今回のレビューはCognac Expertから届いた珍しいボンボア産コニャック「コニャック Mauxion ボンボア マルチミレジム1973/1975/1976」です。
本当はこのボトルを当ブログでレビューするつもりは無かったのですが、あまりにも衝撃的なコニャックだったため紹介したいと思います。
まず、結論から言うと、コニャックに「フルーティー」「華やか」を求めるのであればこのボトルはおすすめしません。逆に「スパイシーさ」「渋さ」を求める変わり者のコニャックファンの方には是非とも試して頂きたいボトルの一つです。それほどスパイシーさと渋さにステータスを全振りしたコニャックです(笑)
コニャック Mauxionとは?
Mauxionというコニャックブランドの特徴としては全て「シングルクリュ」「ヴィンテージ入り」「カスクストレンクス」コニャックであること。Mauxion Selectionはグランドシャンパーニュ・プティットシャンパーニュ・ボルドリ・ファンボアの4エリアをメインとしています。(今回は珍しいボンボア産100%のコニャック)
中には1914年蒸留の物など、100年以上昔の原酒も多く扱いがあります。
実はこのMauxion Selectionが商品としてリリースされたのはここ最近である2015年のこと。Cognac Prunier との共同プロジェクトでもあるのです。原酒自体はPrunierが保有しているものをMauxionが厳選し樽を買い取り、Mauxion Selectionとしてリリースしたものとなります。
珍しいボンボア産のコニャック
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、コニャックの生産域は
- グランドシャンパーニュ
- プティットシャンパーニュ
- ボルドリ
- ファンボア
- ボンボア
- ボアゾルディネール
の6エリアに生産域が分かれます。
それぞれ特徴が異なるのですが、基本的に下にいけばいくほどそれ単体の原酒で構成されるコニャックは少なくなります。特にボンボア、ボアゾルディネールはブレンド時に使用されることは多くありますが、それ単体でコニャックとして商品化されるのはレアケースと言っていいでしょう。現に私もボンボア単体でカスクストレンクス、シングルカスクというコニャックをボトルごと入手するのは初めてかもしれません。
ボンボアの生産域はボン・ボアは沿岸部の砂地質の土壌や谷、また南部のブドウ畑に位置します。 この砂は中央山塊が侵食されて運ばれたものです。このボン・ボアのブドウ栽培の特色は、他の作物や放牧地、または松林や栗林と隣り合わせになり栽培地が集中していないことが挙げられます。
ミネラルが豊富で高品質なブドウが育つグランドシャンパーニュ地区などと比較して、その土壌の特徴から一般的にボンボアのコニャックは香味がやや痩せているという評価を受けることが多い傾向にあります。そのためボンボア100%のコニャックというのは長期熟成のコントロールも難しく、単体で高いクオリティを維持し製品化するのが大変難しいのです。そのためボンボア100%のコニャックというのはコニャック全体でもラインナップがかなり少ない商品です。その中でも今回あえてボンボア100%の樽を選出し商品化してきたのにはそれ相応の自信が見受けられます。
コニャック Mauxion ボンボア マルチミレジム1973/1975/1976の基本スペック
コニャック Mauxion ボンボア マルチミレジム1973/1975/1976
容量:700ml
アルコール度数:49.5%(カスクストレンクス)
ヴィンテージ:1973年・1775年・1976年(ブレンド比率は後述)
ノンチルフィルタード
瓶詰:2021年5月20日
限定生産300リットル
価格:330ユーロ(2021年7月時点)
ご覧の通りMauxionが厳選した3つのヴィンテージがブレンドされたコニャックをカスクストレンクス、ノンチルフィルタードで詰めた300リットル限定の逸品です。
ヴィンテージのブレンド比率は1973年が41%、1975年が56%、1976年が3%となっています。
そして瓶詰は2021年5月。それまでは樽に眠っていたそうなので、ヴィンテージの間をとって約45年熟成ということになります。
コニャックの蒸留器は通常2500リットル収容の蒸留器が多いのですが、このヴィンテージを蒸留した際には700リットルの小型蒸留器が使用されています。小さい蒸留器を使うほどより香味が凝縮された蒸留液となる傾向にありますので、この蒸留器の大きさもMauxion ボンボア マルチミレジムのキャラクターに寄与していると言っていいでしょう。ここまで詳細なスペックが分かるのはありがたいですね。
Mauxion ボンボア マルチミレジムの色合い
それでは早速レビュー!
