今回新たに購入したのは、以前レビューを行ったコーヒー×コニャックのリキュールを生み出した「メルレ(MERLET)」より、セレクション サン ソーヴァン No.2 リミテッド エディションです。
メルレといえば数多くのユニークなリキュールを輩出している事で有名ですが、もちろんちゃんとコニャックも作っています。
メルレのコニャックは比較的新しい
メルレは1850年創業のコニャックとリキュール生産者。
2005年まではGilles Merlet氏が当主として主に蒸留家としてコニャックを造っていました。その後2005年から2008年にかけて2人の息子Pierre氏とLuc氏が本格的に事業に参入し自社ブランドのコニャック造りにも注力し始めます。
Pierre氏とLuc氏が初のブレンドコニャックを出したのは2010年のこと。その後2015年に現在流通しているVS、VSOP、XOのコニャックを製品化し販売を開始しました。
メルレの歴史は大変長いものの、現在のコニャックブランドとしての歴史は比較的新しいブランドです。
広大なタンクと蒸留器
元々蒸留家としての歴史が長いため、メルレの設備はかなり大きいです。
ちょうど、2020年11月下旬に蒸留を開始した紹介動画としてメルレの蒸留の様子が分かりやすく撮影されたものがYoutubeにアップされていましたので紹介します。このような動画はなかなか現地に行けない日本人にとっても有難い限りですね!
正確には分かりませんが、蒸留用のワインを貯蔵するタンクはパッと見る限り15基以上。
蒸留器は合計10基。2部屋に分かれており1部屋目には5基、2部屋目には4基、そして中間に100ヘクトリットル(=10,000リットル)の蒸留が可能な大型蒸留器があります。
コニャックの蒸留器は基本最大容量25ヘクトリットル(2,500=リットル)までですが、プルミエショーフ(2段階蒸留の1回目の蒸留)の際には最大120ヘクトリットル(=12,000リットル)容量の蒸留器が使用可能です。この大型蒸留器はボンヌショーフ(2回目の蒸留)の時には使えません。
こんな大型の蒸留器があるのも蒸留家ならではの設備ですね。
動画の後半ではコニャック蒸留の流れが分かりやすく説明されています。英語音声のみですが、是非ご覧ください。
蒸留の流れとしては基本的な内容を解説されているので、文章で見たい方はコチラの「コニャック蒸留の工程を見てみよう」をご参照下さい。
1948年原酒も!9種類以上のヴィンテージがブレンドされたコニャック
さて、前置きが長くなりましたが今回のメルレ セレクション サン ソーヴァン No.2 リミテッド エディションの詳細を見てみましょう。
このコニャックは2016年にボトリングされたもの。Pierre氏とLuc氏が特別にブレンドしたコニャック第二弾です。
ブレンドの詳細は不明なコニャックが多い中、このコニャックは公式HPやラベルの裏側でも比較的明確なブレンド比率がちゃんと記載されています。
- Extra old blend (12%)
- プティットシャンパーニュ10年 (30.4%)
- グランドシャンパーニュ10年 (10.2%)
- ファンボア 2001 (10.7%)
- プティットシャンパーニュ 1993 (10.2%)
- ファンボア 1992 (10.1%)
- ボルドリ 1984 (4%)
- プティットシャンパーニュ 1971-1973 blended (8%)
- ファンボア 1948 (4.3%)
計99.9%。となっています。
うち12%は詳細不明な古酒のようですが、ここまで書いてくれるのはありがたいですね。
その他のボトル詳細は下記の通り。
アルコール度数:44.3度
容量:700ml
輸入元:ラールアルコル株式会社
購入価格:税込10,980円(2020年12月時点)
アルコール度数はやや高めの44.3度。輸入元のラールアルコル株式会社といえば、私のイチオシコニャックであるフランソワヴォワイエを輸入している会社ですので、これは期待が高まります。
では早速開封。
そしてまずは開封直後のレビューです。
メルレ セレクション サン ソーヴァン No.2の香り立ち
まず正直に言うと予想以上にアルコール感が激しい。
というのも、なかなかこのコニャックの香りを拾う事ができず、結構グラスに鼻を近づけないといけなかったから。
柑橘系やフローラル系のコニャックの華やかな香りとは対照的に、どちらかというと落葉やしめった土、樽感といった木の要素を多く感じる。それにプラスしてアルコールのアタック。
これはどちらかというとネガティブな要素として感じてしまうのも無理はないかもしれません。
一瞬だけ甘いオレンジジャム、そしてかすかにメンソールやバラといった香りを拾うことができますが、コニャックのアロマホイールで例えるなら方向性としては確実に「冬(ウッデッド)のアロマ」カテゴリの要素を多く含む香り立ち。
残念ながら24.3%程含まれているExtra old blend (12%)、プティットシャンパーニュ 1971-1973 blended (8%)、ファンボア 1948 (4.3%)に含まれるであろう超熟由来の要素を見出すことが困難な状態となってしまいました。
うーん、これはこのブレンドされている原酒のアロマを一つ一つ体験してみたいですなぁ。
その後、30分程グラスを置いてみましたが結果はあまり変わらず。
まだ今回は開封直後なので、もしかしたら数ヶ月経つと少しずつ良い部分が開くのかもしれません。わからんけど。
ということで数ヶ月後に期待。
メルレ セレクション サン ソーヴァン No.2の味わい
味わいにおいても上記の香り立ちから想像しうる香味が広がります。
オレンジ系や南国フルーツといった華やかな広がりはありませんが、ウッド感、樽感、胡椒、ピーナッツといった渋めな味わいが広がります。
そしてその後に感じるのはハーブやジンジャーといった少しばかりスパイシーな要素。
ていうかめっちゃ辛口コニャック。
そしてタンニン効きすぎーーーーな印象。
ザ・樽。
あと干し柿。そして少しばかりのマッシュルーム。
総合的にかなり渋みの強い独特なコニャック。
良い言い方をすれば超パワフルな1本。
↑小売価格1万円ちょっとのコニャックとしてはかなり褐色が強い部類です。カラメル有無は不明ですが、こだわりブレンドということで恐らくカラメルなしと想定するとめちゃくちゃ濃い=超熟由来またはタンニンを多く含む。
正直パワフル過ぎて、余韻の変化や複雑さには若干乏しいものがあるのも事実。
これに合わせる食べ物は確実にイチゴとかメロンとかリンゴとかのフルーツ系ではない。これに負けないくらい味の強いジャーキーとか、かなり甘めのチョコレートとか。
葉巻もいいかもしんない。
そんなコニャック。
独特のブレンドセンスが突っ走るコニャック
Gilles氏とその2人の息子Pierre氏とLuc氏が厳選してブレンドしたこのメルレ セレクション サン ソーヴァン No.2 リミテッド エディション。
色々書いてしまいましたが、あくまでも「正直、私の口にはあまり合わなかった」という意図であることは強調しておきましょう。
このコニャックからは商品コンセプトにもあるように「一般受けするコニャックではなく、自分達が作りたいコニャックをブレンドする!」という意思を感じることができます(そう感じてしまいます)。もちろんそれはそれで楽しむべきですし、楽しみながら飲みます。
購入価格帯としては2020年12月時点で小売価格1万円ほどなので、対抗馬が最も多く激戦区となる価格帯なので正直リピートがありかといわれるとちょっと「うーん」という状況ですが・・・いかんせん開封したてホヤホヤのコニャックなので、数ヶ月後の味わいに期待を寄せつつちょっとずつ変化を楽しみながら飲みたいと思います。