滞在2日目その1
2019年12月4日(水)
初日の睡眠不足を少し抱えたまま、2日目に突入。
今日から本格的にコニャック生産者巡りが始まります。
2日目の主な予定は4つ。
①ボルドリ地区の ORDONNEAU(オルドノー) コニャック訪問
②マーテルのアンバサダーと面会
③フランスコニャック協会訪問
④Cognac ParkのオーナーJerome氏とディナー
まずは① ORDONNEAU(オルドノー) コニャックの訪問です。
Cognac Parkの Chiristoph氏と一緒に訪問
実はこの日、2019年5月に東京で会ったCognac Parkのアジアマーケット担当Chiristoph氏もコニャック地方に仕事で訪れているとのことで、一緒に色々廻ってもらうことになりました。 Cognac ParkのChiristoph氏と ORDONNEAU(オルドノー) は仲がよく、彼の紹介で今回 ORDONNEAU(オルドノー) に訪問させて頂く運びとなりました。
参考記事:
→日本未輸入コニャック三昧!フランス大使館主催試飲会レポート
そして9時半にホテルのロビーに集合し、少し歩いたところでORDONNEAU(オルドノー)コニャックの長男が車で迎えにきてくれました。
これから一緒にボルドリ地区にある ORDONNEAU(オルドノー) コニャックの畑・蒸留所・セラーに向かいます。
ボルドリ地区へ。ここがオルドノーコニャックだ!
現在オルドノーコニャックは日本への正式なインポーターは付いていないものの、一応並行輸入品として日本にも流通しており、私も1本もっています。
参考記事
→オルドノー トレヴィエイユ レゼルヴ ボルドリのレビュー・感想
しかしそれもかなり前のことで、本人たちは日本に自分達のコニャックが今もあることに少し驚いた様子でした。
オルドノーコニャックはコニャック6つの生産域で最も少ない面積をもつボルドリ地区に位置しています。
場所はコチラ↓
ここでブドウの栽培・発酵・蒸留・熟成・ボトリングまでをオルドノー兄弟4人がメインとなって全て自社で行っています。
オルドノー家の兄弟が作りだすプロプリエテールコニャックです。
オルドノーコニャックはここボルドリ地区に30ヘクタールの畑を有していますが、こことは別にファンボア地区にも10ヘクタールの畑を有しているとのこと。しかしファンボアで栽培しているブドウは基本的に他のコニャック業者にワインを売ったり、他の商品に使っているものだそうです。
自分たちのコニャックは全てこのボルドリ地区の30ヘクタールの畑のブドウから作っています。
畑の様子
2019年12月時点の畑はこんな感じ。
ブドウ品種は全てユニブランです。
まだ12月ということもあり、ブドウの枝も収穫後のそのまま。剪定はまだ行っておりませんでした。
プレス機
こちらがブドウのスクリューとプレス機。
スクリューにブドウが流し込まれ、その後プレス機にブドウが送られます。
数年前に買い替えたばかりらしく、このプレス機は最新式の「空気圧式膜圧搾」式。
全自動で空気プレスを行ってくれます。
それまでは古いプレス機を使っていたそうで、空気式ではなく、板で直接プレスするタイプのやつ。やはり空気プレス式の方がコニャックとしては良いブドウ果汁が取れるとのこと。
ブドウのプレス機の違いについてはコチラのサイトが分かりやすかったのでご参照あれ。前半部分に【プレス機の種類と変遷】という記事があります。
また手動でスイッチの切り替えやプレス操作をしないといけなかったらしく、この最新プレス機に変わってかなり楽になったそう。
その後、ワイン発酵タンクへブドウジュースが送られます。
オルドノーの蒸留器は2機
オルドノーコニャックで使用している蒸留器は2機。
今年は蒸留開始が遅れており、残念ながら今回伺った際にはまだ蒸留は行っていませんでした。今年は12/9から行うそうです。
オルドノーは小型と大型の両方を持っており、一度の蒸留できるワインの量は、小さい方が15ヘクトリットル、大きい方が25ヘクトリットルです。
両方ともワインを温める用のショーフヴァン(chauffe-vin)はついていません。蒸留する量も多くないので、不要だそう。
この蒸留器は30年前に購入したものだそうですが、徐々にパーツを取り換え、システム自体はオートマ式に切り替えたそうです。特にこちらの大きい25ヘクトリットルの蒸留器は完全オートマ式で、最初の蒸留である「初留」はほとんどがコンピューター管理となっています。
実際にコニャックとして使用する液体(クール)が取れる2回目の蒸留(Bonne Chouf)では、ヘッドやスゴンドの切り替えはちゃんと自分達の鼻で確認しながら切り替え作業を行っています。
参考記事
【中級編】コニャックの蒸留方法:シャラント式 単式蒸留とは?
