かれるコニャックでもあります。ダニエル・ブージュは素晴らしい作り手です。それは間違いない。しかし万人にこのダニエル・ブージュをすすめられるかというとまた別の話。
やはりどちらかというと少し「玄人向け」なコニャックだと思う。
私が玄人というおこがましいことを言うわけではありませんが、同じ40年熟成のコニャックでいわゆる「フワッと花開く」「香り豊かな」といったコニャックとは住み分けが全く異なり、そういったフローラルかつ南国フルーツ感爆発系のランシオを味わいたい人たちにとっては恐らくフランソワヴォワイエ エクストラやジャンフィユーに軍配が上がる。そして私も万人におすすめは?ときかれるとそちらをおすすめしてしまうでしょう。
それは初めてビールを飲む人には黒ビールよりも香るエールビールの方をの勧めてしまうのと同じ理屈です。
まさに唯一無二のブラックコニャックであるダニエル・ブージュ。そしてもちろん凄い作り手ですが、正直言うと個人的には苦手な分野のコニャックである。
だが辛口で樽香が効いて渋いお酒が好きな人はビシッとハマる。そんなコニャックです。