コニャック滞在記2019年 冬

コニャック滞在記㉓:クルボアジェ訪問(2)700の契約農家の役割とクルボアジェの蒸留

2020年2月27日

滞在9日目その2
2019年12月11日(水)

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クルボアジェ訪問(1)こだわりのコニャック樽

午前中のクルボアジェ(Courvoisier) と厚い信頼関係にある樽メーカー「DOREAU」社でのコニャック樽作りの訪問・勉強を終え、午後はジャルナックにあるクルボアジェ本社に戻り、そこでしばし優雅なランチを。

伊藤さんのご紹介で、普段入ることのできないクルボアジェのゲストルームにてクルボアジェのグローバルアンバサダーを務めるレベッカさんと、2019年からアメリカでのクルボアジェブランドマネージャーとなったジョン・ポッターさんとご一緒させて頂きました。

クルボアジェには世界各国にアンバサダーがいますが、レベッカさんはアンバサダー全体の統括をしている、いわゆるアンバサダーの総代表的な存在。これまでイギリスを拠点にしていましたが、2019年からジャルナックに移動してきたそう。
↓レベッカさんインスタ↓

ジョンさんはまだブランドマネージャーになって間もないという事で、私と同様にクルボアジェ本社に来るのは今回が初めてだそうです。

そして映画のワンシーンに出てきそうな美しすぎる部屋でお食事を。

まずはウェルカムドリンクとしてコニャックハイボールで乾杯。クルボアジェVSをジンジャーエールで割り、レモンを乗せた鉄板の組み合わせ。

その後はなんかどえらいオシャレなランチを頂きました。ランチというかアフタヌーンティー的な。

これまでフランスの食事は(めちゃめちゃ美味しいけど)重たい料理ばかりでしたので、今の私の胃としてはかなりありがたい。

伊藤さんとレベッカさんやジョンさんとフランスとアメリカと日本の文化の違いや、お酒のプロモーション方法など、バラエティーに富んだ話題に華が咲き、とても良い意見を交換することができました。

場所も相まって、さながらフランス貴族のような、今回の滞在中で最も優雅なランチタイムでした・・・。

ちなみにこの上の階はゲストルームとして宿泊もできるようになっているそうです。

そして何と、この日は「日本からゲストがくるぞー」ということでクルボアジェ本社の外に日本の国旗を掲げて頂いていました。恐縮です><

その他、普段なかなか入れないクルボアジェ内部のゲスト向けスペース↓

ここはラウンジ・バースペース
シャラント川のすぐ横

クルボアジェと700の契約農家

優雅なランチを頂いた後は再び伊藤さんの車でクルボアジェの蒸留現場に移動し、蒸留の様子を見せてもらいます。

と、その前にクルボアジェがどのようにしてコニャックを作っているのか、クルボアジェを取り巻く契約農家の話に触れておきます。

クルボアジェはじめヘネシーやレミーマルタン、マーテルなどの規模になると、全てのコニャックを自社で蒸留するということではなく、数百から数千の農家と契約し、コニャックの元となるワインや蒸留後のオードヴィーを提供してもらったり、蒸留を委託したりしています。

ヘネシー、マーテル、レミーマルタン、クルボアジェといったコニャックBig4?の中では最も規模としては小さいクルボアジェですが、それでも実に約700もの農家との契約があります。

クルボアジェの生産域

クルボアジェのコニャックは主に

  • グランドシャンパーニュ
  • プティットシャンパーニュ
  • ファンボア
  • ボルドリ

の生産域の原酒をブレンドして作られています。

約700の契約農家の内訳

約700ある契約農家の内訳としては次の通り

①約500件のワイン生産者
→コニャックの元となるワインを作る生産者。

②約200件のコニャック生産者(ブイヤードクリュ)
→蒸留したオードヴィーやコニャックをクルボアジェに提供する人達。

③6件のプロフェッショナル蒸留家
→①のワイン生産者が作ったワインをクルボアジェのために蒸留する蒸留の専門家。例えば数日前に訪問したMaranchevilleブランドを展開するGrégoire氏はクルボアジェと契約のあるプロフェッショナル蒸留家の一つです。(プロフェッショナル蒸留家としてはDistillerie Gélinaudという名前)