またコンピューターが普及していなかった30年前の彼らの叔父世代は、この蒸留器の前にベッドをこしらえて、この蒸留器の前で寝起きし、日夜蒸留の切り替え作業を行っていたそうです。
蒸留器の前で寝泊まりしながら全て手作業でする様子はストーリーとしては美く、それを美談として良いコニャックであるという語られることもしばしありますが、当事者としては「Totally Crazy!」だと言っていました(笑)
蒸留器の自動化システムはその蒸留器やシステムによっても異なるのですが、別の蒸留所でそのシステムを詳しく見せてもらったので別記事にて紹介します。
蒸留方法はマーテル式
オルドノーコニャックは30年以上マーテルと協力関係にあり、オルドノーコニャックはマーテルの契約農家の一つでもあります。オルドノーが蒸留したオードヴィーをマーテルが買い取っています。(あくまでも提供しているのは蒸留したてのオードヴィのみ)
マーテルの蒸留方法は、蒸留時のワインのオリを取り除いて可能な限りクリアなワインを蒸留することを指定しています。
また実際にコニャックとなる液体が出来上がる2回目の蒸留(bonne chauffe)の際の最初の数リットルの液体を、ワインに戻して再度1回目の蒸留に使用することが特徴的です。(ワインに戻すことによって、初留と再留を再度行うことになり、よりクリアなオードヴィーとなる)
オルドノーのセラー
オルドノーの熟成庫は大きく2つに分かれており、一つはピノーデシャラント専用のセラーで、もう一つはコニャック用の熟成庫です。
コチラはコニャック用の熟成庫。
マーテル式の場合、あまり濃いタンニンを出さないようにするため、繊維の隙間が大きいリムーザンオークよりも、繊維の細かいトロンセ産のオーク樽を使用することが多いのですが、こちらはトロンセとリムーザンが色々混じっています。
床はコンクリートで、比較的ドライな熟成庫です。なお樽に巻き付いているのはコニャック吸い上げ用のポンプです。このポンプで保管用のトノー(大樽)に樽の中身を移動させたり、ブレンド用のタンクに移動させたりします。
オルドノーのボトリング
オルドノーのボトリングラインはかなり手作業部分が多いです。
ボトリングも人は雇わずに全て家族でやっているそう。
生産本数がそこまで多くないため、手作業のボトリングでも十分間に合うそうです。後ほど紹介する比較的規模が大きいコニャック生産者とは全く異なる生産ラインで、良くも悪くも手作り感がすごいです。
まずここでボトルを逆さにしてボトル内部を洗います。
水で洗浄するのではなく、ボトリングするコニャックと同じ液体で洗浄します。(下から洗浄用コニャックが噴射されます)
一般的にボトル洗浄用のコニャックは、実際にボトリングするコニャックよりも少しアルコール度数が高いものを使用するのですが、オルドノーの場合どうなのか聞くのを忘れてしまいました・・・。
そしてここにボトルをセットしてコニャックが注がれます。
注ぐコニャックは上のタンクに直接貯められます。
最後にラベルマシン。
コルク栓自体は人の手で絞められますが、コルクの最終締めと封、ボトルのラベリングが行われます。
オフィスでテイスティング会
一通り設備を見終わった後は、彼らのオフィスでテイスティング。外を回っていたのでオフィスに入るとすごく暖かい・・・。
オフィスに入ると、オルドノー家の最年少Gonzague氏が入ってきました。Gonzague氏とは以前よりインスタグラム上でずっとメッセージをやり取りしていましたが、ここにきてようやく対面することができました。
オルドノーのピノーデシャラント(Pineau des Charentes)とコニャックラインナップ3種類を全て頂きました。
オルドノーコニャックの現在のラインナップは次の通り。全てボルドリ産100%です。
ORDONNEAU VSOP:熟成年数10~15年
ORDONNEAU Extra:熟成年数15~20年
ORDONNEAU Tres Vieille Reserve:熟成年数25~35年
このうち私が保有しているのは一番下のTres Vieille Reserveですが、昔の並行品と現行品では少し味が違うかな?とも感じました。(良い意味で)
そしてコニャックも美味しいけど、ピノーデシャラントも美味しいなぁ・・・。
参考記事
ピノー・デ・シャラントとは何か?ワイン?ブランデー?
彼らのピノーデシャラントは赤と白の2種類で、それぞれ4年熟成と10年熟成があります。
個人的には赤の10年熟成のピノーデシャラントが大変気に入りました。この ピノーデシャラントにおけるVieux(ヴィユー) 表記の条件は最低5年熟成ですが、オルドノーの場合10年熟成のピノーデシャラントとなっています。
コニャックは97%以上がフランス国外への輸出なのに対し、ピノーデシャラントは80%以上フランス国内で消費されており、日本はじめ国外への流通はとても少ないです。まだまだ我々の知らないピノーデシャラントは山ほどあり、生産者や使用しているブドウジュースによってもかなり味わいが異なるので、コニャックよりも味の変化が大きく、飲み比べが面白いかもしれません。
色々と話ながらあっという間に1時間が経過。
お土産に赤のピノーデシャラント10年を頂きました。ありがとうございます!!
これまでボルドリ地区のプロプリエテールコニャックとして自宅で味わっていたオルドノーコニャックですが、実際に訪問してみると本当に自分達の手で全て行っているんだなぁと実感しました。貴重なボルドリコニャックの生産現場を見せて頂き、ありがとうございました!
次の記事
マーテルと360度の眺望
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