世の中で最も有名なコニャックの一つといっていいレミーマルタン ルイ13世(Rémy Martin Louis XIII)。
コニャックの事を全く知らない人でも、もしかすると映画やドラマなどでこの名前やボトルを見た事があるという人は多いのではないでしょうか。高級ブランデーといえば必ずと言っていいほど名が上がるレミーマルタンのフラッグシップボトルです。
ルイ13世のボトルとして使われている職人の手によって作られたバカラのクリスタルボトルのインパクトは圧巻。そしてレミーマルタン ルイ13世はレミーマルタンのマスターブレンダーの手により約1200種類もの原酒がブレンドされており、中には100年超えの原酒も使用されているまさにコニャックの最高峰といっても過言ではないのかもしれません。
同じ高級ラインナップにヘネシーが作る「リシャール」がありますが、私的には香りも味わいもルイ13世の方が圧倒的に好きですね。
いくつものルイ13世がある?
一言でレミーマルタン ルイ13世といっても、実は時代時代でさまざまなルイ13世が存在します。通常のルイ13世もボトルデザインが変更されたりとマイナーチェンジはあるのですが、それ以外にも「〇〇〇エディション」といった限定品が多いのもルイ13世の特徴のひとつ。
今回はレミーマルタン ルイ13世の歴史と共に、様々なルイ13世を見て参りましょう。
レミーマルタン ルイ13世の起源
レミーマルタン ルイ13世の起源は1800年代に遡ります。レミーマルタンの創業は1724年なのですが、ルイ13世の誕生のきっかけは1874年のレミーマルタン創業150周年のタイミング。創業150周年を記念して特別にブレンドされたコニャックが今日のレミーマルタン ルイ13世の原型となっています。
ルイ13世という名前はその名の通りフランスのブルボン朝第2代の国王であるルイ13世(1601年9月27日 - 1643年5月14日)に敬意を表し付けられた名前です。レミーマルタンの創業家一家がフランスのコニャック地方に移ってきたのが1620年代と言われており、その当時の国王の名を博したとされているようです。
なぜレミーマルタン ルイ13世は高い?
恐らくこの記事を読んでいる方で「家にルイ13世持ってるよ!」という方はほとんどいないと思います。(持ってる人は確実にレアケースですね)
その理由の一つに価格があります。
ルイ13世は日本市場において現在安くても1本23万円前後。店によっては30万円を超えますし、ホストクラブでボトルを入れようものなら数百万円は覚悟をしなければならない代物です。エディションによっては何倍も高価ですね。
その背景には先述したようにバカラのクリスタルボトル、1200種類ものブレンド、原酒のレアさなどが挙げられるのですが、もちろんレミーマルタンの持つブランド力も大きな影響を与えています。
ブランデー好きな方には「これに30万出すなら、小規模生産者でもっと凄いの買えるよ!」という方もいるかもしれませんが、これは「ルイ13世」というステータスを買うのであってそもそもコスパという評価基準からは少し離れた位置にあるボトルだと私は認識しています。
それでも4大大手と呼ばれるコニャック生産者「ヘネシー」「マーテル」「レミーマルタン」「クルボアジェ」のフラッグシップボトルボトルを飲み比べた時、個人的にはレミーマルタンが最もふくよかで複雑、そして一番余韻に幸せを感じることができるコニャックだと感じます。
・・・各フラッグシップボトルはそれぞれ飲ませて頂いた事はありますが、この4つを同時に飲み比べた事はありませんので、あくまでも1本1本飲んだ時の印象値の話ですが。。。
ちなみに4大手のフラッグシップボトルは下記の通り。
- ヘネシー:ヘネシー リシャール
- マーテル:ロールド・ジャン・マーテル
- レミーマルタン:ルイ13世
- クルボアジェ:エクストラ L'Essence
いつかこの4本を並べて飲み比べることができるようになりたいものですな(笑)
レミーマルタン ルイ13世のラインナップを見てみる
ではここで限定エディションも含めてどんなルイ13世があるか見てみましょう。
限定品は実物の写真が手元にないので、いくつかは文字のみか提供写真となります。
通常のルイ13世
まずはこちらの通常のルイ13世。
特に限定品というわけではなく、基本的に常に流通しているルイ13世です。
