今回はマーテルが2019年9月12日、パリのPetit Palaisで発表したXXOクラスのコニャック「マーテル シャンテルー XXO(Martell Chanteloup XXO)」が手元に届いたのでそのレビューです。
2018年頃にコニャックの新基準として加わった「XXO(Extra Extra Old)」カテゴリ。
その実力やいかに・・・
そもそもコニャックのXXOクラスとは?
コニャックのXXOクラスは比較的新しいクラスということもあり、実態としては全くと言っていいほど世の中に浸透していないのも事実(笑)
個人的には大手コニャックメーカーのプロモーション的な役割が強いと感じるXXOクラスですが、一応その背景と定義を見てみましょう。
XXO(エックスエックスオー)とは、こちらの記事で詳細を書きましたが、2018年末よりコニャックの規格として新たに加わったカテゴリです。(事の発端はヘネシー)
参考記事
→コニャック新カテゴリ?「XXO」とは何か?
ブレンドされている原酒の最低熟成年数14年を超えているコニャックであればXXOの名称を使用することが可能となりました。
フランスコニャック協会の意図としては
「XOよりもプレミアムだと思うコニャックにはXXOって名乗ってもいいよ~」
という感じで、実際にXXOと名乗るかどうかは各メーカーや生産者の判断に委ねられます。この名称自体に強制力はありません。
どのくらいのラインナップがある?
2021年3月現在、コニャックにおいて私が認識している中で「XXO」と名の付く商品は6つくらいしかありません。
- ヘネシーXXO
- マーテル シャンテルーXXO(←今回の)
- Monnet XXO
- Prunier XXO Cognac Family Series Number 1
- Pierre Vallet XXO
- De Charville Freres XXO
この中でも正規品として日本に入ってるのはマーテルXXOだけですね今のところ。
マーテルシャンテルーパースペクティブとの違いは?
「マーテル シャンテルー」と名の付くコニャックは実は2つあります。今回のマーテル シャンテルー XXOと、マーテル シャンテルー パースペクティブです。
参考記事
→マーテルの境地?マーテル シャンテルー パースペクティブの感想・レビュー
日本では後者の「パースペクティブ」の方が圧倒的に有名ですね。一応このパースペクティブは限定生産品なのですが、まだまだ多く流通しています。
この両者の飲み比べも記事の後半でお届けします。
このシャンテルー(CHANTELOUP)はマーテルが1838年に購入した建物の名前であり、今やマーテルの最高級品となるべくして樽の中で出番を待っている原酒達が眠っている場所でもあります。マーテルの最も重要なゲストハウスの一つでもあり、代々のセラーマスターらの感性を刺激し続けてきた特別な場所でもあります。
このボトルに「シャンテルー(CHANTELOUP)」と名前がついていますが、あくまでもシャンテルーに対するオマージュであり必ずしも全てのブレンド元がシャンテルーに眠る原酒から・・・という分けではないようです。
マーテル シャンテルーXXOの基本スペック
前置きが長くなりましたが、今回のマーテルシャンテルーXXOの基本情報を見て参りましょう。
マーテル シャンテルー XXO
容量:700ml
アルコール度数:40%
約450種類の原酒がブレンド
最低熟成年数14年
輸入業者:ペルノ・リカール・ジャパン
購入価格(2021年3月時点):税込32,500円
最低熟成年数14年と聞くと若そうな印象がありますが、これはあくまでもXXOの基準を満たすもの。ブレンドされている最も若いコニャックが14年ということであり、上はもっともっと熟成を経ています。詳細は不明。
何よりも特記すべきはマスターブレンダーの手により450種類もの原酒がブレンドされているという点。
メインの原酒はグランドシャンパーニュ、プティットシャンパーニュ、ボルドリ、ファンボアの4ヵ所から取っているそうですが、450種類のブレンディングはもはや狂気の沙汰(笑)尋常な数ではありません。
もとよりこのマーテルシャンテルーXXOの商品コンセプトとして「マーテルのブレンディング技術の凄さ」を全面に押し出したコニャックであり、商品発表の頃から大々的に報じられてきた内容です。
