滞在7日目その3
2019年12月9日(月)
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「話し込みずぎてオリジナルブレンドコニャック作る時間10分しかないけど、どーすんだコレ」
タイトルが長くなってしまったが、まさにそういうことです。
午前中に色々一緒に回ってくれたThomasとアルノーはABK6のチームとミーティングがあるようなので、2時間後に再度合流します。
ということで、ABK6コニャック訪問の午後は14時~16時までABK6の現セラーマスター兼マスターブレンダーのイザベルさんとのマンツーマン!
本当はゆっくりと話ながら3種類のABK6のヴィンテージコニャックを使って私Brandy Daddyのオリジナルブレンドコニャックを一緒に作る予定だったのですが、せっかくマスターブレンダーと2時間近く1対1で話す機会を設けてもらったのですから質問したいことが盛沢山でずーっと一緒に喋っていました(笑)
コニャックをブレンドする時間は最後の10分・・・急ピッチで作ります。
ABK6マスターブレンダーのイザベルさん
2012年~2018年の途中までは Christian Guerin氏がマスターブレンダー・セラーマスターを務めていました。
その後交代し、2018年後半以降ABK6およびLEYRAT、REVISEURといったDOMAINES FRANCIS ABECASSIS(ドメーヌ・フランシス・アベカシス) のマスターブレンダーを務めるのはイザベルさん( Mrs Isabelle Couprie)。
彼女が現在21を超える熟成庫の品質を管理し、ABK6はじめDOMAINES FRANCIS ABECASSISのコニャックをブレンドし、同じ味わい同じ香り立ちになるように管理しています。
イザベルさんはそれまでコニャック「Gautier(ゴーティエ)」にてマスターブレンダーを務めていました。
→ゴーティエ公式HP
→ゴーティエのコニャック一覧
笑顔が素敵でとても優しい方。色々と丁寧に教えて頂きました。
話題としては下記のようなややテクニカルな点について色々と教えて頂きました。
- 新樽から古樽に移す際の樽の選定基準
- 各熟成庫の違い
- 乾燥した熟成庫と湿度の高い熟成庫と、生産域(おもにプティットシャンパーニュとファンボア)の組み合わせによるコニャック熟成感の違い
- カラメル添加の影響と実際に添加されているカラメルについて
- 加糖の影響とバランス、添加許容量の計算方式
- コニャック成分分析表の見方を再度確認(主にApparent Alcoholic StrengthとTrue Alcoholic Strengthの違いと中身)
- ABK6、LEYRAT、REVISEUR各ブランド毎のブレンド基準の違い
- 同じ品質を保つための実際のブレンドプロセス
などなど・・・
プロ中のプロからダイレクトに聞くことができ、この約2時間は本当にかけがえのない貴重な時間となりました。
ちょっと全部書くと大変なボリュームになってしまうので、これらはまた別のまとめトピックとして個別に書きたいと思います。(いつになるやら)
オリジナルブレンドコニャック!
じっくりと話した後は急ピッチでオリジナルブレンドコニャックを作ります(笑)
今回イザベルさんが用意してくれたのはABK6やLEYRATなどで使う異なるヴィンテージのコニャック3種類。
- 2004年プティットシャンパーニュ産:アルコール度数41.9度
- 1985年ファンボア産:アルコール度数42.1度
- 1972年ファンボア産:アルコール度数42.8度
です。
この中で1985年ヴィンテージはABK6 1985ヴィンテージで使われている原酒の一つです。ややスパイシーなテイスト。
そして特徴的なのは2004年のプティットシャンパーニュのヴィンテージでしょうか。こちらは新樽に入れられていた期間が少し長いのと、まだ古樽に入れられてそんなに長い時間は経っていないので、最も若いコニャックですが、同時に最もタンニンを感じるパワフルなコニャックでもあります。
1972年ファンボアのヴィンテージはさすがに最も余韻が長いリッチなコニャック。
さて、これをどうやってブレンドするか・・・。
ぶっちゃけ1972年単体でも十分すぎるくらい美味しいんですが(笑)
カミュのブレンディング体験のように同じ熟成年数で違う生産域のコニャックをブレンドする場合は自分の好みだけでも良いかもしれませんが、異なる熟成年数と異なる特徴を持った生産域のコニャックをブレンドする場合は組合せが膨大すぎます。
この場合は自分の好みに加えて、「このコニャックを飲むシチュエーション」を設定することが重要です。(と思う)
今回私がテーマとしたのはズバリ
「18時過ぎに家族と夕食を取り、21時頃子供たちが寝たあと、(自営業で自宅オフィスなので)少し残りの仕事を終わらせ風呂に入ったあと22時半から自分の部屋で一人で飲みたくなるコニャック」
です!!!!
え、
めっちゃ細かい?
いいんです、そのくらい細かく設定したほうが理想のコニャックをブレンドできると思ったので(笑)
目指すは1日の疲れを癒し、一口で数分はボーっとできるようなフルーティー感で長い余韻。スパイシー感と樽感はやや少なめにしたいところです。
まずは一つ一つヴィンテージをテイスティングし、およその感覚をつかんだあと、ちょっとずつメスシリンダーに入れて混ぜていきます。
何の科学的根拠もなく、完全に直感です(笑)
1回目のブレンディングではどうしても納得のいくものができなかったので、もう一回挑戦させてもらいました。
慎重に割合を計り・・・
まぜまぜ・・・
シャバシャバと軽くカクテルのようにシェイクします。
(撮影:イザベルさん(笑))
そして!
できた!!!!
完成したコニャックはこちら!!!