契約農家との信頼関係

この約700の契約農家と6つのプロフェッショナル蒸留家はクルボアジェにとってはなくてはならない存在ですし、契約農家にとってもクルボアジェは必要な存在です。彼ら無しではクルボアジェのコニャックはできませんし、クルボアジェ無しでは彼らの生活も成り立ちません。

そのため、クルボアジェはこの契約農家の方々との信頼関係をとても重要視しています。そのためクルボアジェは自社のブドウの育て方や蒸留の仕方などの研究結果やノウハウを各農家さんに提供したり、お互いにとってメリットが出るように関係強化を図っています。
※クルボアジェはもちろん自社畑を保有しているが、その中の一部をブドウの研究開発に使用しているそうです。

また、最終的に出来上がったオードヴィーの状態で買うか買わないかを判断するのではなく、その前のワインの状態でサンプルを各農家から送ってもらい状態をチェック、そしてそれをクルボアジェ自社でテスト蒸留を行い、その結果を各農家にフィードバックするといったこともしています。そのテストでOKだったらそのまま進んでもらうし、あまり質が良くないような状態だったら改善のためのアドバイスを共有したりしています。

クルボアジェにはそういった契約農家のためのテストや官能評価を行う専門の部署があり、毎日研究・検証を行い、最終的に年間で約2000~3000回のテストを行うそうです。すごいボリュームだ・・・。

各農家とのやり取りはかなり密に行っており、それほど各農家との関連性が大切だそうです。良い意味で「最も小さい最大手コニャックメーカー」だからこそできる関係強化なのかもしれません。

クルボアジェ自社の蒸留器は14基

コニャック市街地から少し離れたところにあるクルボアジェ自社の蒸留所へ移動。ここで蒸留の様子を見せてもらうことに。

クルボアジェ自社としては蒸留所を2サイト(お互い近い場所にある)保有しており、それぞれ14基、合計28基のシャラント式単式蒸留器を保有しています。

従ってクルボアジェとして蒸留を行っているのは先述した6ヵ所のプロフェッショナル蒸留家+2ヵ所(2サイト)の自社蒸留所の合計8ヵ所ということになります。

蒸留器の掃除中

さすが14基もあると圧巻。

こちらもちょど蒸留真っ最中。

ここでは蒸留の各段階の液体をテイスティングさせて頂きました。

左から

  • 蒸留する前のワイン
  • Brouills(ブルイ):アルコール度数約30度
  • Tetes(ヘッド):アルコール度数約80度
  • Coeur(ハート):アルコール度数約70度
  • Second:アルコール度数約60~30度
  • Queues(テール):アルコール度数約5度

です。やはり蒸留する前のワインはめちゃめちゃ酸っぱいのでこれ単体で飲むのは結構キツい。
※コニャック用の元となるワインは糖度が低く酸度が高いのが特徴です。糖度が高すぎると発酵時にアルコール度数が高くなりすぎてしまい、蒸留には向いていないワインとなってしまいます。

でもこれが素晴らしいコニャックに変身するから神秘的だ。

SecondesをBrouillsに戻すかワインに戻すか

コニャックの二段階蒸留において、Coeurの次に出てくる蒸留液であるSecondesを最初のワインに戻して再度蒸留を行うか、2回目蒸留(ボンヌショーフ)のBrouillisに戻すかは各メーカーや蒸留担当者の判断によってもそれぞれです。

一般的には

Secondesを最初のワインに戻して再度蒸留する方式
→マーテル方式

SecondesをBrouillisに戻して再度蒸留する方式
→ヘネシー・レミー方式

なんて言ったりします。

クルボアジェの場合は基本的にヘネシー・レミー方式を採用。

言葉で書いても分かりにくいので、完結にクルボアジェ蒸留工程を図にするとこんな感じ。
※クリックで拡大PDF表示

対してマーテルの場合はSecondesをBrouillisではなく最初のワインに戻すのがスタンダードです。Secondを最初のワインに戻して再度蒸留します。それにより1回目の蒸留と2回目の蒸留を再び通ることになるので、マーテル特有のクリアで軽い印象のオードヴィーになります。

