今回レビューを行うのは、私の中で最も神の領域に近いコニャックの一つ「Cognac François Voyer Ancestral No.8(フランソワ ヴォワイエ アンセストラル No.8)」です。
このアンセストラルNo.8はブレンドされている最も若い原酒ですら最低50年熟成(平均すると60~80年熟成)で、そのブレンド元の原酒はヴォワイエのパラディセラーに眠る現当主の祖父の時代から引き継がれている貴重なグランドシャンパーニュコニャックで構成されています。
アンセストラルに関してはBarで飲んだのが1度、そして現地で贅沢にテイスティングさせて頂いたのが1度でしたが、もうその素晴らしさは私の心を掴んで離さなかったのでとうとう購入に至りました。
フランソワ ヴォワイエに訪問しパラディセラーを訪れた際の記事は下記より読めますので是非ご一読下さい。
参考記事
→神コニャック「フランソワ・ヴォワイエ」訪問
→フランソワヴォワイエの熟成庫に潜入
→神の領域に達したコニャックを堪能する
フランソワ ヴォワイエ アンセストラルNo.8の基本情報
François Voyer Ancestral No.8(フランソワ ヴォワイエ アンセストラル No.8)
容量:700ml
アルコール度数:44.3%
生産域:グランドシャンパーニュ100%
熟成年数:最低50年熟成~80年熟成のブレンド(1920年代〜1960年代)
2018年ボトリング
186本限定
ノンカラメル・ノンシュガー・ノンチルフィルタード・加水なし
購入価格:税込141,600円(2023年6月購入)
化粧箱も派手に堅牢。重厚な木箱がしっかりと80年の歴史を重ねたコニャックを守っています。
そして頑丈な蝋封。この手の栓を開けるのはいつも一苦労します。綺麗なタオルに水を含ませ電子レンジで30秒してホットタオルを作り、そのタオルで優しく蝋を包んで蝋を柔らかくします。そしてソムリエナイフで丁寧に削っていきます。削るというか、柔らかくなった蝋封はガムみないな感じになるのでねっとり剥がしていくという感覚です。
最も私の苦手な作業です。抜栓の汚さはご容赦下さい。。。
フランソワ ヴォワイエ アンセストラルNo.8の香り立ち
もう抜栓した瞬間からスゴい。
グラスに注ぐと更にスゴい。全ての表現が陳腐化されスゴいという言葉しか出てこないくらいスゴいのだが、それじゃ何のことか分からないので何とかして言葉で表現してみる。
グラスに注いだ瞬間立ち込めるのは、オレンジとか柑橘を通り越して圧倒的ライチと白桃。
ライチ桃ライチ桃ライチ桃桃桃桃桃!!
ライチと桃のゲシュタルト崩壊。
その後ろに隠れたパッションフルーツの甘酸っぱい香気が脳天を直撃する。
もう少し鼻を近づけると少し甘めのアールグレイ。めっちゃ紅茶感ある。
そしてほんのり薔薇?を彷彿とさせるようなフローラルさ。これは絶妙なので人によって感じ方は変わるかもしれない。
少しだけスモモのような酸味を伴う果実感がある。
もちろんウッディな要素もあるのですが、ココナッツ、低木といった優しいウッディさ。樽樽した強烈な要素は皆無。
50年以上の熟成を経たコニャックのランシオ香はウッディ要素よりも南国フルーツ要素が大いに勝る。それを体現した香り立ち。
一息嗅ぐたびに「はぁぁ~」と幸せなため息が出てしょうがない。
注いで1時間経ってもなお新鮮な白桃。空気に触れさせ時間が経つと注ぎたての時には無かったミルクチョコレートのような甘い香りが顔を出す。この変化も大変面白い。
フランソワ ヴォワイエ アンセストラルNo.8の味わい
味わいはもはや筆舌にしがたい。全ての語彙が置き去りにされる感動。
舌と鼻に残るウッディさは少ないけど、樽感は意外とある。タバコの葉や心地よいシガーケースのような印象はある。割とスパイシーさはあり、少し胡椒やリコリスを彷彿とさせる程よいスパイス感。香り立ちで感じた白桃、ライチはそのままに、マンゴーの甘みが加わる。
ただフルーツだけの印象ではなく、この完璧な塩梅の樽感あってこそのヴォワイエ味の醍醐味だと私は感じる。
鼻抜けには最初に感じた南国フルーツ感と共に、ヴァニラの甘い余韻が永遠に残る。
ランシオの暴力とはまさにこのこと。
今日はこれ以外何も口にしたくない。
フランソワ ヴォワイエアンセストラルNo.8まとめ
私が持っているコニャックの中では間違いなくNo.1に君臨するコニャックです。
Bar Dorasの中森さんが"パーフェクトコニャック"と称するように、究極のコニャックといって過言ではないでしょう。
ヴォワイエの持つ原酒はそれ単体でも素晴らしいのですが、注目すべきはこのアンセストラルはシングルカスクでは完成せず、パラディセラーに眠る究極の原酒達をブレンドすることで初めて完成するコニャックということです。
コニャックの神髄はそのブレンド技術。
その原酒単体でも素晴らしい輝きを放っているのですが、ヴォワイエの現マスターブレンダーのピエール氏曰くその輝きはブレンドによって何倍も増すとのこと。
ヴォワイエ訪問記でも書きましたが、ヴィンテージ単体はそれぞれ素晴らしい個性と長所があります。例えば他のヴィンテージよりタンニンが強い物、他のヴィンテージより繊細で南国フルーツの余韻が長いもの。その個性を活かしつつ、長所を壊すことなく自分のブランドに最もふさわしい味わいのコニャックに仕上げる。それがブレンドの真骨頂。この神業はマスターブレンダーのピエール氏だからこそ成せる技なのです。
神の領域に近づく
冒頭でも書いたようにこのフランソワ ヴォワイエ アンセストラルNo.8は間違いなく「神の領域」に最も近いコニャック。
なぜ神ではなく神の領域なのか?
・・・コニャックの神はまた別に存在するからです。私がコニャックの神と崇めてやまないのはアンセストラルの上を行くフランソワヴォワイエの真のフラッグシップボトル、平均熟成80年超えという「フランソワ ヴォワイエ Collection Pesronnelle」です。
現地に行った際に飲ませて貰ったCollection Pesronnelleはこれまで飲んだ全ての概念を吹き飛ばす衝撃でした。
残念ながらこのCollection Pesronnelle は日本には輸入されておらず、ほとんどのオンラインショップでも売り切れ状態なので今回リリース分を手に取るのはなかなか難しそうです。
次のCollection Pesronnelleのリリースは数年後・・・恐らく2026年、2027年あたりではないでしょうか。もちろんその時のリリースはヴィンテージもブレンドも異なるため、今回私が飲ませて頂いたものとは異なるコニャックです。
しかしながらその時も変わらず神のコニャックであることは間違いないでしょう。その時を気長に待ちながらCollection Pesronnelle貯金を進めたいと思います。
その前に大切なのはしっかりゆっくりとこの神の領域であるアンセストラルNo.8を堪能すること。今回の記事は抜栓間もないタイミングでのテイスティングです。また数ヶ月、数年・・と経って行くうちに変化を遂げるのがコニャックの面白い所。もしかすると神へと昇華するかもしれません。
そんなポテンシャルにワクワクしながらフランソワヴォワイエ アンセストラルを楽しみたいと思います。
あとこのボトルは2023年12月のコニャックテイスティングイベントで出したいと思います。お楽しみに^^