コニャック滞在記2023年 冬

コニャック滞在記2023冬⑱厳重に守られたHINE(ハイン)のヴィンテージ熟成庫とアーリランデッドコニャックの真相

2023年8月12日

滞在9日目その2
2023年1月19日(木)

コニャック市街地から徒歩3時間かけて隣町ジャルナックのHINE(ハイン)本社に到着しました。

メールでやり取りしていたスタッフの方にお出迎え頂き、テイスティングルームに案内して頂き「歩いてきた!!」というと真顔で「Are you serious!?」と笑。

おやれなHINEのテイスティングルーム

とりあえず外が寒すぎたので、温かい紅茶を1杯頂きました。ありがとうございます。。。

そんなこんなで10分程休憩し身体も温まってきたので早速色々なお話を伺い、HINE(ハイン)本社内と熟成庫を案内して頂きました。

HINEのコニャック

HINE(ハイン)のコニャックは日本にもいくつか輸入されており、HINE VSOPXOアンティークドメーヌボヌーイあたりは有名なので知っている方も多いかもしれません。昔はヴィンテージも多くありましたが、ここ数年日本ではあまり見かけませんね。

HINE(ハイン)の従業員は正社員で約40人ほど。20人がオフィスでの内勤で、15~20がワイン畑や蒸留などの製造に携わっています。

HINE(ハイン)は自社畑も持っています。

グランドシャンパーニュ地区に110ヘクタール、プティットシャンパーニュ地区に10ヘクタールの合計120ヘクタールです。この合計120ヘクタールから得られる生産量は全体の約30%。残り70%は契約農家からワインを購入してそれを蒸留したり、オードヴィーを購入しそれを熟成させたりしています。

自家生産とネゴシアン両方の立ち位置を担っています。

HINE(ハイン)が自社で持っているシャラント蒸留器は2基だけです。その2基では全体の25%しか蒸留できないため、のこりの75%は専門蒸留家に委託し蒸溜してもらっています。

蒸留方式は澱と共にワインを蒸留するレミーマルタン方式で、より力強さを出すようにしています。

グランドシャンパーニュ?プティットシャンパーニュ?

HINE(ハイン)のコニャックは大きく分けてグランドシャンパーニュとプティットシャンパーニュを使っていますが、製品によって異なります。

HINE VSOPはフィーヌシャンパーニュ(グランドシャンパーニュ50%以上+プティットシャンパーニュ)。
HINE XOおよびヴィンテージシリーズはグランドシャンパーニュ100%となっています。

HINE(ハイン)の樽

HINE(ハイン)のコニャック熟成に使われている樽はノルマンディー地方で採れたオークを使用しているとのこと。

木の種類としてはFine Grainとのことですので、目が細かいトロンセタイプの木を使用しています。焼き方はLightトースト。かなり軽めです。

これって実は結構珍しいんですよ。一般的に木の目が細かいトロンセタイプの樽はタンニンが少なくなる傾向にあるので、ボルドリなどの繊細な原酒の熟成に使用したりします。またタンニンが少ない=酸化防止力が低い=あまり長期熟成には向かないというのが一般的なのですが、それを差し置いても樽のえぐみをなるべく抑えるため、柔らかくしかもLightトーストで軽めに仕上げた樽を好んで使用するのがHIEN(ハイン)のコニャックスタイルのようです。

ちなみに新樽の使用期間は最初の6~10ヶ月ほど。こちらに関しては一般的な新樽使用期間です。

HINE(ハイン)の熟成庫とアーリランデッド

HINE(ハイン)の熟成庫は現在3ヵ所に存在します。

1つめはここ本社があるジャルナックの熟成庫。主にヴィンテージの樽や熟成の進んだ樽が保管されています。

2つめはボヌーイ地区。グランドシャンパーニュエリアのHINE自社畑の近くです。こちらの熟成庫はドライセラー。湿度は55%~65%くらいだそうです。

そして3つめはイギリスにあります。そう有名なアーリランデッドコニャックですね。

アーリランデッドコニャックとは?

アーリーランデッド(Early Landed)コニャックとはコチラの記事に詳細をまとめていますが、

フランス・コニャック地方で収穫から蒸留・樽詰めまでを行った後、樽の状態で英国に運ばれ熟成・瓶詰めされたコニャックの事を指します。アーリーランデッドとは「熟成前に陸揚げされた」という意味を持ちます。

熟成場所としては主にイギリス南西部の港ブリストルや、ロンドンのテムズ川沿いの倉庫を指すことが多く、これらイギリスでの熟成環境は、年間気温も低く(8~12℃)、湿度も平均95%となっているため、水分の蒸発が遅く、よりまろやかでフローラルな香りとなるのが特徴的です。

HIEN(ハイン)アーリランデッドコニャック熟成庫の場所は?