その前に、改めてこのコニャックのカラーに注目してみましょう。
とても味のある手拭きの気泡入りのボトル。そしてしっかりと封蝋された注ぎ口。どうでしょうこの濃い褐色・・・いやもはや黒に近いこげ茶色。あのブラックコニャックと名高いダニエルブージュにも引けを取らない濃さです。
コニャックの色はタンニンの量と比例することが多いのですが、もう見るからにがっつり樽由来のタンニンが効いてそうな色合いですね。果たして実際の味わいはいかがでしょう。
Mauxion ボンボア マルチミレジム香り立ち
グラスに注いだ瞬間、これまで感じた中でも最もインパクトの強い香り立ち。
古いオークで作られた椅子を連想させます。そしてハーブやシダ植物、革。バーベキューに使う炭火を連想させるスモーキーさ。白胡椒やナツメグなど何十種類ものスパイスを感じさせるスパイシーさ。ところどころに見え隠れするドライオレンジ。
味わいではなく香りだけでもかなりの酸味を感じることができます。
フルーツや華やかさを感じさせるグランドシャンパーニュやプティットシャンパーニュ、ボルドリなどのコニャックとは全く別物です。ただ無骨な荒々しさとは全く異なる何十にも変化するその香味がどこか興味を引いて私の鼻を放そうとしません。
Mauxion ボンボア マルチミレジム味わい
口に含んだ瞬間に炸裂する数十種類ものスパイス(のような感じがする)。その色濃さに現れる樽由来の深い渋みを含んだタンニンを存分に感じつつ、落葉の絨毯が広がる雨上がりの 森の中を散策しているような気分を味あわせてくれます。
そのほかに甘みを拾おうとすると、かなりカカオ割合の高いダークチョコレート、濃いメープルシロップ、焼いた蜂蜜のような重厚な味わいが舌の上に乗ってきます。
しかしながらその中にもかすかに(ほんとに一瞬だけ)イチゴのような果実の香味を拾うこともできます。その一瞬のフルーティーさがまた面白い。
余韻はまさしく木や藁、干し草を連想させる香味が長く舌と鼻腔に留まります。そのあとかすかにバニラの優しく甘い香りが鼻を抜けていきます。
まとめ
まさしくコニャックのエスプレッソ。そして「樽を飲む」コニャックといっていい。
先述したようにボンボアコニャックの扱いは非常に難しい。ボンボア単体の場合、どうしても香味の複雑さに欠けてしまう部分がありますが、このコニャックはこれまでに感じたことのないくらい濃厚で樽の効いたボンボアコニャック。
「樽を効かせて濃くしただけではないか」と言われるかもしれませんが、グランドシャンパーニュや他の生産域の場合、逆にどんなに新樽を使ってタンニンを多くとってもここまで素直に樽の渋みを感じることは難しい。グランドシャンパーニュの華やかなフレーバーがそれを邪魔してしまうからです。
決してこのコニャックをボンボアコニャックのスタンダードと位置付けてはいけないと思いますが、元のボンボアコニャックの淡麗さをもってこの樽感が初めて出せるコニャック・・・そんな気がします。
最初に述べたように、この「コニャック Mauxion ボンボア マルチミレジム1973/1975/1976」は、コニャックに「フルーティー」「華やか」を求めるのであれば全くおすすめしません。あと初めてコニャックを飲む人にも正直おすすめはできません。あまりにもキャラが個性的すぎるイレギュラーなコニャックですので(笑)
逆に、コニャックを飲みなれている方や、フルーティーなコニャックに飽きた方、がっつりタンニンの効いた渋いコニャックを飲んでみたい方にはとても興味深いコニャックであることは間違いありません。また、スモーキーなアイラウイスキーを好んで飲む人にもおすすめできるコニャックです。
おそらくあまりにも個性的過ぎて好みとなるターゲットが少なすぎるので、国内に輸入されることはまずないでしょう(笑)
これまでと一味も二味も違う衝撃を受け止めることができる勇者は是非チャレンジして頂きたい1本です!
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