今回はワイン好きもブランデー好きも気になるお酒「ピノー・デ・シャラント(Pineau des Charentes)」について解説します。
ピノー・デ・シャラント(Pineau des Charentes)を簡単に言ってしまうと「ブドウ果汁にコニャックをブレンドして熟成させた甘い味のワインのようなもの」です。レイモン・ラニョーのピノー・デ・シャラントやレローのピノー・デ・シャラント15年もの等が有名ですね。
簡単に言うと上のような感じなのですが、ここはせっかくブランデー専門サイトなのでもう少し詳しく見てみましょう。
酒精強化ワインとVDL(ヴァン・ド・リキュール)の一種?
ピノー・デ・シャラントをもう少し大きな枠で見てみましょう。一番大きなカテゴリを紐解くと、ピノー・デ・シャラントは酒精強化ワインの一種にあたります。
酒精強化とはブドウを発酵させる際に強いアルコールを加えて発酵をストップさせる手法です。発酵の過程で液中のアルコール度数が一定を超えると、酵母が働かなくなり、糖の分解が止まる現象を利用しています。
発酵を止めるために加えるアルコールはワインと同じくブドウが原料のブランデーを用いることがほとんどです。発酵のどの段階でブランデーを加えるかにより甘口か辛口かの違いが生じます。未発酵または発酵途中に加えると糖分が多く残るために甘口となります。逆に発酵後に加えたものは辛口となります。
ではピノー・デ・シャラントは?
酒精強化ワインから更に1段階掘り下げると、ピノー・デ・シャラントは酒精強化ワインのなかでもVDL「ヴァン・ド・リキュール(Vins de liqueur )」の中の一種ということになります。
ヴァン・ド・リキュールとはフランスにて未発酵のブドウ果汁にアルコールを加えて数年の熟成を経たものを指します。その加えられるアルコールとしてコニャックを使用する場合を「ピノー・デ・シャラント」と呼びます。ちなみにアルマニャックを使用する場合は「フロック・ド・ガスコーニュ」と呼びます。なお、添加されるコニャックはアルコール度数60度以上で1年以上熟成されたオー・ド・ヴィー(ほとんどコニャック)を用います。
※オー・ド・ヴィー(ほとんどコニャック)というのは、「コニャック」用に蒸留された原酒であるものの、コニャックは最低2年熟成が必要なため、中にはコニャックと呼べる熟成に達していない原酒を含むからです。
ピノー・デ・シャラントの年間生産量は約14,000,000リットルだそうです。そのうちの80%がコニャックが作られているフランスのシャラント県で製造されています。ピノー・デ・シャラントを名乗るための製造方法や細かい基準がAOCによって定められています。おおまかな規定は以下の通りです。
- ブドウ果汁とコニャックが同じブドウ園のものでなければならない
- 最低1年は熟成しなければならない
- 出荷時のアルコール度数は16~22度の間
ピノー・デ・シャラントの白、赤、ロゼ?
ピノー・デ・シャラントにもワインと同じく白、赤、ロゼの3種類があります。これはワインと同様、使用されるブドウ果汁の製造方法によって異なります。ブドウ果汁のを使用すると白。黒ブドウの皮も果肉も使用すると赤となります。ロゼはその中間で、皮・果肉ごと使用しますが色味が少し出たところで皮と果肉を取り除きます。
日本に流通しているピノー・デ・シャラントは白が多いですが、ヨーロッパでは赤やロゼのピノー・デ・シャラントも多く一般的に流通しています。
↑ピノー・デ・シャラントの赤↑
ピノー・デ・シャラントの熟成とアルコール度数
ピノー・デ・シャラントもブドウ果汁とコニャックをブレンドさせた状態で、その後樽熟成されます。赤、ロゼ、白で最低熟成年数の基準が異なります。
- 赤 / ロゼ: 最低12ヵ月熟成(うち8ヵ月はオーク樽熟成)
- 白:最低18ヵ月熟成(うち12ヵ月はオーク樽熟成)
上記は法律上決められている最低限度の熟成年数であり、一般的には5~15年程熟成させるメーカーが多いようです。コニャックの場合は熟成年数によってVSOPやXO等の表記基準がありますが、ピノー・デ・シャラントの場合は以下のような表記となります。
Vieux Pineau des Charentes(ヴュー・ピノー・デ・シャラント)
→オーク樽で最低7年熟成
Très Vieux Pineau des Charentes(トレ・ヴュー・ピノー・デ・シャラント)
→オーク樽で最低12年熟成
ピノー・デ・シャラントのアルコール度数も決められており、AOC基準ではアルコール度数16度~22度の間でなければなりません。割合としてはアルコール度数17度の製品が多いようです。
ピノー・デ・シャラントの飲み方
先述したようにピノー・デ・シャラントは未発酵のブドウ果汁にコニャックを加えるため、ブドウの糖分が多く残っており、味としては大変甘口なのが特徴です。そのため、食後のデザートワインのような味わい方で楽しまれることが多いです。
非常に甘口なので、ブランデーが苦手な人でも軽く飲めてしまうくらいです。甘いワインやブドウジュースが好きな方は確実にハマると思います。
ピノー・デ・シャラントおすすめの飲み方は、5℃くらいに冷やした状態でワイングラスに入れて飲むことです。コニャックというよりワインに近い味なので、コニャックグラスよりワイングラスの方が風味を生かすことができるでしょう。サングリアのように氷を入れてもいいかもしれません。
またおすすめのグラスはデザートワイン用のグラスですね。リーデルの<ヴィノム>ソーヴィニヨン・ブラン なんかちょうどよいかと思います。
おすすめのピノー・デ・シャラントは?
ピノー・デ・シャラント自体は多くのコニャックメーカーが作っています。コニャックを作るついでに・・・といった感じかもしれません。日本でも流通量が多く、お手頃なおすすめピノー・デ・シャラントをいくつか紹介します。
レイモンラニョー ピノー・デ・シャラント白
有名なプロプリエテールであるレイモンラニョーが出しているピノー・デ・シャラントです。熟成年数は約6年。当サイトのブランデー総合ランキングにランクインしているように、グランドシャンパーニュ産のブドウ100%原料の高品質なコニャックで知られるレイモンラニョーですが、ピノー・デ・シャラントも同様にグランドシャンパーニュのユニブラン種100%です。コスパ的にも最もおすすめできるピノー・デ・シャラントです。
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レロー ピノー・デ・シャラント白 15年
ピノー・デ・シャラントとしては最も有名かもしれません。レローは高級ホテルのレストランなんかでよく見かけますね。こちらは15年熟成のピノー・デ・シャラントです。日本ではピーロート社が総販売元となっています。ピノー・デ・シャラントの中でも甘味が強いほうだと思います。
ジャンフィユー ピノー・デ・シャラント白
ジャンフィユー ピノー・デ・シャラント ロゼ
こちらもプロプリエテールのコニャックとして有名なジャンフィユーより。7~8年の熟成年数のピノー・デ・シャラントです。白はグランドシャンパーニュ産ユニブラン100%。ロゼはグランドシャンパーニュ産メルロ50%、カベルネ・ソーヴィニョン50%のブレンドです。
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