名前が長い・・・・
ということで今回は5,000円~1万円のおすすめブランデー第3位にもランクインさせたピエールフェランのブランデー「ピエール フェラン レネゲードNo.2 チェスナッツ ウッド バレル(Pierre Ferrand Renegade Barrel No.2 Chestnut Wood Barrel)」のレビューを行って参ります。
フェランの「変わり種」ブランデー?
このボトルを出しているブランド「メゾン フェラン(Maison Ferrand)」は主にラムやジン、そしてコニャックなど様々なスピリッツを出している大きなメーカーです。国内でも有名どころとしてはコニャックでしょうか。
しかしながら、このピエール フェラン レネゲードNo.2 チェスナッツ ウッド バレルは Renegade Barrelの名前からも分かるように「変わり種」としてリリースされたブランデー。
ブランデー・・・と書いたのには理由があります。
フェランのコニャックをChestnut Wood Barrel・・・つまり栗の樽でフィニッシュをかけたブランデーです。コニャックではなくブランデーと書いているのは理由は商品カテゴリとしてはコニャックではなく「オー・ド・ヴィー・ド・ヴァン(EAU DE VIE DE VIN)」として種類分けされているからです。
ちなみに、No2の前に発売されたフェラン レネゲードNo1はソーテルヌカスクフィニッシュでした。こっちのNo1の方は逆にEAU DE VIE DE VIN表記が無く、Double Maturationの表記があります。
栗樽フィニッシュの詳細を見てみる
改めてこのブランデーの詳細を見てみましょう。
ピエール フェラン レネゲードNo.2 チェスナッツ ウッド バレル
Pierre Ferrand Renegade Barrel No.2 Chestnut Wood Barrel
- アルコール度数:47.1%
- 容量:700ml
- 熟成年数:平均5~7年(一部25年の原酒を使用)。その後栗樽で1年間フィニッシュ。
- ボトリング:2017年
- 輸入業者:株式会社アバンテ
- 購入価格:税込8,800円(2020年6月時点)
何故栗の樽を使うようになったのか?
現在はAOCの規定としてフレンチオークでの熟成が義務づけられていますが、実は栗の樽は第二次世界大戦以前はコニャックの熟成樽として使われていたことがあったそうです。
メゾン フェランの代表でもあるAlexandre Gabriel氏は、第二次世界大戦以前にとあるコニャックメーカーによって栗の樽が購入された古い購入履歴書を発見し、その他にもコニャックをフレンチオーク以外の栗樽やチェリーの木で作られた樽で熟成されたとされるドキュメントを見つけ出したそうです。
そして思いたったのが「この時のようにフレンチオーク以外の樽で熟成させてみたら?」という考え。それがこの商品のコンセプトの始まりだったそう。
どうやってフィニッシュされているのか?
原酒としては350リットル容量のフレンチオークで5~7年熟成されたピエールフェランのコニャックが使用されています。ブレンドの一部には25年熟成の原酒もブレンドされていそうです。
その後225リットル容量の栗樽にて1年間の熟成をかけています。
今回のフェラン レネゲードNo.2では全部で18樽分、7000本のボトルが限定リリースされています。
私がゲットしたのはカスクナンバー1。ロット17です。めちゃめちゃ最初の方にボトリングされたものが来ちゃいました(笑)
フィニッシュならコニャックとしてもOKなのか?
ここで疑問なのが、コニャックにおける異なるタイプのカスクでのフィニッシュについて。
度々議論になるこの話題ですが、2019年12月にコニャックに伺った際にBNICの方に直接聞いた話では、フレンチオーク以外の樽をフィニッシュに使った場合でも今のところ下記の条件であれば一応「Cognac」と名乗ってもOKということでした。
- オークで作られた樽である
- オーク樽での最低熟成年数(2年超え)を経ている
- 古樽を使う場合はブドウ由来のお酒(ワインやシェリーなど)に使われた樽のみ使用可能
※ブドウ由来以外のお酒(ウイスキーやラム)などで使用された樽は使用不可
例えば上記の条件に当てはめることにより、日本産のミズナラ新樽でフィニッシュさせたコニャック パーク ボルドリ ミズナラはコニャックと名乗ることが許されていました。また逆にバーボン古樽でフィニッシュをかけたマーテルのブルースウィフトやバッシュガブリエルセンのアメリカンオークフィニッシュなどは、上記の条件から外れるためコニャックの表記を使用することができませんでした。
では今回のフェラン レネゲードNo.2に使用されているチェスナッツ ウッド バレルはどうなのでしょう?
どうやらこの商品を世に出した2017年、コニャックとして出すことをBNICからは認められなかったそうです。
2020/6/23追記:回答きました
栗樽についてメゾンフェランから回答がきました!