ブレンドの割合としては下記の通り。
- 2004年プティットシャンパーニュ産:アルコール度数41.9度
→30% - 1985年ファンボア産:アルコール度数42.1度
→20% - 1972年ファンボア産:アルコール度数42.8度
→50%
ブレンド後のアルコール度数は42.39度です。
まぁ結局1972年のやつが一番割合高くなってしまいましたが(笑)
1985年は私にとっては少しウッディな感じが強く、2004年は若いコニャックに特有なフレッシュさと少しのスパイシーさがあったので、ちょうどよいバランスを探したところこのような比率にしました。
イザベルさんにもテイスティングして頂きました!
私
「正直なところ、どうですか??」
イザベルさん
「正直なところ?・・・よくバランスが取れてると思うわ。あなたが目指したフルーティー感が良く出てるわね!」
し・・・信じるぜその言葉!!
ということで約10分のスピードブレンディングにて作ったオリジナルコニャック350mlをボトルに入れてもらいました!
残念ながら非売品ですが、Brandy Daddyオリジナルブレンドコニャックは私の家でお楽しみ頂けます(笑)
既に4分の1くらい飲んじゃったけど・・・。
イザベルさん、本当に貴重なお時間をありがとうございました!!
アフターテイスティング
イザベルさんとのブレンディング指南後、ミーティングを終えたThomasとアルノーが戻ってきました。
その後少し時間があったので、みんなでABK6およびLEYRAT、REVISEURといったDOMAINES FRANCIS ABECASSISのコニャックをテイスティング。(というか軽く飲み会)
ABK6ルネサンスはじめABK6ExtraやLEYRATのフラッグシップボトルも飲み放題だ(笑)なんて幸せな時間だ。
そしてジンとウォッカも。
実はABK6はオーガニックのジンとウォッカも作っています。正確には別のブランド名ですが、この辺もまた別の機会に紹介できたらと思います。
特にジンは2種類とも美味しかったけど、コニャック樽で6ヶ月熟成したヤツ(写真右)が美味しかったなぁ。
お土産にめっちゃすごい本を頂く
イザベルさんからお土産にとなかなか凄い本を頂きました。
それがこちら
Maîtres de Chai du Cognac / Cellar Master of Cognac
何と、数々の名ブランド、名セラーマスターの特集が掲載されているハードカバー360ページのフルカラー本。
・・・というか図鑑です。本の重量は約3Kg(笑)
掲載されているブランドは次の名門24ブランド。(日本でも有名どころは日本語表記にしています)
- バッシュガブリエルセン
- ビスキー
- カミュ
- Chateau de Cognac
- Chateau Montifaud
- クルボアジェ
- デラマン
- アベカシス
- フェラン
- フラパン
- ヘネシー
- ハイン
- ジャン・フィユー
- ラーセン
- ルイロワイエ
- Marnier Lapostolle
- マーテル
- Merlet&Fils
- ミュコー
- Prunier
- レミーマルタン
- Renault
- テセロン
- ティフォン
各ブランドのセラーマスターマスターのインタビューが美しい写真と共に掲載されています。
しかもフランス語だけでなく英語での併記がある超親切な本です。
これは宝物になりそうです。
未だに全部読めてはいませんが、写真見るだけでも面白い。じっくり読み込んでみようと思います。とても勉強になります。
ホテルに到着→ディナーレストランへ
その後17時過ぎにABK6のオフィスを後にし、今日はコニャックの隣の大きな町、アングレームに移動して18時頃ホテルにチェックイン。
泊まったホテルはこちら
Hotel Mercure in Angouleme
要塞都市アングレームの街が一望できる素晴らしい眺めの部屋でした。
至福のディナータイムとチーズ達
ホテルに1時間半程休憩した後、20時からABK6のThomasがたまに行くというおすすめレストランへ少し遅めのディナーへ。
向かったのはLe Terminusというアングレーム駅のすぐ近くにあるレストラン。チーズとワインの種類がとにかく豊富で、シーフード料理がおいしいことで有名なレストランだそうです。
Thomasとアルノー、そして私の3人でディナーを楽しむことに!
まずはシャンパーニュで乾杯!
そして出るわ出るわの超デリシャスな料理たち。
美味しすぎて写真を撮るのを忘れてしまいましたが、特にこのメインの魚とチーズのアラカルトが最高でした。
チーズのセレクトはThomasにお任せ。
すみません、各チーズの詳細忘れましたがこんな感じ。
白ワインとの相性最高。
さすが、だてにチーズが自慢のレストランではありません。
そして締めのノンカフェインエスプレッソ。
うおぉ・・・
お腹いっぱい・・・。
明らかにフランスに来て食べすぎております。
明日は樽とプティットシャンパーニュへ
ということで腹いっぱいのディナーを頂いたあとはホテルに直行。
予定では時間があったらバーかクラブっぽいところに行く?とThomasと話をしていたのですが、さすがにちょっと疲れすぎたし、明日にひびきそうなので22時には解散。
そしてホテルで爆睡。
翌日は朝の8時半から予定があったので体力が回復することを祈るばかり。
そう、明日は引き続きABK6じっくり訪問の続き。ABK6で使われている樽メーカーと、ABK6のプティットシャンパーニュおよびグランドシャンパーニュ地区の畑と蒸留所を回ります。
が、2日連続ABK6コニャックだし、事細かに書くとめちゃめちゃ長くなりそうなので、ブログでは重要なポイントや印象に残った点をサクッと書いて参ります。
・・・サクッと・・・書けるかな?(笑)
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