滞在10日目その1
2023年1月20日(金)
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→デラマン訪問:神業的加水の秘密はフェーブルに
昨日の夕方からコニャックでは珍しい大雪に見舞われ、今日は朝から真っ白な景色が広がっていました。
この日はコニャック在住の日本人ソムリエ野田祥子さんに1日コニャック生産者を巡るガイドを依頼しており、1日かけて3つの生産者を回る予定でした。ところがこの大雪により道路が大変な状態になっておりとても車が走れる状態ではなかったのでしばらく様子を見る事に。野田さんもこんな大雪はコニャックに住んで初めてだったとのこと。
野田祥子さん
コニャック在住10年目(2024年時点)の日本人ソムリエ。フランスの国家資格であるソムリエ資格の持ち主で、仏ソムリエ協会ボルドー・アキテーヌ支部役員。多くのコニャック生産者とも大変親しく私Brandy Daddyもコニャックに訪問した際にはいつもお世話になっております。
→ブログ:Sachi Wines
最初はジャンフィユーを訪問する予定でしたが、急遽予定を1つ早めて当初2つめの訪問先予定だったChâteau de Montifaud(シャトー・ド・モンティフォー)に行くことになりました。急なとトラブルにもかかわらず色々ご手配頂き本当にありがとうございました。
コニャック Château de Montifaud(シャトー・ド・モンティフォー)
シャトー・ド・モンティフォーはプティットシャンパーニュエリアにある6代150年以上続く家族経営のコニャック生産者。ブドウの栽培から収穫、発酵、蒸留、熟成、瓶詰まで一貫して全て自社で行っています。日本ではいわゆるプロプリエテールコニャックです。現在のオーナーはLaurent VALLEY(ローラン・ヴァレ)氏。そして奥さんのElodieさんは主にマーケティング担当として一緒に活躍しています。
2023年の訪問時点で約150haのブドウ畑を有し、うち約140haがプティットシャンパーニュ、10haがグランドシャンパーニュエリアにあります。育てているブドウ品種の99%はユニブランですが、約1%程フォルブランシュも育てており、フォルブランシュは特別なシングルカスクやヴィンテージのコニャックに使用されるそうです。
シャトー・ド・モンティフォーのコニャックはほとんどがプティットシャンパーニュ企画となります。一部グランドシャンパーニュ規格の物やプティットシャンパーニュとグランドシャンパーニュのブレンドもあります。
なお、グランドシャンパーニュとプティットシャンパーニュのコニャックでグランドシャンパーニュが50%以上ブレンドされたものをフィーヌシャンパーニュと呼びますが、シャトー・ド・モンティフォーはフィーヌシャンパーニュ規格のコニャックは作っていません。グランドシャンパーニュとプティットシャンパーニュをブレンドすることはありますが、グランドシャンパーニュの割合が50%以下になる場合があるた、シャトー・ド・モンティフォーではプティットシャンパーニュとグランドシャンパーニュのブレンドを「Collection Premium」と呼んでいるそうです。
ちなみに、ピノーデシャラント用の畑も2haほど所有しており、赤用にメルローとカベルネソーヴィニヨン、白用にユニブランとコロンバールを育てています。
日本国内でも少しずつ認知度が上がってきましたね。というものの、日本ではシャトー・ド・モンティフォーよりも、その姉妹ブランドにあたる「ピエール ヴァレ」の方が有名かもしれません。ピエール ヴァレは現オーナーの曽祖父にあたり、フィロキセラ後のブドウ畑の再構築に貢献したPierre Vallet氏からブランド名を取っています。
一面雪景色のコニャック畑
無事シャトー・ド・モンティフォーにたどり着くと応接室で一休みした後シャトー・ド・モンティフォーが持つすぐ隣のブドウ畑に案内して頂きました。この日シャトー・ド・モンティフォーを案内して頂いたのは広報担当のAurélieさん。
雪化粧されたブドウ畑もまた一興なものです。
ザクザクと雪を踏みしめる音に大はしゃぎな私と野田さん笑
今はまだ真冬なので枝はそのままですが、3月末までには剪定を終えるそう。
1本の木に約8~10房のブドウが実り、収穫したブドウは1haあたり150ヘクトリットル搾汁できる量になります。
収穫は基本的に機械収穫ですが、若い木から採れるブドウは木が繊細なため手づかみを行います。
なおボルドーなどのワイン用ブドウの場合は葉っぱを刈ったりしますが、ここでは(というかコニャック的に)葉っぱを切ったり整えたりは行いません。ワインと比べて葡萄畑が広大すぎて作業が追い付かないのと、糖度を上げ過ぎないよう適度が日陰が必要というのが主な理由です。
9月頃には約10日間かけてブドウを収穫します。収穫されたブドウはすぐに圧搾機にかけられ搾汁されます。収穫から搾汁まで約30分というスピード作業です。
圧搾と醸造
凍える寒さの畑から室内に移動。
こちらがシャトー・ド・モンティフォーの圧搾機です。ここでブドウが絞られブドウジュースにされます。
ここには合計4台の圧搾機があります。50ヘクトリットルの圧搾機が3台。そしてもう一台110ヘクトリットルの圧搾機です。
110ヘクトリットルの圧搾機は基本的にピノーデシャラント用に使用しているようで、コニャックには主に50ヘクトリットルの3台が使用されています。
ブドウを絞った後に出る搾りカス(ブドウの皮や種)は一部肥料として回収され、また一部は別の蒸留所で薬用のアルコール製造用に用いられるそうです。あとは化粧品とか香水用とかにも用いられるそう。マールやグラッパのような飲料用のアルコール原料として使われることはないとのことです。
醸造タンク
2000年代に購入されたステンレスタンク。こちらで搾汁されたブドウ果汁がワインへと変わります。
発酵中は温度を24~25度にキープし、安定した品質を保つようにしています。発酵が終わったワインはオリと共に保管され次の蒸留ステップへ進みます。