今回のレビューは久々のカルヴァドス!
カルヴァドス ペイドージュ地区にて家族経営で自家生産のリンゴや洋ナシのみを使ってカルヴァドス、シードルを作っているアプルヴァル(APREVAL)より、30年熟成超えのキュヴェ ヴィクトールです。
アプルヴァルの特徴
アプルヴァルの歴史や生産体制については輸入元の田地商店(信濃屋)さんが丁寧なページを作ってくれているので、そちらをご参照頂ければ大体分かるかと思います^^
参考
→アプルヴァル紹介ページへ
20世紀初頭に創業したアプルヴァル。カルヴァドスの生産に着手したのが1960年。更には1997年よりシードルの生産を開始されました。
現在(2022年時点)の当主は1998年に就任したアガーテ・レタリー女史。
現在は17種類のリンゴと一部洋ナシを育てており、それらを類まれなるブレンド技術でカルヴァドスに昇華させています。
アプルヴァルのリンゴの種類
カルヴァドスではリンゴの品種よって「Bitter」「Bitter Sweet」「Tart」「Sweet」といった4種類のカテゴリにリンゴが分類されます。それらをうまく組み合わせカルヴァドスを作っていくのですが、アプルヴァルで使用されているリンゴの品種は下記の17種類です。
まぁ実際はこれを書いたところで実際に直接食べる機会はそうそうないので何のこっちゃという感じかもしれませんが、参考情報として記載しておきます。。。
Bitter apples :
Domaine・ Fréquin rouge・Mettais
Bitter-sweet apples :
Bedan・Bergerie de Villerville・Binet Rouge・Bisquet・Joly Rouge・Noël des Champs・Saint Martin
Tart apples :
Petit jaune・Rambault・René Martin
Sweet apples :
Coquerelle・Doux Verret de Carrouges・Germaine・Rouge Duret
アプルヴァルに洋ナシは使われているのか?りんご100%なのか?
アプルヴァルの商品説明を見ると「自社農園産有機栽培りんご100%使用」「アプルヴァルで生産されるシードル、カルヴァドスは、そのすべてが自社畑で収穫されたりんごを原料に・・・」とあるが、ここで一つの疑問が生まれた。洋ナシは使われていないのか?りんご100%なのか?
カルヴァドス ペイドージュAOCでは洋ナシのブレンドは30%以下まで認められています。
これは某バーのオーナーさんから私にご質問頂いたのですが、私も明確ではなかったため、直接アプルヴァルにインスタグラムとメール経由で問い合わせました。その内容を輸入元の信濃屋さんに連絡してくれたらしく、信濃屋さんからアプルヴァルのAgatheさんに確認を取って頂きました。
その回答によると、アプルヴァル自社規定によりシードルを作るりんごの果汁(ジュース)次第で、使用する種類と比率を決めていて、2~8%の割合で洋ナシを使用することもある、とのこと。
ブランド説明では一見りんご100%のように受け取ってしまいますが、実は一部洋ナシが使用されている場合もあるとのことです。
ご参考までに。
アプルヴァル キュヴェ ヴィクトール30年の基本情報
APREVAL Cuvee Vicror 30 ans
容量:700ml
アルコール度数:41%
蒸溜:単式蒸留器で2回蒸留
熟成年数:30年以上
1200リッターの大樽で熟成した後、400リッターの樽に移し変えて熟成
生産域:カルヴァドス ペイドージュ
輸入業者:田地商店
購入価格:税込14,450円(2022年11月購入)
実はアプルヴァルのカルヴァドスは商品によって使用されている樽の大きさが異なります。
田地商店WEBページの説明によると10年~12年熟成のアプルヴァル グランドリザーブは200~400リッターのオーク樽にて熟成。最初の1/4の期間を新樽、残りの期間は古樽を使用。
※ただしオフィシャルHPの商品説明には「200~400 リットルの樽で熟成され、その期間の25%にソーテルヌ樽を使用」という説明になっている・・・
18年~24年熟成のアプルヴァルXOは1000リッターの大樽で熟成後、400リッターの新樽で熟成。
※田地商店WEBページの説明ではXOは1200リッターの大きな新樽で熟成させた後、400リッターの古樽に移し変えて熟成・・・・となっていますが、APREVALのオフィシャルHPの商品ページには1000リッターの大樽で熟成後400リッターの新樽で熟成との記載があるので、オフィシャルの方を正としています。ちょっとあべこべ。
