ブランデー知識【中級編】

【中級編】コニャック地方のブドウ生産域による細かな区分け

2015年7月3日

ブランデーの知識初級編で書いたように、ブランデーにはフランスの生産地域によって「コニャック」「アルマニャック」「カルヴァドス」と3つに分かれていることが分かりましたね。

今回はその中でも一番有名処であるコニャックについて詳しく見ていきましょう。

「コニャック」はフランスランス南西部のコニャック地域で作られたブドウを原料としたブランデーのことを指します。
正式にはオー・ド・ヴィ・ド・ヴァン・ド・コニャック(Eau-de-vie de vin de Cognac)と言います。当サイトでは分かり安く「ブランデー」とか「コニャック」と表記していますのでご了承下さい。

コニャックは6つの生産域に分かれる

実はこの「コニャック地方」の中でもさらに細かくクリュ(ブドウ畑)エリアによって6つの地域に区分けされているのです。

コニャック地域のエリア

コニャックの原料となるブドウの生産域 (クリュ=Cru)は土壌の性質によって6つのエリアに区分けすることができます。一般的には上に行くほど葡萄の取引価格も高くなっています。

  • 1.グランド・シャンパーニュ(Grande Champagne)
  • 2.プティット.シャンパーニュ(Petite Champagne)
  • 3.ボルドリ(Borderies)
  • 4.ファン・ボア(Fins Bois)
  • 5.ボン・ボア(Bons Bois)
  • 6.ボア・ゾルディネール(Bois Ordinaires)

地図で見ると下のような感じです。
まずはフランス全体の生産地域の分かれ方。

そして↓こちら↓がコニャック地域をクローズアップしたものです。

それでは地図と併せて各地域の特徴を詳しく見ていきましょう。

土壌によって分かれる地域

主に土壌によって、ブランデーの原料となるブドウの性質が変わります。

1. グランド・シャンパーニュ(Grande Champagne)

最も長期熟成に向いている土壌とされ、熟成に年月をかけて香り高く繊細で、上品な香りがするブドウとなります。

土壌は白亜紀後期(カンパニアン= camapanian soil)の地質。灰白色の軟土質の石灰岩(炭酸カルシウムの微粒の岩)の地層の上に、浅く粘土質の砂とゴロゴロとした石灰岩の土壌に覆われて構成されている事が特徴。

グランド・シャンパーニュ地域は全体で34,703ヘクタールあります。このうち葡萄作付面積は13,159ヘクタールです。この地区独特の至上の繊細さと軽やかさ、フローラルのアロマを秘めたブランデーに相応しいブドウが栽培されます。熟成期間には長い年月が必要で、その間オーク樽のなかで充分な成熟を待ちます。

グランド・シャンパーニュ地域で、収穫から出荷まで一貫した作業のモノはグランド・シャンパーニュと表示できます。
有名処はこのサイトでもイチオシ「ポールジロー」シリーズですね。
(当サイト総合ランキング1位!)

ちなみに、シャンパンの産地で有名な「シャンパーニュ地方」とは全く別地域です。500km以上離れています。
地域の名前が似ていますが、ブランデーの「グランド・シャンパーニュ地方」とシャンパンの「シャンパーニュ」地方は全然別物なので注意しましょう。 (ただし土壌の質自体はかなり近しい石灰質)

2. プティット.シャンパーニュ(Petite Champagne)

土壌の性質としてはグランド・シャンパーニュに似た性質がありますが、プティット・シャンパーニュの方がより石灰岩の粒が細かい傾向にあります。一般的にはよりライトなボディに仕上がり、グランド・シャンパーニュの方が長期熟成に向いているといわれますが、グランド・シャンパーニュとはまた違った特徴を楽しむことができます。

プティットシャンパーニュ地区の総面積は65,603ヘクタールです。そのうちの4分の1にあたる15,246ヘクタールでコニャック向けのブドウが作られています。 この地域のブランデーはグランド・シャンパーニュの洗練さには及ばないものの同様の性質を保持しています。

ちなみにグランド・シャンパーニュに50%以下の割合いでプティット・シャンパーニュのブランデーをブレンドしたものをフィーヌ・シャンパーニュ(Fine Champagne)と表示できます。
フィーヌ・シャンパーニュで代表的なのは「ネヘシーVSOP」ですね。

3. ボルドリ(Borderies)

コシが強く豊かな香りのブランデー。

この地域は6つの中で最も小さいクリュで、総面積は12,540ヘクタールです。(地図参照)

粘土質と石灰岩が混ざったような土壌ですが、細かく言うと石灰層が分解(脱炭酸化)されたフリント質の土壌が広がっています。実は6つの土壌の中でも最も古く、ジュラ紀からの地層で構成されています。(1億3千万年前の恐竜の化石が2000個以上も発掘されたそう!)