販売価格は23~30万円くらい。
ボトルの形状や箱は年代によって異なります。そこまで細かく分類しているときりがないので、旧ボトルも含めて通常のルイ13世として紹介します。
直近の代表的な3種類は次の通り。
- ルイ13世ベリーオールド(八角形の箱)
- ルイ13世 金キャップ(四角形の角ばった箱)
- 2021年現行品のルイ13世(四角形のしっかりした箱)です。
比較すると次のような違いがあります。
【現行ルイ13世】
・しっかりと刻印されたシリアルナンバーがあり。
①瓶底、②換え栓、③冊子に共通のナンバーが彫られています。この3つのナンバーが共通でないものは、ボトルと換え栓と冊子がバラバラの所から寄せ集められてきたもの。その場合はボトルのみの買取価格で評価されるらしいので要注意。
【ルイ13世金キャップ】
・針で手彫りされたシリアルナンバーがあり。
こちらも①瓶底、②換え栓、③冊子に共通のナンバーが彫られています。
【ルイ13世ベリーオールド】
・シリアルナンバーはなし。
・ボトル側面の羽根が薄い。
ちなみに、ルイ13世ベリーオールドは時期によってはバカラ製のボトルではなく、サンルイクリスタル(Saint Loiuis)製のボトルが使われている場合がありますが、それにる買取価格の差は無いそうです。瓶底の紋章がバカラのものではなく、サンルイのものであっても偽物というわけではないので要注意。
ルイ13世の各違いについてはコチラのライフバケーションさんのサイトの方が詳しく書かれているので、ご参考あれ。
限定品やサイズ違いのルイ13世達
次に紹介するのは生産量が限定されたスペシャルエディション達。価格もスペシャル(笑)
ルイ13世 ブラックパール
2007年発売。もともとレミーコアントローの会長であったHeriard Dubreuilさんのプライベートストックをブレンドされて造られた特別なルイ13世。
世界786本限定。日本市場には60~70本ほど流通。日本市場での希望小売価格は100万円。
容量700ml、アルコール度数40%。
ボトルの色はシルバー。(というかクロムメッキに近い)
ルイ13世 ブラックパールマグナム
2008年発売。世界限定358本。
上記のルイ13世ブラックパールのマグナムボトル(1500ml)バージョン。
当時の日本市場での販売価格は400万円前後。
既にここら辺から価格がバグり始める。
ルイ13世 レアカスク 43.8
2009年に発売されたルイ13世 ブラックパールの別バージョン。世界限定786本。
ちなみに商品名の最後にある数字「43.8」はこのボトルのアルコール度数から取っています。
中身も以前のブラックパールとは異なる原酒がブレンドされています。そのきっかけは2004年に発見したある一つの樽だったそう。そこからインスパイアを受けて作ったのがこのレアカスク43.8。
容量700ml、アルコール度数43.8%。
当日の日本市場の希望小売価格は約140万円。
ルイ13世 ジェロボアム
2011年発売。
ルイ13世マグナム(1500ml)を超える容量3000mlのルイ13世。
基本的にサイズが大きいだけ。当時は「史上最大のレミーマルタン ルイ13世」と持てはやされていましたが、その数年後にもっとデカいやつが次々出てきて史上最大の座を奪われてしまった可哀そうなボトル。(笑)
なお、この「ジェロボアム」とはデキャンタの大きさを示す名称です。主にシャンパンなどのボトルサイズに使われます。
ボトルの大きさによって名前が決まっています。
- ピッコロ(Piccolo):0.2リットル
- ドゥミブティーユ(Demi):0.375リットル
- ブティーユ(Bouteille):0.75リットル
- マグナム(Magnum):1.5リットル
- ジェロボアム(Jéroboam):3リットル
- レオボアム(Réhoboam):4.5リットル
- マチュザレム(Méthusalem):6リットル
- サルマナザール(Salmanazar):9リットル
- バルタザール(Balthazar):12リットル
- ナビュコドノゾール(Nebukadnezar):15リットル
ちなみにジェロボアム(3L)はボルドー地方の瓶だと6Lになったり、ちょっとややこしいです。
ルイ13世 レアカスク42.6
