コニャック滞在記2023年 冬

コニャック滞在記2023冬⑨再訪そして進化するJean Luc Pasquet

2023年2月26日

滞在6日目その2
2023年1月16日(月)

A.E.ドールでの素敵な体験を終え、車でJean Luc Pasquetまで送って頂きました。A.E.ドールのパラディセラーがあるジャルナックから車で約20分。色々とお世話になりました。

そして3年ぶりの再訪となるグランドシャンパーニュの家族経営オーガニックコニャックの生産者Jean Luc Pasquetです。

Jean Luc Pasquetの歴史やオーガニックコニャックに至る経緯は是非こちら、前回2019年の訪問記をご参照下さい。
ジャンリュックパスケのオーガニックコニャック達
衝撃!実は○○○○のコニャックの蒸留も請け負っているパスケ家の蒸留とは・・・

3年ぶりに再会したJeanさん、そしてAmyさんに温かく迎え入れて頂きました。お二人とも素敵な笑顔は健在です。

Amyさんと記念撮影

場所はコチラ↓

新たな熟成庫と民泊

Jean Luc Pasquetでは2022年から自宅敷地内に様々な新設備を建築中で、3年前とは大きく進化していました。インスタ等で写真は見ていたのですが、いやぁすばらしい・・・

新築されたご自宅!大きな窓からコニャックのブドウ畑を一望できる絶景のダイニング空間!

こんなところでコニャックやワイン飲みながら家族で食事できるのがどれだけ素晴らしいことか・・・

新たな熟成庫へ

Jean Luc PasquetではJeanさんやAmyさんが様々なインポーターや売り手とプライベートボトリングなどでも精力的にコラボしていることもあり、徐々に事業規模も大きくなってきました。

そして3年前まで余裕のあった旧熟成庫もパンパンな状態に・・・。樽の配置もだいぶ変わってぎゅうぎゅうになっているそう。

そんなこんなで新設された昨年から増築された新たな熟成庫がコチラ。もうほとんど完成状態で、今は樽が続々と運び込まれているタイミング。ある意味貴重なタイミングに立ち会うことができました。

新しい熟成庫の入り口
色々と引っ越し途中

熟成庫の特性としては恐らく少し湿度高めのセラーになると思うとのことでしたが、最終的にどのくらいの湿度に落ち着いてどのような環境になるのか、実際に樽を置いて数年使ってみないと分からないとのことで、今後このセラーと共に成長するコニャックを楽しみに見守っていくそうです。

民泊も楽しみ

セラーの隣に位置するのが今まさに建築中の民泊施設!

2023年3月に完成予定だそうです。天井も高く、かなり快適な空間になりそう。

ここは2階の吹き抜け
まだまだ完成度50%くらい

次回訪れた時には泊まらせて頂けるとのことで、夏を楽しみにしています!

フォルブランシュのコニャックにはどんな樽が使われているのか?

パスケといえばフォルブランシュ、そんなイメージが私にはあります。目の前に広がる美しいフォルブランシュ畑から作られるオーガニックのフォルブランシュコニャック。

フォルブランシュの美しい畑

そんなフォルブランシュにはどのような樽を使っているのか気になったのでAmyさんに聞いてみました。

コニャックに使われるオーク樽には主にリムーザンタイムとトロンセタイプがあります。

特徴としてリムーザンタイプは木の繊維が大きくよりタンニンが出やすく力強い仕上がりになる樽、トロンセタイプは繊維がより細かく柔らかい仕上がりになる樽です。(リムーザンの森やトロンセの森以外の場所から取れたオークも繊維の種類によってリムーザンタイプ等と呼ばれたりします)

パスケの場合、現在フォルブランシュから生まれたコニャックはトロンセタイプの樽で熟成させています。それ以外のユニブランに関してはリムーザンタイプの樽を使っています。

フォルブランシュのコニャックが熟成されている樽(トロンセタイプ)

ちなみに樽に書かれているGFはトロンセタイプの樽を表します。

  • リムーザン(Limousin)オーク=Loose Grain=Wide Grain=(仏)Gros Grain=G.G
  • トロンセ(Trancais)オーク=Tight Grain=Fine Grain =(仏)Grain Fin=G.F

パスケではどちらのタイプの樽がフォルブランシュに向いているかを実験するため4年間リムーザンタイプとトロンセタイプの樽それぞれでフォルブランシュを熟成させその後どのような変化が現れるのか比較を行ったそうです。

その結果、アロマに大きな変化が現れたらしく、結果的にあまりタンニンが出すぎないトロンセタイプのオーク樽の方がフォルブランシュのフルーティーな特性を活かせるという結論に達し、2018年以降はフォルブランシュの熟成にトロンセタイプの樽を使うようになったとのことでした。

その後コロナ渦のロックダウンのさなか、いくつかの生産者を呼んで2010年~2020年のフォルブランシュを飲み比べたそうですが、やはりターニングポイントはトロンセタイプの樽に変えた2018年からだそうです。それ以前とそれ以降では明らかにアロマの芳醇さが変わりトロンセタイプの方が圧倒的にフォルブランシュの特性が活かせるという最終結論に至ったとのことです。

