去る2016年2月13日、酒育の会主催セミナー「コニャックの魅力」に参加してきました。
日本唯一のコニャックエデュケーターである鯉沼康泰氏を講師に迎えた2時間半のセミナーでした。前半はブランデー全般に関する雑学とコニャックの魅力について熱弁を振るって頂き、後半は5種類のコニャック・アルマニャックのテイスティングを行いました。そのセミナー内容と感じたコニャックの魅力とコニャック界の闇と矛盾をレポしていきます。
鯉沼康泰氏の人物像:意外とユーモアに溢れる方だった
コニャック界では有名人物である鯉沼康泰氏。コニャックの卸会社である鯉沼商会のCEOでもあり、日本で唯一フランスコニャック協会からコニャックエデュケーターの称号を得ている方です。またデュピュイやシャトーボーロンといった高品位コニャックを日本に広めた第一人物でもあります。
↑写真は鯉沼氏が代表を務めるNOZOMI株式会社のHPから拝借。(2016年2月現在)
私自身、鯉沼氏にお会いするのは今回が初めてでした。上のファイティングポーズっぽい写真から最初はかなりお堅い、またはちょっと怖い?方なのかなぁ・・・。失礼な事言ったらこの拳と小指の指輪でボコボコされるんじゃないかとか思ってました。(そんな事ないよ?)
しかし実際お会いして話てみると、本当にコニャックが大好きで、気さくで明るくユーモアに溢れたおじさまである。・・・こんな事書いたら怒られるかな。 休憩中にも時間を頂き、名刺を交換しつつ、ついついコニャックの話で盛り上がってしまいました。とにかく皆と一緒にフランスに行って現地の美味しいコニャックを楽しみたい!そんな想いが伝わってきました。
前半の「コニャックの魅力」セッションでは鯉沼氏が想いを語って頂く時間でしたが、先述したように鯉沼氏は本当にコニャックが大好きで、コニャックの魅力を皆に知ってほしいというパワーに溢れていました。それ故、細かな知識や理論的なお話というよりは、コニャック好きの感情溢れる講演内容でした。
新たに得た知識
言ってもさすが専門家。鯉沼氏がこれまでに経験した事や知識を基に、コニャックのグランドシャンパーニュの中でも更に美味しい地域の事や、実際の各土地の土壌を持ってきて頂いていたり(以下写真参照)、オーク樽の木の目による違いを教わったり、新たに知識として得たことが沢山ありました。
この辺は後々別記事でまとめられればと思います。
コニャックテイスティング
今回のセミナーでテイスティングを行ったのは写真左から次のようなラインナップでした。
- ラニョーサボラン フォンヴィエイユ35年
- ポールジロー トレラール35年
- デュピュイ ヴィンテージ1971年
- ダルティガロング 1978年
- ドメーヌ・ボワニエエル 1986年
- ポールジロー ブドウジュース
5種類とも飲んだことはあったのですが、一度にこの5種類を飲み比べるのは初めてだったので、とても新鮮でした。
ラニョーサボランとポールジローはグランドシャンパーニュ産コニャックとして最も花開くと言われる35年熟成物をチョイス。デュピュイはボルドリ地方のコニャックですが、比較対象として非常に面白いです。
この中では個人的にはポールジロー トレラール35年が最も口に合いました。当サイトでもおすすめしているデュピュイですが、1971年は私にとっても少し香りが草っぽく感じ、好みとしては合いませんでした。まぁこれはあくまで好みの問題なので、賛否両論あるところでしょう。
アルマニャックにおいてはドメーヌボワニエルの方が好みでした。甘味が強めでまろやか。私は甘めのブランデーのほうが好みのようです。 具体的なテイスティング方法や学んだことはまた別記事にて紹介したいと思います。
コニャック界の闇と矛盾
今回のセミナーはコニャック好きにとって非常に有意義な時間となり、8,000円のセミナー代以上の価値があったと思っています。
・・・そう、コニャック好きにとっては。
鯉沼氏も仰っていましたが、コニャックを広めるためには我々のようなコニャック好きな方を増やして本当に美味しいコニャックをどんどん消費して、大手メーカー以外のコニャック農家へ還元し元気づけなければならない。その点に関してはもちろん賛成だしその通りだと思います。
しかし、我々のようなコニャック好きが考えるコニャックの魅力の広め方にこそコニャック業界の闇と矛盾、そして日本でコニャックが流行らない理由を垣間見た気がしました。
「大手メーカーではなく、本当に美味しいコニャックは沢山あるけど埋もれているからもっと飲もう!」だけでは全く伝わらないのです。
「コニャックは素晴らしいのになぜ分かってくれないんだ・・・」
「コニャックの魅力を分かってない!」というの言い分はコニャック好きの我がままに尽きるという事を感じました。
コニャックは非常に深いが故に、コアなファンは多く存在するが、あまりにも現ファン層のコダワリが強すぎてライトな消費者がついてこれないという課題。これがウイスキーのように流行りを生み出せない最大の課題かつ抜本的な打開策が必要な問題である。と。
コニャック業界(特に日本)を盛り上げ、新たなファンや若年層の消費者を味方に付けるにはおそらく全く別のアプローチをしなければ、それこそ良いコニャックは衰退する一方だと危機感すら感じました。まずはコニャック消費層の分母を広げることが重要。そのための戦略はおそらくこれまでの常識を破壊するくらいの新しい考えでなければダメだと痛感しました。
一昔前にブルーオーシャン戦略を用いて、新たなワイン層を取り囲み、一気に業界のトップへ躍り出たイエローテールのワインのように。
この具体的な戦略については当サイトでもまた別途記事にしたいと考えています。(ちょっと考える時間がほしい・・・)
酒育の会「コニャックの魅力」セミナーまとめ
鯉沼氏を招いたコニャックセミナーはコニャック好きにとってはたまらない非常に有意義なセミナーでした。鯉沼康泰氏のコニャックに対する熱意を感じ、鯉沼氏ともっと仲良くなって一緒にコニャックを楽しみたい!
そう思うことが出来るセミナーでした。
また、コニャック好きにとってのコニャックの魅力を再認識したのと同時に、これからコニャックの魅力を広めるための手法の矛盾、そして課題を感じた2時間半でもありました。
※決してこのセミナーの悪口を言っているのはありません。
それらを踏まえて、当サイトでのブランデーに対するアプローチ方法も考えていきたいと思います。