実はこれ、私も話を聞くまで知らなかったのですが、現在HINE(ハイン)のアーリランデッドコニャックの熟成庫はロンドンでもブリストルでもなく、スコットランドにあります。

しかもスペイサイドのグレンファークラスの提携熟成庫。(HINE(ハイン)とグレンファークラスはパートナーシップを結んでいるらしい)

私はこれまでてっきりブリストルの港にあると思っていたのですが、2000年以降のHINE(ハイン)アーリランデッドコニャックの熟成は全てこのスコットランド スペイサイドで熟成を行っているそうです。

スペイサイドにあるHINEのアーリランデッド用熟成庫
出店:Cognac Showより
https://cognacshow.com

HINE(ハイン)のヴィンテージ熟成庫

ご存じの通り?コニャックをヴィンテージとして出荷するには厳しい制約があります。その一つが樽の保管です。

正式なヴィンテージコニャックとして出荷するには次の2つのいずれかを守る必要があります。

  • 樽に蝋封をかけてBNIC(コニャック協会)立ち合いのチェック時以外は開封しない
  • ヴィンテージ用の熟成庫に2つ鍵をかけ、一つはBNICが保管する

ほとんどの生産者の場合、ヴィンテージ用の熟成庫を用意するのは大変なので前者を選ぶことが多いのですがHINE(ハイン)の場合は2つ目熟成庫自体にカギをかける方法を取っています。

ちょっとガラス窓越しですが、こちらがそのヴィンテージ用の熟成庫の様子。窓の目の前には歴代のヴィンテージボトルが並んでいます。

HINE(ハイン)のヴィンテージコニャックはここで厳重に保管され、ボトリングの時期をゆっくりと待っています。

HINE(ハイン)とイギリス王室

よく知られているのがHINE(ハイン)はイギリス王室ご用達のコニャックである、ということ。

HINE(ハイン)は生前のエリザベス女王(エリザベス2世)が愛飲していたコニャックとして1962年以降イギリス王室の公式サプライヤーとして王室にコニャックを提供してきました。

その時の契約書がコチラ。

エリザベス女王が2022年9月で死去されたことにより、 実はHINE(ハイン)の公式サプライヤーとしての契約は2024年で終了するそうです。

その後もイギリス王室のコニャックサプライヤーとして継続されるかどうかは現在の国王であるチャールズ3世次第だそうで、2022年1月時点ではまだ不明とのことです。

頼みますよチャールズ3世。

テイスティングタイム

一通りHINE(ハイン)本社を見させて頂いたあとはゆっくりとテイスティングタイム。

今回は定番の3種とヴィンテージ3種を楽しませて頂きました。

HINE VSOP

熟成年数約5年
フィーヌシャンパーニュ

HINE VSOP RARE

熟成年数約8年
フィーヌシャンパーニュ

HINE XO Antique

熟成年数約20年
最も若い原酒は12年~
グランドシャンパーニュ

ハイン アンティーク XO [ ブランデー 700ml ]

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HINE 2008 ドメーヌボヌーイ

熟成年数約9年

HINE 1986

全てフランスで熟成された1986ヴィンテージ

HINE 1986 アーリーランデッド

アーリーランデッドタイプの1986ヴィンテージ

この中でやはり面白かったのは同じ1986ヴィンテージのフランス熟成タイプとアーリランデッドタイプの飲み比べでした。
ちなみにいくつか他の比較用ヴィンテージもあったのですが、1986を選んだのは私の生まれ年だったから^^

飲み比べてみるとやはり結構違いますね。フランス熟成の方がやはり力強さはあります。アーリーランデッドの方はその湿度故より丸くなっており且つボルドリコニャックのようなフローラルさも垣間見ることができます。

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約2時間という短い滞在でしたが、HINEに関して様々な事を学ぶことができました。

もしウイスキーの蒸留所巡りでスペイサイドを訪れる方がいらっしゃたら是非HINE(ハイン)のアーリランデッドコニャックの熟成庫も訪れてみて下さいね。

HINE(ハイン)を出たのがちょうどお昼の12時。近くのカフェでランチを済ませて次なる訪問先は神の加水技で有名なDelamain(デラマン)コニャックです。

実はHINE(ハイン)とDelamainは超仲良しだし歴史的な繋がりも深いメゾン同士。そこで垣間見た神の加水とは・・・。

次回
デラマン訪問:神業的加水の秘密はフェーブルに

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