マーテル シャンテルーXXOの外観
外箱はこんな感じ。
御開帳。
マーテルシャンテルーパースペクティブよりも高級感はありますね。
ボトルの形状や模様はマーテルシャンテルーパースペクティブを踏襲している様子です。
マーテルシャンテルーパースペクティブよりも少し縦長でスリムなボトルになりました。ボトルの模様は「シャンテルー」の門の模様をモチーフにしています。す。
エンブレムは3つのハンマーです。相変わらずマーテルシャンテルーパースペクティブの時はエンブレムが簡略化され、遠目から初めて見ると、涙とよだれを出してる顔にしか見えませんでしたが、今回は細部まで装飾がほどこされ、ちゃんとエンブレムっぽくなっています(笑)
マーテルシャンテルーXXOの香り立ち・味わい
それでは早速グラスに注いで・・・
この口開け写真撮影時は私が花粉症でまともなテイスティングができなかったので、実際は別の日に何回もテイスティングした結果となります(笑)
マーテルシャンテルー XXOの香り立ち
ややアルコール感は感じるものの、実直に葡萄の良い香り。(まんまやんけ)
あとはマーテルらしいアールグレイのような紅茶感。これはボルドリ原酒由来でしょうかやはり。
ジャスミン、ユリのようなお花感が強いですね。後半は少し白コショウ、シナモンのようなスパイス感。
ピーチやオレンジといった果実系の香り立ちはあまり拾うことができません。
・・・と思っていたら、翌日グラスに10分くらい放置しているとだんだん開いてきました。アプリコットとピーチですねこれは。ちゃんと果実感もありました。
全体的にどちらかというと控えめな香り立ちですが、これはマーテルシャンテルーパースペクティブはじめ、マーテル系コニャックに共通する特徴なので私としては特に意外というわけではなく、やはりそうだよね、という感じでした。
マーテルシャンテルー XXOの味わい
飲んだ瞬間は意外とパンチがあるように感じました。
味わいに関しては意外とビター。お花系というよりもやや樽感を強く拾ってしまいます。
あくまでも他のマーテルXOやマーテルコルドンブルーと比べると・・・という所ですが。
これに関しては少し意外でした。
というのも、マーテルの蒸留方法はいわゆる「マーテル式」と呼ばれるオリを除去して蒸留を行う方法を採用しており、出来上がる蒸留液はクリアに仕上がります。蒸留液の再利用方法もそれぞれ異なります。また熟成に使用している樽の多くはトロンセオーク(木の目が細かい)を使用しており「軽やかクリア」というのがマーテルの印象だったからです。
このマーテルシャンテルーXXOは、あくまでも他のマーテルコニャックと比較するとという所で、決して悪い意味ではないのですが、意外とこう・・樽由来のタンニン感を強く感じます。
まぁそれでも方向性としてはやはりクリアなコニャックというところでしょう。
チョコレート系、黒糖系、キャラメル系の甘みは少なく、あえて甘みを拾うとしたら、蜂蜜とかクルミとかそっち系。あとはリコリスやナツメグ、そして少しばかりショウガ系のスパイシーな印象が残ります。
マーテルシャンテルーパースペクティブと比較するとどうか?
今回のマーテル シャンテルーXXOと同価格帯、同スペックの比較コニャックとして外せないのが先述した「マーテルシャンテルーパースペクティブ」でしょう。
幸い私の手元にはまだマーテルシャンテルーパースペクティブが残っていたので、鉄板の飲み比べです。
結果的にかなり個性の分かれるコニャックとなっています。・・・というかこれはXXOの方が好印象かもしれません。
香り立ちに関しては明らかにXXOの方が複雑性を感じられ、マーテルシャンテルーパースペクティブはお花系香草系の香りを強く感じることができますが、XXOはそれにプラスして紅茶感と果実感が上乗せされた感じ。
味わいにおいても香り立ち同様XXOの方がより多く変化を感じることができます。改めて比べて見ると今回のマーテルシャンテルーXXOの方がよりアルコールのトゲを除去して丸美と厚みを持たせた印象ですね。
どちらもある程度の重厚感はあるのですが、やはりどちらかというとスッキリ系コニャック。しかしXXOの方が味わいは複雑。
価格帯はほぼ同じか、下手するとシャンテルーパースペクティブの方が高いのですが(2021年3月時点)、今どちらかを買うかとなると私の選択はXXOです。
マーテルシャンテルーXXOは買いなのか?