そのサンプルにとフォルブランシュ100%コニャックの樽別飲み比べをさせて頂きました。

右から2013年、2014年、2015年、2016年、一つとんで2018年です(2017年は霜の影響で十分な量のフォルブランシュを収穫できなかった)。
この写真にはありませんが、2010年のフォルブランシュ(リムーザンタイプで熟成)も比較させて頂きました。
2018年はそのターニングポイントとなったトロンセタイプで熟成されたフォルブランシュコニャックで、それ以外は全部リムーザンタイプで熟成させたフォルブランシュコニャックです。ヴィンテージがそれぞれ違うので完全に同一条件での比較というわけではありませんが、貴重な飲み比べです。

確かに、言われてみるとフルーティーな香味は2018年が一番・・・という余計な渋みが邪魔をしない香味に仕上がっているように思えます。フォルブランシュという繊細で果実感の高いコニャックはやはり素材そのものを活かせる熟成が一番ということですね。

貴重な体験をありがとうございます。

ちなみにこの比較用ミニボトルをお土産として頂きましたので、是非どなたかと一緒に比較テイスティングしたいですね。一人で独占するのも勿体ないので・・・。

様々な樽で熟成を試みる

民泊の完成を楽しみにしつつ、旧熟成庫へ。旧といってももちろんここもずっと現役で使っていきます。

ここでは新たに樽の種類も増え、様々な種類の樽が眠っていました。

中でも興味深かったのはペドロヒメネスカスク。

このPXカスクはドインのインポーターとのコラボで作っているコニャックで、こちらも約8ヶ月フィニッシュPXカスクを使っているとのこと。やはりこの5年10年でフレンチオーク以外のオーク樽をフィニッシュに使う機会は多くなってきたとのこと。

ちなみにコニャックの熟成にはオーク樽であればフィニッシュに限らずフレンチオーク以外でも何を使ってもOKなのですが、実態としてはフレンチオーク以外の樽はフィニッシュだけに使われる傾向が多いです。ただこれは2023年2月、この記事を書いている時点の状況なので今後10年でどう変わるか注視したいですね。

様々なエリアからのコニャック

その他にもこの3年で様々なエリアのコニャックが増えたことは驚きでした。

この日見せて頂いた中にはボルドリやボンボアのコニャックもありました。これらはパスケが原酒を買い付け、ボトラーズシリーズであるTrésors de famille(後述)に使われるものや、各国とのインポーターとのコラボレーションのために用意しているコニャックです。

パスケの印象としてはグランドシャンパーニュ、そしてプティットシャンパーニュがメインとい印象だったので、ここまで手広く展開しているのは良い意味で予想外。さすがAmyさんの手腕です。

ただ、ここ数年でコラボしすぎてストックも少なくなってきているので、これからは少しスローダウンする予定だそうです(笑)

今後のパスケの展開が更に楽しみですね。

テイスティングルームにて

一通り現状を見せて頂いたあとはテイスティングルームに移動。ゆっくりとAmyさんと一緒にコニャックとピノーデシャラントをテイスティングさせて頂きました。

現在Pasquetのコニャックとして展開しているのは主として次の3カテゴリ。

まずはオーガニックシリーズ。Pasquetの畑で完全オーガニック栽培されたブドウで作られたコニャック達です。いくつか派生やフォルブランシュオンリーの限定品はありますが、メインは4年、7年、10年の3ボトル。これからもう少し長熟も出るかも。

※この写真は2019年のもの

そしてLa collection Confluencesシリーズ。Pasquetご近所の3つの生産者(パスケ含む)の畑から作られたコニャック。

最後にTrésors de familleシリーズ。(旧L´Esprit de Familleシリーズ)

パスケが蒸留や熟成を行ったものではなく、ネゴシアン、ボトラーズ的な立ち位置で親しい小規模生産者達や今やコニャックの生産を止めてしまったけど素晴らしい原酒が残っている生産者の古酒から超厳選した樽をボトリングしたもの。シングルバレルのカスクストレングスコニャックです。シングルバレルなので数量限定商品。ダニエルブージュがリリースしている「フランソワ・マランジェ」やジャングロスペランあたりがイメージとしては近いもの。

そしてピノーデシャラント各種。

大変楽しいテイスティングタイムを過ごさせて頂きました。

最後にパスケのAmyさんより日本のコニャックファンに向けてメッセージを頂きましたのでご覧下さい^^

やや意訳ですがAmyさんからのメッセージを記載します。

日本のコニャックファンの皆さんこんにちは!

ジャンリュックパスケのコニャックを見て頂いてありがとうございます!是非私達のような小さな生産者のコニャックやピノーデシャラントを楽しんで下さいね。様々なスタイルを楽しんで頂けると思います。是非感想を聞かせて下さい。

いつか日本にも訪問したいと思います!乾杯!!

明日はバッシュガブリエルセンへ

その後1時間ほどテイスティングを楽しませて頂き、気づけば18時過ぎへ。

また今年2023年あるいは来年2024年の夏に再訪することを約束しお別れの時間。

Amyさんに諸々手配して頂き、この日はパスケで2022年から働き始めたコニャック在住のスタッフの方に一緒に車で送ってもらうことに。

コニャック市街地までの約30分、車の中でとても有意義な時間を過ごすことができました。

そして明日は2件のコニャック生産者訪問予定。午前中は初となるBache Gabrielsen(バッシュガブリエルセン)に訪問させて頂きました。

タイミングよくセラーマスターのJean-Philippe氏とお会いすることに・・・・!

次の記事
バッシュ・ガブリエルセンとDUPUYそしてセラーマスターへ

-コニャック滞在記2023年 冬

Copyright© Brandy Daddy -ブランデーダディ- , 2024 All Rights Reserved.