クルボアジェやレミーマルタンなどの場合はそこまで軽いものは求めないので、ワインではなくBrouillisに戻すという寸法です。求めるものが違えば手法も異なります。

また、これはやや分かりづらいかもしれませんが、クルボアジェの場合、SecondesとQueuesのカッティングポイントはワインのアルコール度数によって40%~3%とダイナミックに変え、安定した品質を得られるようにしている点が特徴的なポイントです。

オリを残すか残さないか

どのようなオードヴィーに仕上げるかどうかのもう一つの重要な要素として、ワインのオリを残して蒸留するかオリを残さずに蒸留するかとう手法の違いがあります。

これもメーカーによって様々なのですが、クルボアジェの場合はブドウの生産域によって使い分けています。

  • グランドシャンパーニュ、プティットシャンパーニュ、ボルドリのワインの場合はオリを残して蒸留する
  • ファンボアのワインの場合はオリを除外して蒸留する

という特徴です。

マーテルの場合はやはりクリアなオードヴィーを求めるので、基本手にオリを除去して蒸留しています。

これもメーカーや最終的に求めるコニャックによって様々。

この前訪れたABK6では、ファンボアメインの蒸留においても、蒸留の工程はSecondはワインに戻すというマーテルと同じ方式でしたが、オリは残して蒸留するという色々混じった感じでしたので、やはり組合せはそのメーカーや蒸留担当者の判断、求めるコニャックによっても微妙に違ったりします。

その微妙な違いが後々の大きな違いを生むのですね。

大手と小規模生産者の共存関係

2019年時点では上からヘネシーマーテルレミーマルタンクルボアジェといったいわゆる最大手生産者であるBIG4が全体のシェア83%を占めています。

一見すると大手コニャック生産者と家族経営のような小規模コニャック生産者の位置関係は大手が支配的な立場にいるように思われがちです。

しかしながら実際はどちらも欠かせない存在であり、多くの小規模生産者と大手・中堅生産者は共存関係にあります。

大手メーカーは小規模コニャック生産者からコニャックの原酒や樽を供給してもらうことでコニャックの生産を賄い、小規模生産者はそれにより経済的な潤いと様々なノウハウを交換することでコニャック産業全体が循環し潤っています。もちろん中にはジャンリュックパスケやABK6など、どこにも依存せずに完全に独立した生産者も存在しますが、コニャック産業の中では、どの立場の生産者も欠かせない存在です。

私含めコニャックファンの多くはポールジロージャンフィユーといったプロプリエテールに目を向けがちで、「いや、大手には興味ないし・・・・」といった考え方が多いように思えます。というか実際私もそうでしたが。

小さな木を見ることに囚われて森を見ることをしなかったのです。

それが良いか悪いかは別として、今回改めて規模の大きなコニャック生産者をちゃんと知ることで、コニャック産業の全体像をより勉強することができたのは大変良い機会でした。経済としてのコニャック産業の循環を知ることで、なぜ大手や中堅生産者はこのような作り方をしているのかや、逆にどこにも属さない独立生産者が存在するのかの背景をより興味深く理解することができます。

この記事では個々の味わいや私の好みについては言及しませんが、コニャック産業の発展には全ての生産者が必要不可欠。大も小もお互いに必要な関係。そういうことです。

ということで、一通りクルボアジェの蒸留工程を見せて頂いた後は、場所を移動してクルボアジェの契約農家の一つ「Michel Guilloteau (ミッシェルギヨト) 」という生産者を訪問。その後はクルボアジェのテイスティングタイム。

そして日本でも有名なオーガニックコニャック生産者「Guy Pinard(ギィピナール)」へ訪問しディナーをご一緒させて頂きました。

長くなったのでその様子は次の記事にて!(続くのかよ)

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おじいちゃんに癒されるMichel Guilloteau (ミッシェルギヨト) とクルボアジェマスターブレンダー

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