買い・・・ではないと思う。
もちろん決して悪いコニャックというわけではないのですが、立ち位置が非常に難しいコニャックです。あと価格。正直けっこう高い。
正確にいうと、「マーテルの個性」を感じたいという人はこのXXOではなく、まずはスタンダードに定番のマーテルコルドンブルーとマーテルXOを飲んでみた方がよいと思います。ちなみにコルドンブルーとXOは熟成年数の違いもあるのですが、大きな違いはボルドリ原酒のブレンド比率です。
コルドンブルーはボルドリ比率が多め。マーテルXOはグランドシャンパーニュ比率が多めです。また熟成年数もマーテルXOの方がやや長め。
詳細な比率や内訳は非公開のため不明です。というか本当にマーテルの現9代目マスターブレンダーのみ知るレシピだそうで、アンバサダーの方もマーテル上層部も本当に知らないようでした。
マーテルのコニャックとは・・・を知るにはまずはこの2つでしょう。どちらか一方であれば、やはりマーテル特有のボルドリ原酒を感じることができるコルドンブルーですね。
あとは価格。このXXOもシャンテルーパースペクティブも、価格帯としては3万5千円くらいで、店によっては4万円以上のところもあります。(ホストクラブだとボトル30~60マンくらい・・・)
この価格帯で、いわゆる長熟コニャックのピーチ、南国フルーツ系のランシオ爆発!!的な期待を抱いて飲んだ人にとってはやや期待外れ感が大きいかもしれません。もとよりこのマーテルの長熟コニャックの方向性として「よりクリアに」というものがあるので、グランドシャンパーニュ100%のような華やかさを目指したコニャックとはベクトルが異なりますし、それはマーテルの個性です。
その個性を楽しめる方には是非とも手に取って頂きたい。
ただ、先ほども申し上げたようにマーテルのコニャックを知りたい!という方にはこのXXOに3万5千円出すのであれば、まずはマーテルコルドンブルーとマーテルXOの2本を買うことをおススメしたい。その次のステップとしてこのXXOの出番です。
まぁぶっちゃけこのマーテルXXOの性質や価格帯的にこのボトルが多くのBarに並ぶのは少々難しい気がする。よほどマーテルが好きなBarでない限り。
マーテルのブレンド技術を楽しむ作品
もし味わう機会があれば是非マーテルのブレンド技術の高さに注目してみて欲しいですね。
冒頭にも述べたようにこのマーテル シャンテルーXXOは約450種類もの原酒がブレンドされています。
それだけの数をブレンドし、マーテルの方向性を失わず完成されたコニャックを世に出すというのは私達が考えるよりはるかに膨大な時間と労力がかかることだと思います。これは他の小~中規模のコニャックメーカーや、家族経営のコニャックブランドにはなかなか真似できないプロセスです。そこはさすが業界2位を誇るマーテルというところです。
そういった特別な事をしなければいけない雰囲気が他生産者のXXOクラスの普及を妨げている原因の一つかもしれませんが(笑)
色々と書きましたが、コニャックとしての完成度はもちろん高いです。
あとはこの個性をどう楽しむか。熟成による華やかさに重点を置いたコニャックをよく飲む方は「こういう軽やかさもあるんだ」というものを感じて貰えれば良いと思いますし、より上品で淡麗なコニャックが好きな方にはハマるコニャックかもしれません。
そんな感じですマーテル シャンテルー XXO。
・・・さて、コルドンブルーでも飲むかな。