2013年に発売されたルイ13世 レアカスク第2弾。
そのブレンド内容は当時のセラーマスターであるPierrette Trichet(ピエレット・トリシェ)さんが2009年にレミーマルタンが所有する全ての樽をテイスティングして決めたもの(らしい)。彼女曰く「私の最高傑作」とのこと。
こちらも商品名の最後にある数字「42.6」はこのボトルのアルコール度数から取っています。
ボトルの色はブラック。
容量700ml、アルコール度数42.6%。
当時の日本市場の希望小売価格は約240万円。
ルイ13世 ブラックパール アニバーサリー・エディション
2014年発売。世界775本限定生産。
ルイ13世の発売から140年を記念して作られたボトル。
ドメーヌ・ド・メルパンにあるレミーマルタンのファミリー用リザーブの一つ、572リットルの特別なティエルソン(リザーブ用の大樽)からボトリングされています。このティエルソン”C-100-93″は、1世紀前にフランスのリムーザン地方産のオーク材を使って手作りされたもので、この100年間にレミーマルタンファミリーがリリースした限定製品用のティエルソンとしてもまだ3樽目だそうです。
ルイ13世 タイム・コレクション ジ・オリジン - 1874
2016年発表2017年発売。
1874年に発売されたルイ13世の最初のボトルデザインをモチーフに発売されたルイ13世。
バカラ製のクリスタルボトルではなくSaint-Louis製のクリスタルボトルが使用されています。
ルイ13世 マチュザレム
2016年発売。
2011年に発売されたルイ13世 ジェロボアムに続く大容量のボトル。その容量実に6000ml。
コニャックのクリスタル製6Lデキャンタは世界初かつ世界最大。このデキャンタは、バカラに何世代にもわたって受け継がれてきた卓越した技を活かし、20人以上の職人の手を経て、ひとつひとつ制作されています。
また、伝統的なセラーマスターのテイスティングとサーブ方法を踏襲して、デキャンタからコニャックを抜き出すためのピペットを備え、クリスタル製グラス8脚、サービス用の専用トレイとともに豪華なディスプレイチェストに収められています。
中身は基本的に通常のルイ13世と同じっぽい。
日本市場での希望小売価格は1,000万円。(マジか
ルイ13世 サルマナザール
2018年発売。
どこまで巨大化すれば気が済むのであろうか。
前回のマチュザレム(6000ml)に懲りず、今度は何と9000mlの過去最大のルイ13世。ボトルも含めた総重量は15kg。
色々凄いけど、もう突っ込む言葉が見あたらない。
このボトルに対しての定価は存在していないのですが、提供価格は想定されており、何と450,000 USD。
※ソースはコチラ
1ドル110円換算で日本円にして約4900万円。
・・・もはやこれ以上巨大化が進まない事を祈るばかりです。
ルイ13世サルマナザールのまとめ記事はコチラから
ルイ13世 ブラックパールAHD
2019年発売。世界限定1498本。
容量350ml。通常のルイ13世ブラックパールのハーフサイズ。
AHDとは、 1965年から 1982年までルイ13世のチェアマンを務め、現オーナーファミリーの初代でもあるアンドレ・エリアール=デュブルイユ(André Hériard Dubreuil)の頭文字です。ファミリーの所有する特別なセラーの名にも冠されています。
日本市場での販売価格は140万円前後。
ハーフだけど2007年発売のブラックパール フルサイズより高い・・・・
ルイ13世レア・カスク42.1
※2023年11月記事追加
2023年7月にコニャック レミーマルタンのフラッグシップボトルであるルイ13世の更に別次元の限定ボトルとして発売された『ルイ13世レア・カスク42.1』。
2009年に販売されたレア・カスク43.8、2013年に販売されたレア・カスク42.6、そして3つめが10年ぶりとなるこのレア・カスク『レア・カスク42.1』です。
レア・カスク42.1のイベントには私自身参加させて頂く機会がありましたので、是非そちらのイベントレポートをご覧下さい。
参考記事
→レミーマルタン ルイ13世レア・カスク42.1とはどんなコニャックか?至高のルイ13世を体験する
約100年後に公開される超特別なルイ13世の映画と音楽??