このレネゲードNo.2 チェスナッツ ウッド バレルのフィニッシュに使われているは、一度ラム酒「Saint Lucia rum」で使用された栗樽をフィニッシュとして使用しているとのことでした。
つまり、完全な新樽ではなく、一応他の酒の熟成で使用された古樽という立ち位置になります。
プラス、オーク樽由来ではないのでコニャックAOCの規定からは外れるようですね。
スッキリしました。
2023/2/9追記
フレンチオーク以外の樽の使用規定についてBNICに確認が取れました。
コニャックの熟成樽については2023年2月時点で下記のような規定となっています。
- オークの新樽であればフレンチオーク以外でも何年でも使用可能
→未使用のアメリカンオークやミズナラオークなど、1年半などの期間の制限はない。オークであればエリアは限定されない。フィニッシュに限らず10年でも20年でも熟成に使える - ブドウ由来の酒(シェリーやワインなど)に使われたオーク樽であれば古樽でも使用可能。これも使用年数は問わない
- オーク以外の種類の木からできた樽は新樽でも古樽でも使用できない
→チェリー樽やアカシア樽などは使用不可 - ブドウ由来以外の酒(ウイスキーやラムなど)に使用された古樽は使用不可
→なのでバーボン樽を使ったものやラムで使われた樽の場合はオークであろうがなかろうがコニャックとしては認められない
追記ここまで----------------------
フェラン レネゲードNo.2のレビュー
前置きが長くなってしまいましたが、さっそく飲んでみましょう。
キュポン。
ピエール フェラン レネゲードNo.2 チェスナッツ ウッド バレルの香り立ち
グラスに注いでしばらく経つと立ち込める甘い香り。
プリンや羊かんといった瑞々しくトロリとしたお菓子を連想させます。これは例の栗樽由来のものなのでしょうか。
果実感は少ないですが、無理やり探すとしたらほんのりと梨、そしてライチ。そして革製品っぽい渋い香りもアクセントとして少し。
熟成年数としてはやや短く、アルコール度数も47.1%と40%程のコニャックと比べるとやや高めなこともあり、あまり鼻をグラスに近づけすぎるとややアルコールの刺激が襲ってくるので、グラスに鼻は突っ込まない方が心地よい香り立ちを楽しむことができるかと思います。
めちゃめちゃ香りが華開くという印象はなく、全体的に軽い感じ。
ピエール フェラン レネゲードNo.2 チェスナッツ ウッド バレルの味わい
これはちょっと「うそやん」と思われるかもしれませんが、私が口に含んだ時の第一印象は
ほうじ茶ラテ・・・?
でした(笑)
ほうじ茶ラテをお酒にした感じ。(分かりづらい)
もちろんアルコールのパンチはありますよ。でも何だろうこの他のコニャックにはない独特な感じは。これが栗樽由来のものなのでしょうか。きっとそうでしょう。
その他に感じる要素としては、結構樽由来のウッディさと、そこにほのかに混ざる蜂蜜感。シナモン。
そしてジンジャーの程よい刺激。
果実感、フローラル感といった味わいとは対照的にですが、結構しっかりガツンと口と喉を刺激してくれるボトルです。
だいぶオイリーなウイスキーと言ってもバレないかもしれない。(え
先日買ったCognac Philbertはソーテルヌカスクとオロロソシェリーカスクフィニッシュが施されたコニャック(これはコニャック表記・・・)で、こちらは恐らく加糖由来のやや人工的な甘みが目立つ商品でしたが、このピエール フェラン レネゲードNo.2 チェスナッツ ウッド バレルはそのような甘みは感じられません。同じ「甘い系樽」フィニッシュでも全く別物です。
参考記事
→新世代コニャックCognac Philbertレビュー:シェリーカスクとソーテルヌカスクフィニッシュ!
あ~・・・飲めば飲む程ほうじ茶ラテ(ただしアルコール度数47.1%)だなぁ。
ちょっと変わったヤツが飲みたい人にはおすすめのブランデー
グランドシャンパーニュの長期熟成を経たような華やかなコニャックを求めていたり、初めてブランデーを口にする方にはやや挑戦的なブランデーではありますが、やっぱ面白いボトルです。
ブランデーの中でも何か変わったヤツを飲んでみたい。
普段はウイスキー派。
そんな方々には是非ともチャレンジして頂きたいおすすめしたいブランデーですね。
オーク樽5~7年、フィニッシュ含めて約8年熟成で8,800円となると、コニャックで考えるとやや割高かな?という感じもありますが、これはこれで大変面白いヤツなのでこのくらいの値段でも全然OKかなというのが個人的な感想です。
コニャックのフィニッシュに関しては賛否両論ありますが、Liqul寄稿記事「伝統と革新の間」でも書いたように、いつの時代も伝統と革新という相反する考えは多くの葛藤を生み出し、そこに活路を見出します。
こういった様々な試みはこれからも楽しみですし、その試みが10年後、20年後・・・50年後にどのような影響を及ぼすか想像するのもワクワクします。
このレネゲードのような「反逆者」の出現も伝統と革新が織りなすブランデーの楽しみ方の一つなのかもしれません。