ボルドリ地区からできるコニャックは一般的にスミレのアロマが感じられ、まろやかでやわらかいものが生産され、グランド・シャンパーニュやプティット・シャンパーニュと比べて短い熟成期間であっても上質で素晴らしいコニャックができると言われています

土壌は石灰層の脱炭酸化によるフリント質というものです。コニャック市の北東に位置し、この地区3,987ヘクタールのブドウ畑からはまろやかでやわらかなブランデーが産まれます。

私の個人的な好みとしてはかなり好きな部類のコニャックです。

4. ファン・ボア(Fins Bois)

若々しく軽快なブランデー。6つの生産域の中でも最も大きいエリア。ファン・ボア全体では約350,000ヘクタール。そのうち約31,200ヘクタールがブドウ畑となっています。

ファン・ボアの土壌は独特の「グルワ土壌(Groies)」と呼ばれており、グランド・シャンパーニュ、プティット・シャンパーニュと同様に石灰岩+粘土質なのですが、より硬く、きめが粗い、赤い砂利状の土壌であることが特徴です。

まろやかでしなやか、比較的熟成期間が短くフレッシュな果実味が特徴的なコニャックとなります。

5. ボン・ボア(Bons Bois)

ボン・ボア全体の面積は約370,000ヘクタール。そのうち約9,300ヘクタールがブドウ畑となっています。

土壌としては粘土、砂、石灰岩が混ざったものです。

このボン・ボア地域はブドウ以外の作物用の畑や放牧地、松林が栗林も多く存在し、ブドウ畑が一か所に集中せずに点在していることが特徴的です。

ボン・ボア産のブドウを使用したコニャックは一般的に他の上記①~④のエリアよりも早く熟成が進む傾向にあります。

6. ボア・ゾルディネール(Bois Ordinaires)

やや荒い風味のブランデー。

ボア・オルディネール全体の面積は約260,000ヘクタール。そのうち1,100ヘクタールあまりがコニャック向けのブドウ畑です。かなり砂地質が強い土壌であることが特徴。

カミュのイル・ド・レシリーズでも知られる「レ島」などの沿岸部の地域も含まれており、ここで作られるコニャックはかなり独特な風味に仕上がる傾向にあります。

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多くのコニャックは様々な生産域のブレンドである

これら6つの生産域に分かれているコニャックの原料ですが、その地区のみの葡萄で作られたコニャックのみラベル等に栽培区の名称を記載することができます。

例えば、ポールジローやジャンフィユーなどはグランドシャンパーニュ産のみの葡萄で作られたコニャックなので、ラベルに堂々と「Grande Champagne」と表記されています。ラベルや箱に生産域の明確な表記があるのは、その地区の葡萄オンリーで作られた単一生産域のコニャックだけです。

その他、多くのコニャック(特に大手になればなるほど)は様々な生産域の葡萄が原料の原酒をブレンドしてコニャックを作ります。それはそれぞれの商品によって異なりますが、例えばプティットシャンパーニュ60%+ファンボア40%、グランドシャンパーニュ30%+ボルドリ70%などなど・・・

そういった場合にはコニャックのラベルや箱に明確な生産域の表記はありません。詳細なブレンド比率や、どこの葡萄を使っているなどの情報は公に表記されていない場合が多く、メーカーの詳細資料を見たり直接メーカーに問い合わせないと分からない場合があります。

主なブドウの品種は?

上記6地域でコニャックとして認められるブドウの品種のは以下の3種類です。(白ブドウ)

「ユニ・ブラン」「コロンバール」「フォル・ブランシュ」

  • ユニ・ブラン
  • コロンバール
  • フォル・ブランシュ

なお、全体の10%までなら以下の品種も混合することが認められています。
「フォリニャン」「ジュランソン・ブラン」「メスリエ・サン=フランソワ」「モンティル」「セレクト」「セミヨン」

ユニブランなどのコニャックで原料として使用されるブドウは酸味が多く糖度が低いためワインとしてはあまり高級な部類に入りませんが、ブランデーにとっては素晴らしい素材となります。理由としては主に以下2点です。

  • その1:酸が多いと果汁が酸性になり、雑菌の繁殖を抑制でき、香味成分の生成を促すことができる。
  • その2:発酵時のアルコール度数が高くなりにくいため、大量のワインから少量のブランデーしか蒸留されず、その分ブドウの香味成分が濃縮されやすくなる。

ちなみに、大手のメーカー(カミュやヘネシー等々)がグランド・シャンパーニュ規格のコニャックをあまり製造しないのには理由があります。グランド・シャンパーニュ地区の面積が狭く、生産量が確保できないからです。

まとめ:コニャックの6つの地域

ポイント

  • フランスのコニャック地方で作られるブドウを原料としたブランデーが「コニャック」と呼ばれる。
  • コニャックの中にもブドウを作る土壌によって性質が分かれている
    1. グランド・シャンパーニュ(Grande Champagne)
    2. プティット.シャンパーニュ(Petite Champagne)
    3. ボルドリ(Borderies)
    4. ファン・ボア(Fins Bois)
    5. ボン・ボア(Bons Bois)
    6. ボア・ゾルディネール(Bois Ordinaires)
  • 使われるブドウの品種は主に3種類
    「ユニ・ブラン」「コロンバール」「フォル・ブランシュ」

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