【入門編】コニャックとアルマニャック等の種類の違いは何か?で書いたように、コニャック、アルマニャックと同じく、フランスのブランデーの一つにカルヴァドス(Calvados)があります。

今回はカルヴァドスについて、土壌の違いと生産域の区分け、代表的なおすすめカルヴァドスを見ていきましょう。
カルヴァドスの定義
まず大前提として、ざっくりとしたカルヴァドスの定義は次の通りです。
- カルヴァドスは、フランス北西部ノルマンディー地方でつくられるリンゴを原料としたアップルブランデー

カルヴァドスの原料はリンゴ
コニャックとアルマニャックに並ぶフランスの3大ブランデーですが、大きな違いは原料にあります。
コニャックとアルマニャックは原料がブドウですが、カルヴァドスはリンゴが原料となります。また、後述する生産域によって一定量の洋ナシのブレンドも認められています。

なので、同じフランスのブランデーと言えど、コニャックやアルマニャックと比べて味の特徴はかなり違います。リンゴの風味が特徴的です。
カルヴァドスが出来るまで
リンゴを収穫した後、醸造します。醸造したリンゴ発泡酒はシードル(cidre)と呼ばれます。
そのシードルを蒸留させると「オー・ド・ヴィー・ド・シードル」という無色透明のリンゴ蒸留酒となります。
最後にその蒸留酒を樽で最低2年以上熟成(生産域によっては3年)させるとカルヴァドスとなります。
1.【収穫】リンゴ
↓
2.【醸造】シードル
↓
3.【蒸留】オードヴィードシードル
↓
4.【樽熟成】カルヴァドス
というステップです。
ノルマンディー地方には約800種類ものリンゴがありますが、その中でもカルヴァドス用として認められているリンゴは48種類(+数種類の梨)です。それぞれ果汁中のタンニンと酸により主に「甘味」「甘苦味」「苦み」「酸味」の4タイプに分けられます。
特に「甘苦味」と「苦味」の品種は、下記に書いているカルヴァドス3つそれぞれの生産域の果樹園の70%を占めています。(酸味品種は15%以下)
カルヴァドスは3つの生産域に分かれる
カルヴァドスもコニャック、アルマニャック同様にAOC(原産地呼称規制)の対象であり、ある一定の条件を満たさなければ「カルヴァドス」と名乗ることができません。 そのうちの一つが生産地域です。
まず大前提として、フランスのノルマンディー地方で作られるリンゴブランデーがカルヴァドスと名乗ることができます。
原料となるリンゴの収穫から蒸留、熟成、ブレンドまで、ノルマンディー地方の決まった3つの地域で行わなければなりません。それぞれ次の3の生産域によって、特徴と呼び方が違います。
- カルヴァドス ペイ・ドージュ(Calvados Pays d'Auge)
→(下図)オレンジの地域 - カルヴァドス ドンフロンテ(Calvados Domfrontais)
→(下図)黄色の地域 - カルヴァドス (Calvados)
→(下図)緑色の地域と斜線の地域の一部

Google mapで見るとこの辺↓
ではそれぞれ少し詳しく見ていきましょう。
カルヴァドス ペイ・ドージュ(Calvados Pays d'Auge)
カルヴァドス ペイ・ドージュを名乗るには次の条件が必要となります。
- カルヴァドス ペイ・ドージュの地域で製造すること(カルヴァドス県の他、オルヌ県(Orne)とウール県(Eure)の一部を含む)
- 蒸留時の洋ナシ(梨ワイン(ポワレ))の混合割合は30%以下にすること
- 単式蒸留器で2回蒸留すること(コニャックの蒸留と大体同じ)
- 最低2年間オーク樽で熟成させること
- アルコール度数最低40度
ペイドージュの地域は浅い斜面でアルカリ性の土壌が特徴的です。一般的にはこの地域のカルヴァドスが最も高値で取引されることが多いようです。
日本において流通量も多く手に入りやすいカルヴァドス ペイ・ドージュは「ペール マグロワール 」や「ブラー 」「シャトー・ド・ブルイユ 」「アドリアン・カミュ 」などでしょう。Amazonや楽天などの通販でもお手軽に入手できます。
↓シャトー・ド・ブルイユ 15年↓

↓ペールマグロワール20年(現在入手困難)↓

カルヴァドス ドンフロンテ(Calvados Domfrontais)
このエリアは原料となる果樹園全体の25%が洋ナシ果樹園であることも特徴的です。
カルヴァドス ドンフロンテの条件は主に次の通りです。
- カルヴァドス ドンフロンテの地域で製造すること
- 蒸留時の洋ナシ(梨ワイン(ポワレ))の混合割合が30%以上であること(ペイ・ドージュとは逆ですね)
- 連続式蒸留器で蒸留すること(アルマニャックと大体同じ)
- 最低3年間オーク樽で熟成させること
- アルコール度数最低40度
↓半連続式蒸留器のイメージ(アルマニャック用ですが・・・)↓
日本において流通量も多く手に入りやすいカルヴァドス ドンフロンテは「ローリストン 」などでしょう。Amazonや楽天などの通販でもお手軽に入手できます。
カルヴァドス (Calvados)
最も大きいこの地域。生産域はカルヴァドス県の他にマイエンヌ県(Mayenne)、サルト県(Sarthe)、オワーズ県(Oise)の一部を含みます。 主な条件としては次の通りです。
- この領域全体またはカルヴァドス・ペイ・ドージュ地区及びドンフロンテ地区周辺で造られるもの、または、それらをブレンドしたもの
- 最低2年間オーク樽で熟成させること
- アルコール度数最低40度
ペイドージュやドンフロンテと違い、実はこのカルヴァドスACのみ蒸留方法に法的な規制がありません。単式でも連続式でもどちらでも可能。ただ、多くは連続式蒸留器で1回の蒸留方法が用いられるようです。
カルヴァドス生産域まとめ
- フランス北西部ノルマンディー地方でつくられるリンゴを原料としたブランデー
- AOCにより、生産域によって呼称と条件が違う
カルヴァドス ペイ・ドージュ(Calvados Pays d'Auge)
カルヴァドス ドンフロンテ(Calvados Domfrontais)
カルヴァドス (Calvados)
