滞在3日目その1
2023年1月13日(金)
滞在3日目となる今日は朝10時からボルドリ地区にあるコニャック生産者Fanny Fougeratを訪問予定でした。
場所的にはボルドリ地区の割と端っこにあります。
予定では朝9時半に近くのホテルの駐車場で当主であるFanny Fougeratさんと待ち合わせをし、そこから車で蒸留所まで送り迎えをして頂けるとのことで、そのお言葉に甘え駐車場にて待機。
すると彼女からメールが・・・
「ちょっとトラブルがあって蒸留所まで送り迎えできないかもしれない!ホテルにテイスティング用のボトル持っていくからホテルのBarでテイスティングでもいい??」
と!
何と、今日蒸留を担当するはずだった方が突然の休みで、Fougeratさんが常に蒸留器を見ていないといけないらしく、あまり時間が取れなくなってしまったとのこと。
もちろん彼女達の仕事に迷惑をかけるわけにはいかないので、ホテルでのテイスティングに急遽変更。Fougeratさんに直接ホテルに来て頂いたのですが、本当に大丈夫だったのかちょっと申し訳ないです。。。本当であれば私が行くべきところをわざわざ来ていただいてありがとうございます。
コニャック4種類をテイスティング
滞在しているアパートのすぐ近くにコニャックの5つ星ホテルであるHotel Chais Monnetがあります。ここは前回2019年の訪問の際に2泊したのですが、控えめに言って最高のサービスと設備。さすがコニャック初の5つ星ホテルです。値段も値段なので今回は宿泊なし(笑)
そこのフロントにあるラウンジBarをお借りしてテイスティングタイム。
4種類のコニャックを持ってきて頂きました。
Fanny Fougeratの特徴と畑
Fanny Fougeratはもともと4世代にわたるコニャック生産者で、これまでは蒸留したオードヴィー(コニャックの原酒)を大手生産者に提供する生産者で、自社ブランドを持っていませんでした。
Fanny Fougeratとして自社ブランドを展開し始めたのは2013年のこと。現当主のFanny Fougeratさんの代からです。
Fougeratさんは旦那さんと一緒にコニャック作りを行っており、Fougeratさんの担当は主とし蒸留・熟成・ボトリング・広報。まさに家族経営のコニャック生産者です。
自社ブランドを持った今でもファンボア、プティットシャンパーニュのオードヴィーはレミーマルタンへ、ボルドリのオードヴィーはマーテルへの原酒として卸しています。
Fanny Fougeratとして畑は
ボルドリ地区に3ヵ所。ファンボア地区に2ヵ所、プティットシャンパーニュ地区1ヵ所。合計50haのブドウ畑を持っています。
所有する蒸留器は25hlのものが2台。
最大の特徴は一切ブレンドを行わず、単一エリア、単一ヴィンテージでコニャックを商品化しているところです。
ファンボアはファンボアのみ、ボルドリはボルドリのみ、プティットシャンパーニュはプティットシャンパーニュのみで、それぞれのヴィンテージごとに商品をリリースしています。
全て加糖なし、カラメル添加なし、ノンチルフィルタード。(加水はする)
そのため各年代ごとに微妙に味わいが異なり、それぞれの生産域、ヴィンテージごとの特徴をダイレクトに楽しむことができるのが特徴です。
またそれぞれの生産域やボトルによって澱の量を細かく調整しているのもポイントです。
今回持ってきて頂いた4種類のコニャックの特徴を見てみましょう。写真で右から順番に見ていきましょう。
それぞれラベルに代表するアロマが描かれています。
ファンボア:Cognac Petite Cigüe
こちらはいわゆるVSOPレンジにあたるボトル。2018年ヴィンテージで2022年ボトリングです。
澱ありでの蒸留方式。新樽での熟成期間は6ヶ月、その後古樽に移動され約4年程熟成されています。約4年熟成の若くフレッシュなコニャックです。
ボルドリ:Cognac Iris Poivré XO
2006年ヴィンテージ、2022年ボトリング。
澱ナシでの蒸留方式。新樽熟成期間は4か月。その後古樽で約16年熟成されたもの。
ボルドリの風味を活かすべく、マーテルの方式と同様にワインの澱を使わない蒸留方式でクリアに仕上げた後、新樽使用期間も4ヶ月という短い期間で極力余分なタンニンが入るのを避けた仕上げ。
どちらかというとボルドリは軽い風味になるので、あまり余計な要素は入れる必要はないという方向性のもと。
ラベルにはボルドリを代表するアロマでもあるスミレの仲間、アイリスが描かれています。
プティットシャンパーニュ:Cognac Le Laurier d'Apollon
2011年ヴィンテージ、2022年ボトリング。
通常の3倍の量の澱を追加して蒸留するという独特な蒸留方法を採用したコニャック。
例えば最初の蒸留で22hlのワインを使用する場合、澱の量は約2~3hlほど使用するそうです。目的はプティットシャンパーニュの力強さをより引き出すため。
最初から澱を3倍投入するのではく、最初のheadの蒸留液が出始めた頃に澱を更に追加するそう。焦げ付きを防止するため。
ファンボア:Cognac Cèdre Blanc Extra Old
2004年蒸留、2022年ボトリング。
こちらは最初のファンボアPetite Cigüeと同じように澱ありでの蒸留方式。ラインナップの中では最も熟成年数が長いボトル。
今後の展開
2013年に展開を始めた比較的新しいブランドということもあり、現時点ではまだ若いコニャックがメインの商品ラインナップですが、今後はやはり長熟のコニャックを視野に入れているとのこと。
30年・・・40年・・・と。
「もちろん視野に入れてコニャックを作っているけど、それは私の娘の世代になるでしょう。」とFougeratさん。
今Fougeratの娘さんは6歳。私の長男(7歳)と同世代です。
世代を跨いでのコニャック作りは飲み手としてもワクワクが止まりませんね。
こうやって何十年も先にどのような展開を迎えるのか、家族生産者ならではの楽しみです。その時には私もおじいちゃんになっている頃かと思いますので、私の息子、孫(まだいませんが)と一緒にFanny Fougeratの40年熟成コニャックを飲むのが楽しみです。
その後奇跡が起こる
予定より早くFanny Fougeratさんとのミーティングタイムを終えて、少し時間が余ったのでコニャックの市街地を散歩。
コニャックのオンラインショップでも有名なコニャテークに行ったり、来週訪問するバッシュガブリエルセンのブティックに行ってみたり。
昼13時頃、いったん宿泊しているアパートに戻ろうと帰り道を歩いていると、どこか見覚えのあるおじいちゃんが・・・
ん・・・
んん?
もしかしてあのジャン・フィユー4代目当主のパスカル・フィユー氏ではないか!!!???
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