今回のキュヴェヴィクトールは1200リッターの大樽で完熟した後、400リッターの樽(新樽という表記はない)に移し変えて熟成となっています。
まぁ樽に関してはちょっと国内での商品説明とオフィシャルの商品説明がだいぶ異なるのですが、恐らくリリースした商品のタイミング的なものもあるのでしょうか・・・この辺りは後ほど確認したいと思います。
ただ、基本的に熟成年数が長いほど最初の熟成に大樽を使ってタンニンが出る量を抑えてゆっくりじっくり熟成を経ているような仕上がり工程です。
2022/12/8追記-----------
信濃屋さん経由でアプルヴァル社に確認して頂きました。
ここ数年で熟成樽の使い方に変更があったようで、2022年12月8日時点でアプルヴァルオフィシャルHPの記載内容が正となります。
XOは「1000リットルのオーク樽で熟成後、400リットルの新樽で熟成」が正解。
グランドリザーヴは「200~400 リットルの樽で熟成され、ブレンドされている原酒の25%はソーテルヌ樽で熟成されたもの」が正解。
どちらもアプルヴァルとして最高のブレンドを行うための手法とのことでした。
※2022年12月時点での情報なので、また数年後は変化するかもしれませんね。
追記ここまで-------------
前置きが長くなってしまいましたが、早速口開けテイスティングを行ってまいりましょう^^
アプルヴァル キュヴェ ヴィクトール30年の香り立ち
注いだ瞬間周囲40cmにぐわっと広がるどこかブルーベリーっぽさも含んだ濃いリンゴ飴。
グラスから15cm程ほどの距離から香りを取ると、少しお酢・・・いや黒酢はちみつのような酸と甘みが融合したアロマを感じとることができる。
その後、ダークチョコ。そしてフランボワーズといった少し酸味系のフルーツがほんのり香ってくる。(やや無理やり引っ張り出した感はある)
さらに鼻を近づけると、ややセメダイン臭を拾うものの、良く熟したカルヴァドスに見られる低木や腐葉土、くすぶっている薪、そしてまだ火を入れていない葉巻のようなスモーキーな香りが心地よく鼻腔を抜ける。
香り立ちだけでも分かる、これは葉巻と相性抜群な気がする。
アプルヴァル キュヴェ ヴィクトール30年の味わい
酸味、渋みはどちらかというと強いほうだけれども、デュポンのような樽樽しい渋みではなく、リンゴ本来の渋み・・・
恐らく洋ナシ比率が低いことと、アプルヴァルに使われているビターアップル品種由来の特徴が良く出ているものだと思う。
なかなか濃厚で重厚感、飲みごたえがあるカルヴァドス。
鼻から抜けるクローヴのようなスパイス感。余韻にほんのりミルクチョコレート。最後にきちんと甘みが残るのが非常に良い。
アプルヴァル キュヴェ ヴィクトール30年まとめ
力強いカルヴァドスではありますが、リンゴ由来の渋み甘みがうまく共存する大変良くおすすめできるボトル。そしてこのクオリティで約1万5千円(2022年11月時点)前後という価格帯も非常にありがたい1本。
比較対象のカルヴァドスとして同じ30年熟成カルヴァドス ペイドージュ生産域の「デュポン30年」「ロジェグルー エイジドール」、そして生産域は異なりますが洋ナシ100%の「パコリ30年」なんかと飲み比べしてみると大変面白いです。
やはりどっしりとしたカルヴァドスはデュポン30年ですが、同じどっしり系でも樽由来のウッディさが苦手な人は今回のアプルヴァル30年が非常におすすめです。香り立ちでも述べましたが、葉巻との相性も非常に良いカルヴァドスだと思います。
30年熟成でありながらすっきりと綺麗なリンゴ感を楽しみたいのであれば迷わずロジェグルーですね。このロジェグルー エイジドールは価格帯も今回のアプルヴァル30年と同じ1万5千円前後なので、価格含めた特性の差が一番顕著現れる比較ではないかと思います。
この辺りの個性は同じ程度の熟成で同じペイドージュ地区のカルヴァドスでもハッキリと分かれます。
このアプルヴァル キュヴェ ヴィクトール30年を初めて飲ませて頂いたのは2022年9月に神楽坂Bar Tarrow'sさんにて 「これ飲んだことあります?」と出して頂いたのが 最初。ある種有名なカルヴァドスでありながら実は恥ずかしながらそれまで飲んだことありませんでした。Tarrowさんに感謝です。
その時の印象深さをそのままにじっくりとこれから経年を楽しめるカルヴァドスとなりそうです。