こう見るとよくここまで変態的なコニャックをリリースしたなと思えるルイ13世ですが、まだまだ序の口。
実は100年後に見ることができるルイ13世の特別な映画と音楽があるのです。
100 YEARS- The Movie You Will Never See
2015年に公開された映画。・・・といっても公開はその100年後にあたる2115年(笑)
ロバート・ロドリゲス監督、ジョン・マルコビッチ主演のこの映画はルイ13世をテーマにしたフランス製SF映画。
ルイ13世を造るには100年の歳月が必要ということをコンセプトに作られたこの映画の公開日は何と2115年。
もちろんちゃんと映画としては完成しているらしいのですが、その完成版は主演であるジョン・マルコビッチさえも見た事なく、監督のロバート・ロドリゲスしか知らないそう。この映画のフィルムは100年後の2115年11月18日のプレミア上映まで確実に守られるよう、100年後のその日に自動的に開錠する最先端の金庫内で保管されます。
この映画のプレミアム上映権が当たった人はそのチケットを孫の代に託すそうです。
100 YEARS: THE SONG WE'LL ONLY HEAR IF WE CARE(私たちが変われば聴ける歌)
2017年のルイ13世プロジェクト。上記の映画プロジェクトの音楽バージョンです。
もうどこまでやるねん(笑)
実はこれ、アメリカのトップアーティスト、ファレル・ウィリアムスと音楽を通じた環境保護プログラムの一環なのです。
このプロジェクトは彼のオリジナルソングをコニャック地方の粘土で作られたレコードに録音。この曲は、2017年11月に、上海で開催されたプレミアイベントで一度だけ流されました。
曲が披露された後、世界でたった一つのレコードは、2117年まで解錠されることのない最先端の金庫に封印。フランスにある「ルイ13世」のセラーの中で、リリースまでの100年の時を過ごします。
厳重なセキュリティを備えた金庫の唯一の弱点が水。そう、このまま地球の温暖化が進み、海面が上昇して金庫が水没してしまえば、粘土でできたレコードが溶けて曲が失われてしまうのだ。
・・・とのこと!!
何かすごく壮大ですが、もう好きにやってくれという感じだ(笑)
でもこうやってコニャックの事をアピールするのもレミーマルタンにしかできないやり方なので、そこは素直に凄いと思う。
詳しくはこの辺の記事を見て下さい。
次の節目は2024年のレミーマルタン300周年!!
さて、ここまで色々と出してきたレミーマルタン ルイ13世ですが、次の節目は2024年!!
そうレミーマルタン創業300周年です。
300周年に何もやらないはずがないですね。私が最も楽しみにしているイベントの一つです。
もちろんこの300周年にルイ13世の記念ボトルが出るかどうかはまだ発表されていませんが、何かしらそれに近しいものはリリースされると思います。
ただ、100万円を超えるようなボトルは記念ボトルとして多く流通するには高価すぎるので、ルイ13世の記念ボトルが出たとしてもそれは限定的で、ルイ13世とは別の記念ボトルがリリースされるだろうというのが私の予想ではあります。
つい2015年にマーテルが300周年を迎えた時の記念ボトルがマーテルのXOクラスでもあるマーテル コルドンブルーをベースにした「マーテル コルドンブルー 300周年リミテッドエディション」だったように、もしかしたらレミーマルタンもXOクラスのボトルが一般的な記念ボトルになるのかもしれません。
ただ、レミーマルタン創業250周年を記念して1974年にリリースされたルイ13世と同等クラスの原酒が入っているこの記念ボトルが信じられないくらいウマ過ぎるボトルだったので、300周年はさらに期待せざるを得ません。
ということで私は数年前からレミーマルタン300周年貯金を初めているところです(笑)。いや、まじめによ。
ルイ13世はなかなか高価でボトルを買うという人は少ないコニャックではありますが、こういったアプローチができるのは大手コニャックメーカーならではですし、リリース情報を見るだけでも楽しめてしまうものです。
これから先どんなレミーマルタン ルイ13世が出現するか、楽しみながら2024年を待ちましょう!
・・・12リットルのルイ13世が出ない事を祈るばかりだ!!(笑)